現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

小川洋子「臨時実験補助員」不時着する流星たち所収

2017-05-02 15:32:14 | 作品論
 いろいろな宛名を書いた手紙を、町のいろいろな場所に置いて、どのくらい戻ってくるか(宛先は同じ私書箱になっています)を調べる心理学研究室の実験の補助員(二人一組になって膨大な数の手紙を、街のあちこちに置いてきます)としてペアになって働いた、異常なほど几帳面な女性の思い出を、相手の若い女性の視点で描いています。
 実験の奇妙さ以上に、赤ん坊と母乳に異常な反応を示す女性(おそらく、姑に赤ちゃんを連れ去られてしまって、そのショックで精神に変調を起こしてしまったのではないかと思われます)の様子が鬼気迫ります。
 なお、「服従実験やスモールワールド現象で知られる社会心理学者、スタンレー・ミルグラムによって編み出された放置手紙調査法」に触発されて書かれた作品のようなのですが、その方法については調べていないのでどのくらい正しく再現されているかについてはコメントできません。

不時着する流星たち
クリエーター情報なし
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小川洋子「測量」不時着する流星たち所収

2017-05-02 15:30:44 | 参考文献
 盲目の祖父が、あらゆる所(家の中、庭、街のあちこち)を歩測するのを、いつも一緒に付き合って記録している大学生の僕の視点で書かれた作品です。
 とてつもなく裕福だった(祖父の祖父が塩田王で、町のほとんどの土地を所有していた)と称する思い出話やそのゆかりの土地も歩測するのにも付き合う主人公のやさしさが、このありえなさそうな物語を支えています。
 特に、祖父が年老いて衰弱するにつれて、ある距離の歩数が増えるのではなく逆に減っていくのが、人間の老いや死をうまく象徴していて優れていると思われます。
 なお、天才ピアニストのグレン・グールドに触発されて書かれた作品のようなのですが、私はホロヴィッツやアシュケナージのファンで、グールドは詳しくないので、関連についてはコメントできません。

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