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「かんぽの宿」疑惑の波紋

2009年02月05日 13時11分45秒 | おかしいぞ
これまで、あまり注目してこなかったし、何となく騒ぎになっているのだね、と横目で眺めていたのだが、ちょっと気になって調べてみたよ。すると、いくつか判ったことがあった。

どうして気になったのか、教えてあげようか?
竹中さんがやたらと必死になって抗弁しているからさ。読んでないけど、はてブの見出しに出ていた、木村某とか一緒になって鳩山大臣を非難していたし。大体、揃ってる役者の面子を見れば、「ああ、そっち系なんだね」ということが鈍感なぼくでさえ判るわけだから。

オリックス宮内、竹中、木村、西川、はは~ん、ってか(笑)。
こういう話は、別にどうでもいいや。週刊誌にでも書いてもらうか、もっと別な陰謀論の筋書きでも解明してくれるところでお願いしたいですね。


最も「クサいな」と思った部分を言っておく。
「かんぽの宿」の赤字額が40億だか50億円だかって盛んに力説している連中がいるみたいなんだけれども、どうやってそれを知ったの?宮内さんに情報を貰ったとか?それとも、入札に参加した企業群の中から、情報を貰ったとか?
竹中さんは大臣時代には数字を見ることができたかもしれないけれど、今は、判らないわけでしょう?どうやって赤字額を知ったのかな?んー?誰に教えてもらったの?

ま、見てきたような数字を言えるって、どことなくおかしいわけだよ。なんでそんなこと知ってるの?最初にその数字が出てきたのがどこか、そしていつなのか、それをまずは明らかにした方がいいんじゃないか?


で、疑わしさがかなり「確実だな」と思った最大の理由を書いておくよ。
それは、財務諸表を隠したことだ。
日本郵政になって、以前のリンク先は全て切れてしまっていた。まあ、日銀のようにHP変更でワザと昔の「見られてはまずい記事」なんかをどこかにやってしまうという手口なのかもしれないが(冗談です)、根本的に怪しいのは財務諸表が消されたことだ。

日本郵政はHP上に以前の財務諸表を公開しているよ、という指摘はあるものと思う。確かに公社時代の数字や事業報告などは公開されており、リンク先のPDFにも出ている。だけど、これは昔のとは違う。
★★元々あった文書とは、書き換えられている。
そうさ、「オリジナル」とは異なった文書に変更されているのだよ。
どうしてそんなことをするのか?

後々、ほじくり返されたくはないから、だろうね。
余計な数字を見つけられて、あれこれ言われないように、ということでしょうな。

だから、数字を隠した、ってわけだ。外見的にはそう見えるね。
都合の悪い資料は「見えなくしてしまえ、隠してしまえ」という態度だね、ということ。


だから、この一件はかなりの確信をもって「アヤスイ」と感じるわけだ。


郵政公社時代の財務諸表を見えなくするワケとは一体何か?(笑)
元々あったものをわざわざ書き換えた理由とは何か?

悔しかったら、公社時代の数字や資料を全部「元のまま」出してみな。これができない、ということは、「後ろ暗いことがあるから」ということを意味すると判断して良いだろう。何ら困ることがないのであれば、「ハイ、喜んで」と素直に応じることができるだろう。
参考までに、郵政民営化委員会の議事録はあるが、配布資料というのは一切ない、ということも付け加えておきますよ。資料が全くなかったのだ、ということなら、それはそれでいいですけれども、経済財政諮問会議の配布資料さえ公表されているのに、どうしたわけか郵政民営化委員会の方には資料がゼロみたいだな。そんなんでよく討議できましたね(笑)。


「かんぽの宿」に関する全ての資料を、年代ごとに、時系列で見てゆくことをお薦めする>国会議員の方々

それはね、一軒ごとに年表みたいに作るのさ。いつ取得し、修繕したり改修工事をしたりしたか、金額を入れてゆく。あとは、閉鎖したり譲渡したりしたら、その年月日と金額を入れる。譲渡相手も入れる。そういう一覧表みたいなものを作るといいと思いますよ。


以前にあった、簡易保険福祉事業団時代から資産を継承し、公社化された時の帳簿がどうであったか、というのを「日本郵政」は隠してしまったわけだよ。西川がこうした指示をしたものかどうかは知らない。誰の差し金かも判らないけどね。
本来、特別会計だったわけだし、宿泊事業勘定は別に記載されていたはずだ。公社化した後にも、宿泊事業とか病院事業なんかは別に数字が書かれていた。
そういう帳簿の数字を隠したんだよ、ヤツラは。真面目に財務諸表をひっくり返されて、値段を調べられたり、帳簿操作の裏技をつつかれたりするのを封じる為に、予めそうした公表資料を隠したと思われても仕方がないというわけですよ(笑)。

公社化する前後に、不採算のかんぽの宿とか会館とかの整理は若干されていたわけだし、公社化した後だって「郵政民営化」を阻止しようとしてできるだけ「いい決算数字」みたいなものを出そうと、多少なりとも頑張っていたはずだしね。会計検査院の指摘を受けて、宿泊率の低い施設は閉鎖などの措置が取られたこともあったし。だから、営業をしている施設で、本格的に赤字が酷いというのは、あんまり多くはなかったんじゃないの?交付金を切ったのはいつなのか、気になるね。


不動産取得費の初期投資負担が重い場合には、収入が経費を上回っていてキャッシュは入ってきているけど、帳簿上では赤字になる、ってことはあるかなと思えるし。

例えば1000万円で取得したレストランがあるとする。
毎月100万円売上で、運営経費が90万円だとすると、10万円プラスだが、初期投資の1000万円の借金返済20万円があって、その負担が重いという場合に赤字になってしまう。このレストランを50万円で手放すとしよう。すると、これを買った人は50万円の投資を回収するまでに5ヶ月でいいことになり、それ以後は黒字が続くということになって、これまでと全く同じ営業をしていて収入や経費が同じであったとしても、十分儲かるということだね。


あと、1千億円以上の規模の減損処理みたいなものをここ数年でやっているはずで、それって、不動産の簿価を小さくしたのか、叩き売りで売却損を計上したのか、よく判らないんですが、怪しげな帳簿操作があったやもしれません。そういう疑惑を払拭するには、「かんぽの宿」の帳簿を明らかにすればいいわけで、入札しなおすのであれば広く公表したって何ら問題ないんじゃありませんか?
どれだけ収入があり、客室稼働率はどれくらいで、客単価がどれくらいか、そういう基礎的数字を出せばいいだけだ。

まずは、公社時代の宿泊事業に関する財務諸表を全て元通りに公開せよ。毎年の分を丹念に見ていってくれる会計の専門家の人だって、きっと現れてくれるだろうよ(笑)。だって、たった数年しかなかったわけだし。「赤字が毎年50億円だ」とか言う時の、赤字にも色々と中身があるわけで。


よもや、『436億円の収益事業』とか、言ったりはしないんだよね?(笑)



◇◇◇◇


閑話休題。
人々を煽動したり騙そうとする時って、できるだけ単純化した判りやすい数字を出すのがコツでして、「赤字が50億円!」って言っておけばあとは簡単さ、ということはあるわな。どういった内容なのかを精査しようという人々は、世間には多くはないからだろうね。


『水戸黄門』が好きだから、一応、それ風に書いておくか?

「黒幕1号」は、手下を使って別な「不動産業者2号」に入札させる。2号は入札に勝つように事前に仕組まれていて、必ず安値で落とせる。で、不動産業者2号は転売益を手にするが、この金は当然黒幕1号にバックされる。黒幕1号と、郵政民営化利権の「役人3号」や利権「企業家4号」やそこに連なる「識者5号」は、みんな同じサークルの仲間だから(笑)。そちもワルよの~

他には大型の案件であれば、やっぱり「表」に出てこなけりゃならない、ということがあるだろうから、議員さんの筋でコネとか口利きとか色々とあって、「○○が落札できるように頼むよ~」みたいなもんだわな。で、後は事情を知らないライバル業者をちょっと残しておき、出来レースみたいに決めてしまう、ということだわな。




はっきり言っておくけど、公表してあったものを、わざわざ隠す人間の考えそうなことと言えば、大概はロクでもないようなことであり、善良な心根の持ち主がそうした技巧を使おうとはしない、ということは、ぼくの取るに足らないささやかな人生の中で発見した重要な経験則ですから。後ろめたいことがないなら、手をつけない。少なくとも、労力をかけてまで隠そうとしたりはしない。改変努力の方が大変だから。人間って、そんなもんです。

まさか財務諸表をオリジナルと変えてしまった、ということを、いちいち言い出すヤツが出てくるとは思ってなかったんだろうね(笑)。
確かにぼくは頭がいいわけでもないし、会計とか簿記に詳しいわけでもない。そちら方面の専門知識はないよ。でもね、以前の公社時代の財務諸表は何度も見たから、覚えているのさ。これもブログのおかげだよ。郵政民営化のブログ記事を書いてた頃に、何度も見ていたから。郵政選挙の前から、財務諸表を幾度も確認していたから。だから、前のものと違う、ということは、ぼくみたいなボンクラ頭にだって判るというものだよ。
言ってみれば、連結決算全体の大きい数字だけ出しておき、各会社の決算数字のうち「見られては困るもの、都合の悪いもの」を隠したようなもんさ。



どんなに崇高な精神や理想を掲げて革命が必要だと思って、実際に革命を遂行したとしても、それが良い結果を生むとは限らない、ということを改めて思い知った。

悪の王や腐敗した貴族たちを駆逐する為に革命を実行したとしても、革命成功後にはまた新たな腐敗勢力を招いてしまう、ということか。
過去の歴史にもよくあった話ではあるのに、うっかりしていたよ。



マクロ経済スライドと物価スライドは違う

2009年02月04日 11時03分32秒 | 社会保障問題
物価スライドの話と年金改革後のマクロ経済スライドの話が混ざっているような。


はてなブックマーク - 原田泰「消費税増税と責任ある政治の中身」 2009-02-01 - Economics Lovers Live

消費税が上がった分だけ年金受給額が上乗せされて高齢者は損をしない、というのは、極めて不正確なのでは。

年金受給額は物価スライドはあることはありますが、マクロ経済スライドによって、上乗せ額は0.9%抑制されているはずです。なので、インフレ率が低ければ低いほど「抑制効果は小さくなってしまう」ということになります。デフレであると、このマクロ経済スライドは全く効きません。最低限でも0.9%以上のインフレ率が達成できないと、受給額抑制にはならないはずです。


マクロ経済スライドについては、以前にもちょっと触れました。
所得代替率という「ゴマカシ」



『螺鈿迷宮』と『ブラック・ペアン1988』を読んだよ

2009年02月03日 12時33分38秒 | 俺のそれ
近頃、我が家では何故か遅れてきた「海堂尊」ブームらしい(笑)。
順次読み進んできている。
最も先を行ってるのは、やはりウチの子。次が妻、最後が私(笑)。ま、これはいいか。


『ナイチンゲールの沈黙』を読むと、『螺鈿迷宮』を読まざるを得ない、という、まさに巧みな商売ということになっている。冗談だが。これまでの作品と共通して、やはり行政(警察・厚生)や医療・死因特定・「人の死」の問題という広い範囲を語らせるのに恰好の材料としている、というのがよく伝わってくる。個人的には、桜宮巌雄先生の語る真実というか、巌雄先生に共感できる部分(意見)を持ってしまう、というのは、多分そういうことだから、だろう(笑)。

どちらかといえば、これまでの「AI の有用性、威力」を示すということよりは、崩壊に追い込まれてゆく桜宮病院と巌雄先生の悲哀みたいなものが中心で、現代医療の問題点を鋭く活写していると思った。だからこそ、巌雄先生に共感できてしまうのだろうな、と。


『ブラック・ペアン1988』は、私個人の評価としては、これまでの海堂作品の中で最高評価と言っていい。『チーム・バチスタの栄光』を読んだ時に感じた高階院長へのイメージ(『チーム・バチスタの栄光』と第三者機関)がどういうものだったのか、ということが、「そうだったのか!」というふうに判ったような気がした。

純粋技術屋というか職人タイプの人ということが、必ずしも大学を維持するのに適しているわけではない。組織全体のマネジメントは、技術屋さんの能力とはちょっと違う。そういう点においても、渡海征四郎という存在は良い設定だった。いずれ、どこかの片田舎(離島とか医療過疎地?)あたりで悪魔のような「オリャー」という活躍が描かれるかもしれない。不真面目っぽく見えて、あまりやる気のないような素振りでありながら、でも「腕は立つよ」という典型的なタイプですので。

全くの個人的予想なんですが、これまでの他の作品だと、海堂自身の体験部分というのは恐らく殆ど織り込まれてこなかったのではないか、「小説」を書こうとして元からプロットを作っていったものが殆どではないかと思いますが、この『ブラック・ペアン1988』には海堂自身の経験した事実部分が反映されているところがいくつかあるからなのではないだろうか、ということですね。
自分しか持っていない(知らない)エピソードを語ろうとする時には、どことなく「若かりし頃の甘酸っぱい感じ(笑)」みたいなものがじわっと漂う、みたいなもんです。
誰でもいいのですが、自分の社会人1年目の時に起こった出来事を正確に描写していこうとする時に生まれる、「あの感じ」みたいなもんです。先輩社員が、新入社員だった時のエピソードを後輩の新人に語る時に見せる、「あの感じ」ですよ。

というような印象を持ったので、これまでのところでは最高評価となったわけです。
ま、でも、好みとかあるでしょうから、私の評価はあまり当てにしない方が宜しいかと思います。




貯蓄率の改善はキャッシュ増を意味するわけではない

2009年02月02日 19時14分09秒 | 経済関連
えーと、定義を知っているかどうかということが基本だろうと思うのですが、うっかりするんじゃないかと思ったりするので。ちょっと触れておこうかな、と。

GDP統計の時に考えられている「貯蓄」というのが増えたとしても、それは手持ちのお金が増えているということを必ずしも意味しないだろうな、ということです。場合によりけりなのでは、ということです。

例えば米国では、いよいよ消費が急ブレーキとなってきたようですが、これは想像していた通りでしたね。

参考記事:世界経済を支えてきた米国の借金

この記事中で書いたように、輸入額が減少して貿易赤字が改善し、財政赤字が拡大しているということで、貯蓄投資差額はプラスになっていくであろう、ということは誰でも予想がつきます。この時の投資を上回る「貯蓄」というのが、人々の手元資金となっていたりするのかという問題があるかと思います。日本みたいに「タンス預金が好きだ」(本当に好きかどうかは知らないんだけど。床下の甕の中に現金を溜め込むとか、そういうのもあるかもね)ということなら、確かにキャッシュの形で貯蓄となっているのかもしれません。しかし、米国の場合には、多分そういうことではないのではないかと思いますね。

どういうことになっているかと申しますと、恐らくは「借金返済」という形をとっていることが多いのではないかと推測しています。借金返済がどうして「貯蓄」なのさ、というご指摘はあるかと思いますが、支払利息とかは別な分類になっているのですけれども、元金返済は貯蓄に分類されてしまうことになっていたはずです。なので、消費を減らして余ったお金が「貯蓄」ということになるわけですが、現実に多いのは過去の返済負担に回されるということだろうと思います。特に、これまでの返済負担が重いと、その費用を捻出する為に消費を切り詰めて「貯蓄に回す」ということになるでしょう。バローさんやリカードさんが賢いのは、まさにこうした事態が起こってしまう、ということを見越していたことでしょう。
借金で先に消費を拡大したとて、後に返済負担が待っているという場合には、消費が先食いされるだけで後からの消費が減少するということになり、結局は「いま金を払って消費する」のも、「後からまとめて払う約束で消費する」のも、まさに「中立」ということなんだわね(笑)。トータルの消費が増えるというわけではない、ということなんだわ。赤字債券でファイナンス(=各種ローン)して消費するのも、現時点で金を払って消費するのも、この経済主体の(長期的な意味で)消費を増やしはしない、ということですよ。

だから、貯蓄が増大する過程というのは、言葉が貯蓄になっているというだけで、実態としては多くが借金返済なんだろうな、ということですね。フローの問題からだけでは、借金の返済負担というものが見え難い部分があるので、注意が必要かもしれませんね。

消費が戻ってくるとすれば、返済負担が一段落したら、ということになるかと思います。



バロー(リカード)の中立命題に関する補足

2009年02月02日 17時54分51秒 | 経済関連
リカードの中立命題に関連して、補足です。


資料が見つかったので、追加しておきます。

ESRI経済分析163号-財政赤字と経済活動:中長期的視点からの分析(序文)

井堀らの考察によれば、やっぱ「中立命題の成立はちょっと無理じゃね?」ということのようですよ(笑)。

いや、専門用語みたいなものを是非使いたい、というのは、否定はしませんが、だからといって、何にでも用いればよいというわけではありませんぜ。現実に成立している可能性の少ないものを、敢えて「中立命題によれば中立だ」みたいな話に落とし込むのはどうかと思うということですわ。

かなりの確信を持って用いているならまだしも、曖昧な「○○という用語がある」「○○という説がある」という程度にしか理解せず、これをもって政策の妥当性や有効性の評価に用いるというのは、より一層慎重であるべきでは。

更に、これをあたかも「学術的に正しい」かのように装いながら、大勢の人々に向かって誘導や煽動をする言説を「広く公表」するというのは、所謂「風説の流布」の類と何が違うのでしょう?
マスメディアの人たちがそうやって断片情報だけに踊らされることが多いからこそ、間違った意見や考えがいくらでも拡散していってしまうのですよ。これは、経済学の用語としてあるものを一切使うな、ということではなくて、正しく用いなさい、誤解のないように使いなさい、ということです。特にマスメディアの人々には、そうした義務を果たすべきでしょう、ということです。



これはトリックです>弾氏

2009年02月02日 10時46分39秒 | 俺のそれ
パイを大きくしたのに、減ってるじゃないか!

という文句を言うことで、パイを大きくしてもしょうがない、とか言うのはマズいですよ>断固guy氏


こちらね>はてなブックマーク - 404 Blog Not Foundパイを大きくしたら自分のスライスが減ったでござるの巻


これはよくありがちな手口。

もっと単純に、判りやすい例で書いてみるよ。

ある時点のパイの大きさを100とする。甲、乙、丙の3人で分ける。
甲:50%、乙:35%、丙:15%とする。
すると、取り分は甲が50、乙が35、丙が15となる。

ある時間経過後のパイを観察すると、甲は105、乙は75、丙は20となっていた。
この時、3人の取り分を比率で表せば、
甲:52.5%、乙:37.5%、丙:10%
で、パイの大きさは200だった。

さて、こういう時「パイが大きくなったのに、丙は15%→10%に''減少した''、だからパイを大きくしても無駄なんだ」と果たして言うだろうか?(笑)

割合で見れば、取り分の比率が低下していることは確かであるが、丙の絶対的取り分量が大幅に目減りしたわけではないからだ。少なくとも、15から20に5だけ増加したことは言えるのだから。もしもこうした取り分比率が公平ではないから、もっと比率を均等化するようにしましょう、ということなら、甲と乙の取り分の多くなった2.5%分を是正する為の措置(所謂再分配)を政策として考えればよいので、甲や乙の課税負担を多くして是正するといった方法は取り得るわけだ。このことは、「パイの大きさ」には関係のない政策であり、パイの大きさがどんなものであったとしても、切り分け方の問題でしかない。

カットの比率がバラバラじゃないか、不公平じゃないか、という意見は、「パイを大きくするのは無効」という意見を強化しない。
極端な言い方をすれば、直径20cmのピザやケーキでは8分の1カット(45度だね)だけだと「腹が一杯にはならない、空腹のままだ」という文句があるとして、たとえ同じ45度であっても直径1mにすりゃ腹が膨れるようになるよ、という話だ。そんだけ大きいなら、15度でもいいですよ、という人が大勢いるだろう。


もう一つの論点として、小飼氏の取り上げたパイというのは、フローの金ではなくてストックの方。資産を持ってる割合を見ているので、話がちょっと違うよ。

経済成長というのは、そもそも毎期のフローの大きさを見ているのであって、資産を見ているわけではない。

(経済の)パイが大きくなる=経済成長というのは、平たく言えば、
「毎月収入として渡される米の量」が増える、ということを意味する。
甲、乙、丙で分けている時、ある時点では甲が50、乙が35、丙が15の米を受け取っていたとする。ちょっとあとの期には、甲が70、乙が45、丙が25受け取っていれば、パイの大きさは100から140に増加しており、丙が食べられる米の量も増やせているよね、という話である。これが経済成長。
で、ストックという話になれば、食べないで貯蔵しておいた米の量が、最初の期には甲が100、乙が60、丙が5、ちょっとあとの期に見てみたら甲が150、乙が100、丙が15という風になっていたとする。この比率の変化を見ているのが、小飼氏の言い分なのだが、これはパイの拡大(100→140)という話と、自分ちの米びつに溜まっている米の量とを、混同して比較してしまっている。ストックで言えば、日本経済の富はどの程度か正確には知らないけれども、3000兆円とかナントカの規模になってしまうと思うよ。これはGDPの大きさが500兆円云々という話ではない。

ストックを比較するなら、「同じ系列」になっていなけりゃ、話にならないと思う。甲は「オレの給料は月給100万円だ」と言い、乙が「オレは貯金を1千万円持ってるぜ」と言っても、両者の出した数値の「100万円」と「1千万円」を比較すること自体に意味がないのと同じだよ。


そういうわけで、グラフや説明の時には、トリックや落とし穴に十分注意しないと、嘘が数字をつくる(by 新庄主計大佐)ということになってしまうだろう。




地域振興券の効果を正しく説明できるか?

2009年02月01日 18時07分42秒 | 経済関連
いちいち煩い連中が多いのだけれども、小渕政権下での地域振興券の効果がどうであったか、というのを、実は殆どの人たちが知らないのではないか?

本当に正確に説明できるのか?

ありがちな意見では、

 「ほとんど効果がなかった、たった0.1%しか効果がなかったんだ」

というのがある。これもバカの一つ覚えみたいに、繰り返し言うわけだが、本当に効果をよく考え検討してみたのか?
きちんと理解している人なんて、滅多にいないと思うよ。
知ったかぶりどもは、どこにでもいると思うけど(笑)。


まず、地域振興券が一体いくらばら撒かれたのか、言える人はいるか?多分、殆どが知らないだろうと思う。安直に批判している人たちは、いくら使って、どの程度の効果だったのかを知らないだろうね、きっと。

「約6200億円」使って、これとは別に「新たな需要喚起」分として、約2000億円が生まれたのだ、と考えられていたらしい。
たった6200億円じゃ、対名目GDP比で0.12%しかない(笑)。これを使ったら、別に喚起された分が約2000億円で、0.1%という数字は「個人消費の0.1%」程度、という意味である。

まずはこれを読むべき。
地域振興券の消費喚起効果等について

『結果として、地域振興券は、調査世帯については、本年3月~6月の消費を直接的に、振興券既使用金額の32%程度分、新たに喚起したとみられる。これを、交付済額約6,194億円のベースに単純に換算して、年ベースのマクロの消費効果をみると、消費の押し上げ額は、2,025億円程度(GDPの個人消費の0.1%程度)と推定される。』

と、このように記載されている。
実際には、使われた6200億円分は別に計上されるし、小売店の従業員たちの賃金や売れた商品の製造側にも恩恵が多少なりとも波及するだろうから、ないよりはマシだと言えるはず。合計で8200億円が消費に回されたわけだからね。


また、ESRI の計量モデルでも名目GDPの1%減税(ざっと5兆円超)で、消費の押し上げ効果は1年目で0.48%、2年目で1%となる。別に効果がまるでない、というわけではない。減税規模が6200億円程度しかなかったならば、押し上げ効果が少なくても不思議じゃない。公共事業の場合だとGDP統計上の記載という点で有利、というだけに過ぎない。

後はこちら>
ESRI,ESRI Discussion Paper No.12 - Did the Shopping Coupon Program Stimulate Consumption? Evidence from Japanese Micro Data

短時間効果は見られ、資産保有の少ない層での消費喚起に役立っているということのようだ。これは大体予想される結果だろう。だから、持続効果がない、とか言う連中というのは、はっきり言って頭が悪いんじゃないかな、と思うけど。だって、「bolus doseだ」って初めから言ってるのに、これを持続できないから「効果がない、ダメなんだ」とか考えること自体がヘンなんだもの(参考記事)。時間稼ぎという意味もあるし、鎮痛(=急激な落ち込み緩和)という意味もあるだろう。

年率換算でマイナス10%もまっ逆さまに落ちてしまいました!
何年ぶりかの、歴史的落ち込みになってしまいました!
みたいに、落ちてしまってから大騒ぎするバカが多すぎだからこそ、そうなる前に「ちょっとは緩和する即効作用のモノ」を使え、って言ってるんだろ。どうしてそういうことが理解できんのかね。

だから、何遍も言ってるでしょ?
「ないよりマシ」なんだ、って。

腐れ学者モドキとかが、あまりに多すぎ。
ニセ言説やエセ経済学知識の援用があまりに多すぎ。

嘘つきの連中がどうしてこんなに多いのだろうかね。




異常な経済運営が続く国~ニッポン・2

2009年02月01日 16時52分00秒 | 経済関連
昨日の記事の続きです。


4)目先の落ち込みはどうするか

とりあえず今すぐにインフレ率が高まるとか賃金上昇が起こるということはないので、あらゆる手段を考えるしかないであろう。大幅な減速は更なる需要減を招き、デフレ・スパイラルの悪夢が蘇る。なので、どんな手を使ってでも、需要を作らねばならない。しかも割りと即効性が求められるので、長期的に云々なんて寝言を言ってる暇などないだろうね。前にも書いたけど、今日のメシが必要なのであって、3年後の工賃とかでは今食べられない。

企業の収益状況を見ていくと、自動車とか電気関係の大幅な需要落ち込みは営業赤字となっているので、これはしょうがないわな。でも、他の業種なんかだと、必ずしも営業赤字が悪化しているということにはなっていない。どちらかといえば、保有株式や買収企業の投資損といった、特別損失関係の損益が影響していたりする。
なので、長期的な投資効果を考えるということであるなら、政府系の持つ国債を日銀が買い受けキャッシュに置き換える。このキャッシュで上場企業のインデックスを購入する(保有期間は無期限のもの)と良いであろう。特別損益の改善効果が見込まれる。年金運用収支も改善する。


他には、実需を生み出せるものが必要だが、イチオシなのが「医療情報ネットワーク」の整備だ(何度も書いたけど)。現在、激しく落ち込んでいる電気業界には大きなサポート効果をもたらすだろう。社会保障番号(住基ネットの活用という意味もあるよ)に、これまでのバラバラな保険番号を統合してしまう。医療保険制度の根本的な見直しということも必要になるだろう。けど、とりあえず将来的な展望だけを描いておいて、苦しい業界に仕事を作るという意味では現時点で投資を前倒しで開始し、必要となるネットワークの枠組みの基礎を構築しておけばよいと思う。将来時点では次々と機能を統合してゆく作業ができるようになっていればよい。社保庁の金だけはやたらと高額で、無駄に役立たずらしいレガシィシステムみたいなのは論外だけど。
例えば、5年契約という特殊な形にして、将来時点で発生する費用を前払いという形にしておき、今払ってあげると企業は助かるね、みたいなこととか。


また、例で書くよ。

いま一括で5億円払ったとする。でも、現時点でかかっている経費は1億円しかないとしよう。そうすると、4億円は相手に渡っているので、相手側が得をする、ということになる。4億円分の仕事をしていないにも関わらず、既に受け取ってしまっているわけですからね。でも、困っている時期なので、これはこれでいいんです。

で、来年に8000万円、次の年に2億円、その翌年に1億円、その次に1億円かかったとしよう。

      支払額
1年目  1億円
2年目  0.8億円
3年目  2億円
4年目  1億円
5年目  1億円

年3%の割引契約みたいなものとしておくと、前払い効果が出るんじゃないかな、と。2年目の残り4億円には3%分の利息が付いてるようなものなので、4億1200万円分の残額という換算にします。これを順次やってゆくと、こうなる。

      残額
1年目  5億円
2年目  4.12億円
3年目  3.42億円
4年目  1.46億円
5年目  0.476億円

5年目の1億円を支払う清算前時点では、4760万円が残っており、本来5億円から4.8億円を払ったので2000万円しか残ってないはずでしたので、約2760万円分得した、ということです。で、あと1億円を払わねばなりませんので、足りない分5240万円追加すれば済むということになります。政府側は総額5.8億円の仕事を5.524億円で済ますことができたので、お得になったというわけです。これは代金を前払いしたという効果により、3%分の利息をもらったようなものなのです。

苦しみが大きい企業には、割引率を大きくしてもいいので一括で払う額を多くしてもいいかも。
こうすることで、企業側は苦しい期間に仕事と代金が入るので助かる、政府は総額を節約できたので得するということになり、国民としてもその分安くインフラを手に入れることができたということになりますので、みんなにメリットがあります。あるとすれば、企業が前払いを受け取っていて倒産するような場合ですが、そういう危険性の高い企業にはこうした方法はとれないでしょうね。

でも、どうせ必要なものなのであれば前払いで契約しておき、割引率をきちんと設定しておけば(不当に低い水準とならないように、せめて貸出金利以上にはするべき)双方にメリットがあると思えます。


5)日本の「automatic stabilizer」効果は小さい

これもよく言われる論点ですが、所謂「ビルトイン・スタビライザー」のことです(英語記事で見かけた表記としては、「built-in」ではなく「automatic」でしたが、どうして日本ではビルトインとなっているのかは知りません)。日本の場合には一般政府の税収額が大きいわけではないので、この効果が他の先進国と比べて大きいわけではありません。
例えばNoord(2000)によると、G7の中では米国についで日本が小さく、GDP1%の変化率に対するスタビライザーとして働く政府収支変化率がOECD平均に比して約半分程度でしかありません。景気が悪化したからといって、これを緩和するような政府支出の効果は他の先進国ほどには期待できない、ということになります。ある程度は意図的に財政支出を拡大しないと、ある程度以上の変動には対応が困難になるかと思います。

これはヨットのクルーを思い浮かべてもらえればよいのでは。
3人乗りのヨットで、ヨットの傾きに応じてクルーが浮き上がる側に移動すればヨットの転覆力を減じます。けれど、更に傾いてしまって倒れる力が大きくなると3人の重さだけでは足りなくなるかもしれません。もっと多くのクルーがいれば、すばやく浮き上がっている側に移動して転覆を防げるということになります。こうした安定化の効果が、日米の経済構造では「弱く」、他のOECD諸国では約2倍の安定化の為のクルーが常にいるということです。


6)リカードの中立命題

これも、多くの場合には知識の断片だけを切り取ってきて、無闇やたらと適用しているのではないかと思えます。経済主体が不合理な行動や決定を行わないと絶対的に信じ込んでいるのであえれば、これを信奉するのを止めたりはしませんが、何でもかんでも「リカードの中立命題」という呪文で片付けようとする態度は賛成できません。

もしも本当にこの「命題」が実証されているのであれば、それを是非とも証明してもらいたいもんです(笑)。過去の実証研究では、必ずしも成立しているとは言えない、ということであるなら、そういう考え方はあるよね、でも現実にはどうかしらね、という程度でしょう。

また例で書いてみよう。
300万円の車を購入することを考えるとしよう。自分の収入は毎月一定で30万円だとし、財布には300万円の小切手が入っているものとする。
ここで、購入方法として、

①5年後に300万円+期間利息(市場金利と同じ)を一括で払う
②いま持っている300万円で払う

という2通りがあるとしよう。
もし①の方法を選ぶなら、財布の小切手を預けて市場金利で運用し、5年後に一括で払えばよい。②の方法を選ぶと期間利息はかからないが、今持ってる300万円を払うことになる。どちらも経済学的な意味は同じでしょう、という話だ。また最初から300万円を持っていなくて、代わりに借用書を書いて、5年後に一括で(期間利息も)払う、という約束であってもいいのですが、この場合には毎月の収入30万円のうち毎月5万円を積み立ててゆき、60回で300万円になります。この5年間の消費は、毎月5万円分ずつ減少することになりますので、消費減少分の合計額が300万円になる、ということになります。これは普通のローンの意味合いと同じであり、現在の300万円で買うのも将来キャッシュで300万円を払うのも(期間利息はおいといて)、消費に対しては中立ということになりますね。市場金利とか資金の現在価値とか、それらが完璧に正確である場合には、①も②も等価ですよ、というのは理解できますよね。異時点間の消費というのは、こういう単純な場合だと、他の消費を増やしもなければ減らしもしない、ということです。

<寄り道:
消費者金融の上限金利規制の話の時、借りられなくなると消費が減るとか経済が落ち込むとか、盛んに言い立てていた連中がいたが、そういうヤツラに限って、同じ口で中立命題がどうのとか言い出すんだよね。バカみたい。現実の個人の場合には、双曲割引という問題があるので、必ずしも合理的とは限らないんだけれども。>


リカードの中立命題というのを平たく書けば、政府が公共事業として「○○ダム建設事業」を行う際に(期間利息はクーポン)、

①´「○○ダム建設事業債」を発行し、5年後に一括で払う
②´たった今、建設事業費を国民から税金で徴収して払う

のいずれでも、国民の経済にとっては同じですよ、という話だ。どちらも国民の消費を増加させる効果はありません、ということを言っていたのが、リカードさんやバローさんということでしょう。どうしてかといえば、いずれ満期が来ることは判っているので、その分を増税されて徴収されちゃうと国民に予想できてしまうから、ということです。上の例で見た車を購入する時のローン返済負担を抱えた人と同じような状況、ということですね。

リカードの命題自体にまるで意味がない、ということではなく、現実を説明するには不十分ですね、ということを知った上で用いればよいことです。基本的理屈がとんでもないというわけではなくて、ある割合の人たちは異時点間の消費について合理的に対応しようとしますよ(=割引現在価値を正しく考えますよ)、ということを言っているまでです。

因みに、リカードの中立命題を支持する方々は、「たった今徴税する」という選択肢を否定できないに決まっているでしょうから、増税に文句を言うのは直ちに止めて下さい。大笑いですな。
いますぐ徴税して公共事業や減税に回しても、『国民の消費には中立』なのだ、という主張を支持することを意味しますからね。


まあ、多くの「なんとかモドキ」という連中は、自分の意見がどんなことを言っていて、何を招いたり支持する結果となるのか、具体的に考えたことがきっとないのだろうと思う。だから、あることないことの無責任な意見がいくらでも言えるんじゃないかな、と思うね。自分の中に不整合な部分が大量に混入していても、まるで意に介さず平気でいられるというのは、きっとそういうことだろう。

要するに、殆どが「知らないから」というところに行き着くわけだ。


実証を考えたいのであれば、例えば、幾度か取り上げたESRIのペーパー(増渕et al. 2007)のマクロ計量モデルでの乗数効果でも見てみたらいいのでは。
公共事業の消費押し上げ効果はあまり大きくない、ということは、同意できるだろう。公的固定資本の数字が大きくなるというGDP押し上げ効果があるからといって、人々の満足が得られる政策かどうかは慎重さが必要だろう。