ついにCOVID-19感染拡大防止から出席を断られたらしい安倍晋三が、ビデオメッセージを送った昨日の沖縄慰霊の日における追悼式。
「沖縄慰霊の日・全戦没者追悼式 安倍晋三首相あいさつ(全文)」
中身は昨年の内容とほとんど変わらぬ文章であったが、文芸評論家の斎藤美奈子が安倍晋三の「本音」を補ってくれていた。
さて、コロナ禍における安倍政権の「火事場ドロボー」的な動きに、多くの人たちが批判しているが、「特別定額給付金」の支給が遅れているとの批判から、総務相が最初にこんなことを発表していた。
「『1人1口座』義務化、検討表明 マイナンバーと連結―高市総務相」
なかなか普及しないマイナンバーを何とかしたいとの思いもあるのだろうが、当初から政府が狙っていたことが、銀行口座との紐づけであった。
これにより隠し財産があきらかになり脱税も防げるという狙いがあったのだが、個人情報保護の観点から容易には実現できなかった。
とりあえず「1人1口座」ならば抵抗は少ないだろうとの思惑なのだろうが、法律はひとたび成立すれば、その後は「改正レベル」で気が付いたらすべての口座が対象になる可能性もある。
そして、さらに、「運転免許証と一体化検討 マイナンバーカード普及へ―年内に工程表・政府」ということを発表した。
「手を変え品を変え、国民に何とかマイナンバーを作らせようとしている。この執拗なやり方には辟易するわ。」とか、「まぁ、中抜き団体を経由させて、特定企業を潤し、税金を浪費する気でしょ?」とズバリ核心を突く声もあった。
ところが、マイナンバー普及の旗振り役が、実は、「高市総務相も、菅官房長官も……歴代総務大臣はマイナンバーカードを使っていなかった」では恰好がつかないだろう。
〈中谷委員 まず、そもそも論で、私、菅長官、西村大臣、高市大臣のお三方に伺いたいんですけれども、マイナンバーカードを使って、このマイナポータルで、給付金でなくてもいいです、何かしらの電子申請をされた経験はありますか。エピソードなどがあれば教えてください。 高市国務大臣 ございません。 西村国務大臣 私は、毎年確定申告を、e-Taxをマイナンバーカードを使って行っております。 菅国務大臣 私はありません〉 自分たちが生み出した制度に対する当事者意識の欠如 筆者は現代ビジネスで5月7日に配信された「 10万円給付『ネット申請にマイナンバーカードが必須』の意味不明 」で、高市氏の前任の石田真敏衆議院議員をはじめ、当時の総務副大臣、政務官の政権担当者全員がマイナポータルでの申請を利用したことがなかったとする2019年2月の総務委員会の議事録を紹介した( https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119804601X00320190219&spkNum=50 )。 高市氏だけでなく、総務大臣経験者の菅官房長官もマイナポータルを使用していなかった現状に対してはっきりといえば、自分たちが生み出した制度に対する当事者意識がまったく欠如しており、マイナンバー制度自体が失策だったと認めているようなものだ。政府は制度を普及させようと、コロナ禍前に成立した今年度の予算で2458億円を投じ、買い物などで利用できる「マイナポイント」のキャンペーンを9月から実施しようとしている。しかし、これほど使い勝手が悪いポイント制度を今更利用しようとするのは、ポイントにめざとい消費者くらいで、焼け石に水だ。 1億人以上の国民がなぜマイナンバーカードを持たないのか 先の中谷氏がこう話す。 「民間企業であれば、社長や役員が巨額の予算を投じて自分たちが作ったサービスを利用したことがないなんてことはありえませんし、うまくいっていない事業の検証や改善を行わないまま新規事業を進めるなどということは論外だと思います。 1億人以上の国民がなぜマイナンバーカードを持たないのか、自分が使ってみなければその理由がわからないのは当然です。使い勝手はどうなのか、自分自身が体験をし、どういうものになれば国民が使いたいと思うのか、ユーザーの視点に立って考えることが組織のトップにおいては大変重要なことだと思います。 コロナ禍を経験して日本でもハンコや通勤の文化の見直しがようやく議論され始めましたが、マイナポータルに関してはiPhoneとMacにも昨年末にやっと対応したくらいで、まったく世の中の動きについていっていない。今回の給付金騒動で見えた課題を真摯に受け止め、非常に時代遅れで効率の悪い仕組みや考え方を見直す好機と捉えなければならないでしょう」 時代遅れのシステムからの脱却を 現在、高市氏は一人1口座のマイナンバーとの紐付けを「できれば義務化したい」としており、来年1月に召集される通常国会に改正法案を提出する予定だ。しかし、日本では個人の資産を政府に把握されることに対する不信感は強く、「マイナンバー制度の議論が始まった際も同様の議論が出たが不可能だった」(当時を知る自民議員)ため、今回も任意の形となり骨抜きになる可能性が高い。そうなれば、いよいよマイナンバーは無用の長物ということになろう。 スマートフォンがすでに国民の間で普及していた2016年に本格運用が始まったマイナンバー制度だが、カード保有という形式にこだわるなど、発想がパソコン時代からまったく脱却できていない。時代遅れのシステムを無理矢理利用しようとせず、もっと簡素で使いやすいシステムを新たに構築する方が安上がりで、何より国民のためになるのではないか。 |
「簡素で使いやすいシステム」といえば、6月19日から移動自由になるという記者会見で、安倍晋三は19日から導入する接触確認アプリを活用したクラスター(感染者集団)対策の強化や検査体制の拡充に取り組む方針を示していた。
実はこのアプリは実用までには二転三転のトラブルがあった。
「新型コロナの接触確認アプリ、公開は5月下旬以降にずれ込み」
「接触通知アプリ導入は6月 米2社との調整で遅れ」
そして厚労省のHPにはこんな「お知らせ」があった。
まさに安倍政権の末期症状を暗示するかのような「後手・後手・ドタバタ」振りであった。
もともこの程度のことは些末なことかもしれないが、「給付金をめぐるスキャンダル」は決して些末ではなく、致命的になる可能性がある。
在京大手マスメディアの現役記者(朝日新聞経済部記者 内藤尚志)が、一連のスキャンダルをまとめた記事をWEBに投稿していた。
「安倍政権に激震、河井夫妻逮捕を上回る『給付金スキャンダル』の破壊力」
首相“直撃”の相次ぐ不祥事 揺らぐ政権基盤 「桜を見る会」や「検察人事」で揺れた安倍政権だが、現職国会議員の「河井克行・案里夫妻の逮捕」という不祥事にまたもや見舞われた。 側近だった克行議員を法相に任命したのは安倍晋三首相だったし、公職選挙法違反(買収)の容疑がかけられている案里議員の参院選出馬を強引に進めたのも首相と菅官房長官だった。 政権直撃のスキャンダルが相次ぐ中で、とりわけ致命傷になりそうなのが、新型コロナウイルス対策の給付金をめぐる“税金横流し”の疑惑だ。 過去、「森友・加計問題」などの不祥事が起きると、経済や雇用の好況をアピールすることで支持率回復につなげ求心力を維持してきたが、“給付金スキャンダル”はアベノミクスのど真ん中を直撃したものだからだ。 持続化給付金の委託で 「中抜き」や横流しの疑惑 問題になっているのは、売り上げが急減した中小企業などに最大200万円を出す「持続化給付金」。コロナ禍を受けた緊急経済対策の柱の1つだが、申請受け付けや審査といった手続き業務はまとめて民間に委託している。 それを769億円で受注したのは、一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ推協)だった。 ところが、業務の大半は749億円で広告大手の電通に再委託されていたのだ。さらに電通からも業務が子会社5社に割り振られ、人材派遣大手のパソナや、ITサービス大手のトランスコスモスなどにも外注されていた。 サ推協は2016年、電通、パソナ、トランスコスモスの3社でつくった団体だ。 電通やパソナがじかに請け負わず、団体や子会社を挟むのは、なぜなのか。再委託や外注のたびにお金が「中抜き」されているのではないのか。 サ推協は法律で定められた決算公告を一度もしていなかった。 先週までの国会は、この問題で大荒れだった。 なぜ政府は、このような団体に巨額の公的業務をまかせたのか。769億円の出どころは、国民が納めた税金だ。本来ならもっと安い価格でできるはずなのに、税金がムダづかいされているのではないのか。一部の企業に横流しされているのではないか――。 予算委員会で、野党側はこぞって政府を攻め立てた。 立憲民主党の枝野幸男代表は「電通ダミー法人とでもいうような法人による丸投げ、中抜きという疑惑」だと断じ、同党の蓮舫氏も「こんな団体に大切な税金を渡して、適正ですか」と迫った。 国民民主党の玉木雄一郎代表は「四重塔、五重塔ぐらいになっている。国のチェックがいき届きにくくなる」と指摘し、何回もの再委託や外注を厳しく批判した。 これに対し、安倍首相は、あとで精査して実際にかかった費用だけを渡す「清算払い」のため、税金のムダづかいは起きないと反論した。769億円はあくまで見込みで、このまま払うか決まっていないというわけだ。 さらに「中抜きという、それも言葉づかいとしてどうなのか」とも反発した。 再委託や外注の不透明 全容を把握できていない経産省 だが、質疑や経産省の担当職員からのヒアリングで、驚くべき事実が浮かんできた。 どの作業にどんな企業がかかわっているのかといった業務の全容を、担当する経済産業省が把握できていなかったのだ。 野党議員が調べた外注先の企業名について、梶山弘志経産相は「初めて聞いた」と答えるしかなかった。 「何次下請けまであるのか」「委託先との契約書を出してほしい」と、経産省の担当者に求めても、明確な答えはないままだった。 手続き業務には、申請の受け付けや書類のチェックによる審査、問い合わせへの対応、お金の振り込みなど、多くの作業がある。どこの作業をどの企業が請け負っているのかもわかっていない役所が、それぞれの作業でムダに税金が使われていないかを精査できるのか。そんな疑念が、かえって深まった。 野党側が色めき立つのも無理はない。この問題は「税金のムダづかい」にとどまらず、安倍政権の暗部を象徴するスキャンダルへと発展しつつある。 政権に及ぼすダメージは「桜を見る会」や「検察人事」「河井夫妻逮捕」よりはるかに大きい。 コロナ対策でも「お友達重視」 「談合まがい」の入札 その理由は主に2つある。 1つは、安倍政権の特質でもある「お友達優遇」が色濃く出ている点だ。 経産省は、委託先を決める際に入札をしている。参加を検討したのは、サ推協のほか、世界的なコンサルティング会社のデロトトーマツファイナンシャルアドバイザリーと、まだ名前が明らかになっていない1社。 サ推協が競り勝ったわけだが、入札前に経産省はサ推協の関係者と3回も面談していて、その場に電通と電通子会社の社員も同席していた。経産省はほかの2社とも入札前に接触していたものの、それぞれ面談は1回しただけだった。 「出来レースだ。談合まがいじゃないか」(立憲民主党の大串博志氏)との野党側の追及に、経産省は反証できないでいる。入札は形だけで、初めからサ推協にやらせると決めていたのではという疑いが拭えないのだ。 電通は選挙で自民党のポスターを手がけるなど、もともと同党に太いパイプを持つ。 安倍首相夫人の昭恵さんは、電通に勤務した経験がある。また、サ推協の設立にかかわったパソナグループの会長を務めるのは、安倍首相が官房副長官や長官として支えた小泉政権で経済閣僚を務めた竹中平蔵氏だ。 サ推協から電通と電通子会社を介して業務を割り振られたイベント会社のテー・オー・ダブリューも、首相補佐官と内閣広報官をしている経産省の長谷川栄一氏を顧問に迎えていた時期がある。 長谷川氏は第1次安倍政権で内閣広報官を務めるなど、古くからの首相側近として知られている。 政権と近しい企業が、おいしい仕事を優先的に割り当てられ、うまい汁を吸っているのではないか。コロナ禍のもとで収入が減ったり営業自粛を強いられたりしてきた多くの人たちにはそう映り、強い批判を招く結果になったといえる。 安倍政権の「お友達優遇」は、森友・加計学園をめぐる疑惑以来、与党内も含めて批判をされてきた。 だが、モリカケ問題は、国有地売却や獣医学部開設など個別案件をめぐるものだったのに対し、給付金スキャンダルは安倍政権の経済政策の在り方への不信感を抱かせるものだ。 事業者に届かない給付 原因の解明進まず、倒産や失業 政権にとってより痛手なのは、もう1つの理由のほうだろう。 それは「業務の目詰まり」である。持続化給付金を申請してもなかなか入金されず、そのせいで事業をあきらめたり失業したりする人たちが続出している。 給付金は5月1日から申請できるようになった。オンラインでの手続きが原則で、経産省は入金までの目安を「2週間」と公表している。安倍首相は5月4日、緊急事態宣言の延長を受けて開いた記者会見の冒頭で「最速で8月に入金する」と言い間違えて、慌てて会見中に「5月8日」と自ら訂正して「スピード感を持った支援」を強調してみせた。 ところが、申請から2週間どころか1カ月たってもお金が届かないケースが相次いだ。 |
残念ながら「安倍1強」が長く続いたことによる弊害で内部からの批判者が皆無という状況を鑑みれば、「政権が自らの失政に向き合い、うみを出し切」るという自浄能力には全く期待できず、国民有権者が秋頃と噂されている総選挙で自民党を大敗させるしかない、とオジサンは思う。