警報級の大雪の影響で東北地方や日本海側の各県では生命の危険性が増すほどの事態となっているのだが、幸いなことに東海・関東沿岸部では晴天が続き、所によっては梅が咲き.、メジロや鶯が見られ、「春近し」という声も聞こえてくる。
そんな声には「ワクワク感」どころか悲壮感を漂わせているのが関西万博の責任者たちであろう。
「万博当日券の導入、首相頼み?…吉村知事が議論なく直談判で協会困惑」
販売が低迷している大阪・関西万博の入場券を巡り、石破首相が5日、会場で購入できる当日券の導入などテコ入れを図る考えを表明した。大阪府の吉村洋文知事らの「直談判」に応えた形だ。しかし、当日券は運営主体の日本国際博覧会協会(万博協会)内では議論されておらず、協会幹部からは困惑の声が上がる。 ■ピンバッジ贈呈 「『これは大阪の話でしょ』ということではなく、政府をあげて万博を成功させる」。石破首相は、官邸で面会した吉村氏らに対し、入場券の販売促進への協力を約束した。 首相は最近、万博に関する発信が目立っている。1月19日には、初めて万博会場の 夢洲ゆめしま (大阪市此花区)を訪問。今月4日には、官邸に飾られた公式キャラクター「ミャクミャク」のぬいぐるみが声を発し、通り過ぎようとした首相が驚く様子も報道陣に公開した。 少数与党下の国会で、首相にとって吉村氏は新年度予算案の成立に向けて協力を取り付けたい日本維新の会の代表だ。政府関係者は「首相は先々も考えて会ったのだろう」と推測した。 一方の吉村氏は会談で、前日が誕生日の首相に、万博の主要な交通手段となる大阪メトロの車両のピンバッジをプレゼント。鉄道マニアの首相は満面の笑みで受け取った。吉村氏は首相の理解を得ることで、官僚出身者が要職を占める万博協会を動かす思惑があるとみられる。 ■「もう一人の責任者」 万博の入場券の販売実績は1月29日時点で約767万枚で、1400万枚の前売り目標の半分程度にとどまる。「並ばない万博」を掲げる万博協会は、混雑を避けるため、ネットでの来場日時の指定やパビリオンの予約制を導入したが、手続きが複雑なことが販売不振の原因の一つとされる。 吉村氏は首相との会談後、記者団に対し、「開幕すれば『行ってみたい』と思う人は増えると思う。その時にネットで買うのにえらい複雑ですねとなる可能性が非常に高い」と指摘。「準備期間を入れると、ここが最終のタイミングだった。万博は国と、府・大阪市、経済界の3者が当事者なので、もう一人の責任者である首相にもきちんと言わないといけない」と、直談判の理由を説明した。 府幹部は「現在のシステムはあまりに不親切で、ユーザー目線が欠けている。万博協会はチケットが売れる前から混雑の心配ばかりしていて、本末転倒だ」と語気を強める。 ■販売不振 万博協会の理事を務める吉村氏はこれまで、入場券の販売方法の改善を理事会で提案してきたが、協会側との対立が目立った。昨年には、コンビニなどで購入でき、予約も不要な紙チケットの導入を主張。協会側が難色を示し、利用できる日を制限する折衷案で決着した経緯がある。ただ、紙チケットも昨年10月13日の発売から2か月で5000枚程度しか売れていない。 万博の入場券は、前売りも含めて全体で2300万枚を売る想定で、販売不振は運営費の赤字に直結する。関西の経済界幹部は「赤字になれば政府や府・市、経済界で責任を押しつけ合うことになりかねない。『やれることは全部やる』という吉村氏の姿勢は評価できる」と話した。 一方、万博協会の事務方からは、頭越しの首相への要請に不満も聞かれる。 当日券の販売は会場の入場口付近に売り場を設ける必要があるが、買い求める人で行列ができれば混乱が起きかねず、「並ばない万博」がかけ声倒れになる可能性がある。 万博協会幹部は「事前に何の話もなかった。吉村氏は、意見があるならなぜ協会内で解決しようとしないのか」と漏らしつつ、「首相がやるといったら、役人はやるしかない」と話した。 |
こんな時代遅れの「万博」に国の税金を使うよりは、インフ老朽化した日本のインフラに税金を投入すべきであろう。
「老朽化するインフラ」
埼玉県八潮市の道路陥没事故は、改めてインフラ整備の大切さを考えさせるものとなった。橋やトンネル、道路、河川、上下水道やガスの配管、都市の地下に走っている雨水管等々、見えるものや地中に埋められて見えないものも含めて、この維持管理がいかに大切かを突きつけている。いわゆる箱物に傾斜しがちな自治体も多いなかで、こうした目立たないインフラのメンテナンスや更新こそが重要性を増しており、今回のように大規模陥没して人命まで奪われてからでは遅い。 都市開発がたけなわとなった高度成長の時期に整備したものといっても、それからゆうに50年近くを迎えており、当然劣化が進んでいる。国土交通省の調べでは、2030年までに50年をこえる社会資本の割合は、橋(73万橋)で55%、トンネル(1万2000)で35%、水道管(総延長74万㎞)で21%、下水道管(総延長49万㎞)で16%になるという。地球一周がおよそ4万㎞といわれているので、水道管や下水道管の総延長を考えると、いかに細かく全国津々浦々に張り巡らされているかがわかる。水道管だけで地球の19周分、下水道管で12周分にもなるのだから、車1~2台乗りつぶしてもたどりつけない途方もない規模である。しかし、そうした社会インフラがわたしたちの当たり前の日常を支えているのだ。 2000年代からこの20年近くは、こうした社会資本の老朽化問題が幾度も取り上げられ、国土交通省が音頭をとる形で更新もそれ以前よりは積極的におこなわれてきた。しかし、とてもではないが費用も労力も膨大で追いついていないのが現状だ。 社会インフラの老朽化は日本のみならず、とくに先進国で共通の問題にもなっている。イギリスやアメリカも同様に深刻で、新自由主義政策によって行財政の効率化をやりまくってきた国々で弊害が出ているのも特徴だ。すべてを市場原理にゆだね、水道はじめとした公共サービスを民営化し、企業は利潤追求のために極限まで老朽インフラに手を付けない。社会全体をどう維持するかといった観点が抜け落ち、営利追求の具にされた結果でもある。 日本国内でも笹子トンネルの崩落事故があったが、老朽化しているにもかかわらず手を付けなかったことで幾人もの犠牲者が出た。高速道路の運営会社からすると、トンネル改修には膨大な費用を伴うことから、企業経営にとっては重荷である。しかし、怠って安心安全に人やモノを移動させるという社会的使命が抜け落ちたのでは本末転倒である。福知山脱線事故とて同じである。 橋やトンネル、上下水道など暮らしを支える社会インフラの整備は国や自治体が責任を持っておこなうべきもので、優先課題としては大きい。そのために国家予算を投じて、全国津々浦々で土木建築業者をフル動員して事にあたるなら内需も生まれ、都市や地方を問わず経済の活性化にもなりえる。公共投資による財政出動である。 今どき防衛費に8~9兆円も注ぎ込んで米軍需産業に貢ぐくらいなら、そのカネを全額社会インフラの整備に突っ込んだ方がはるかに国民の暮らしの防衛に資するに違いない。まさに防衛費である。あるいは何の役にもたっていない子ども家庭庁とやらに7兆円もの予算をつけるぐらいなら、それも回せばよい。地方自治体がもっと積極的に社会インフラの整備をおこなえるよう、国の補助率を引き上げるなど、政策誘導していくことも不可欠である。 |
「鴨葱」 と散々批判されながらも、気前よく莫大な投資話でなんとかトランプの怒りを買わずに無事に帰国した石破茂だったが、いざ日本のインフラの惨状に目を向ければ安閑としてはいられないはずである。
「石破、空気読め。八潮市道路陥没で日本に広がる“明日は我が身”感…道を歩けず風呂も入れずに何が「楽しい日本」か?」
安心して道を歩けず、風呂や洗濯もできず、運が悪ければ穴に落ちて命を落とす。埼玉・八潮市の大規模な道路陥没事故は、わが国全土が“戦場”になったことを国民に気づかせた。この状況で「楽しい日本」を目指すなどと空気が読めないことを言っているのが石破司令殿だ。全国で老朽化するインフラの大崩壊をふせぐために、今どんな政策が必要か。 ■日本全国すべて危険。どこが河やら道さえ知れず 「楽しい日本」だの、「令和の日本列島改造」だのと石破首相が言葉遊びをしている間に、この国は生活の土台から崩れかかっている。 1月28日午前10時前、埼玉県八潮市の交差点。トラックが左折しようとしたその瞬間に道路が直径5m、深さ10mにわたって陥没した。 トラックは頭から穴の中に落下し、74歳の男性運転手が土砂に埋もれて安否不明になった。下水の流入が続くなか救出作業が難航、一部地域で風呂や洗濯などの排水が制限され、長期間にわたり住民生活が大きな影響を受けている。 道路の地下を走る内径4.75mもの下水道管が何らかの原因で破損、そこに土砂が流入して地下に空洞ができたことによるらしい。下水道管は約40年前に埋設されたもので、汚水から発生する硫化水素のためにコンクリートが腐っていったようだが、つまるところは老朽化のせいだ。 現場は埼玉県が管理する幹線道路。多くの主要地方道と同じく巨大な下水道管が埋設されているが、交通量が多いゆえに設備改善を進めにくいという“落とし穴”がある。 下水道管の耐用年数は50年だが、場所によっては40年でもこのようなことが起こる。50年以上を経た下水道管は国全体の7%を占め、20年後には40%に達するというから、大変だ。 むろん、どんな道路でも油断はできない。その下には下水道管だけでなく、水道管、ガス管、電話、電気設備など、ライフラインがいっぱい埋まっている。水道管の破損による道路の陥没が各地で頻発しているのは周知の通りだ。 道路もおちおち走れないとなれば、「楽しい日本」どころではない。今後、どこで道路が陥没しないとも限らないのだ。道路だけではない。橋もトンネルもだ。あらゆるインフラが経年劣化していっている。今、おそらく多くの国民が不安を抱いているだろう。 ■死なないのは運が良いだけ!? 2030年の絶望的なインフラ状況 日本のインフラは、1955年から90年にかけての高度成長期に集中的に整備された。このため、老朽施設が急激に増え続けている。 国土交通省が5年に一度行っている点検調査によると、全国の橋梁(約72万橋)のうち、2030年には建設後50年を超えるものが55%におよぶ。また、トンネルは約1万1000箇所あるが、そのうち50年以上の老朽施設が30年には36%にも達するという。 不安をあおるようだが、事実を事実として受けとめることも必要だ。 われわれ住民はともすれば目に見えない施設劣化への関心が低く、近くで事故が起こらないと問題視しない傾向がある。自分たちは大丈夫という心理メカニズム、すなわち「正常化バイアス」のせいだろうか。 インフラの老朽化に関係する事故でメディアに大きく報じられたものとしては、天井板が崩落し走行中の車両に乗っていた9名が死亡した「中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故」(2012年12月)のほか、東京都北区で水道管が破損し、周辺の道路が陥没、20戸以上が浸水(2018年7月)したり、和歌山市の紀の川にかかる水道橋の一部が崩落し、約6万世帯が1週間にわたり断水(2021年6月)したケースが挙げられる。 こうした事象が起こるたびに、メディアで老朽インフラの問題が取り上げられ、国会でも現状と対策についての質疑が繰り広げられる。しかし、その議論は長続きせず、いつしかメディアの報道も立ち消えになるのがお決まりのパターンだ。 通常国会がはじまったばかりの国会でも、老朽インフラ対策についての議論が行われている様子は今のところなさそうだ。 連日、テレビ画面には、不運なトラック運転手の救助作業が続く道路陥没現場が映し出されているというのに、実に不思議なことだ。 ■空気も本も読めない石破首相は堺屋太一を“誤読”している 石破首相は1月24日の施政方針演説で次のように述べた。 故・堺屋太一先生の著書によれば、我が国は、明治維新の中央集権国家体制において「強い日本」を目指し、戦後の復興や高度経済成長の下で「豊かな日本」を目指しました。そして、これからは「楽しい日本」を目指すべきだと述べられております。私はこの考え方に共感するところであり、かつて国家が主導した「強い日本」、企業が主導した「豊かな日本」、加えてこれからは一人一人が主導する「楽しい日本」を目指していきたいと考えております。 世の中の雰囲気を変えたいと思ったのかもしれないが、「楽しい日本」というキャッチフレーズに違和感を抱いた人は多いようだ。 「苦しい国民生活の状況を認識していない」(国民民主党 古川元久代表代行) 「最終的な目標として“楽しい日本”を目指すことは必要です。そのためにもまず作り上げるべきは“強い日本”では」(自民党 小野寺五典政調会長) 緊張感を増す世界情勢に不安を抱き、重税感と物価高に苛まれ続ける一般市民の心情に寄り添うことをせず、カラ元気を促すような虚しい文言を振りかざしても、無神経と思われるのがオチだ。よく言われるように「空気が読めない」ということか。 そもそも、堺屋氏の言いたかった「楽しい日本」とは、関西・大阪万博を後押しする意味も含まれているわけであって、その著書『三度目の日本 幕末、敗戦、平成を越えて』からも「楽しい日本」の具体的なイメージを読み取るのは難しい。 石破首相は「すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、『今日より明日はよくなる』と実感できる国家」だと言い、「令和の日本列島改造」を政策の柱に掲げるが、地味なわりに膨大なコストと人員を要する老朽インフラの管理、補修という項目は抜け落ちている。 夢のある新規事業も必要だろう。しかし、現在の生活を維持するためのインフラがあちこちで壊れはじめたら、「すべての人が安心と安全を感じる」などということは夢のまた夢である。 ■国民は、地味な石破首相に浮ついた政策など求めていない むろん、人口減少、少子高齢化が進むこの国で、インフラの維持管理を行うための財源を安定的に確保するのはむずかしい。このため、国土交通省は2013年に「インフラ長寿命化計画」を策定、不具合が生じる前に対策を行う「予防保全」への転換により、コスト縮減をはかろうとしている。 ドローンやAIを活用した効率的な点検方法も実用化されつつある。 ただ、計画はしっかりあっても、財源不足、技術系職員の減少の課題が解消されない限り、実行は覚束ない。 日本における公共事業予算の配分は、近年「新規建設」から「維持・管理」へとシフトしてきたのは確かである。しかし、インフラの老朽化スピードに対策が追いついていないのが実態だ。今後10~20年でインフラの維持・管理を適切に行わなければ、重大な事故が増加し、国全体の経済活動や安全に深刻な影響を与える可能性がある。 インフラの維持管理・更新は「現状維持」にすぎず、莫大なコストがかかるわりに、新規建設ほど政治的に目立たないこともあって予算計上が後回しにされがちだ。つねに選挙のことが頭を離れない政治家にとって、国民へのアピール力に欠ける政策に過ぎないからだろう。 しかし、なにより今の生活の質を落とさないことが、消極的なようでいて実はもっとも前向きな政策ではないか。 「楽しい日本」が上滑りのキャッチフレーズにならないために、石破首相は地に足をつけた施策に重点を置くべきではないだろうか。持ち前の地味さ、真面目さ、人のよさで勝負したらいい。浮ついた夢を語るより、暮らしを支える政策こそ、石破首相にふさわしい。 |
そもそも石破茂は自分の派閥は雲散霧消しており、自民党内には強力な「インフラ」を、持ち合わせていない。
日本のトップにとっての最大のインフラは国民の支持であろう、とオジサンは思う。