ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績[6月15日(金)~17日(日)]

2012-06-19 23:59:54 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 もうホラーとかスリラーの季節ですねー。
 しかし、最近映画のレビューでこんなに「絶賛の嵐」ならぬ「酷評の嵐」を浴びている映画もめずらしいのではないかな。
 ・・・って「貞子 3D」のことです。<映画生活>の「クチコミ満足度」が平均36点! コメントもキョーレツなものがわんさか。「「絶対に」見に行かないほうがいいです。金を溝に捨てるようなものです」、「ここまで酷い映画はちょっと記憶にない」、「3Dをいいことに驚かせようとしすぎww見て体験するお化け屋敷行ったみたいで」、「これはもうホラー映画じゃありません。貞子のアイドル映画とすら言えるものでした。それはタイトルにもはっきり表れてますね、露骨に。3Dで貞子が飛び出てきますよー、と」等々・・・。3Dの問題点がもろに出てきちゃったということですかね、私ヌルボは観てませんけど(無責任)。
 観客動員がそれなりの数字に達しているのは、シリーズの過去の実績と宣伝効果ですか? 東京ドームで始球式もやっちゃってるし、ナゴヤドームでは観客席指さしたりしてますよ! ドアラに抱きかかえられたりして・・・(笑)。(→動画)
 韓国では6月14日公開。コチラでもソウルの地下鉄に集団出没したり等々。

    
       【ソウルの貞子はチマチョゴリ姿です。】

 しかし韓国でもネチズンの平均評点は5.1で、「リング」の8.4、「リング2」の8.6に遠く及ばず、コメントも厳しいものが日本同様ずらっと並んでます。やれやれ・・・。

         ★★★ Daumの人気順位(6月19日現在上映中映画) ★★★

【ネチズンによる順位】

①おばあさんは1年生(韓国)   9.7(41)
②語る建築家(韓国)  9.6(42)
③ヤコブへの手紙  9.5(22)
④アンニョン、ハセヨ!(韓国)  9.5(44)
⑤第七の封印  9.4(20)
⑥オモニ(韓国)  9.3(21)
⑦石打ち刑  8.7(22)
⑧ミックマック  8.7(52)
⑨マダガスカル 3  8.5(152)
⑩建築学概論(韓国)  8.5(2235)

 今回の初登場は⑦「石打ち刑」は、私ヌルボがつけた仮題。原題は「The Stoning of Soraya M.」、韓国題は「더 스토닝」です。2008年のトロント国際映画祭で「スラムドッグ$ミリオネア」に次いで評判をよんだ映画で、イランでの、事実に基づく小説の映画化作品だそうです。
 14歳の少女と再婚したいがために、夫が自分の妻を無実の罪(=浮気)に陥れるだけでも酷いのに、その刑は公開処刑。それも下半身を地面に埋めて、死ぬまで村人が(夫や息子も!)石を投げるという石打ち刑とは・・・。2010年7月にこの映画を観た人のブログ記事によると、「イスラム教徒である彼らは石を投げるごとに自分に名誉が与えられるって信じてる」ということです。また別の人の感想には「どんなホラー映画を見るよりも怖いです」とあります。
 私ヌルボも、物語の概略を読んだだけで言葉を失います。ただ、心の中に数%の自問といったものも残ります。うまく言えないのですが・・・、と思っていたら、たまたまその問を的確に書いてくれていたブログ記事を見つけました。その記事では、ラカン派マルクス主義者のシジェクの次のような言葉を引用しています。「西洋の「寛容な」多文化主義でいうところの「自由選択の主体」が現れるには、特定の生活世界から引きはがされるという、つまり、自分のルーツから切り離されるという、きわめて暴力的な過程を経なければならない、ということ」であって、「つねに心に留めるべきことは、この暴力が社会的因習からの解放をもたらし、そのおかげでわれわれは自分の文化的背景を偶発的なものとして経験できる、ということだ」。つまり、伝統的な社会の解体と密接不可分と解していいのかな? またブログ筆者の「それはイスラム教の価値観だから」と容認するような価値相対主義を否定できるような普遍的な価値観があるとしたら、その根拠はどこにあるのか? ・・・というような疑問も、私ヌルボのそれと共通するものがあると思いました。
 先週、専門家筋の評価の高いイラン映画「別離」を観ました。最初から最後まで、観る者をささくれ立った気持ちにさせる映画で、正直言って好きではありませんが、優れた映画ではあります。近年、イランの社会(イスラム社会?)が深刻な価値観の葛藤・相剋を続けていることが、この映画からもうかがわれました。


【専門家による順位】

①第七の封印  9.0(2)
②メランコリア  8.3(6)
③The Future  8.0(1)
④アベンジャーズ  7.7(7)
⑤よその国で(韓国)7.6(6)
⑥異邦人たち(韓国)  7.5(2)
⑥レッドマリア(韓国)  7.5(2)
⑧アルマジロ  7.3(3)
⑨プロメテウス  7.2(9)
⑩建築学概論(韓国)  7.1(6)

 新登場はなし。⑨「プロメテウス」はこのランクは初ですが、先週興行成績の方で紹介しました。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月15日(金)~17日(日)] ★★★

         <19禁>時代劇「後宮」が連続1位、2・3位も不動

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(1)・・後宮:帝王の妾(韓国) ・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・379,576・・・・・・・・・1,720,817 ・・・・・・・・12,762・・・・・・・536
2(2)・・マダガスカル3・・・・・・・・・・・・・・・・6/06 ・・・・・・・・・・・・・・311,861・・・・・・・・・1,001,316 ・・・・・・・・・7,937・・・・・・・557
3(3)・・私の妻のすべて(韓国)・・・・・・・・・5/17・・・・・・・・・・・・・・238,536・・・・・・・・・3,820,143 ・・・・・・・・28,607・・・・・・・370
4(新)・・ロックアウト・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・201,339 ・・・・・・・・・・237,598 ・・・・・・・・・1,757・・・・・・・373
5(6)・・チャ刑事(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・5/30・・・・・・・・・・・・・・145,123・・・・・・・・・1,098,600 ・・・・・・・・・7,993・・・・・・・282
6(5)・・メン・イン・ブラック3 ・・・・・・・・・・・・5/24・・・・・・・・・・・・・・135,530・・・・・・・・・3,231,892 ・・・・・・・・26,221・・・・・・・332
7(4)・・プロメテウス・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/06・・・・・・・・・・・・・・129,414・・・・・・・・・・・801,538 ・・・・・・・・・7,176・・・・・・・322
8(新)・・貞子 3D(日本)・・・・・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・・71,361・・・・・・・・・・・・87,968 ・・・・・・・・・・・817・・・・・・・261
9(7)・・未確認動映像 ・・・・・・・・・・・・・・・・5/30 ・・・・・・・・・・・・・・57,245・・・・・・・・・・・837,628 ・・・・・・・・・5,729・・・・・・・254
       絶対クリック禁止(韓国)
10(新)・・遊星からの物体X ・・・・・・・・・・・6/14・・・・・・・・・・・・・・・27,912・・・・・・・・・・・・33,488 ・・・・・・・・・・・245・・・・・・・173
       ファーストコンタクト
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は4・8・10位の3作品。
 4位「ロックアウト」は、リュック・ベッソンがプロデューサー・脚本家として参加したSFアクション。スパイ容疑の冤罪で投獄されている政府エージェントが、囚人たちによって占拠された宇宙刑務所に閉じ込められてしまった大統領の娘を救出すれば自由の身にする、という提案を受けるが・・・という話だそうです。日本公開は未定。韓国題は「락아웃:익스트림미션」。韓国語ではラックアウトと発音するのかー。
 8位「貞子 3D」については前述しました。韓国題は「사다코 3D :죽음의 동영상」と、「死の動映像」という副題がついています。9位にもありますが、日本の「動画」を韓国では「動映像」というのですね。(あっ、今まで「同映像」になってたな! お詫びして訂正します。)
 10位「遊星からの物体X ファーストコンタクト」、1982年の「遊星からの物体X」は怖かったな~という記憶があります。あ、元はハワード・ホークス監督の「遊星よりの物体X」(1951年)か。約60年間も有効なアイディアってとこですかね。日本公開は8月4日。日本版予告編もできてます。(→コチラ。) 韓国題の「더 씽(ドッシン)」というのは原題「The Thing」の韓国語表記。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(9)・・Delicacy・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/14 ・・・・・・・・・・・・・・・4,581 ・・・・・・・・・・・・・・6,407 ・・・・・・・・50・・・・・・・・・・29
2(1)・・よその国で(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・5/31 ・・・・・・・・・・・・・・・2,150 ・・・・・・・・・・・・・22,989 ・・・・・・・177・・・・・・・・・・24
3(2)・・The Future・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・363 ・・・・・・・・・・・・・・9,270・・・・・・・・・75・・・・・・・・・・・3
4(6)・・語る建築家(韓国)・・・・・・・・・・・・・・3/08・・・・・・・・・・・・・・・・・・275 ・・・・・・・・・・・・・38,109 ・・・・・・・207・・・・・・・・・・・2
5(4)・・A Dangerous Method ・・・・・・・・・・5/10・・・・・・・・・・・・・・・・・・222 ・・・・・・・・・・・・・26,956・・・・・・・・205・・・・・・・・・・・4

 初登場は1位のフランス映画「Delicacy」(英題)だけ。 オドレイ・トトゥ主演のフランスのラブコメディ。「アメリ」から10年以上も経つのか・・・。彼女が演じるのが、突然の事故で夫を亡くしてから気力を失い、何年間も色恋とは無縁で仕事に没頭する日々を送っていた女性。ところがある日、自分でも訳が分からないまま同僚の男とキスをしてから状況が一変する・・・。韓国題は内容に沿って「시작은 키스!(はじめはキス!)」。原題は「La Délicatesse」です。
 4位「語る建築家」、ほんとに長く続いています。