現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

伊東潤「恨み鯨」巨鯨の海所収

2017-12-04 09:41:36 | 参考文献
 この作品でも鯨漁のシーンは迫力満点で、非常に読ませます。
 しかし、やはり人間のドラマが弱すぎます。
 母のために罪を犯した息子が、父や恩人の命を救うことでその罪を償い、その代わりに命を落とします。
 エンターテインメントの世界においても、もう語りつくされたパターンで、しかもこの作品はすぐにラストのおちがよめてしまいます。
 おそらく、作者はこういうパターンを踏襲することで、彼の主な読者層である年配の人たちにもわかりやすい物語を意図して書いているのでしょうが、新しい読者層はもうひとひねりないとひきつけられません。
 児童文学の世界でもあえてパターンを踏襲した描き方をする書き手もいますが、そういった作品は一時の消費財にはなり得ても、すぐに時代に淘汰されてしまいます。

巨鯨の海
クリエーター情報なし
光文社
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三崎亜記「ナナツコク」チェーン・ピープル所収

2017-12-04 09:40:27 | 参考文献
 「ナナツコク」という架空の国の地図を、母親から娘へと代々語り継いでいると称する女性の話です。
 この短編集の中では一番出来が悪いです。
 致命的なのは、彼女が語るナナツコクに全く魅力がないことです。
 世の中に溢れている異世界ファンタジーからパクって来たような既視感があり、さらにそれらよりも陳腐な感じです。
 この連作短編集の作品にはもともと物語性はほとんどないのですから、作者が思いついたアイデアが陳腐だと作品の出来はこのように悲惨なものになるようです。

チェーン・ピープル
クリエーター情報なし
幻冬舎
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