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東野圭吾『人魚の眠る家』

2016-07-13 23:59:52 | 最近読んだ本
東野圭吾『人魚の眠る家』 

普通なら「人形」と書きそうですが、そこは東野圭吾さん、「人魚」ときましたね。

物語は、プールの事故で脳死状態になってしまった年長さんの女の子を中心とした、さまざまな立場の人間のことが書かれています。
お屋敷の奥で眠り続けるかわいらしい女の子。まるでお人形のようです。

でも週に1回は外に散歩に出ます。車椅子に乗って。
その姿を見た近所の男の子が、「足が悪くて歩けないの?」と聞きます。
車椅子を押していた母親が答えます。「世の中にはいろんな人がいる。足が悪いわけじゃないのに自由に散歩できない子どもとかね」

男の子は首をかしげています。足が悪くないのに車椅子だなんてどういうことなのだろう?
足は悪くない・・  そうか、人魚だから歩けないんだ。
女の子のことをそんなふうに考えていたのでした。



ネタバレになりますが・・
物語の後半に、その女の子の弟の誕生日パーティに集まった親族らの前で、女の子の母親が包丁を手に叫ぶシーンがあります。それも警察に「親族が刃物を持って家の中で暴れている。すぐに来て欲しい」と通報して、駆けつけた警察官の前でです。

親族たちは皆、女の子が脳死状態ということを理解しています。
母親は、脳死はイコール「死」なのか?この目の前にいる女の子は「死んでいる」のか?と問いかけます。
包丁を手に警察官にも問いかけます。
「今、私がこの子の胸に包丁を突き刺したなら、殺人になりますか?」

そう、女の子が「生きて」いたら母親は殺人犯となり、警察官はもちろん彼女を逮捕するでしょう。
でも「死んで」いるとしたら?



本を読んで泣いたのは、どれくらいぶりかなぁ。



またこの本の中では、臓器移植について海外と日本での取り扱いの違いなども改めて書かれていますが、「温かい体が存在している」状態で「死」というものを受け入れることができるのか?「脳の機能イコール人間の生」なのか?海外と日本での死生観の違いが考えさせられると思いました。



人魚の眠る家
東野 圭吾
幻冬舎



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