ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [9月10日(金)~9月12日(日)]と人気順位 ▶中国の大ヒット作「我的姐姐」は女性の役割に問題提起 韓国でも<K-長女>が流行語に ▶韓国映画「善い人」-私は善、という錯覚

2021-09-16 20:57:50 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事で目に留まった韓国映画は、独立・芸術映画のランキングで「善い人」(최선의 삶)です(画像下左)。本作は、すべての状況で良い人になろうとするギョンソクがクラス内の前に盗難事件と娘の交通事故が続く中で犯人として名前が挙がった生徒を信じる気持ちと疑念、嘘と真実の前に混乱を経験する姿を通して、「誰が善い人であり、誰が悪い人なのか?」「真実とは何なのか?」という質問を観客の前に投げかけます。記者たちは「善が常に正しいわけではない」「私は善であるという錯覚、その危険な線引きに対して」といったコメントを寄せています。

▶韓国以外の外国映画で注目作は中国映画「我的姐姐(ぼくのお姉さん)」です(下左画像)。今年の4月初旬の先祖の墓参をする清明節に公開され、3~5日の3連休で「ゴジラvsコング」を上回る上映率4割を記録した大ヒット作です。本ブログで、これまで何度か「近年韓国映画界では女性監督による作品が相次ぎ注目されている」といったことを書きましたが、コチラも86年生まれの女性監督イン・ルオシン[殷若昕]監督の作品。親元を離れて大学に通い、大学院をめざして勉強している女子学生が、突然の事故で両親を失い、残された幼い弟の世話を「姉なのだから」おまえが引き受けるのが当然という伝統的規範が存続する中で、「では私の夢や未来はどうなるの?」と悩みに悩む若い女性の話です。「私の人生は君(弟)だけなんじゃないのよ」と言う姉。これまで家族のために犠牲にする生活を生きてきた叔母。そして「ぼくが大きくなるまで待って」と言う弟。彼らの話を通して問を投げかけ、観客は各々自身の人生を考える、そんな作品のようです。昨今の韓国だけでなく、中国でも共通するフンイキが高まってきているのでしょうか? (より具体的な(?)ストーリーは本記事の最後を見てみてください。)
 本作品関係の韓国記事を読んでいて、おりしも最近(一昨年頃から?)韓国で<K-장녀>(K-長女)という言葉が流行語になっていることを知りました。KはKoreaの意。韓国の女性の中でも、とくに女性は母親の代理として弟や妹の面倒は見なければならないし、年老いた親の介護も・・・という長女の<役割>が、まさに「我的姐姐」とも重なる問題として浮上しているようですね。この問題だけで1本の記事になりそうなので、とりあえず→韓国日報と→ハンギョレの記事(ともに韓国語)のリンクだけ貼っておきます。
 で、日本の状況は中韓と比べてどうなんでしょうね? 篠田節子「長女たち」は図書館で予約待ちが続いていますが・・・。 
 さて、上記の女性の社会的役割等々とどこまで関係するのかしないのか、よくわかりませんが少し気になったのが仏・独・米合作の「ガンパウダー・ミルクシェイク」。ヤクザがらみのガンアクションなんですが、下右画像のポスターにあるように主な登場人物は皆女性なんですね。女性の射撃の名手は「アニーよ銃をとれ」をはじめそれなりにいましたが、この人たちはプロの殺し屋ですからねー。いやあ、こういう作品が作られるのもご時勢ってとこですか? 女性の皆さんの感想はいかが?
       

    ★★★ NAVERの人気順位(9月14日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) 夢見るネコ(韓国)  9.76(25)
②(3) パクカン・アルム結婚する(韓国)  9.59(39)
③(2) 学校に行く道(韓国)  9.58(156)
④(新) BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.(日本)  9.50(16)
⑤(1) パウ・パトロール ザ・ムービー  9.48(81)
⑥(-) モンマルトルのパパ(韓国)  9.46(169)
⑦(4) 銀魂 THE FINAL(日本)  9.44(256)
⑧(6) ブータン 山の教室  9.40(173)
⑨(5) コーダ  9.35(408)
⑩(9) トゥ・オブ・アス  9.14(44)

 ①と④の2作品が新登場です。
 ①「夢見るネコ」は韓国のドキュメンタリー。21世紀に入って以降、韓国人もすっかりネコ好きになっちゃいました。昔から韓国ではネコは妖物とされ忌避されることが多く、19世紀には屋内で突然飛び出してきたネコに驚いて気絶した人もいたというのに・・・。ネコ関係のドキュメンタリーもいくつも作られ、最近では昨年9月「犬と猫のための時間」が公開されましたが、本作もそれと同様都市の再開発地域のネコを扱った作品です。ソウルのタルトンネ(丘の上の貧民街)、京畿道城南市、大邱、釜山の再開発地域等々。まもなく壊されてしまうこの地域にはただ生きていたいという夢を見ているネコたちがいます。そしてそこには、ネコたちの命を守るために危険を冒して飛び込む人たちもいます。「私たちは開発によって恩恵を受けるでしょうが、そのために生活の基盤を失ってしまう存在がいることはよく知りません」。建物と一緒に崩れ落ちる野良猫の生活。私たちはどうすればネコたちの生命と生活の基盤を守ることができるでしょうか? そこで出会ったネコに<夢>と名前を付けてネコを守ることに孤軍奮闘している人々の姿から、人とネコが共存する生活を夢見る旅が始まります・・・。原題は「꿈꾸는 고양이」です。
 ④「BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.」は、(いつもの)私ヌルボが観ていない日本アニメですが、冒頭に記したように作品の背景をさぐるといろんなことが見えてきました。つまり、コミックのヒット→TVアニメ→劇場版と銘打って映画化、といった順序を経ないで、最初からメディアミックスプロジェクトとして多角的に各企画を進めるというもの。なるほどねー、木谷高明サン、スゴイスゴイ(笑)。韓国題は「뱅드림! 로젤리아 에피소드 Ⅱ : 송 아이 엠」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) サマ  8.25(4)
②(2) グリーン・ナイト  8.20(5)
③(3) ノマドランド  8.00(8)
④(-) 水を抱く女  8.00(6)
⑤(4) バクラウ 地図から消された村  8.00(5)
⑥(5) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
⑦(6) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑧(7) モガディシュ(韓国)  7.27(11)
⑨(9) ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結  7.11(9)
⑩(-) レ・ミゼラブル  7.00(6)

 新登場の作品はありません。

    ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績9月10日(金)~9月12日(日) ★★★
         「シャン・チー テン・リングスの伝説」が2週連続1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・シャン・チー ・・・・・・・・・・・・・・・・9/01 ・・・・297,454・・・・・・1,226,500・・・・・12,477・・・・・1,651
      テン・リングスの伝説
2(3)・・モガディシュ(韓国)・・・・・・・・・・7/28・・・・・・80,310 ・・・・・3,381,968 ・・・・32,377・・・・・・・828
3(2)・・人質(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/18 ・・・・・68,730・・・・・・1,521,484 ・・・・14,751・・・・・・・932
4(4)・・シンクホール(韓国)・・・・・・・・・・8/11・・・・・・35,359・・・・・・2,170,641 ・・・・21,187・・・・・・・601
5(138)・・君の名は。(日本)・・・・・2017/1/04・・・・・・24,501 ・・・・・3,722,523・・・・・30,420・・・・・・・・69
6(新)・・ガンパウダー・ミルクシェイク・・9/08・・・・12,380・・・・・・・・・30,196・・・・・・・・264・・・・・・・471
7(5)・・ドント・ブリーズ2・・・・・・・・・・・9/01・・・・・・11,946・・・・・・・・・73,638・・・・・・・・722・・・・・・・203
8(新)・・ボイス(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・9/15・・・・・・・8,637・・・・・・・・・15,652・・・・・・・・153・・・・・・・191
9(103)・・天気の子(日本)・・・・・2019/10/30・・・・・・・8,044・・・・・・・・728,368・・・・・・5,991・・・・・・・・53
10(6)・・コーダ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/31 ・・・・・・7,108・・・・・・・・・47,413・・・・・・・・442・・・・・・・179
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は6・8位の2作品です。
 6位「ガンパウダー・ミルクシェイク」は仏・独・米合作のアクション。スカーレット(レナ・ヘディ)はプロの暗殺者。ところが仕事でしくじり、12歳の娘サムを残して町から姿を消します。その15年後、成長したサムはネーサン(ポール・ジアマッティ)の下で暗殺者として活動しています。そんなある日サムはネーサンから会社の金を盗んだ男を殺して金を奪い返すことを命じられます。サムは盗んだ男がいるホテルの部屋に侵入して男を撃って盗まれた金を回収しますが、その男は誘拐された幼い娘を救うための身代金用に金を盗んだことを知り、方針を変更します。サムは男を医者の所に連れていき治療を受けさせ、自分は代わりに所定の場所に行って身代金と交換に8歳の娘エミリーを引き取ります。その後ギャング間の抗争に巻き込まれたサムは追われる身になりますが、ネーサンからのメッセージに記されていた隠れ家に行くとそこで母スカーレットと再会することになり、彼女の元同僚である武器商店の仲間たち(全員女性)とも組んで敵の襲撃に対抗していきます・・・。韓国題は「건파우더 밀크셰이크」です。
 8位「ボイス」は大がかりなボイスフィッシングつまり振り込め詐欺を扱った韓国の犯罪&アクション。公式公開日から1週間早い先行上映です。釜山の建設現場の従業員を対象にかかってきた1本の電話。振り込め詐欺の電話で娘の治療費からアパートの契約金まで、当日の現場では多くの人々が命のようにも大切なお金を失うことになりました。現場作業班長の元刑事ソジュン(ビョン・ヨハネ)は家族や同僚たちのお金30億を取り戻すためにその犯罪組織を追跡し始めます。そしてついに中国にある本拠地コールセンターへの潜入に成功したソジュンは、ターゲットの個人情報確保、企画室の台本作成、現金引き出し交渉、外貨両替作業、大規模なコールセンターまで、体系的に組織化された振り込め詐欺組織のスケールに驚きます。そこで被害者の希望と恐怖を掘り下げる声の主人公であり企画総責任者であるクァク・プロ(キム・ムヨル)と最終的に相対します。そして、彼は300億ウォン規模の新たな総力戦を企画していることを知りますが・・・。原題は「보이스」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・コーダ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/31・・・・・・・7,108・・・・・・・47,413・・・・・・・・・・442・・・・・・・179
2(新)・・スーパームーン(韓国)・・・・・・・・・・9/09・・・・・・・3,731・・・・・・・・4,148・・・・・・・・・・・36 ・・・・・・・200
3(35)・・善い人(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/09・・・・・・・3,729・・・・・・・・6,598・・・・・・・・・・・52・・・・・・・136
4(2)・・夏の日、私たち・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/25・・・・・・・2,106・・・・・・・38,464・・・・・・・・・・350 ・・・・・・・53
5(新)・・ぼくのお姉さん ・・・・・・・・・・・・・・・・9/01・・・・・・・2,742・・・・・・・・5,492・・・・・・・・・・・48・・・・・・・・99

 2・3・5位の3作品が新登場です。
 2位「スーパームーン」は韓国のアニメ。ある日突然頭に角が生じた10歳の少年ゴヌは森の守りとなり、ここに韓半島の新しい森の守りが誕生します。そんな中、動物を狩りまくっている密猟者と世界を支配しようとするゾンビ虎が現れ、森は危機に陥ります。
動物の友だちを救うために、美しい韓半島の自然を守るために、ゴヌと仲間たちは森を救う鍵があるスーパードアに向かって冒険の旅に出ます・・・。原題は「슈퍼문」です。
 3位「善い人」は韓国のドラマ&サスペンス。チョン・ウク監督初の長編で、2020年の<第25回釜山国際映画祭>でCGVアートハウス賞、韓国の映画監督組合賞を受賞した作品です。高校教師ギョンソク(キム・テフン)のクラスで財布の盗難事件が発生し、同じクラスの生徒が犯人としてセイク(イ・ヒョジェ)の名をあげます。ギョンソクはセイクを呼び、どんな言葉も信じるから真実を話せと言いますが、セイクは絶対何もしていないと無実を訴えます。その夜、学校に連れてきていたギョンソクの娘ユニが交通事故に遭い、またしてもセイクが犯人として浮上するのですが…。原題は「좋은 사람」です。
 5位「ぼくのお姉さん」(仮)は中国のドラマ。韓国題は「내가 날 부를 때(私が私を呼ぶ時)」ですが、原題の「我的姐姐」を訳して「ぼくのお姉さん」と仮題をつけておきました。中国では今年4月の清明節の3連休で1番ヒットした作品です。その社会的背景等については冒頭に書いた通りです。物語の主人公は親元を離れて大学に通っているアンラン[安然](チャン・ズーフォン.張子楓)。彼女はつき合っている彼と一緒に北京の薬学系大学院への進学をめざして日々勉強に励んでいました。ところが突然両親が事故のためこの世を去ってしまいます。そしていきなり6歳になる弟のアンズーハン[安子恒](ジン・ヤオユアン.金遥源)の面倒を見ることに・・・。しかしアンズーハンはアンランが大学に進学して故郷を去った後に生まれた弟なので、今まで何度も顔を合わせているわけでもなく、親密どころかよそよそしい間柄です。両親からこれといった愛も受けたことのないアンランが血縁という理由で弟の世話をすることは苦役でしかありません。親戚たちは彼女を助けるどころか姉として犠牲になることを勧めますが、アンランはそれがより不当に感じられます。結局アンランは悩んだ末の弟を養子に出すことを決心しますが・・・。
 日本公開してほしいものですが、どうなるのかな?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする