今後の地方経済はどうなっていくか、というのは、非常に暗い見通しであるようです。平ちゃんが「内閣府は地方財政のマクロ分析をやっとけよ」という要望を出していましたが、これに応えたのは何故か経済産業省でした(笑)。経済分析は「任せてくれ」ということでしょうか。それはいいんですけれども、無策で過ぎてしまう場合には、大都市圏だけが成長可能であるということですね。似たような地域経済に関する分析では、東京圏と中京圏のみが発展地域となり、他はダメみたいですね。
まあ、「首都圏」と「トヨタ圏」(笑)のみが生き延びて経済成長が可能、ということですな。以前に言ってたようなこと(国と地方の大断層1)が本当に現実に起こりえる、ということです。
Yahoo!ニュース - 共同通信 - 地方の9割が経済規模縮小 2030年、人口減が影響
この記事には『報告書は、2000年と比べると、30年に「東京都市雇用圏」(横浜、千葉などを含む)以外は人口が減少すると推計。域内総生産は東京都市圏が10・7%増、政令指定都市圏は6・9%増とみる。半面、それ以外の都市圏は軒並み減少し、人口10万人未満の都市圏は15・1%も縮小するなど落ち込みが目立つ。』と述べられている。経済産業省のHPにはネタ元の報告が出てますから、興味ある方は、読んでみるといいかもしれません。
で、もう一つ別な記事を。
Yahoo!ニュース - 共同通信 - 成長は東京、中京圏が軸 構造改革で人口移動加速
この記事中では、『日本の実質国内総生産(GDP)成長率は2015年度に向けて3%台前半が期待できるものの、地域間の人口移動が進むことで東京圏(東京都と神奈川、千葉、埼玉の各県)や中京圏(愛知、静岡、岐阜、三重の各県)を中心とした経済成長になるとの見通しを野村証券金融経済研究所が5日、まとめた。』と2つの地域の優位性が述べられていました。
都市機能というのは不思議なんですが、かつての栄華がその後も継続する訳ではないんですね。デトロイトはそれなりに栄えましたが、自動車産業が衰退していけば斜陽も訪れる、ということです。昔、門司や小樽は賑わいましたが、それも長くは続きませんでした。町とは、そういうものだろうと思います。でも、京や大坂というのは、それなりに長い歴史の中でも活性地域となっていますから、中心的な都市としての機能を維持することもある程度は可能なのでしょう。トヨタのお膝元である城下町も当面は安泰ですね、ということですか。どちらの予想でも東京圏は大丈夫、ということで、長い歴史の中で発展を維持してきた蓄積が大きいのかもしれない。
今後、更に地方との格差が開いていくだろうね。果たして地方には生き残り戦術というのが本当にあるのだろうか?
またしても、変なモデルを考えてみたいと思います(ウソかもしれないので要注意です)。
今、ある経済地域が3つあって、それぞれ甲・乙・丙とします。人口は全部同じで110人としますね。非常に強引ですが、これらの経済地域の産業は2つしか存在しないことにします。その産業とは、農業と自動車産業としましょう。農業は1人の人が生産する生産量を1単位(売上金額と同じような意味とします)、自動車の方は付加価値が高いので1人の人が5単位生産できるとします。そうすると、農業5人分で自動車1人分と同じ生産価値ですので、自動車の方は農業の5倍稼げるということになります。甲の農業従事者は100人、自動車10人とします。同じように乙はそれぞれ50人と60人、丙は10人と100人とします。すると、甲は生産量が農業で100単位、自動車で50単位の合計150単位の生産量(売上)です。得られるお金もこの生産量に見合うお金が手に入れられます。1人平均では1.36です。同様に乙では農業50単位、自動車300単位、合計350単位の生産量で、1人平均は3.18です。丙は、農業10単位、自動車500単位、合計510単位で、1人平均では4.64です。これら生産物は、ある共通のマーケットに同じように売り、どこかで消費されるとします。3地域内の産業は全て競合的で、生産量合計(農業160単位、自動車850単位)は一定に供給されるとします。
これら3地域で売上に比例した報酬を想定すると、丙の地域が一番リッチな気がします。一人当たり生産量というか売上の価値の高い仕事に多く従事した方が、地域全体では有利ですね。1人平均では、丙の地域が甲よりも3倍以上多いですからね。ここで、自動車産業の厳しい競争があって、生産性向上とか仕事の奪い合いとなるとしたらどうなるか考えてみたいと思います。生産性向上によって、丙の地域は一人当たり生産量が20%増量(従来の5単位から6単位へ)となりました。この影響はどうなるのか、というと、仮に甲・乙地域の競争力が弱くて丙に全敗した場合、丙では農業従事者10人も自動車に移った方が得ですね。なので、丙地域では110人全員が自動車産業に従事します(労働生産性の高い仕事にシフトする、と。ナントカ委員会の委員が言ってた通りにしてみるってこと)。すると丙での生産量は一人当たり6単位生産できますから、合計は660単位となります。前は510単位だったので、大幅成長を遂げましたね。一人平均も6.0となって収入もアップでしょうね、きっと。
そうなると、3地域合計の生産量は自動車産業が850単位でしたから、甲・乙地域の分を減らさざるを得ません。残り190単位を巡って競争となりますが、仮に甲地域が農業に特化したとすれば自動車産業はゼロとなり、丙地域の農業減少分(10単位)を補うことが出来ます。つまり、甲地域は農業従事者110人となり、合計生産量も110に減少(自動車産業があった頃は150単位)します。しかし、全員農業を行うことが出来ますね。では、乙地域はどうでしょうか。農業生産量は3地域合計で160単位でしたので、甲地域が110単位生産分を除いた残りは以前と同様に50単位(50人従事)です。自動車産業は190単位生産量を受け持つので、38人の従事で間に合います。よって、残り(110-(50+38))の22人は仕事が無くなってしまいます。乙地域の合計生産量は以前の350単位から240単位に大幅減少し、仕事に従事出来ない人も22人登場するということになります。勿論、農業分野での甲乙地域の競争力が問題となるでしょうが、両方合計で22人余ることには変わりないでしょう(その人数比率は判りませんが、甲乙で分配ということになるでしょう)。丙地域での自動車産業の競争力・生産力アップによって仕事を奪われることで、もしも競合地域内の合計供給量が一定であるならば、敗北地域が必ず生まれてしまう、ということですね。当然のことながら、消費される量が生産量の増加分と同じだけ必ず増大していけば、減少する地域はないはずですが、そんなことは現実には難しいように思います。
これに類する事態はトヨタとGMの関係にも見られます。世界的な自動車メーカーは「600万台クラブ」に生き残り戦略を賭けて、あちこちで合併・統合とか資本提携などが行われましたが、トヨタが800万台クラブ入りとなったのに対して、GMショックの如く危機的状況となる訳ですね。北米地域の新車販売台数が例年とさほど違いがない時、トヨタがより多く売れば、どこかがその分を減らすことになってしまうのですね。競争力が弱ければ、丙に自動車産業の多くの部分を奪われる、ということと似てます。その時に、代替的な仕事が存在していれば大きな問題はないかもしれませんが、実際にはかなり失業してしまうんじゃないでしょうか。甲乙丙のような仮定そのものが大きな誤りを含んでいるのかもしれませんが、何となく思い浮かぶ印象で言うとこんな感じになってしまうのではないか、と思いますね。
地方の問題でも、これと似たようなことはないでしょうか?大都市と地方の関係はどうですか?他の地域の分担していた生産量が奪われていないでしょうか?他地域に仕事を奪われなくとも、生産性向上によって仕事を失う人々も出てくるかもしれませんし(例えば、小売の店員配置を従来の半分に減らした店舗とか)。これを避けるには、単純な競合的関係とならないような(競争力に自信があれば当然競合して他地域を蹂躙します)、別な生産物を必要とします。これが何なのか、というのは判りませんが、観光とか環境ビジネスとか、そういう別な何かですかね。
地方の産業、主に農業とか漁業は安い海外との競争に多くの仕事を奪われてしまいました。いい例を思いつかないですが、ブラジルから鶏肉、オーストラリアから羊肉、中国からマツタケ、モロッコからタコ、チリやノルウェーからサーモン、インドネシアからエビ、という具合で、安い海外品が入ってくるので、国内消費量がドーンと増える訳でもないと思いますから、国内農家や漁師は苦境に陥るのだろうな、と。昔は町はずれにあったステレオのスピーカー部品工場も、東南アジアとか中国にどんどん出て行ってしまったかも。そもそもステレオスピーカーの国内需要自体が大幅に減少してしまったかもしれない。地方に存在して雇用を生んでいたものが、海外の競合地域に奪われていったかもしれない。
こういったものに替わって、何があるのか?ですね。経産省の報告にもあったように、ブロック圏内での循環を形成できるようにしなければならないでしょう。これがうまく回転するような仕組みが出来上がれば、地方といっても自立的な環境を整えられる可能性があります。
いっそ、甲地域のように全体として低い生産量でも良く、それに見合った生活をしていれば問題ないかもしれません。ですが、多くの人達がそういう状況を望んでいるとも思えないのですね。現状でも、「地方に予算をつけてくれ」ってことになっていて、この期に及んでも「道路を作れ」とかって言う訳ですね。誰もタダで作ってくれやしないのに、です。
人口規模だけで経済成長が決まるとも言えないですね。アイルランドは昔は失業が多くて、貧乏で、イギリスに出稼ぎに行くしかないような状況だったろうけど、今は随分と発展して生産性向上は著しいですね。炭鉱労働者達のような酷い時代もあったけど、IRAの過激な活動も下火になったというのも、経済的に満たされない環境が改善された、ということがあったかもしれない。そういう時代を潜り抜けてきて、成長軌道に乗れば、例え大都会ではなくとも成功できるんですね。人口は約400万人弱ですから、静岡県よりもちょっと多いくらいですね。国民一人当たりGDPは、Wikiによれば29800ドルだそうです(日本は29400ドル)。
教育問題で取り上げたフィンランドですが、こちらは人口が約520万人と福岡と兵庫県の中間くらいです。巨人ノキアの恩恵ということもあるのでしょうが、ここもうまく運営していると思いますね。国民一人当たり29000ドルと日本とほぼ同じです。人口密度は16人と日本の20分の1くらいです。国民一人当たりではルクセンブルクが世界第1位ですが、佐賀県くらいの広さに40数万人が暮らしているんですって(佐賀県はその倍くらいの人口)。まあ、大金持ちが相対的に多く住んでいれば、きっと平均も高くなるんだろうけど、58900ドルはダントツだね。
またアイスランドは人口がたった30万人くらいで、漁業中心の経済だそうです。雇用の8%を漁業で賄っているんだそうです。でも、うまくやればちゃんと出来るってことだろうと思いますね。一人当たりGDPは30900ドルだそうです。サイズが小さいことが有利に働いているのか、不便な遠く離れた離島だからいいのか(人の移動などが制限されやすいかな?と)、ちょっとよく判りませんけれども、人口が30万人くらいで漁業従事人口が一割弱、という地域は日本にも結構あるだろうと思いますね。
「規模が小さいからうまく行くんだよ」ということならば、そういうサイズに区切って、その中で似たようなモデルを形成していくとか、同じくらいの大きさの循環ブロックを形成出来れば、地方であっても成長を遂げることも可能なのだろうと思います。そういうモデルを日本全国の各ブロックで探すしかないと思いますね。日本でうまく行かない理由というのは、何だろう?純粋に、疑問に思えてくる。ベネルクスも、アイスランド、アイルランド、ノルウェー、デンマーク、スイス、などといった国は、大体小さくて効率的に運営されているということなんだろうと思いますね。国民一人当たりGDPが日本より上位の国々には、そうしたヒントがたくさん隠されていると思いますね。
今後はそういった小国の成功をよく研究して頂き、行政に生かしてもらいたいと思いますね。それが経産省の報告にあったような、多くの地方が陥る「ダメな、悪い未来」ということからの回避なんだろうな、と思います。
まあ、「首都圏」と「トヨタ圏」(笑)のみが生き延びて経済成長が可能、ということですな。以前に言ってたようなこと(国と地方の大断層1)が本当に現実に起こりえる、ということです。
Yahoo!ニュース - 共同通信 - 地方の9割が経済規模縮小 2030年、人口減が影響
この記事には『報告書は、2000年と比べると、30年に「東京都市雇用圏」(横浜、千葉などを含む)以外は人口が減少すると推計。域内総生産は東京都市圏が10・7%増、政令指定都市圏は6・9%増とみる。半面、それ以外の都市圏は軒並み減少し、人口10万人未満の都市圏は15・1%も縮小するなど落ち込みが目立つ。』と述べられている。経済産業省のHPにはネタ元の報告が出てますから、興味ある方は、読んでみるといいかもしれません。
で、もう一つ別な記事を。
Yahoo!ニュース - 共同通信 - 成長は東京、中京圏が軸 構造改革で人口移動加速
この記事中では、『日本の実質国内総生産(GDP)成長率は2015年度に向けて3%台前半が期待できるものの、地域間の人口移動が進むことで東京圏(東京都と神奈川、千葉、埼玉の各県)や中京圏(愛知、静岡、岐阜、三重の各県)を中心とした経済成長になるとの見通しを野村証券金融経済研究所が5日、まとめた。』と2つの地域の優位性が述べられていました。
都市機能というのは不思議なんですが、かつての栄華がその後も継続する訳ではないんですね。デトロイトはそれなりに栄えましたが、自動車産業が衰退していけば斜陽も訪れる、ということです。昔、門司や小樽は賑わいましたが、それも長くは続きませんでした。町とは、そういうものだろうと思います。でも、京や大坂というのは、それなりに長い歴史の中でも活性地域となっていますから、中心的な都市としての機能を維持することもある程度は可能なのでしょう。トヨタのお膝元である城下町も当面は安泰ですね、ということですか。どちらの予想でも東京圏は大丈夫、ということで、長い歴史の中で発展を維持してきた蓄積が大きいのかもしれない。
今後、更に地方との格差が開いていくだろうね。果たして地方には生き残り戦術というのが本当にあるのだろうか?
またしても、変なモデルを考えてみたいと思います(ウソかもしれないので要注意です)。
今、ある経済地域が3つあって、それぞれ甲・乙・丙とします。人口は全部同じで110人としますね。非常に強引ですが、これらの経済地域の産業は2つしか存在しないことにします。その産業とは、農業と自動車産業としましょう。農業は1人の人が生産する生産量を1単位(売上金額と同じような意味とします)、自動車の方は付加価値が高いので1人の人が5単位生産できるとします。そうすると、農業5人分で自動車1人分と同じ生産価値ですので、自動車の方は農業の5倍稼げるということになります。甲の農業従事者は100人、自動車10人とします。同じように乙はそれぞれ50人と60人、丙は10人と100人とします。すると、甲は生産量が農業で100単位、自動車で50単位の合計150単位の生産量(売上)です。得られるお金もこの生産量に見合うお金が手に入れられます。1人平均では1.36です。同様に乙では農業50単位、自動車300単位、合計350単位の生産量で、1人平均は3.18です。丙は、農業10単位、自動車500単位、合計510単位で、1人平均では4.64です。これら生産物は、ある共通のマーケットに同じように売り、どこかで消費されるとします。3地域内の産業は全て競合的で、生産量合計(農業160単位、自動車850単位)は一定に供給されるとします。
これら3地域で売上に比例した報酬を想定すると、丙の地域が一番リッチな気がします。一人当たり生産量というか売上の価値の高い仕事に多く従事した方が、地域全体では有利ですね。1人平均では、丙の地域が甲よりも3倍以上多いですからね。ここで、自動車産業の厳しい競争があって、生産性向上とか仕事の奪い合いとなるとしたらどうなるか考えてみたいと思います。生産性向上によって、丙の地域は一人当たり生産量が20%増量(従来の5単位から6単位へ)となりました。この影響はどうなるのか、というと、仮に甲・乙地域の競争力が弱くて丙に全敗した場合、丙では農業従事者10人も自動車に移った方が得ですね。なので、丙地域では110人全員が自動車産業に従事します(労働生産性の高い仕事にシフトする、と。ナントカ委員会の委員が言ってた通りにしてみるってこと)。すると丙での生産量は一人当たり6単位生産できますから、合計は660単位となります。前は510単位だったので、大幅成長を遂げましたね。一人平均も6.0となって収入もアップでしょうね、きっと。
そうなると、3地域合計の生産量は自動車産業が850単位でしたから、甲・乙地域の分を減らさざるを得ません。残り190単位を巡って競争となりますが、仮に甲地域が農業に特化したとすれば自動車産業はゼロとなり、丙地域の農業減少分(10単位)を補うことが出来ます。つまり、甲地域は農業従事者110人となり、合計生産量も110に減少(自動車産業があった頃は150単位)します。しかし、全員農業を行うことが出来ますね。では、乙地域はどうでしょうか。農業生産量は3地域合計で160単位でしたので、甲地域が110単位生産分を除いた残りは以前と同様に50単位(50人従事)です。自動車産業は190単位生産量を受け持つので、38人の従事で間に合います。よって、残り(110-(50+38))の22人は仕事が無くなってしまいます。乙地域の合計生産量は以前の350単位から240単位に大幅減少し、仕事に従事出来ない人も22人登場するということになります。勿論、農業分野での甲乙地域の競争力が問題となるでしょうが、両方合計で22人余ることには変わりないでしょう(その人数比率は判りませんが、甲乙で分配ということになるでしょう)。丙地域での自動車産業の競争力・生産力アップによって仕事を奪われることで、もしも競合地域内の合計供給量が一定であるならば、敗北地域が必ず生まれてしまう、ということですね。当然のことながら、消費される量が生産量の増加分と同じだけ必ず増大していけば、減少する地域はないはずですが、そんなことは現実には難しいように思います。
これに類する事態はトヨタとGMの関係にも見られます。世界的な自動車メーカーは「600万台クラブ」に生き残り戦略を賭けて、あちこちで合併・統合とか資本提携などが行われましたが、トヨタが800万台クラブ入りとなったのに対して、GMショックの如く危機的状況となる訳ですね。北米地域の新車販売台数が例年とさほど違いがない時、トヨタがより多く売れば、どこかがその分を減らすことになってしまうのですね。競争力が弱ければ、丙に自動車産業の多くの部分を奪われる、ということと似てます。その時に、代替的な仕事が存在していれば大きな問題はないかもしれませんが、実際にはかなり失業してしまうんじゃないでしょうか。甲乙丙のような仮定そのものが大きな誤りを含んでいるのかもしれませんが、何となく思い浮かぶ印象で言うとこんな感じになってしまうのではないか、と思いますね。
地方の問題でも、これと似たようなことはないでしょうか?大都市と地方の関係はどうですか?他の地域の分担していた生産量が奪われていないでしょうか?他地域に仕事を奪われなくとも、生産性向上によって仕事を失う人々も出てくるかもしれませんし(例えば、小売の店員配置を従来の半分に減らした店舗とか)。これを避けるには、単純な競合的関係とならないような(競争力に自信があれば当然競合して他地域を蹂躙します)、別な生産物を必要とします。これが何なのか、というのは判りませんが、観光とか環境ビジネスとか、そういう別な何かですかね。
地方の産業、主に農業とか漁業は安い海外との競争に多くの仕事を奪われてしまいました。いい例を思いつかないですが、ブラジルから鶏肉、オーストラリアから羊肉、中国からマツタケ、モロッコからタコ、チリやノルウェーからサーモン、インドネシアからエビ、という具合で、安い海外品が入ってくるので、国内消費量がドーンと増える訳でもないと思いますから、国内農家や漁師は苦境に陥るのだろうな、と。昔は町はずれにあったステレオのスピーカー部品工場も、東南アジアとか中国にどんどん出て行ってしまったかも。そもそもステレオスピーカーの国内需要自体が大幅に減少してしまったかもしれない。地方に存在して雇用を生んでいたものが、海外の競合地域に奪われていったかもしれない。
こういったものに替わって、何があるのか?ですね。経産省の報告にもあったように、ブロック圏内での循環を形成できるようにしなければならないでしょう。これがうまく回転するような仕組みが出来上がれば、地方といっても自立的な環境を整えられる可能性があります。
いっそ、甲地域のように全体として低い生産量でも良く、それに見合った生活をしていれば問題ないかもしれません。ですが、多くの人達がそういう状況を望んでいるとも思えないのですね。現状でも、「地方に予算をつけてくれ」ってことになっていて、この期に及んでも「道路を作れ」とかって言う訳ですね。誰もタダで作ってくれやしないのに、です。
人口規模だけで経済成長が決まるとも言えないですね。アイルランドは昔は失業が多くて、貧乏で、イギリスに出稼ぎに行くしかないような状況だったろうけど、今は随分と発展して生産性向上は著しいですね。炭鉱労働者達のような酷い時代もあったけど、IRAの過激な活動も下火になったというのも、経済的に満たされない環境が改善された、ということがあったかもしれない。そういう時代を潜り抜けてきて、成長軌道に乗れば、例え大都会ではなくとも成功できるんですね。人口は約400万人弱ですから、静岡県よりもちょっと多いくらいですね。国民一人当たりGDPは、Wikiによれば29800ドルだそうです(日本は29400ドル)。
教育問題で取り上げたフィンランドですが、こちらは人口が約520万人と福岡と兵庫県の中間くらいです。巨人ノキアの恩恵ということもあるのでしょうが、ここもうまく運営していると思いますね。国民一人当たり29000ドルと日本とほぼ同じです。人口密度は16人と日本の20分の1くらいです。国民一人当たりではルクセンブルクが世界第1位ですが、佐賀県くらいの広さに40数万人が暮らしているんですって(佐賀県はその倍くらいの人口)。まあ、大金持ちが相対的に多く住んでいれば、きっと平均も高くなるんだろうけど、58900ドルはダントツだね。
またアイスランドは人口がたった30万人くらいで、漁業中心の経済だそうです。雇用の8%を漁業で賄っているんだそうです。でも、うまくやればちゃんと出来るってことだろうと思いますね。一人当たりGDPは30900ドルだそうです。サイズが小さいことが有利に働いているのか、不便な遠く離れた離島だからいいのか(人の移動などが制限されやすいかな?と)、ちょっとよく判りませんけれども、人口が30万人くらいで漁業従事人口が一割弱、という地域は日本にも結構あるだろうと思いますね。
「規模が小さいからうまく行くんだよ」ということならば、そういうサイズに区切って、その中で似たようなモデルを形成していくとか、同じくらいの大きさの循環ブロックを形成出来れば、地方であっても成長を遂げることも可能なのだろうと思います。そういうモデルを日本全国の各ブロックで探すしかないと思いますね。日本でうまく行かない理由というのは、何だろう?純粋に、疑問に思えてくる。ベネルクスも、アイスランド、アイルランド、ノルウェー、デンマーク、スイス、などといった国は、大体小さくて効率的に運営されているということなんだろうと思いますね。国民一人当たりGDPが日本より上位の国々には、そうしたヒントがたくさん隠されていると思いますね。
今後はそういった小国の成功をよく研究して頂き、行政に生かしてもらいたいと思いますね。それが経産省の報告にあったような、多くの地方が陥る「ダメな、悪い未来」ということからの回避なんだろうな、と思います。