この作品は、1970年に西ドイツで出版され、日本語には1974年に翻訳され、発表当時大きな論争を巻き起こしました。
この作品には、世界中でいろいろな困難に直面している子どもたちが描かれています。
読んでいて楽しい物語ではありませんし、作品の中で問題も解決されていません。
この作品は、読者自身にこれらの問題の解決に対して行動を促すものなのです。
まえがきを以下に引用します。
「ここに書かれているのはほんとうの話である、だからあまり愉快ではない。これらの話は人問がいっしょに生きることのむずかしさについて語っている。南アメリ力のフワニータ、アフリカのシンタエフ、ドイツのマニ、コリナ、カルステンなど、多くの国の子どもたちがそのむずかしさを体験することになる。
ほんとうの話はめでたく終わるとは限らない。そういう話は人に多くの問いをかける。答えはめいめいが自分で出さなくてはならない。
これらの話が示している世界は、必ずしもよいとはいえないが、しかし変えることができる。」
この作品は、別の記事で紹介した「児童文学の魅力 いま読む100冊 海外編」にも選ばれています。
おそらくこの本を読めば、今の日本で出版されている多くの児童書が、いかに商業主義に毒されているかが実感できると思います。
また、ここで書かれていることは、海外のことで日本とは無縁であるとはけっして言えません。
現代の日本こそ、このような本を必要としているのです。
灰色の畑と緑の畑 (岩波少年文庫 (565)) | |
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