シリーズにするつもりはなかったのですが、今度はこちら。
コメントから学ぶ
みーみーさんのコメントは含蓄があります。軍事的に無知、という指摘は、まあそうだろうと思いますが、「常識的」に考えて判ることもあるのではないかな、と思います。コメントを再掲してみます。
『ミサイル艇の建造費用(90億円)、維持費、母港の整備、ミサイルや砲弾の費用。明らかにクラスター爆弾の所持と維持よりも金がかかりますす。アパッチなんてミサイル艇以上の値段ですし。』
『航空機が常に敵の上で旋回できるとでも?中国と日本なんて目と鼻の先。撃墜されなくても、攻撃して帰還して攻撃して、なんてやっている内にすぐに上陸されますが。』
何故それほどまでMLRSでクラスター攻撃したいのか、よく判りませんね。因みに、F2のクラスター攻撃があるだろ、と言ってたのは専門知識を有する側の人たちですけど(笑)。
すぐに上陸って、そう簡単ではないと思いますよ。それに、「すぐ上陸」だったら、MLRSのクラスター攻撃する暇もなく上陸されちゃってるんじゃないですかね。船は数百kmの距離を一気に飛んできたりはできんのですから、本土に着くまでには時間がかかりますよ。
中国が攻めてくる、ということにしたいのであれば、それで想定してみましょうか。
中国が隠密に日本侵攻を企み、済洲島近辺に既に上陸部隊や水上艦艇などを展開しているとしますか。駆逐艦21隻、フリゲート等20隻、潜水艦50隻が主力で、他は揚陸艦と輸送艦。米軍はたまたまヨソの紛争等で全部出払っていて、日本には空海軍全部がいないものとします。地上戦力もゼロです。日本の支援に到着するのにも、数ヶ月後にならないと来れないとしましょう。日本は独力で戦わねばなりません。
航空機の攻撃は距離的に問題があるということで、事前に本土の攻撃はしてこないとします。日本の海空戦力は全て温存されているとしましょう(それが彼らの言い分だったみたいですから)。中国は突如日本に宣戦布告し、九州を目指してやってきている、と。中国潜水艦部隊は事前に周辺海域に潜んでいて、艦隊よりも先に来ているものとします。九州までの距離は約200km、水上艦艇が日本近海に到達するのに、4時間程度とします。
さて、日本は急な宣戦布告を受けたので、九州近辺に到達できる護衛艦や潜水艦は限られている、と。仮に、九州北部に3隻、南部側に3隻、潜水艦は到達時間が更にかかってしまうので、2隻程度しか対応できないもとのします。遠くの基地にいる護衛艦や、外洋に出ている護衛艦は直ぐにはやってこれないですからね。この戦力で敵艦隊を迎え撃つ、という悪条件となってしまいます。陸上戦力も、4時間程度で配備につき、敵部隊を迎え撃つ準備をしなければなりません。自走砲やMLRS等がそれほど短時間に九州の各地域に展開できるのか、疑問ではありますな。少数だけならば可能なのかもしれませんが。
ここで、上陸側の事情を考えてみることにします。
揚陸艦はどこでも上陸作戦を行えるとしても、他の輸送艦はそうはいきませんね。港に入港しなければならない。中国軍の揚陸艦の正確な数は知りませんが、とりあえず1隻当たり兵員300人+戦闘車両5両であるとして、揚陸艦が50隻で兵員15000人、車両250両となります。実際に上陸することを考えると、港付近だろうとそれ以外の海岸であろうと、一箇所に50隻もの揚陸艦が固まっているならば、大渋滞となってしまいます。それに、海水浴などでの混雑を思い浮かべていただけるといいのですが、浜辺に人が15000人と戦闘車両250両が並べられた場合、それは超過密状態となってしまいます。日本の海岸は、そんなに平地部分は多くはないですからね。
また、輸送艦にしても、1隻当たり兵員400人+車両や物資等を運べるとして、日本侵攻作戦に10万人規模の兵員を投入することを考えると、先の揚陸艦50隻以外に輸送艦で85000人を運ぶことになり、220隻程度必要となるのです。この船から順次兵員や車両・物資等を降ろす作業に、一体何日くらいかかると思いますか?一箇所の港で頑張ってやっても、数日はかかるでしょう。順番を待つ輸送艦の大行列となってしまう、ということです。そんな作戦を立ててくるでしょうか?日にちが経てば経つほど、日本の護衛艦などが海域に到着する数は多くなるであろうことは十分予想でき、そうなれば海上での激しい戦闘が考えられるでしょう。ですので、先鋒の揚陸艦部隊は数箇所から一気に上陸せねばならないし、港のある地域を数箇所確保せねばならないでしょう。
さて、中国艦隊は前方には潜水艦部隊が待ちうけ、海岸から数百~数十kmの海域に迫っています。
日本の潜水艦は数が少なすぎ、敵潜水艦を少しなら撃沈できるかもしれませんが、1隻で数隻の敵潜水艦を相手にせねばならず、撃沈されるか息を潜めて目立った戦果を挙げずにいるか、くらいかもしれません。護衛艦も合計6隻と少ないので、あまり沿岸からは離れると敵水上部隊の圧倒的な数の攻撃に晒される可能性があるので、あまり遠くに行くことはしないでしょう。潜水艦からの攻撃にも備えなければなりませんし。なので、海岸線の防衛に賭けた方がいいと思います。主として対艦ミサイルの射程に入ってくる敵艦への攻撃に専念します。
地上では、地対艦ミサイル攻撃をスタンバイ、護衛艦や航空戦力を守る為に長射程の対空ミサイルが必ず必要です。それぞれ、相手の攻撃手段(例えば、航空機発射の空対艦ミサイル、水上艦艇発射の艦対艦ミサイル及び艦対空ミサイル)の射程がどのくらいか、ということが重要になるでしょう。敵艦の対空ミサイル射程が20km程度で、日本側の対艦ミサイルが50kmであれば、F2やP-3Cからのミサイル攻撃は十分有効となります(現に100km超の射程の対艦ミサイルがあります)。その時に、敵航空戦力がこれら航空機を攻撃できるような位置にあれば、マズい状況となります。なので、地上や護衛艦からの対空ミサイルでの援護が必要ということになります。
中国軍の潜水艦部隊の多くは、早い段階で沈めることは難しいでしょう。けれども、護衛艦が潜水艦の攻撃から生き残ることができるのであれば、潜水艦自体には地上攻撃能力はない(巡航ミサイルでも発射するなら別ですが)ので、上陸作戦への影響度は小さいとみます。
ですので、本土に敵水上部隊が接近してきた時に、どれくらいダメージを与えられるか、ということが最重要となります。41隻の敵艦隊に、日本側は航空機からのミサイル攻撃、護衛艦からのミサイル攻撃、地上からのミサイル攻撃、で対応するでしょう。F2が対艦ミサイルを2ないし4発、P-3Cが2発として、出動できるのが最大でそれぞれ20機(とりあえず、2発搭載が10機、4発搭載が10機)と10機であれば、初撃で80発の対艦ミサイル攻撃が可能です。外す可能性もありますが、護衛艦と地上発射の対艦ミサイルで更に攻撃を加えます。水上戦闘艦を撃破できれば、残りの揚陸艦や輸送艦はタダの動く標的としかなり得ず、海岸に近づくことさえできずに終わるでしょう。護衛艦の速射砲などでも十分攻撃できてしまうからです。日本が配備している対艦ミサイルや護衛艦の対空ミサイルの射程の方が優位である限り、そう簡単には上陸作戦などできないでしょう。敵の空対艦ミサイルの射程が上回る場合には、護衛艦が航空機の攻撃に晒されることになり、生き残るかどうかは判りません。
敵艦隊が移動する速度は、航空機に比べればはるかに遅いので、初期の攻撃は航空機からの攻撃が有効と考えます。地上の自走砲やMLRSだとか、アパッチというのは、これら戦闘には参加できません。重要な港湾は、敵艦隊が接近してくるのが判っているのであれば、空の大型タンカーや貨物船などを港湾の侵入路を塞ぐように配列して、座礁させたり爆破沈没させたりすることで、港湾使用を阻止することもでき得るはずです。港湾の平地部分にも、コンテナや大型トラックなどを隙間なく並べて破壊し、港湾施設を簡単には使用できないようにすることもできます。要するに、港湾等で待ち伏せしてMLRSや自走砲・戦車などを配備したり、クラスター攻撃を狙うだのという作戦は、かなり頭が悪い相手の場合にのみでしか通用しないのではないかと思います。
ただ、敵の奇襲が行われる場合には、上で見たように日本側の護衛艦や潜水艦は分散していて、日本側の防衛力としては数的不利を覚悟することになってしまいます。その点においても、高速ミサイル艇ならば、海域に集結してくるまでの時間が短く済む、水上打撃力があるので対艦戦闘に役立つ、ミサイルを全て発射した後であっても接近してくる揚陸艦や輸送艦への攻撃を継続できる、ということです。潜水艦部隊の排除は直ぐには行えないだろうと思いますので、潜水艦からの攻撃を受けるかもしれませんが、比較的浅い海域での戦闘を心掛ければ、高速ミサイル艇ならば生存可能性は高まるかもしれません。通常、潜水艦は浅い深度のところまで攻撃しにやってこれませんからね。海上戦力を全て失ったとして、着上陸した敵部隊をクラスター攻撃することを考えるより、接近してくる揚陸艦を対艦ミサイルで攻撃することを重視するべき、と思います。それには、展開するスピード(移動速度+攻撃準備までの時間)が必要と思います。
本気で日本侵攻を考えるならば、これでは全然ダメでしょうね。いくら数的優位を作れても、日本側の対艦攻撃力の防衛網を突破していくことは難しいでしょう。特に、航空機からのミサイル攻撃を完全に封じなければ、日本に接近する前に大半の水上艦艇を失うことになってしまうでしょう。
なので、私が侵攻側であれば、まず長距離ミサイルで全ての航空自衛隊基地の滑走路を潰そうと考えるでしょう。それには中国単独では難しく、北朝鮮と中国が同時に戦争を起こすようなことしかないのでは。中国のミサイル攻撃、北朝鮮からのノドンやテポドン1号による攻撃が同時に行われた場合には、日本の主な航空基地のうち15箇所程度に約300発の攻撃を行うことができます。わざわざ飛んでいるF-15やF-2と戦う必要などなく、配備されている主要な基地の滑走路さえ潰すことができれば、飛び立つことができなくなりますので、ほぼ無力化できます。他の滑走路のある場所に機体を移動するには、多大な時間がかかりますからね。通常弾頭の攻撃ですので大した攻撃力ではないとしても、滑走路を使えない状態にすることさえ成功できればいいわけですから、そんなに難しいものではないのでは(着弾精度の問題はあると思うが)。
更に、Su-27やSu-30によるミサイル攻撃等で九州や沖縄のレーダー基地などを潰すことなどを狙うでありましょう。最初のミサイル攻撃で日本の航空戦力を無力化し、長距離飛行可能な航空機が護衛艦や地上基地の攻撃を必ず狙うでしょうから、そうなれば、日本の地上防空力がどの程度か、ということにかかってくるでしょう。
あと心配しているのは、「日本の目」を奪われることです。レーダー基地やAWACSなどを失えば、敵の航空機や水上艦艇への地上からの攻撃が難しくなると思うからです。長射程の地対艦ミサイルの威力が発揮できなくなると大変です。港湾を潰しておくとしても、上陸阻止は困難となるでしょう。
侵攻する側に立てば、いきなり本土上陸は狙わず、まず対馬上陸で空港を制圧するでしょう。そこに主力機を移動できれば、日本の大半を攻撃圏内に捉えることが可能になるからです。対馬上陸を狙われた場合には、航空戦力がなければ阻止することは難しいでしょう。上陸後直ぐに対空ミサイルと対艦ミサイルを設置し、周辺海域を潜水艦や水上艦で防御すれば、簡単には奪還できません。
なので、初撃のミサイル攻撃+対馬に電撃上陸、あとは本土への航空機による攻撃を繰り返し行い、拠点の多くを潰すことに成功すれば、本土上陸ということになるでしょうか。
これを封じるには、対馬上陸のような作戦を困難にさせ、仮にそれを実施されたとしても島を完全封鎖して敵航空戦力が移動してくることを防ぐのと、島周囲の敵戦力を排除できなければなりません。それは「90式、MLRS、自走砲、アパッチ」のような戦力は役立たないですよ、ということです。
(これら兵器の調達費用は、合わせるとかなり高額です。「クラスター弾の方がミサイル艇よりも安い」というのは、比較の意味がありません)
本土に近い島を獲られたりすることがなければ(米軍なみの空母があれば別でしょうが)、航空戦力による本土攻撃は多くならないはずで、少数の攻撃ならば日本の防空能力が優位であると思いますし、地対艦戦闘能力も残されるので上陸作戦阻止は可能だろうと思います。
結局、敵軍の航空支援が弱ければ、日本の対空・対艦防衛力が優位を保てるであろう、と考えます。
これを中国がやると、世界経済からは切り離され、これまでのような商売は全くできなくなるでしょう。今持っている巨万の富の価値は大半が失われ、ほぼ使える先がなくなるでしょう。エネルギー不足が深刻化したり、食糧需給も悪化するので、国内的な不満圧力が高まるといった問題を抱えることになるでしょう。そうまでして、日本侵攻を企てても、利益は見込まれません。1兆ドルかけても日本を侵攻したい、とかいうコメントもありましたが、それであれば、主要な日本企業の大半を買えることになりますよ。東京市場の時価総額ざっと500兆円のうち主要企業が300兆円としても、時価総額200兆円の半分を買い占めることができてしまいます。つまり主要企業の3分の2は、「難なく金で手に入れる」ことができてしまう、ということですよ。しかも企業の持株があって大株主である企業を狙えば(ライブドアがニッポン放送を狙ったが如く)、もっと支配できる企業数が増える可能性は高くなるでしょう。
北朝鮮ならば別にどうってことはないでしょうけど。既に切り離された状態ですし、極貧ですので。
なので、やる意味はない、というのはそういうことです。失うものがない狂犬みたいな相手の場合であれば、可能性はあります。が、北朝鮮には、日本の防衛力を粉砕するだけの攻撃力はありません。偽装船とかミニ潜水艦くらいでは。唯一、暴発の危険性とか、かなりの被害を蒙るのは、やはりミサイル攻撃でしょう。
むしろ、本気で心配が必要なのは、音もなく静かに支配されること、つまりは「経済戦争」の方なんですよ。経済規模500兆円を狙うとは、そういうことです。傷を付けずに、まるまるいただくのが、一番効率がいいに決まっているのですから。
※※追加です。
前の記事のコメントで教えていただきました。
こちら>クラスター弾の軍事的有用性と問題点
一部抜粋しますと、次のように記述されておりました。
「不発弾は領域の使用を制約し、偵察の必要性を増加させることで、(味方)部隊の機動を妨害する」
「冷戦終結後は、大規模な正規軍同士が戦闘を行う可能性が低下し、市街地の中の軍事目標を攻撃する能力が必要とされるようになってきた」
「不発率の高い地上発射型クラスター弾をイラク攻撃の「敗者」と位置づけている」
「テロリストやゲリラにとっては、不発子弾が貴重な資産となることもある」
「これまでに米軍が戦車、装甲車、砲を攻撃するためにクラスター弾を使用した割合は、CBU-87/Bで1%以下」
「クラスター弾のようなエリア・ウェポンが現代戦の「花形」兵器でないことは事実である」
「市街地戦を含む対テロ戦も重視されるようになったため、クラスター弾の役割も低下傾向にあると言えるかもしれない」
「湾岸戦争以降に米国が行ってきた軍事作戦は、航空作戦が軍事作戦の帰趨において決定的な役割を果たしえることを明らかにした。しかし、そこで注目されるのは、精密誘導兵器、無人航空機、ステルス技術、ISR能力、敵防空網制圧(SEAD)能力等であって、エリア・ウェポンではない。」
以上。
はい、「クラスター弾」は、日本の防衛に本当に必要ですか?
読んでから云々というのは、某ヲタの方々も同じなのでは。
コメントから学ぶ
みーみーさんのコメントは含蓄があります。軍事的に無知、という指摘は、まあそうだろうと思いますが、「常識的」に考えて判ることもあるのではないかな、と思います。コメントを再掲してみます。
『ミサイル艇の建造費用(90億円)、維持費、母港の整備、ミサイルや砲弾の費用。明らかにクラスター爆弾の所持と維持よりも金がかかりますす。アパッチなんてミサイル艇以上の値段ですし。』
『航空機が常に敵の上で旋回できるとでも?中国と日本なんて目と鼻の先。撃墜されなくても、攻撃して帰還して攻撃して、なんてやっている内にすぐに上陸されますが。』
何故それほどまでMLRSでクラスター攻撃したいのか、よく判りませんね。因みに、F2のクラスター攻撃があるだろ、と言ってたのは専門知識を有する側の人たちですけど(笑)。
すぐに上陸って、そう簡単ではないと思いますよ。それに、「すぐ上陸」だったら、MLRSのクラスター攻撃する暇もなく上陸されちゃってるんじゃないですかね。船は数百kmの距離を一気に飛んできたりはできんのですから、本土に着くまでには時間がかかりますよ。
中国が攻めてくる、ということにしたいのであれば、それで想定してみましょうか。
中国が隠密に日本侵攻を企み、済洲島近辺に既に上陸部隊や水上艦艇などを展開しているとしますか。駆逐艦21隻、フリゲート等20隻、潜水艦50隻が主力で、他は揚陸艦と輸送艦。米軍はたまたまヨソの紛争等で全部出払っていて、日本には空海軍全部がいないものとします。地上戦力もゼロです。日本の支援に到着するのにも、数ヶ月後にならないと来れないとしましょう。日本は独力で戦わねばなりません。
航空機の攻撃は距離的に問題があるということで、事前に本土の攻撃はしてこないとします。日本の海空戦力は全て温存されているとしましょう(それが彼らの言い分だったみたいですから)。中国は突如日本に宣戦布告し、九州を目指してやってきている、と。中国潜水艦部隊は事前に周辺海域に潜んでいて、艦隊よりも先に来ているものとします。九州までの距離は約200km、水上艦艇が日本近海に到達するのに、4時間程度とします。
さて、日本は急な宣戦布告を受けたので、九州近辺に到達できる護衛艦や潜水艦は限られている、と。仮に、九州北部に3隻、南部側に3隻、潜水艦は到達時間が更にかかってしまうので、2隻程度しか対応できないもとのします。遠くの基地にいる護衛艦や、外洋に出ている護衛艦は直ぐにはやってこれないですからね。この戦力で敵艦隊を迎え撃つ、という悪条件となってしまいます。陸上戦力も、4時間程度で配備につき、敵部隊を迎え撃つ準備をしなければなりません。自走砲やMLRS等がそれほど短時間に九州の各地域に展開できるのか、疑問ではありますな。少数だけならば可能なのかもしれませんが。
ここで、上陸側の事情を考えてみることにします。
揚陸艦はどこでも上陸作戦を行えるとしても、他の輸送艦はそうはいきませんね。港に入港しなければならない。中国軍の揚陸艦の正確な数は知りませんが、とりあえず1隻当たり兵員300人+戦闘車両5両であるとして、揚陸艦が50隻で兵員15000人、車両250両となります。実際に上陸することを考えると、港付近だろうとそれ以外の海岸であろうと、一箇所に50隻もの揚陸艦が固まっているならば、大渋滞となってしまいます。それに、海水浴などでの混雑を思い浮かべていただけるといいのですが、浜辺に人が15000人と戦闘車両250両が並べられた場合、それは超過密状態となってしまいます。日本の海岸は、そんなに平地部分は多くはないですからね。
また、輸送艦にしても、1隻当たり兵員400人+車両や物資等を運べるとして、日本侵攻作戦に10万人規模の兵員を投入することを考えると、先の揚陸艦50隻以外に輸送艦で85000人を運ぶことになり、220隻程度必要となるのです。この船から順次兵員や車両・物資等を降ろす作業に、一体何日くらいかかると思いますか?一箇所の港で頑張ってやっても、数日はかかるでしょう。順番を待つ輸送艦の大行列となってしまう、ということです。そんな作戦を立ててくるでしょうか?日にちが経てば経つほど、日本の護衛艦などが海域に到着する数は多くなるであろうことは十分予想でき、そうなれば海上での激しい戦闘が考えられるでしょう。ですので、先鋒の揚陸艦部隊は数箇所から一気に上陸せねばならないし、港のある地域を数箇所確保せねばならないでしょう。
さて、中国艦隊は前方には潜水艦部隊が待ちうけ、海岸から数百~数十kmの海域に迫っています。
日本の潜水艦は数が少なすぎ、敵潜水艦を少しなら撃沈できるかもしれませんが、1隻で数隻の敵潜水艦を相手にせねばならず、撃沈されるか息を潜めて目立った戦果を挙げずにいるか、くらいかもしれません。護衛艦も合計6隻と少ないので、あまり沿岸からは離れると敵水上部隊の圧倒的な数の攻撃に晒される可能性があるので、あまり遠くに行くことはしないでしょう。潜水艦からの攻撃にも備えなければなりませんし。なので、海岸線の防衛に賭けた方がいいと思います。主として対艦ミサイルの射程に入ってくる敵艦への攻撃に専念します。
地上では、地対艦ミサイル攻撃をスタンバイ、護衛艦や航空戦力を守る為に長射程の対空ミサイルが必ず必要です。それぞれ、相手の攻撃手段(例えば、航空機発射の空対艦ミサイル、水上艦艇発射の艦対艦ミサイル及び艦対空ミサイル)の射程がどのくらいか、ということが重要になるでしょう。敵艦の対空ミサイル射程が20km程度で、日本側の対艦ミサイルが50kmであれば、F2やP-3Cからのミサイル攻撃は十分有効となります(現に100km超の射程の対艦ミサイルがあります)。その時に、敵航空戦力がこれら航空機を攻撃できるような位置にあれば、マズい状況となります。なので、地上や護衛艦からの対空ミサイルでの援護が必要ということになります。
中国軍の潜水艦部隊の多くは、早い段階で沈めることは難しいでしょう。けれども、護衛艦が潜水艦の攻撃から生き残ることができるのであれば、潜水艦自体には地上攻撃能力はない(巡航ミサイルでも発射するなら別ですが)ので、上陸作戦への影響度は小さいとみます。
ですので、本土に敵水上部隊が接近してきた時に、どれくらいダメージを与えられるか、ということが最重要となります。41隻の敵艦隊に、日本側は航空機からのミサイル攻撃、護衛艦からのミサイル攻撃、地上からのミサイル攻撃、で対応するでしょう。F2が対艦ミサイルを2ないし4発、P-3Cが2発として、出動できるのが最大でそれぞれ20機(とりあえず、2発搭載が10機、4発搭載が10機)と10機であれば、初撃で80発の対艦ミサイル攻撃が可能です。外す可能性もありますが、護衛艦と地上発射の対艦ミサイルで更に攻撃を加えます。水上戦闘艦を撃破できれば、残りの揚陸艦や輸送艦はタダの動く標的としかなり得ず、海岸に近づくことさえできずに終わるでしょう。護衛艦の速射砲などでも十分攻撃できてしまうからです。日本が配備している対艦ミサイルや護衛艦の対空ミサイルの射程の方が優位である限り、そう簡単には上陸作戦などできないでしょう。敵の空対艦ミサイルの射程が上回る場合には、護衛艦が航空機の攻撃に晒されることになり、生き残るかどうかは判りません。
敵艦隊が移動する速度は、航空機に比べればはるかに遅いので、初期の攻撃は航空機からの攻撃が有効と考えます。地上の自走砲やMLRSだとか、アパッチというのは、これら戦闘には参加できません。重要な港湾は、敵艦隊が接近してくるのが判っているのであれば、空の大型タンカーや貨物船などを港湾の侵入路を塞ぐように配列して、座礁させたり爆破沈没させたりすることで、港湾使用を阻止することもでき得るはずです。港湾の平地部分にも、コンテナや大型トラックなどを隙間なく並べて破壊し、港湾施設を簡単には使用できないようにすることもできます。要するに、港湾等で待ち伏せしてMLRSや自走砲・戦車などを配備したり、クラスター攻撃を狙うだのという作戦は、かなり頭が悪い相手の場合にのみでしか通用しないのではないかと思います。
ただ、敵の奇襲が行われる場合には、上で見たように日本側の護衛艦や潜水艦は分散していて、日本側の防衛力としては数的不利を覚悟することになってしまいます。その点においても、高速ミサイル艇ならば、海域に集結してくるまでの時間が短く済む、水上打撃力があるので対艦戦闘に役立つ、ミサイルを全て発射した後であっても接近してくる揚陸艦や輸送艦への攻撃を継続できる、ということです。潜水艦部隊の排除は直ぐには行えないだろうと思いますので、潜水艦からの攻撃を受けるかもしれませんが、比較的浅い海域での戦闘を心掛ければ、高速ミサイル艇ならば生存可能性は高まるかもしれません。通常、潜水艦は浅い深度のところまで攻撃しにやってこれませんからね。海上戦力を全て失ったとして、着上陸した敵部隊をクラスター攻撃することを考えるより、接近してくる揚陸艦を対艦ミサイルで攻撃することを重視するべき、と思います。それには、展開するスピード(移動速度+攻撃準備までの時間)が必要と思います。
本気で日本侵攻を考えるならば、これでは全然ダメでしょうね。いくら数的優位を作れても、日本側の対艦攻撃力の防衛網を突破していくことは難しいでしょう。特に、航空機からのミサイル攻撃を完全に封じなければ、日本に接近する前に大半の水上艦艇を失うことになってしまうでしょう。
なので、私が侵攻側であれば、まず長距離ミサイルで全ての航空自衛隊基地の滑走路を潰そうと考えるでしょう。それには中国単独では難しく、北朝鮮と中国が同時に戦争を起こすようなことしかないのでは。中国のミサイル攻撃、北朝鮮からのノドンやテポドン1号による攻撃が同時に行われた場合には、日本の主な航空基地のうち15箇所程度に約300発の攻撃を行うことができます。わざわざ飛んでいるF-15やF-2と戦う必要などなく、配備されている主要な基地の滑走路さえ潰すことができれば、飛び立つことができなくなりますので、ほぼ無力化できます。他の滑走路のある場所に機体を移動するには、多大な時間がかかりますからね。通常弾頭の攻撃ですので大した攻撃力ではないとしても、滑走路を使えない状態にすることさえ成功できればいいわけですから、そんなに難しいものではないのでは(着弾精度の問題はあると思うが)。
更に、Su-27やSu-30によるミサイル攻撃等で九州や沖縄のレーダー基地などを潰すことなどを狙うでありましょう。最初のミサイル攻撃で日本の航空戦力を無力化し、長距離飛行可能な航空機が護衛艦や地上基地の攻撃を必ず狙うでしょうから、そうなれば、日本の地上防空力がどの程度か、ということにかかってくるでしょう。
あと心配しているのは、「日本の目」を奪われることです。レーダー基地やAWACSなどを失えば、敵の航空機や水上艦艇への地上からの攻撃が難しくなると思うからです。長射程の地対艦ミサイルの威力が発揮できなくなると大変です。港湾を潰しておくとしても、上陸阻止は困難となるでしょう。
侵攻する側に立てば、いきなり本土上陸は狙わず、まず対馬上陸で空港を制圧するでしょう。そこに主力機を移動できれば、日本の大半を攻撃圏内に捉えることが可能になるからです。対馬上陸を狙われた場合には、航空戦力がなければ阻止することは難しいでしょう。上陸後直ぐに対空ミサイルと対艦ミサイルを設置し、周辺海域を潜水艦や水上艦で防御すれば、簡単には奪還できません。
なので、初撃のミサイル攻撃+対馬に電撃上陸、あとは本土への航空機による攻撃を繰り返し行い、拠点の多くを潰すことに成功すれば、本土上陸ということになるでしょうか。
これを封じるには、対馬上陸のような作戦を困難にさせ、仮にそれを実施されたとしても島を完全封鎖して敵航空戦力が移動してくることを防ぐのと、島周囲の敵戦力を排除できなければなりません。それは「90式、MLRS、自走砲、アパッチ」のような戦力は役立たないですよ、ということです。
(これら兵器の調達費用は、合わせるとかなり高額です。「クラスター弾の方がミサイル艇よりも安い」というのは、比較の意味がありません)
本土に近い島を獲られたりすることがなければ(米軍なみの空母があれば別でしょうが)、航空戦力による本土攻撃は多くならないはずで、少数の攻撃ならば日本の防空能力が優位であると思いますし、地対艦戦闘能力も残されるので上陸作戦阻止は可能だろうと思います。
結局、敵軍の航空支援が弱ければ、日本の対空・対艦防衛力が優位を保てるであろう、と考えます。
これを中国がやると、世界経済からは切り離され、これまでのような商売は全くできなくなるでしょう。今持っている巨万の富の価値は大半が失われ、ほぼ使える先がなくなるでしょう。エネルギー不足が深刻化したり、食糧需給も悪化するので、国内的な不満圧力が高まるといった問題を抱えることになるでしょう。そうまでして、日本侵攻を企てても、利益は見込まれません。1兆ドルかけても日本を侵攻したい、とかいうコメントもありましたが、それであれば、主要な日本企業の大半を買えることになりますよ。東京市場の時価総額ざっと500兆円のうち主要企業が300兆円としても、時価総額200兆円の半分を買い占めることができてしまいます。つまり主要企業の3分の2は、「難なく金で手に入れる」ことができてしまう、ということですよ。しかも企業の持株があって大株主である企業を狙えば(ライブドアがニッポン放送を狙ったが如く)、もっと支配できる企業数が増える可能性は高くなるでしょう。
北朝鮮ならば別にどうってことはないでしょうけど。既に切り離された状態ですし、極貧ですので。
なので、やる意味はない、というのはそういうことです。失うものがない狂犬みたいな相手の場合であれば、可能性はあります。が、北朝鮮には、日本の防衛力を粉砕するだけの攻撃力はありません。偽装船とかミニ潜水艦くらいでは。唯一、暴発の危険性とか、かなりの被害を蒙るのは、やはりミサイル攻撃でしょう。
むしろ、本気で心配が必要なのは、音もなく静かに支配されること、つまりは「経済戦争」の方なんですよ。経済規模500兆円を狙うとは、そういうことです。傷を付けずに、まるまるいただくのが、一番効率がいいに決まっているのですから。
※※追加です。
前の記事のコメントで教えていただきました。
こちら>クラスター弾の軍事的有用性と問題点
一部抜粋しますと、次のように記述されておりました。
「不発弾は領域の使用を制約し、偵察の必要性を増加させることで、(味方)部隊の機動を妨害する」
「冷戦終結後は、大規模な正規軍同士が戦闘を行う可能性が低下し、市街地の中の軍事目標を攻撃する能力が必要とされるようになってきた」
「不発率の高い地上発射型クラスター弾をイラク攻撃の「敗者」と位置づけている」
「テロリストやゲリラにとっては、不発子弾が貴重な資産となることもある」
「これまでに米軍が戦車、装甲車、砲を攻撃するためにクラスター弾を使用した割合は、CBU-87/Bで1%以下」
「クラスター弾のようなエリア・ウェポンが現代戦の「花形」兵器でないことは事実である」
「市街地戦を含む対テロ戦も重視されるようになったため、クラスター弾の役割も低下傾向にあると言えるかもしれない」
「湾岸戦争以降に米国が行ってきた軍事作戦は、航空作戦が軍事作戦の帰趨において決定的な役割を果たしえることを明らかにした。しかし、そこで注目されるのは、精密誘導兵器、無人航空機、ステルス技術、ISR能力、敵防空網制圧(SEAD)能力等であって、エリア・ウェポンではない。」
以上。
はい、「クラスター弾」は、日本の防衛に本当に必要ですか?
読んでから云々というのは、某ヲタの方々も同じなのでは。