1973年公開のイタリア映画で、アカデミー賞外国語映画賞(監督のフェデリコ・フェリーニは史上最多の四度目の受賞です)を受賞しました。
フェリーニの作品の中ではもっとも児童文学の世界に近い作品で、子ども時代(中学生ぐらいか?)の想い出をもとに作られています。
海辺の田舎町を舞台に、綿毛の飛ぶ季節(春の訪れ)から翌年の綿毛が飛びはじまるまでの一年間が描かれています。
頑固な父親や口やかましいけれど優しい母親などとの家族生活(ファシストによる父の拷問や母の死なども描かれています)、権威主義的な教師や牧師たち、ファシズムのイタリア席巻などを風刺的に描いていますが、フェリーニならでは猥雑なシーン(あこがれの年上の美女、誰とでも寝る若い女、超グラマーなタバコ屋の女主人など)もふんだんに盛り込まれています。
こうしたある意味雑多な事象をフェリーニ独特のユーモアや皮肉をちりばめて描いていますが、それを圧倒的な映像美(冒頭とラストの綿毛の飛ぶシーン、春の訪れを告げる祭りの焚火、記録的な大雪によって一変した町の風景、雪の中を舞うクジャク、豪華なリゾートホテル、真夜中に沖を通るアメリカの豪華客船(町民総出で小舟に乗って迎えに行きます)、結婚式やパーティが行われる郊外の風景など)で、フェリーニ独特の世界が展開されます。
1973年4月、大学の入学オリエンテーション前に、京橋の国立フィルムセンターで行われたイタリア映画祭で、初めてフェリーニの「道」を見て以来、都内のあちこちにあった名画座でそれまでのフェリーニ作品を片っ端から観ていたのですが、この作品以降は封切り時にリアルタイムで見られるようになりました。
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