冒険家の著者が、南極大陸単独横断を目指していた時に、その訓練の一環(犬橇技術の習得、アザラシなどの狩猟技術の習得、極地順化など)としてデンマーク領グリーンランドの北極圏にあるエスキモーの村に住み込んだ時(1972年から1973年にかけての一年間)の記録です。
生活習慣のまったく違うエスキモーの村に、なんとか溶け込もうとする著者の必死の努力が伝わってきて、著者の本の中ではもっとも共感して読むことができます。
食習慣(生肉(アザラシ、セイウチ、鯨など)を食べて、野菜はほとんど食べない)、男女関係(老若を問わないフリーセックス)、清潔感(風呂に入らない、一部屋しかない家の室内で大小便をするなど)、犬に対する考え方(そりを引かせる道具、使えなくなったら食料)などは、日本人とは大きなギャップがあって大変な苦労をしますが、彼らの見かけはほとんど当時の日本の田舎の人たち(著者も地方出身です)と変わらないこともあって、著者に白人には見せない親近感を抱いて、ほとんど全員がとても親切に彼を受け入れてくれ、読んでいる方も知らず知らずのうちに彼らに親近感を抱きます。
その後、著者の極地探検は、だんだん習熟度が上がって準備も大がかりになっていきますが、この当時の探検は手作り感満載で一番共感を覚えます(といっても、この時も命の危険に何度も直面しているのですが)。