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『螺鈿迷宮』と『ブラック・ペアン1988』を読んだよ

2009年02月03日 12時33分38秒 | 俺のそれ
近頃、我が家では何故か遅れてきた「海堂尊」ブームらしい(笑)。
順次読み進んできている。
最も先を行ってるのは、やはりウチの子。次が妻、最後が私(笑)。ま、これはいいか。


『ナイチンゲールの沈黙』を読むと、『螺鈿迷宮』を読まざるを得ない、という、まさに巧みな商売ということになっている。冗談だが。これまでの作品と共通して、やはり行政(警察・厚生)や医療・死因特定・「人の死」の問題という広い範囲を語らせるのに恰好の材料としている、というのがよく伝わってくる。個人的には、桜宮巌雄先生の語る真実というか、巌雄先生に共感できる部分(意見)を持ってしまう、というのは、多分そういうことだから、だろう(笑)。

どちらかといえば、これまでの「AI の有用性、威力」を示すということよりは、崩壊に追い込まれてゆく桜宮病院と巌雄先生の悲哀みたいなものが中心で、現代医療の問題点を鋭く活写していると思った。だからこそ、巌雄先生に共感できてしまうのだろうな、と。


『ブラック・ペアン1988』は、私個人の評価としては、これまでの海堂作品の中で最高評価と言っていい。『チーム・バチスタの栄光』を読んだ時に感じた高階院長へのイメージ(『チーム・バチスタの栄光』と第三者機関)がどういうものだったのか、ということが、「そうだったのか!」というふうに判ったような気がした。

純粋技術屋というか職人タイプの人ということが、必ずしも大学を維持するのに適しているわけではない。組織全体のマネジメントは、技術屋さんの能力とはちょっと違う。そういう点においても、渡海征四郎という存在は良い設定だった。いずれ、どこかの片田舎(離島とか医療過疎地?)あたりで悪魔のような「オリャー」という活躍が描かれるかもしれない。不真面目っぽく見えて、あまりやる気のないような素振りでありながら、でも「腕は立つよ」という典型的なタイプですので。

全くの個人的予想なんですが、これまでの他の作品だと、海堂自身の体験部分というのは恐らく殆ど織り込まれてこなかったのではないか、「小説」を書こうとして元からプロットを作っていったものが殆どではないかと思いますが、この『ブラック・ペアン1988』には海堂自身の経験した事実部分が反映されているところがいくつかあるからなのではないだろうか、ということですね。
自分しか持っていない(知らない)エピソードを語ろうとする時には、どことなく「若かりし頃の甘酸っぱい感じ(笑)」みたいなものがじわっと漂う、みたいなもんです。
誰でもいいのですが、自分の社会人1年目の時に起こった出来事を正確に描写していこうとする時に生まれる、「あの感じ」みたいなもんです。先輩社員が、新入社員だった時のエピソードを後輩の新人に語る時に見せる、「あの感じ」ですよ。

というような印象を持ったので、これまでのところでは最高評価となったわけです。
ま、でも、好みとかあるでしょうから、私の評価はあまり当てにしない方が宜しいかと思います。