現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

きたやまようこ「いぬうえくんがやってきた」

2017-12-19 13:57:18 | 作品論
 1996年に初版が出たシリーズ絵本の「いぬうえくんとくまざわくん」の第一作です。
 主人公のくまのくまざわくんが、いぬのいぬうえくんと出会い、一緒に暮らすようになるまでを描いています。
 しっかりものでややずうずしいいぬうえくんと、のんびり屋でお人よしのくまざわくんの個性の違いがうまく描かれています。
 性格の違う二人の友情を描いた動物ファンタジーというと、小沢正の「のんびりこぶたとせかせかうさぎ」が思い出されますが、こちらの作品は物語のダイナミズムが欠けているように思われます。
 幼年向けであることを差し引いても、お話が日常的すぎて、やや教訓くさい感じがしました。
 幼少の読者自身よりも、母親や教師などの媒介者の方に、よりうける作品だと思われます。
 「いぬうえくんとくまざわくん」シリーズは、2012年にも第6作が出ているロングセラーですが、友情の大切さや他者の個性を認め合うなど、物語のおもしろさよりも教育的な素材として優れているようです。
 丁寧な文章やカチッとした絵、特に物語の理解を補助するためにサイドに描かれた絵と言葉など、物語絵本というよりは、どちらかというと教科書の補助教材なような趣があり、今まで紹介してきた絵本の持つ常識を覆すようなダイナミズムはありません。
 現代の管理された教育環境や家庭教育にはフィットしているのでしょうが、あまりお勧めできるものではないと思います。

いぬうえくんがやってきた (いぬうえくんとくまざわくん 1)
クリエーター情報なし
あかね書房

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