戦前に活躍した巨人力士(全盛期は207センチ、203キロ)の出羽ヶ嶽について書いたノンフィクションです。
戦前の大相撲は、現代よりも興業的要素が強く、一種の見世物としての人気が抜群だった文ちゃん(本名は佐藤文次郎)が、周囲の人間にいいように利用されていたことを、彼に対する強い共感を持って描いています。
文ちゃんを相撲に導いたのは、青山脳病院を経営してた養父斉藤紀一で、彼は「日本一頭のよい男(歌人としても有名な斉藤茂吉)と日本一身体のでかい男を養子にした」と自慢していたそうです(茂吉の息子の北杜夫の「楡家の人々」より)。
本来は、頭がよく(青山学院中等部の首席)医者志望だった文ちゃんは、大人たちの思惑のために角界入りし、その後はあまりにも巨大な自分の身体に絶望しながら相撲取りを続けていたのです。
この作品のような、書く対象に深い愛着を持ち自分自身の体験(幼いころから日常的に文ちゃんを見ていたようです)をベースにして書く手法は、後に沢木耕太郎などによって確立された私ノンフィクションの先駆けだったと思われます。
児童文学の世界でも、こうした私ノンフィクションの手法はもっと取り入れられてもいいかもしれません。
戦前の大相撲は、現代よりも興業的要素が強く、一種の見世物としての人気が抜群だった文ちゃん(本名は佐藤文次郎)が、周囲の人間にいいように利用されていたことを、彼に対する強い共感を持って描いています。
文ちゃんを相撲に導いたのは、青山脳病院を経営してた養父斉藤紀一で、彼は「日本一頭のよい男(歌人としても有名な斉藤茂吉)と日本一身体のでかい男を養子にした」と自慢していたそうです(茂吉の息子の北杜夫の「楡家の人々」より)。
本来は、頭がよく(青山学院中等部の首席)医者志望だった文ちゃんは、大人たちの思惑のために角界入りし、その後はあまりにも巨大な自分の身体に絶望しながら相撲取りを続けていたのです。
この作品のような、書く対象に深い愛着を持ち自分自身の体験(幼いころから日常的に文ちゃんを見ていたようです)をベースにして書く手法は、後に沢木耕太郎などによって確立された私ノンフィクションの先駆けだったと思われます。
児童文学の世界でも、こうした私ノンフィクションの手法はもっと取り入れられてもいいかもしれません。
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