1985年に出版された同名のコラム集から、訳者が選んだ31編を翻訳して、1986年に出版されました。
その前年に「アメリカン・ビート」というコラム集が紹介されて、当時は日本でも作者のコラムは盛んに読まれていました(私の持っている本は1990年1月20日10刷です)。
無名の人から有名人(例えば、モハメド・アリやメリル・ストリープなど)までの人生のある面を鮮やかに切り取って、その中に1980年代のアメリカの姿を浮かび上がらせる作者の腕前はさすがのものがあります。
特に、この本では、1947年生まれの作者が30代の経験とフレッシュさが一番バランスの取れていた時期に書かれたものなので、数ある作者の本の中でも最も優れている作品の一つだと思われます。
個人的な好みもありますが、有名人や彼自身の知人を書いたものより、全く無関係の無名の人々を書いたコラム(例えば、55歳にして初めてアルファベットを習うところから書くことを学び始めた男を描いた「男の中の男」(その記事を参照してください)や寂しさを紛らわすために自殺した夫が残した飛行機の格安(国内線だったら1フライト4ドルから8ドル)パス(夫がユナイテッド航空の従業員だったため)を使って飛行機を乗り継いでいる女性を描いた「飛行機のなかの他人」や亡くなった母の思い出を語る娘を描いた「母と娘」など)に優れたものが多いと思います。