人の名前は大部分が生みの親(父母)が決めて役所に届けて受理されれば決定する。
もっとも、たとえ親といえども「公序良俗」に反するような名前はたびたび問題になっていた。
28年前には「悪魔ちゃん命名騒動」という全国的に関心が高まった事件があった。
1993年8月11日、東京都昭島市役所に「悪魔」と命名された男児の出生届が提出された。市役所は「悪」も「魔」も常用漢字の範囲であることから受理したが、受理後に戸籍課職員の間で疑問が出たため、法務省に本件の受理の可否に付き照会した。法務省から「問題ない」との回答があったため受理手続きに入ったが、後日、「子の名を『悪魔』とするのは妥当でなく、届出人に新たな子の名を追完させ、追完に応じるまでは名未定の出生届として取り扱う」旨の指示が出されたことから、受理手続きを完成させず、戸籍に記載された名欄の「悪魔」の文字を誤記扱いとして抹消し、夫婦に対して別の名前に改めるよう指導した。届出者である父親は、東京家庭裁判所八王子支部に不服申し立てを行い、市と争った結果、1994年(平成6年)2月1日に家庭裁判所が「受理手続きを完成せよ」との判断を下したことで申立人である父親の申し立てが認容された。市は即時抗告したが、申立人である父親が不服申し立てを取り下げ、その後、別の名前で届出が受理されたことにより、この騒動は終了した。 |
それから世の中も大きく変わり21年経った頃、中国古代書法研究の第一人者で、漢字のプロである國學院大学・佐野光一教授は「“悪”という文字は、“善”の対立概念として、ネガティブなイメージで理解されていますが、人名では、ずば抜けて優れたという意味があり、力強さを表す言葉でした」と解説していた。
たとえば、平家物語に登場する義経・頼朝の異母兄・義平の幼名は悪源太。悪人ではなく、むしろ『勇猛な源家の長男』というポジティブな意味が込められた名前なのだそうだ。
佐野教授は「漢字の意味まで遡って考えれば、悪魔(亜熊?)ちゃんという名前も、案外、おもしろい名前だったの かもしれません。最近、流行しているキラキラネームの方がよっぽど問題だ」という。
さて、2003年に重症急性呼吸器症候群はSARS( severe acute respiratory syndrome)の呼称で報告され、これが新型のコロナウイルスが原因とされたらしいのだが、その後2020年になって、さらに新型コロナウイルスによる肺炎が世界各地で突如発生し、拡大したのだが、米国の当時のトランプ大統領は「中国ウイルス」、日本の麻生太郎などは故意に中国と関連付けて「武漢肺炎」と呼び、当時の中国メディアは「『武漢肺炎』『中国ウイルス』の呼び方をやめよう、中国政府」という記事を流していた。
かなり、意図的な悪意を持った連中による呼称だったので、周囲の連中も「さもありなん」といった」雰囲気が漂っていた。
その後WHOはいかなる地域や国とも関連付けないため新型コロナウイルス感染症の名称を「COVID-19」と決めて今日に至っている。
しかし厄介なウイルスは宿主に入り自らをコピーしながら変異するのだが、最近はその変異の期間が短くなり、また世界各国から変異の報告が上がっている。
当初は「変異種」と呼ばれていたが、今年の1月29日に、日本感染症学会が「【重要】変異「種」の誤用について(報道機関 各位)」というプレスリリースを発表した。
報道機関 各位 昨年12月19日に英国ボリス・ジョンソン首相から英国で感染力が7割強くなった変異株が出現し、急速に英国内で拡大している声明がだされておりましたが、今月19日には静岡県で市中感染と思われる変異株による症例が確認されております。 これを受けて、国内の報道においては、変異“種”という表現が一部報道機関で統一して用いられているようですが、これは学術的には誤用となりますので、今後は変異“株”と正しく表記していただきたくお願い申し上げます。 |
要するに、突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象なので、この中で、新しい性質を持った子孫ができることがある。
この子孫のことを変異“株”と呼称し変異株は、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化しているのだが、もともとの生物の種類は変化していないので同じウイルスの複製バリエーションにすぎず、ウイルスの名称は変化しないということらしい。
しかし今年に入り、この変異株が多くの国で発生・発見され、その発生国の名前が付けられている。
「コロナ変異株の名称をWHOが発表、ウイルスの名前は誰がどうやって決めるのか」
最初に確認された場所は発生した場所ではない 科学的な観点からも地名の使用は避けるべきだ。誤解を招くし、最悪の場合は全く事実に反することもある。 実際のところ、南アフリカ型と呼ばれる変異株がどこで発生したのかは、科学者にもわかっていない。最初に検出されたのは確かに南アフリカだが、最初に変異が生じた患者はいまだに特定されていない。南アフリカが他の国よりも多くの遺伝子解析を行ったから変異が見つかったというだけで、実はその前にどこか別の国から入ってきた可能性もあるのだ。 しかも、この変異株は世界中に広がり、今では米国のほうが南アフリカよりもはるかに感染者数が多い。「そう考えると、南アフリカ型という言い方がいかに理不尽かわかるでしょう」と、アブドゥール・カリム氏は言う。 不正確な名称をつけたことによる影響は、現実に現れている。米国は今年初め、南アフリカ、ブラジル、英国からの渡航者へ入国制限をかけた。名称をめぐる影響が、長期にわたって後を引きずることもある。1918年に世界的に大流行したインフルエンザは、最初の症例が米国で報告されたにもかかわらず、「スペインかぜ」という名で広く知られていることから、発生から1世紀以上たった今もスペインが起源だと思い込んでいる人が多いと、ホドクロフト氏は指摘する。 「病原体を命名する際の決まり事はありません」 疾患の名称を決めるのはWHOだが、ウイルス名はウイルス学者と系統学者で構成される国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって決定される。 2020年2月、ICTVは当時2019年新型コロナウイルス(2019 novel coronavirus)と呼ばれていたウイルスをSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2の略)と改名した。米アイオワ大学の微生物学者でICTVのコロナウイルス研究会の一員でもあるスタンリー・パールマン氏によると、2003年に流行したSARSのウイルスSARS-CoVに遺伝的に近かったため、この名称を採用したという。 この世界にはあまりに多くの病原体が存在することから、ICTVは種名までは命名するものの、それよりも下位になる株名までは関与しない。株に関しては、最初から正式に命名されるわけではなく、個々の科学者の間で何となく決まる場合が多い。 「病原体を命名する際の決まり事はありません」と、ホドクロフト氏は言う。科学者が考えた名称が、科学界で広く受け入れられるか、それとも別の名が主流になるのかは、成り行き任せだという。 ギリシャ文字のアルファベットを採用 ウイルスの変異株が全国的なニュースになることはめったにない。しかし、今は一部の変異株が新たな感染の波を引き起こし、メディアで大きく取り上げられていることから、一般人にもわかりやすく、地名を使わない名称を求める声が上がっていた。 そこでWHOは、変異株の名称を決める際のルールを定めるため、ウイルス学者や、微生物の命名に詳しい科学者を集め、「発音しやすく、特定の人々の印象を悪くしない」名称を提案するよう要請した。協議の結果、専門家はギリシャ文字のアルファベットを使用することを提案した。 ただし、全ての変異株を改名するのではなく、特に毒性や感染力が強く、ワクチンや治療薬が効かない恐れがある4種類の「懸念される変異株(Variants of Concern:VOC)」に対して新名称を適用する。アルファとベータのほか、ブラジルで最初に検出されたものを「ガンマ」、インドで最初に検出されたものを「デルタ」と名付けた。 さらに、クラスターの発生が確認されたものや複数の国で確認された6種類の「注目すべき変異株(Variants of Interest:VOI)」に関しても、「イプシロン」「ゼータ」「イータ」「シータ」「イオタ」「カッパ」と名付けた。 WHOは声明のなかで、政府や報道機関などに対し、今後は新しい名称を用いるよう求めている。 とはいえ、地名の代わりに実際に新たな名称を一般に浸透させるのは難題だろう。発表前のインタビューでホドクロフト氏は、WHOが変異株の新名称を決定するために専門家を集めたように、ウイルス学者を集めて、公の場で常に新しい名称を使用するという同意を取り付けられれば、科学界にも一般社会にも広く浸透していくだろうと話した。 |
しかし、WHOの「SARS-CoV-2 亜種の命名」というレポートをみればますます複雑化してわからなくなる。
英国(アルファ)
南アフリカ(ベータ )
ブラジル((ガンマ )
インド(デルタ )
この程度ならまだ理解できる人は多くいるであろう。
しかし、「イプシロン 」、「ゼータ 」、「イオタ 」、「カッパ 」・・となると一般的には理解不能となってしまう。
これからは、以下のような「つぶやき」も解説が必要になってくるのでは、とオジサンは思う。
デルタ株(インドではじめに確認された株)はアルファ株(イギリスで最初に確認された株)に比べ、入院は2.7倍、感染力は50-70%増し、とのこと。ワクチン接種のすすむイギリスで感染者が再び増えてきていることはインド株の感染力も一因でしょう。 https://t.co/T6P8FSaCvP
— 宮本徹 (@miyamototooru) June 4, 2021
「すれ違っただけで感染」という表現はオーストラリアのビクトリア州の声明から定着したのだと思いますが、実際のところ時間差で訪れて感染や隣の部屋など、視界に入ることさえなく感染が成立した事例が見つかっているそうです。(カッパ株でさえ)https://t.co/dDyp9HoU3C https://t.co/PVV9c0Z1mZ pic.twitter.com/Nj3ImbwJlX
— Noguchi Akio (@Derive_ip) June 4, 2021