「郷土文学・作家と作品」の中に掲載された作家論です。
安藤の郷土と言えば、彼が誕生した1930年から京都大学を卒業する1954年までの24年間をすごした京都、高校教師をやりながら児童文学活動をしていた1972年までの北海道での18年間、そして、1990年に60歳で亡くなるまで日本女子大で教えながら児童文学活動をしていた東京での18年間に区分されます。
西田は、このうち北海道では「エトランジェ(異邦人)の目」を、そして京都では「土着の目」を、安藤は獲得したと述べています。
そして、前者の代表作として、「白いりす」、「ポイヤウンべ物語」などをあげ、後者(というよりは安藤の作家活動全体)の代表作として「でんでんむしの競馬」をあげています。
しかし、これは安藤に限ったことではなく、幼い頃を過ごした郷土において「土着の目」を養うことは、一般的なことでしょう。
それよりも、西田も指摘しているように、「でんでんむしの競馬」において「土着の目」と共に「子どもの目」を獲得したことが、安藤の児童文学活動の大きな転機になったように思えます。
また、安藤は、イタリアをはじめとした南欧文学や児童文学に限定されない「児童文化」全体の研究者でもあったわけで、西田がこの論文の最後で述べているように「巨視的な複眼」を備えた稀有な児童文学者だったのです。
この作家論は1982年(安藤が東京に移って10年目、亡くなる8年前)に書かれたのですが、その後に出版された安藤の作品、「風の十字路(その記事を参照してください)」や「七人めのいとこ」で、安藤の「巨視的な複眼」はより発揮されていったように思われます。
「土着の目」、「子どもの目」、「エトランジェの目」、「今も見る目」、「未来を見つめる目」などの「巨視的な複眼」は、生まれ故郷の京都でもなく、そこを捨て去るためにできるだけ遠くへ行ったといわれる北海道でもなく、その中間地である東京で完成されていったのは興味深いことです。
京都と北海道のどちらからも離れて、初めて客観的に自分の全体像を意識できるようになったのでしょう。
日本女子大に安藤が職を得たのはもしかすると偶然かもしれませんが、そういう場所で安藤が児童文学者として深化していったのは必然だったのでしょう。
「巨視的な複眼」を備えた稀有な児童文学者である安藤の60歳という現代では若すぎる死は、大げさに言えば「現代児童文学」の早い衰退につながったように思えてなりません。
安藤の郷土と言えば、彼が誕生した1930年から京都大学を卒業する1954年までの24年間をすごした京都、高校教師をやりながら児童文学活動をしていた1972年までの北海道での18年間、そして、1990年に60歳で亡くなるまで日本女子大で教えながら児童文学活動をしていた東京での18年間に区分されます。
西田は、このうち北海道では「エトランジェ(異邦人)の目」を、そして京都では「土着の目」を、安藤は獲得したと述べています。
そして、前者の代表作として、「白いりす」、「ポイヤウンべ物語」などをあげ、後者(というよりは安藤の作家活動全体)の代表作として「でんでんむしの競馬」をあげています。
しかし、これは安藤に限ったことではなく、幼い頃を過ごした郷土において「土着の目」を養うことは、一般的なことでしょう。
それよりも、西田も指摘しているように、「でんでんむしの競馬」において「土着の目」と共に「子どもの目」を獲得したことが、安藤の児童文学活動の大きな転機になったように思えます。
また、安藤は、イタリアをはじめとした南欧文学や児童文学に限定されない「児童文化」全体の研究者でもあったわけで、西田がこの論文の最後で述べているように「巨視的な複眼」を備えた稀有な児童文学者だったのです。
この作家論は1982年(安藤が東京に移って10年目、亡くなる8年前)に書かれたのですが、その後に出版された安藤の作品、「風の十字路(その記事を参照してください)」や「七人めのいとこ」で、安藤の「巨視的な複眼」はより発揮されていったように思われます。
「土着の目」、「子どもの目」、「エトランジェの目」、「今も見る目」、「未来を見つめる目」などの「巨視的な複眼」は、生まれ故郷の京都でもなく、そこを捨て去るためにできるだけ遠くへ行ったといわれる北海道でもなく、その中間地である東京で完成されていったのは興味深いことです。
京都と北海道のどちらからも離れて、初めて客観的に自分の全体像を意識できるようになったのでしょう。
日本女子大に安藤が職を得たのはもしかすると偶然かもしれませんが、そういう場所で安藤が児童文学者として深化していったのは必然だったのでしょう。
「巨視的な複眼」を備えた稀有な児童文学者である安藤の60歳という現代では若すぎる死は、大げさに言えば「現代児童文学」の早い衰退につながったように思えてなりません。
日本児童文学 2013年 04月号 [雑誌] | |
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