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オール人力狙撃システム試作機

防衛省の要求は通らない

2008年06月24日 20時22分42秒 | 防衛問題
読売新聞だけ記事が出されていたので信憑性は定かではないが、触れておこう。

防衛省、新型クラスター爆弾調達へ…禁止条約の対象外 政治 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

(一部引用)

防衛省は〈1〉多連装ロケットシステムに搭載されているクラスター爆弾を新型クラスター爆弾などに換える〈2〉陸自ヘリコプターなどに搭載しているクラスター爆弾を単弾頭爆弾に換える――など、5、6通りの代替措置を組み合わせた配備計画を作り、来年度概算要求で予算要求する方針だ。

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かなりこだわっているようだが、代替装備の予算が認められるかどうかは微妙ではないか。そもそも防衛省自身が「着上陸の蓋然性は低い」と認識しているのであるから、財務省を説得できるだけの理由を有しているとは思われない。

「津波被害の可能性は最も少ない」地域に居住しているにも関わらず、火災保険料、地震保険料やその他損害保険料に比べて「津波保険の保険料が一番高い」という選択は、そもそもおかしいのではないか、ということを言っているのである。
「津波保険は最小費用でいいよ」と言っているのに、「絶対に津波が来ないといえるのか」「津波が来て国民が死んだら責任を取れるのか」、みたいなことしか主張しないのであれば、「津波保険が一番高くていいですね」なんて結論を支持することなどできない。

敵に直面している外側の防衛線を強くするのは、普通の発想ではないか。一番内側に最も金をかけることの意味が判らない。具体的に使う場面を想定しない、というのも、疑問である。必要性を訴えている防衛省の人間ですら、何がどう役立つのか、なんてことは考えていないだろう。具体的に運用を想定できていないのに、道具だけ揃えても無駄である。いってみれば、家にレコードが1枚もないのにプレーヤーだけ買って置いておくようなものである。これがもしもなくなれば、「プレーヤーの使い方などの技術・伝承が失われる」みたいに言っていても、iPodのようなプレーヤーに代わればいらないだけである。しかも「旧型のレコードプレーヤーは使用できなくなります」という時、「新たなレコードプレーヤーを代替しなければならない」なんて理屈にはならない。本当にプレーヤーがなければならないものかどうか、それが問題なのだ。


軍事訓練がどういったものなのかは知らないが、基本的訓練でないのであれば、シナリオを想定して訓練するのが当たり前ではないかと思えるが。火災の避難訓練でさえ、シナリオがきちんと作られますし(笑)。キチガイの敵や、マヌケ指揮官であれば日本に上陸してくるかもしれないんだぞ、と盛んに主張している方々が、どうして具体的に考えていないのか不思議でなりませんね。折角ですから、予算を認めてもらえるように防衛省が考えてみたらいいですよ。


私の架空戦記は不評ですけれども(当然か、笑)、また出してみましょうか。キチガイやマヌケさんたちならば本土上陸作戦をやってくる、と仰っていますから、それで考えてみましょう。

村上龍の『半島を出でよ』に倣って、福岡に上陸してくるとしましょう。何の兆候もなく、突如として現れたとします。正体不明のテロ部隊が旧式の揚陸艦や偽装貨物船なんかで突然やって来て、戦車15両、歩兵1000人くらいで襲ってきましたよ、と。まず、車両を降ろす為に港は制圧されますね。この作業を何時間でできるのか不明ですけれども、超特急でやったとして2時間程度でできたとしますか。すると、その後に福岡市内方向に向かって戦車や歩兵が進軍していく、と。

日本側は、港を襲撃された時点から敵が上陸したことを知ったとします。
この事態に対処しなければなりません。さて、どうしますか?ということなんですよ。
市民を避難させることはできるでしょうか?本当にできますか、そんなことが。
航空自衛隊ならば、クラスター爆弾投下で一気に攻撃だ、という計画なのでしょうか?

アパッチは攻撃に向かいますか?
自走榴弾砲はどこに配置しますか?
MLRSはどこからクラスター攻撃するつもりですか?
90式は出動しますか?それとも74式ですか?

数時間で、福岡市民を避難させられると思いますか?
たとえば100万人の避難に、一体どれくらいの時間を要すると思いますか?何日かかりますでしょう?
多分避難させられないでしょう。せいぜい建物から一歩も出ないで下さい、と注意するくらいしかできないでしょう。この状況であってもクラスター攻撃をする、とか言い出す気なのかもしれませんが。

自走榴弾砲やMLRSが攻撃可能位置につけるまで、何時間でできますか?どこの基地から、どこを通って、どれくらいの時間で移動でき、攻撃態勢を整えるのに、最低必要時間は何時間ですか?戦車も同様に、どこからどうやって出動し、敵戦車を攻撃可能な位置につくには、どんなことが必要ですか?街の中で敵戦車を攻撃する為には、直線で捉える必要があるでしょうが、それがどの程度効力を持っているのか、ということもあります。

それよりも、出来る限り早急に福岡市内の主要ポイントに陸自が展開し、装甲車両がある程度揃っていれば進軍してくる敵に攻撃を試みることは可能ではないかと思います。例えば01式で戦車を攻撃することを狙う方が、74式や90式で攻撃することを考えるよりも早いし効率的ではないか、ということです。敵の攻撃が本当に奇襲で、準備時間が少なければ少ないほど、「MLRSや自走砲でクラスター攻撃を狙う」ということ自体、無理なのではないかとしか思えません。

テロ攻撃にも使える、という意見がありましたが、それはむしろ逆で、使える場面は殆どないのではないか、ということですね。山に逃げ込む、とかいう意見にしても、誰もいない山林を目指すくらいなら、「一体、何しに来たの?」としか思えませんね。テロがアホだと山に逃げるかもしれませんが。そのアホなテロをわざわざクラスター攻撃しようというのは、まるで灰皿のタバコの火を「消防車の放水でも消せる!」と言っているようなものだ。

大体、テロ実行に重武装で突撃してこなくたって、アキバの事件にしても、昔の爆弾テロや地下鉄サリン事件を見ればわかるように、やろうと思えばいつでもできる、というのが日本におけるテロの状況でしょう。殺傷人数だって、少ないものではありません。実行可能性の問題だけ考えるのであれば、武装して乗り込んでくるよりもはるかに安上がりで、しかも多くの人間を殺せる、ということです。隠密裏に侵入して山林に逃げ込んだテロが警察官や自衛隊員を殺害した事例はないが、それよりはるかに多くの人々の命が、もっと簡単なテロ類似行為によって失われている、という現実を考えることができないのであろう。


もう少し準備する時間があって敵を待ち伏せするとしても、高いビルの途中階に携帯型対戦車兵器を配備したり、ビルの谷間などから車載の対戦車兵器で狙うなどの攻撃は、戦車で敵戦車に対抗するよりも有効であろうと思います。同じ金額を使うのであれば数を多くできる、攻撃までの展開スピードが断然早いから、です。90式1両分で相当数の対戦車兵器を装備できます。それに、遮蔽物があると、戦車砲や同軸機銃での攻撃には制限があります。戦車の主砲の仰角にも限度があるので、高いビルの多い地域では割と近い距離(携帯式対戦車兵器で狙える程度に)から攻撃されると、ビルを主砲で吹き飛ばすことは難しいでしょう。かなり遠方からの射撃か、(自走)榴弾砲などからの攻撃じゃないと高い地点を砲撃できないでしょう。敵歩兵部隊からの攻撃を受ける可能性は当然あるのですが、隠れていられるのは防衛側ですし、配備数を(防衛側戦車の数よりも)多くできるとは思いますので、全部がいっぺんに攻撃を受けてしまうというのは考え難いでしょう。それだけ敵戦車への攻撃可能性が増す、ということです。

何度も書いて恐縮ですが、日本の地形は平野部がとても少ないので、平野があればそこは殆どが都市化しています(北海道、新潟、秋田などでは農耕地が割とあるかもしれませんが)。森林面積比も大きい国なのです。つまり概ね平坦な地域では、多くの場合に建物等が障害物として多数存在している、ということです。欧州大陸や砂漠地帯みたいに機甲戦力の威力が発揮されるという環境にはなっていない、ということです。戦車の射線が遮られやすい、移動制限がある、障害物が多いので隠れている歩兵から攻撃を受ける可能性は高い、と考えます。


もう少し設定を変えて、今度は、長崎、佐世保、平戸あたりに一気に上陸されたとしますか。敵が2個師団規模くらいだとして、佐賀・福岡方面に進軍せねばなりません。この時、戦車、自走砲、MLRSはどこからどのように移動してきて、どのように配備しますか?どこで決戦を挑むのでしょう?
敵軍が通過できるルートなんて限られています。海岸沿いの道路や山間部の道路を縦列で進む以外にはないのですよ。渋滞みたいな感じになってしまいますね、きっと。しかも進む道路の一部が爆破されていたり、トンネルを破壊されていたりすると、進軍はストップしてしまうでしょう。また、海岸沿いの道路の多くは、途中にトンネルが複数存在する、片側が海で陸側は急勾配の断崖みたいになっていることが一番多いでしょう。進軍する側には防御しづらく、部隊規模を大きくすると、かえって身動きがとり難くなってしまいます。スペースが狭いので、左右に回避することも、部隊全体をバックすることも簡単にはできませんからね。先頭車両が潰されると、大抵の場合追い越せないので進軍できなくなります。後続車両が簡単に応援に駆けつけることもできず、結局歩兵戦力が対抗せざるを得なくなるでしょう。多くの場合、戦車は崖の上には攻撃できないでしょう。

なので、小さくてどこにでも隠れることができ、移動手段のある歩兵戦力に待ち伏せされたりすると、戦いが難しくなるでしょう。強力な対戦車兵器をあまり持っていないと戦車などがある程度有効でしょうが、歩兵が使える多くの対戦車兵器を日本が隠し持っているとすると、侵攻側にとっては脅威でしょう。少集団のバラバラに存在する(小隊規模とか中隊規模とか)歩兵に対しては、航空戦力や戦車や自走砲などの正面装備の多くはあまり役には立たず、人海戦術的に炙り出していくしかないからです。

九州西部に上陸を果たしたとしても、東側に進出する為には、あまり広くない道路の山越えだの、都市部を抜けなければならないだの、制約が非常に多いのです。日本の場合、上陸して攻撃するとしても、攻撃側は気の遠くなるような作業を延々とやっていかねばならないので、完全に制圧するのはかなり難しいでしょう。機甲戦力の威力が発揮し難いことが、その一つの要因であると考えています。本気でやるとなれば、街をほぼ破壊しながら前進していくしかないでしょう。これを続ければ、当然都市部の殆どは破壊されますが、ゴーストタウンにしながら進んでいくことに、一体何の意味があるのか判りませんね。

上陸地点が九州ではなく新潟であるとしても、そこから関東方面に進軍するには、限られた選択肢しかないですから。山岳地帯の幹線道路を通過することになってしまいますので、橋やトンネルを破壊されたら通過できなくなるか、下手をすれば立往生ということになりかねません。一体何をしに上陸してくるのか、理解できない。福岡上陸でも同じですけれど、民間人を避難させるのは、かなり難しいでしょう。


いずれにせよ、陸自の考えるクラスター攻撃をする場面というものがどんな状況であるのか、そのシナリオを出せるはずだろう。それは可能性の高いものであるので、「他の装備に優先して」調達する理由がある、ということのはずだ。それがなければ、兵器そのものの代替をする意味などない。はじめから必要性に乏しいのに買っただけで、元々の計画自体に問題があったのなら新たに資金投入する必要性などないということ。
「90式が必要だ」と言いながら、実態としては「イマイチ使えないもの」であるので、北海道以外には配備せずに「別な戦車を調達したい」と方針を変えるようなものではないか。つまり、お金が無駄になってしまったね、ということが明らかになっているだけということ。


財務省にお願いしておきますが、タクシー代さえままならない(笑)昨今、どうして必要となる蓋然性に乏しいものに多額の費用をかけねばならないのか、防衛省によくお尋ねになられた方が宜しいでしょう。