現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

観念と児童文学

2017-12-01 09:47:52 | 考察
 文学の世界には、観念を中心に描いた作品も数多くあります。
 しかし、こういった主人公のモノローグを中心に書かれた観念小説は、児童文学の世界にはそぐわないことが多いと思われます。
 子どもの読者は、自分が生活している実体社会が描かれた作品は理解しやすいのですが、作者の観念を中心に描かれた作品はそういったものになじみがあまりないので、理解しにくいようです。

観念論の教室 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房


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三崎亜記「似叙伝」チェーン・ピープル所収

2017-12-01 09:46:18 | 参考文献
 自叙伝ならぬ似叙伝を書くことを仕事にしている男の評伝です。
 似叙伝というのは、自叙伝とは違って、その人の人生の事実(文中にもありますが、これもあくまで本人の主観なのでどこまで事実かは怪しいものですが)を自分で書くのではなく、その人が望む以下のような人生についてゴーストライターが書くものです。
1.亡くなった家族が、今も生きているとした場合
2.自分が今と違う職業や、人生の選択をした場合
3.存在しなかった家族が、「いる」とした場合
 この似叙伝を利用してマスコミに自分を売り出した人物が出てきて、彼が失脚した時にゴーストライターの存在も暴露されて非難され数年後に亡くなります。
 悪者として世間に決めつけられたゴーストライターの真実の姿を、最後に妻が明かすというのがこの本の仕掛けです。
 明らかに、数年前に騒がれたマスコミの寵児だった作曲家にゴーストライターがいたことが発覚したスキャンダルのパロディです。
 キャラクターを入れ替える(ゴーストライターの方をふてぶてしい悪党キャラにして、寵児の方を気弱で真面目そうな世間の同情をかいそうなキャラにしています)ことで、最後のどんでん返しの効果をあげています。
 この作品でも、基本的には主に説明文でストーリーを進めていくのですが、リアルタイムのアクションを描いた部分も比較的多く、一般的な小説に近くなっています(その分、作者の個性が弱くなっているかもしれません)。
 
チェーン・ピープル
クリエーター情報なし
幻冬舎
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