本屋大賞にノミネートされた、伊坂さんの「ゴールデンスランバー」が図書館で人気があって借りられな~いと前回の記事に書いたとたんに、図書館から「準備できました」と連絡が来ました・・・うん、噂してみるもんだね。
★図書館で借りた本
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
恩田陸 「いのちのパレート」
恒川光太郎 「秋の牢獄」
今野 敏 「とせい」
古処誠二 「UNKNOWN」「未完成」
伊坂さんと恩田さんと恒川さんの三冊は、長男が予約した本なので、彼に優先権があるのです。でも我慢出来なくて、伊坂さんの「ゴールデンスランバー」は読んじゃった(笑)
「魔王」で書かれた管理社会の恐さや、政治を影で動かすモノたちの恐さ、「砂漠」で書かれた学生時代を共にした仲間との、かけがえのない友情を土台に、どんどん日常が理不尽に奪われていく恐さ、それでも壊せないモノたちを書いたお話でした。面白くて時間を忘れて読んでしまった為に、夕飯の支度が遅れました(汗)やばかった~、久々に焦りましたよ。
「仙台」という街の大きさや、政治的立ち居地や立地条件を、実に巧みに使って書かれているので、まず主人公が走って逃げる道路の距離感に無理が無いし、古い木造アパートや花火工場の話や、白衣を着ていれば怪しまれずに居られる大学病院周辺や、親友のお墓の場所など、もうすっごくリアルでした。これが大阪や名古屋だったら街が大きすぎてダメだし、古さと新しさがごっちゃになって成り立っている「地方の街」の感じが、主人公が「なんとか逃げられそう」というリアルを持たせているんだと思います。”敵”も大きいんですが、首都じゃないから死者を出すような無茶もするし、穴もあるんですよ。上手いなぁと読んでいて何度も思わされました。
主人公が決して一人で生きて来た訳じゃない事、人と人の繋がりの細いけど切れない強さが、いつもの伊坂さんの作品同様、静かにでも熱く語られて、清々しさを感じる読み終わりでした。
あ~、本屋大賞は・・・桜庭さん圧勝説がぐらぐらして来ましたよ(笑)
今野さんのお話は、ネットでの書評を読んで面白そうと思い借りたのですが、すらすら読めて肩のこらないお話で、二時間ドラマの原作になりそうでした。どのキャラも憎みきれないところが、五十嵐貴久さんの味わいと似てるなぁと思いました。
古処(コドコロ)さんは、先日の直木賞候補になられた作家さんです。一度も読んだ事の無い作家さんだったので読もうと思い図書館で探したら、デビュー作でメフィスト賞受賞作の「UNKNOWN」と、同じキャラが活躍する「未完成」しかありませんでした。みんな同じ事考えてるな(笑)読後の印象は「有川浩さんの作品から、お笑いや恋愛を一切抜いた硬派な自衛隊小説」です。探偵役の朝香さんが、クリスティの名探偵ポワロの様に、酸いも甘いも噛み締めた上で人間を観察するキャラなので、相棒の野上さんがまんまヘイスティングに見えました。
「七月七日」「遮断」「敵影」と、毎年のように直木賞候補に作品が挙がるのに、受賞されてないんですねぇ。まぁ他にもそんな境遇の作家さんは沢山おられますが。今回の「敵影」を、選考委員の北方謙三さんは「収容所の題材にこだわりすぎて小説的評価が不足していた」と仰っていました、う~ん。「戦争」を題材にしてずっとお話を書き続けておいでなので(「少年たちの密室」は別ジャンルです)ジャンルで工夫する気が無いなら、文学的精進しかないのかなぁ?どうも、賞とかどうでも良くて自分の語りたい事を書くタイプの様に思える作家さんです。
文学賞メッタ斬り!第138回芥川賞&直木賞 http://web.parco-city.com/literaryawards/138/
毎度お馴染みお楽しみな「文学賞メッタ斬り!第138回芥川賞&直木賞」の書評でも、やはりそのへんの事がネックのように書いてありました。古処さん以外の作品の評価も大変興味深いし面白いので、是非お時間があったらご覧下さい。