オペラ「白狐」全3幕・日本語版
【翻訳・台本・作曲・指揮】平井秀明
このところ、北海道に行っていない時は来月に迫ったこちらのオペラの稽古に励んでおります( ・∀・)
で、
早速ですが気になった方もいると思います。
『日本語版』
という表記。
原作は岡倉覚三となっておりますので、書いたのは日本人です・・・・皆さん、この人物ご存知ですか?
知らない?
では岡倉天心は?
と書くと、気がつく方もいらっしゃるかと思います。
岡倉覚三とは、岡倉天心の本名であり、岡倉天心といえば「茶の本」の著者です!
「茶の本 The book of tea」(原文英語)
日本の茶道を欧米に紹介する目的で、1906年(明治39年)、米国ボストン美術館で中国・日本美術部長を務めていた天心が、ニューヨークの出版社から刊行した。茶道を仏教(禅)、道教、華道との関わりから広く捉え、日本人の美意識や文化を解説している。
そう、この岡倉覚三氏は、明治の時代に英語で本を出版したほど英語が堪能な人物だったのです!
この「白狐」という作品が誕生した経緯ですが、ウィキペディアには以下のような情報がありました↓
『1913年(大正2年)、ボストンに歌劇場ができることを聞き、葛の葉を題材としたオペラ「白狐」を書き、アメリカでの支援者のひとりであるイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館のガードナー夫人に贈る。その作曲は親交のあったチャールズ・マーティン・レフラーに委ねられたが、作曲の筆が遅く、結局完成されなかった。』
ここで「葛の葉」という新しいキーワードが出てきましたね。
そうなんです、この「白狐」は、人形浄瑠璃や歌舞伎で有名な「蘆屋道満大内鑑」(通称:葛の葉)をオペラ化したものなのです!
そもそも「葛の葉」とは1000年を生きる伝説の狐とのこと。民間伝承から成り立ったお話ということで、調べていくと話のバリエーションが様々あります。
ということで、ここでは岡倉覚三のオペラ台本「白狐」に則した解説をしていきます(`・ω・´)ゞ
登場人物
コルハ・・・・白狐
保名・・・・・阿倍野の国守 ※読み方(やすな)
葛の葉・・・・保名の許婚
悪右衛門・・・葛の葉を恋する魔道の武士 ※読み方(あっけいもん)
合唱
葛の葉の従者(女声合唱)
狐の乙女たち・コルハの従者(女声合唱)
悪右衛門に仕える狩人、兵たち(男声合唱)
巡礼者たち・・・葛の葉の家臣(混声合唱)
コルハと保名の稚児(後の安倍晴明)
概要
【第一幕】
コルハ(白狐)が持つ宝玉の力によって、悪右衛門は保名を恋い慕う葛の葉を、我が物にしようと企んでいる。悪右衛門は配下の狩人らと共に、保名の領地である阿倍野の荒野にコルハを追い込む。そして狐に傷を負わせ宝玉を奪い、とどめを刺そうとしたとき保名が現れ、葛の葉の誕生日という恵みの日を冒涜する振舞いを禁じ、悪右衛門を追い払い、コルハに宝玉を取り戻してやる。
葛の葉の誕生日の祝宴のさなか、保名の城は炎に包まれ、悪右衛門とその大軍が突如乱入する。悪右衛門は保名に傷を負わせて圧倒し、葛の葉を自分の城へと連れ去る。
保名の手の中には葛の葉の袖だけが残る。
【第二幕】
森の中で、狐の乙女らが月光の下で踊りながら、女王コルハの目醒めを待っている。コルハは月に懇願し、葛の葉へ変身するための助力を仰ぐ。恩人保名を救う手立てがあるとすればそれだけであった。保名は今、悲嘆と負傷から気を狂わせ、未だに葛の葉の引き裂かれた袖をその手に掴んだまま彷徨している。森の中で葛の葉に変身したコルハを見た保名は、葛の葉を見つけたと信じ込み、導かれるまま深山の隠れ家へと赴く。一方その頃、悪右衛門とその従者達が森を徘徊し薬草を集めている。彼等はそれをもとに愛の媚薬をつくり、一向に心を開かない葛の葉に飲ませるつもりである。コルハは葛の葉の姿のまま森に戻り、狐の乙女らと一緒に彼らに身を任す振りを装う。悪右衛門とその従者たちは、色香と酒とで歓待を尽くされ、魅惑的な女たちを追いかけていく。だが、彼女たちの導く先は断崖であり、彼らはそこから湖水に転落してしまう。
【第三幕】
コルハ(葛の葉)は隠れ家で稚児に歌をうたってやっている。巡礼の一団が現れ、施しを乞うてくる。その悲哀の歌が琴線に触れたコルハは施しを与え、巡礼の事情を尋ねる。そして、彼らが葛の葉の家臣であり、今はお堂へ向かう途中だということを知る。そこは三十三番目の最後のお堂であり、彼らはそこで保名の帰還を神に祈っていた。観音の慈悲の望みも絶たれ、葛の葉は尼になる覚悟でお堂で待っていると。 彼らが行ってしまった後に保名が現れる。コルハは複雑な気持ちで保名と顔を合わせるが、保名はそれを理解できない。コルハは袖を引き裂き、これをお守りだと言ってお堂にいる少女へ渡して欲しい、と保名に頼む。コルハの物々しい言葉に驚いて、保名は気の進まぬながら、その慈悲深い思いを伝えるべく出掛けて行く。稚児へお祈りをしながら、コルハは宝玉をその子に与え、書き置きを残す準備を整える。 法力が剥がれ落ち、狐の姿を取り戻しはじめたコルハの手は狐の前脚に戻ってしまい、筆を口に咥えてようやく書き物をしたためる。狐の姿に戻ったコルハは、窓を跳び越え森の中へ入っていく。不可思議な恩人と過ごした隠れ家に葛の葉と共に戻って来ると、書き置きを見つける。保名は彼女がかつて助けてやった妖狐だと思い至り、ひざまずき祈る。一方、葛の葉は子供を腕に抱きかかえ、愛を求める泣き声に応える。
・・・
以上が、各幕の概要となります!
このオリジナル英語テキストを平井秀明さんが翻訳・台本・作曲・指揮と超人的な偉業を成し遂げ、物凄く美しい音楽に彩られております(´;ω;`)ブワッ
僕は平井秀明さんと共演するのはおろか、お会いするのも今回が初めてだったのですが、なんと平井さん・・・・
あの大作曲家、平井康三郎氏のお孫さんだとか・・・・
ウィキペディアにご一家のことが様々載っていますが、それを読んでると「遺伝ってホントにあるんだ~」ってアホみたいな顔になってしまいました(笑)
サラブレッドが過ぎるw
平井さんをサラブレッドとすると、音楽とは無縁の家庭で育った僕は差し詰め突然変異(笑)
こんな二人が出会ってしまえるのも音楽の素晴らしいところです( ・∀・)
演出の森山さんは、2017年の相模原シティオペラ「椿姫」で初めてお仕事させていただき、演劇界での手法を取り入れた役作り、人物像の構築方法はその後ずっと僕の中で生きていました。
今回が2年ぶりのお仕事となりますが、改めてその手腕に驚かされます。
先入観を捨て、物事を冷静に見る力。
それを教えてくださった方です( ・∀・)
稽古風景なども撮影出来れば、今後ご紹介したいと思います(`・ω・´)ゞ
天皇陛下御即位記念
オペラ「白狐」全3幕 日本語版
【翻訳・台本・作曲・指揮】
平井秀明
【演出】
森山太
【管弦楽】
白狐スペシャルオーケストラ
【キャスト】
國光ともこ:コルハ/葛の葉
芹澤佳通:保名
豊嶋祐壹:悪右衛門
佐藤友美:乙女/狐の妖精/巡礼の女
武藤正晃:狩人/巡礼の男
【会場】
妙高市文化ホール大ホール
2019年11月17日(日)
開場13時30分 開演14時00分
チケット(全席自由)
2000円(一般)
1000円(高校生以下)