▶「ファイター、北からの挑戦者」を観てきました。→コチラの記事で書いた年内公開予定の期待の韓国映画3作品(+1)のうちの1つです。ところが、思いがけなくも「アリャーッ!」と内心叫んだのは観客が私ヌルボ1人だけだったから。話題の映画を中心に観ている人はまずそんな経験はないと思います。ミニシアターに行くことが多いヌルボにしても3人程度は何度かありましたが、1人というのはこれが2回目。最初は今から30年以上(?)前だったか? 作品名も記憶にありません。まあ今回は夜8時半頃~という遅い回だったこともあるかも。しかし日曜日だったんですよねー・・・。 タイトルだけでは内容が全然わからないという弱点もあるかも。上映館数も多くはないし宣伝費もそんなかけられないし・・・。脱北者の意味がわからない人も相当数いる? 分かっても関心の対象外?
しかし、この映画自体はホントに観てよかったです。具体的な内容には触れませんが、映画関係サイトでレビューを見て気になったこと1つ。多くの人が主人公の脱北者女性について「表情が厳しい」「不愛想」「ほとんど笑わない」との感想が目につくのは当然で、それに対し「韓国での生活に慣れていないからだろう」と好意的に理解する見方もあり作中でも描かれている脱北者に対する差別への警戒心も指摘されていました。ただ、このような彼女の厳しい表情は本人の性格や環境の変化等によるものだけではなく、北朝鮮社会に起因する部分も大きいのでは?と思います。脱北者漫画家のチェ・ソングクさんの漫画によると「北朝鮮の人たちは軽々しく「ありがとう」とは言わない」のだそうです。(→コチラ参照。)
そこでも書きましたが、韓国でも「親しき仲には礼儀なし」で日本とは<常識>が違いますからねー。
▶今回の記事で注目の韓国映画は「ログブック」です。2014年のセウォル号沈没事故の時に真っ先に救助活動に当たった民間潜水士たちについてのドキュメンタリーです。
大きな事故あるいは謎の事件・事故があるとその詳細や原因、責任の所在についての報道が相次ぎ、映画が作られたりもします。政治面で保守系・進歩系間のミゾが深い韓国の場合は、とくに政治権力の関与があったのでは?という(陰謀論めいた)疑問が沸き起こることもよくあります。李明博政権の天安沈没事件(2010)の時もそうだったし、このセウォル号沈没事故の場合もそうで関連の映画もいくつか作られました。遺族に焦点を当てた作品も作られました。そして本作は潜水士ですが、その基調は<慰め>と<癒し>とのこと。ようやくここまで来たか、と思いました。ここに至るまでの流れをみると、日本と韓国の時間感覚の違いを感じます。どちらが<ふつう>ということではなく、その違いを双方がわかっていないことも<歴史認識問題>がこじれる一因になっているかも・・・。40年前の光州民主化運動等々どこまでも責任を追及しようとする韓国と、忘れてはならないことも水に流す日本との違いも同じですね・・・。
▶外国映画では「サビーナ-キリストのための苦難、ナチス時代」。日本では上映がなさそうなキリスト教(ルーテル教会)関係の宗教映画ですが、ルーマニアの宗教事情も含め、内容的に興味を持ちました。
★★★ NAVERの人気順位(11月30日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) ログブック(韓国) 9.92(25)
②(新) ショートバス 監督行(韓国) 9.79(14)
③(新) サビーナ-キリストのための苦難、ナチス時代 9.62(48)
④(1) 往十里 キム・ジョンブン(韓国) 9.59(29)
⑤(2) 若い盛りのソンニョさん(韓国) 9.56(41)
⑥(4) 君に行く道(韓国) 9.47(209)
⑦(3) ソン・ヘ 1927(韓国) 9.39(49)
⑧(6) コーダ 9.24(674)
⑨(8) 休暇(韓国) 9.06(66)
⑩(-) 幸福の速度(韓国) 9.03(31)
①②③の3作品が新登場です。
①「ログブック」は2014年のセウォル号沈没事故の際に誰よりも先に海に飛び込んだ民間潜水士たちの救助活動を記録したドキュメンタリーです。タイトルの<ログブック(Log Book)>とは、飛行士が場所・時間・風速・風向・高度等、フライトのデータを記録する日誌のこと。パラグライダーの場合も同様です。また潜水艦等も含む各種船舶が記載を義務付けられている航行の記録すなわち航海日誌も<ログブック>といいます。そして本作のようにダイバーが自分の潜水状況を記録した日誌もまた<ログブック>と呼ばれます。
セウォル号惨事の直後、救助捜索の現場であるはしけにはマスコミ関係者も接近できませんでした。しかし独立PDとして活動していたボク・ジノ監督はダイバーだった自身の経験から最初にはしけに乗船し、潜水士が救助捜索する過程をカメラに記録することができました。そうした映像の他、その後トラウマに悩まされた多くのダイバーたちの相談を引き受けた精神科医チョン・ヘシン博士の話等で構成されています。
[以下ボク・ジノ監督の言葉] 私がダイバーだという事実を知って、セウォル号潜水士たちは初めてはしけへの乗船を許しました。はしけで一緒に食べ、寝て生活した私はカメラに彼らのすべてを記録したと思いました。しかし数ヵ月が過ぎてある潜水士に再び会った時、彼は意外にも1冊のログブックを私に見せてくれました。セウォル号潜水現場を記録した自身のログブックでした。私は最初の章を読みながら流れる涙をどうすることもできませんでした。カメラに収められない彼らの隠された物語、誰にも言えなかった残酷なセウォル号の姿。彼のログブックを受け取った後、私は再びそれらを正しく記録することができました。悲しいけれど慰めのある映画です。セウォル号惨事の海で黙々と働いた潜水士たちに会うのもセウォル号を記憶する方法の一つでしょう。彼らの率直な物語を共有することは私たち全員のトラウマを共に癒すことだと思います。原題は「로그북」です。
②「ショートバス 監督行」は韓国の若手監督による短編作品のオムニバス。7月22日公開の「ショートバス 離別行」に始まる<ショートバス>シリーズの第5作です。この<ショートバスプロジェクト>は6ヵ月間にわたって(これまで)3~6本の短編を毎月公開するというもので、今回は副題に「監督行」とあるように、映画監督をテーマに5人の監督がそれぞれ「将来の夢」「初冬」「ソヨンの映画」「隘路」「メイキングフィルム」と題して作品を発表。これまでの5回中で最高の評価を得ました。原題は「숏버스 감독행」です。
③「サビーナ-キリストのための苦難、ナチス時代」はルーマニア・アイルランド・アメリカ合作の実話に基づくドラマ。ナチスの時代、<悪>に対して<善>をもって返した1人の女性の許しの物語です。1944年冬、ソ連軍がルーマニアに進攻します。それまでルーマニアを占領してユダヤ人を迫害していたドイツの兵士たちは一瞬にして追われる身となります。物語の舞台はブカレスト。ドイツ軍のディエティ大尉は2人の部下と共に逃げている間サビーナ(ラルカ・ボテス)の助けを受けることになります。彼は死刑の危険にさらされている自分たちの脱出を助けるユダヤ人サビーナの意図を疑います。そんな彼にサビーナは自分がどのようにしてクリスチャンになり、ナチスの追従者たちの銃に家族みんなを失っても夫リチャードと共にドイツ軍兵士を脱出させることを始めるようになったのかを話し聞かせます・・・。原題は「사비나: 그리스도를 위한 고난, 나치 시대」です。
本作の日本公開はないと思われます。というのは韓国に多いキリスト教関係の作品なので・・・。主人公サビーナ・ウォームブランドは社会主義政権下のルーマニアで14年間の苛酷な刑務所生活を送ったルーテル教会の牧師リチャード・ウォームブランド師の夫人です。(北欧諸国では人々の大半はプロテスタントのルーテル教会に属しているそうです。) 1913年にルーマニアのあるユダヤ人家庭で生まれた彼女はフランスのソルボンヌ大学に通った才媛で、リチャードと結婚した後キリスト教に入信し、ナチスそして戦後のルーマニアで福音を伝えていましたが、彼女も3年間投獄されて多くの苦難にあったとか・・・。その後夫と共にアメリカに移住し、国際宣教団体の<殉教者の声>の共同設立者となって、2000年に死亡するまで世界15ヵ国の地下教会を支援してきたそうです。
およそ今まで宗教とは無縁の生活を続けている私ヌルボですが、こうした歴史の荒波の中で靭く生きてきた人の記録は先入観を排して観てみたい気もします。
【記者・評論家による順位】
①(1) ファースト・カウ 8.40(10)
②(3) 水を抱く女 8.00(6)
③(5) あの日のように抱きしめて 7.80(5)
④(新) パワー・オブ・ザ・ドッグ 7.75(4)
⑤(6) アイダよ、何処へ? 7.67(3)
⑥(7) プチ・ママン 7.63(8)
⑦(8) DUNE/デューン 砂の惑星 7.56(9)
⑧(9) アネット 7.44(9)
⑨(-) 終着駅 (韓国) 7.20(5)
⑨(-) 君に行く道(韓国) 7.20(5)
④「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が新登場です。イギリス・ニュージーランド・オーストラリア・アメリカ・カナダ合作のドラマ。トーマス・サヴェージの同名小説(角川文庫)を、あの「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督が映画化した作品で、<第78回ヴェネツィア国際映画祭>のコンペティション部門で銀獅子賞を受賞しました。日本でも11月19日から公開されているので内容の説明は省略します。(って、ジツは数日前に観てきました。深みのある作品です。) 韓国題は「파워 오브 도그」です。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月26日(金)~11月28日(日) ★★★
韓国のアクション「幽体離脱者」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(39)・・幽体離脱者(韓国)・・・・・・・・・・11/24 ・・・248,721・・・・・・・・362,418・・・・・・3,531・・・・・1,213
2(30)・・ミラベルと魔法だらけの家・・11/24 ・・・202,903・・・・・・・・268,531・・・・・・2,564・・・・・1,100
3(新)・・恋愛の抜けたロマンス(韓国)・・11/10 ・・141,197 ・・・・・・・209,064・・・・・・2,112・・・・・・・965
4(2)・・エターナルズ・・・・・・・・・・・・・・・11/03 ・・・・・63,836 ・・・・・2,979,906・・・・・31,047 ・・・・・・693
5(1)・・ジャンルだけロマンス(韓国)・・11/17 ・・・・45,473・・・・・・・・468,592・・・・・・4,737・・・・・・・697
6(3)・・DUNE/デューン 砂の惑星 ・・・10/20 ・・・・・39,469・・・・・・1,422,021・・・・・15,312 ・・・・・・444
7(6)・・フレンチ・ディスパッチ ・・・・・11/17・・・・・・11,095・・・・・・・・・62,526・・・・・・・・679・・・・・・・155
ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
8(7)・・ディア・エヴァン・ハンセン・・・11/17・・・・・・・7,793・・・・・・・・・96,880・・・・・・・・984・・・・・・・250
9(53)・・メイド・イン・イタリー・・・・・・11/24・・・・・・・4,700・・・・・・・・・・8,179 ・・・・・・・・・71・・・・・・・118
10(4)・・江陵[カンヌン](韓国) ・・・・・・11/10・・・・・・・4,709 ・・・・・・・302,068・・・・・・3,131・・・・・・・163
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は1・2・3・9位の4作品です。
1位「幽体離脱者」は韓国のアクション。「誰が本当の私なのか分からない」。交通事故現場で目を覚ました男。鏡に映る見慣れない顔と名前。自分が誰なのか記憶がありません。「また変わった。昼にも変わって夜にもまた」。しばらくしてまた別の人間の体で目覚めた男。彼は12時間ごとに体が変わるという事実に気付き、自分を取り巻く人たちの間の繋がりを探し始めます。過去12時間ごとに体が変わったという人たちや行く場所ごとに現れる謎の女性まで。彼らが追っている国家情報要員カン・イアン(ユン・ゲサン)も・・・。そして、「もう分かった。私が何をしなければならないのか」と彼。皆が血眼になって追うカン・イアンがまさしく自分だということを直感した男。自分を探すため死闘が始まるのですが・・・。※えっ、ユン・ゲサンが1人7役だって!? 原題は「유체이탈자」です。
2位「ミラベルと魔法だらけの家」はアメリカのアニメ。日本でも11月26日から公開されているので説明は省略します。原題の「ENCANTO」は<魅惑>を意味するスペイン語。韓国題は「엔칸토: 마법의 세계(ENCANTO: 魔法の世界)」です。
3位「恋愛の抜けたロマンス」は韓国のラブロマンス&コメディ。29歳の女性ジャヨン(チョン・ジョンソ)は仕事も恋愛も思い通りにいきません。元カレとの別れの後恋愛引退を決意したものの寂しさに勝てず、最後の砦のデートアプリで相手を検索します。一方33歳のウリ(ソン・ソック)は仕事でも恋愛でもカモにされるばかり男性。後頭部をまともに殴られたような恋愛の痛みが癒える間もなく、編集長の命令で19禁コラムを引き受けることになり、半強制的にデートアプリに加入させられます。そして旧正月連休の朝。ジャヨンとウリは本名等々すべてを隠して会うことに。ところが1%も期待していなかった2人は1日目から互いに惹かれ、恋愛のようなそうでないような微妙な関係の中でどちらも本心を簡単に打ち明けることができません。「これが恋愛じゃなくて何なの?」。手を引くどころかすっかりハマってしまった2人ですが・・・。原題は「연애 빠진 로맨스」です。
9位「メイド・イン・イタリー」はイギリスのドラマ&ラブロマンス。自由奔放なイギリス人アーティストのロバート(リアム・ニーソン)は、交通事故で亡くなったイタリア人の妻から相続した家を売却するため疎遠になっていた息子ジャック(マイケル・リチャードソン←リーアムの息子!)と共にイタリアのトスカーナを訪れます。2人は長い間放置されていたその空き家を修理して売るために思いがけなくも1ヵ月共に生活することになります。トスカーナ州といえばフィレンツェ、ピサ、シエーナなど多くの古都を擁し、また美しい景観にも恵まれた所。そこで一緒に食事をしたり修理作業をする中で、それまで意思疎通が欠けていた親子は互いの誤解を解き、相手の気持ちに初めて触れたりして忘れていた2人の幸せを取り戻していきます。そればかりか、イタリアでのロマンチックな日常の中で、ジャックは運命のように出会ったナタリア(バレリア・ビレロ)と新しい愛を育み始めます・・・。韓国題は「메이드 인 이태리」です。日本公開は未定のようです。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(19)・・メイド・イン・イタリー・ ・・・11/24・・・・・・・・・4,700・・・・・・・・8,179・・・・・・・・・・・71・・・・・・・118
2(6)・・1984 チェ・ドンウォン(韓国)・・11/12 ・・・・・・1,353・・・・・・・10,202・・・・・・・・・・・89・・・・・・・・14
3(3)・・ファースト・カウ ・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・・1,171 ・・・・・・・・・744・・・・・・・・・・110 ・・・・・・・22
4(5)・・幸福の速度(韓国)・・・・・・・・・・・11/18 ・・・・・・・・・・556・・・・・・・・4,808・・・・・・・・・・・34 ・・・・・・・13
5(4)・・ソン・ヘ 1297(韓国) ・・・・・・・・11/18 ・・・・・・・・・・456・・・・・・・・3,978・・・・・・・・・・・30 ・・・・・・・22
1位「メイド・イン・イタリー」が新登場ですが、この作品については上述しました。
しかし、この映画自体はホントに観てよかったです。具体的な内容には触れませんが、映画関係サイトでレビューを見て気になったこと1つ。多くの人が主人公の脱北者女性について「表情が厳しい」「不愛想」「ほとんど笑わない」との感想が目につくのは当然で、それに対し「韓国での生活に慣れていないからだろう」と好意的に理解する見方もあり作中でも描かれている脱北者に対する差別への警戒心も指摘されていました。ただ、このような彼女の厳しい表情は本人の性格や環境の変化等によるものだけではなく、北朝鮮社会に起因する部分も大きいのでは?と思います。脱北者漫画家のチェ・ソングクさんの漫画によると「北朝鮮の人たちは軽々しく「ありがとう」とは言わない」のだそうです。(→コチラ参照。)
そこでも書きましたが、韓国でも「親しき仲には礼儀なし」で日本とは<常識>が違いますからねー。
▶今回の記事で注目の韓国映画は「ログブック」です。2014年のセウォル号沈没事故の時に真っ先に救助活動に当たった民間潜水士たちについてのドキュメンタリーです。
大きな事故あるいは謎の事件・事故があるとその詳細や原因、責任の所在についての報道が相次ぎ、映画が作られたりもします。政治面で保守系・進歩系間のミゾが深い韓国の場合は、とくに政治権力の関与があったのでは?という(陰謀論めいた)疑問が沸き起こることもよくあります。李明博政権の天安沈没事件(2010)の時もそうだったし、このセウォル号沈没事故の場合もそうで関連の映画もいくつか作られました。遺族に焦点を当てた作品も作られました。そして本作は潜水士ですが、その基調は<慰め>と<癒し>とのこと。ようやくここまで来たか、と思いました。ここに至るまでの流れをみると、日本と韓国の時間感覚の違いを感じます。どちらが<ふつう>ということではなく、その違いを双方がわかっていないことも<歴史認識問題>がこじれる一因になっているかも・・・。40年前の光州民主化運動等々どこまでも責任を追及しようとする韓国と、忘れてはならないことも水に流す日本との違いも同じですね・・・。
▶外国映画では「サビーナ-キリストのための苦難、ナチス時代」。日本では上映がなさそうなキリスト教(ルーテル教会)関係の宗教映画ですが、ルーマニアの宗教事情も含め、内容的に興味を持ちました。
★★★ NAVERの人気順位(11月30日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) ログブック(韓国) 9.92(25)
②(新) ショートバス 監督行(韓国) 9.79(14)
③(新) サビーナ-キリストのための苦難、ナチス時代 9.62(48)
④(1) 往十里 キム・ジョンブン(韓国) 9.59(29)
⑤(2) 若い盛りのソンニョさん(韓国) 9.56(41)
⑥(4) 君に行く道(韓国) 9.47(209)
⑦(3) ソン・ヘ 1927(韓国) 9.39(49)
⑧(6) コーダ 9.24(674)
⑨(8) 休暇(韓国) 9.06(66)
⑩(-) 幸福の速度(韓国) 9.03(31)
①②③の3作品が新登場です。
①「ログブック」は2014年のセウォル号沈没事故の際に誰よりも先に海に飛び込んだ民間潜水士たちの救助活動を記録したドキュメンタリーです。タイトルの<ログブック(Log Book)>とは、飛行士が場所・時間・風速・風向・高度等、フライトのデータを記録する日誌のこと。パラグライダーの場合も同様です。また潜水艦等も含む各種船舶が記載を義務付けられている航行の記録すなわち航海日誌も<ログブック>といいます。そして本作のようにダイバーが自分の潜水状況を記録した日誌もまた<ログブック>と呼ばれます。
セウォル号惨事の直後、救助捜索の現場であるはしけにはマスコミ関係者も接近できませんでした。しかし独立PDとして活動していたボク・ジノ監督はダイバーだった自身の経験から最初にはしけに乗船し、潜水士が救助捜索する過程をカメラに記録することができました。そうした映像の他、その後トラウマに悩まされた多くのダイバーたちの相談を引き受けた精神科医チョン・ヘシン博士の話等で構成されています。
[以下ボク・ジノ監督の言葉] 私がダイバーだという事実を知って、セウォル号潜水士たちは初めてはしけへの乗船を許しました。はしけで一緒に食べ、寝て生活した私はカメラに彼らのすべてを記録したと思いました。しかし数ヵ月が過ぎてある潜水士に再び会った時、彼は意外にも1冊のログブックを私に見せてくれました。セウォル号潜水現場を記録した自身のログブックでした。私は最初の章を読みながら流れる涙をどうすることもできませんでした。カメラに収められない彼らの隠された物語、誰にも言えなかった残酷なセウォル号の姿。彼のログブックを受け取った後、私は再びそれらを正しく記録することができました。悲しいけれど慰めのある映画です。セウォル号惨事の海で黙々と働いた潜水士たちに会うのもセウォル号を記憶する方法の一つでしょう。彼らの率直な物語を共有することは私たち全員のトラウマを共に癒すことだと思います。原題は「로그북」です。
②「ショートバス 監督行」は韓国の若手監督による短編作品のオムニバス。7月22日公開の「ショートバス 離別行」に始まる<ショートバス>シリーズの第5作です。この<ショートバスプロジェクト>は6ヵ月間にわたって(これまで)3~6本の短編を毎月公開するというもので、今回は副題に「監督行」とあるように、映画監督をテーマに5人の監督がそれぞれ「将来の夢」「初冬」「ソヨンの映画」「隘路」「メイキングフィルム」と題して作品を発表。これまでの5回中で最高の評価を得ました。原題は「숏버스 감독행」です。
③「サビーナ-キリストのための苦難、ナチス時代」はルーマニア・アイルランド・アメリカ合作の実話に基づくドラマ。ナチスの時代、<悪>に対して<善>をもって返した1人の女性の許しの物語です。1944年冬、ソ連軍がルーマニアに進攻します。それまでルーマニアを占領してユダヤ人を迫害していたドイツの兵士たちは一瞬にして追われる身となります。物語の舞台はブカレスト。ドイツ軍のディエティ大尉は2人の部下と共に逃げている間サビーナ(ラルカ・ボテス)の助けを受けることになります。彼は死刑の危険にさらされている自分たちの脱出を助けるユダヤ人サビーナの意図を疑います。そんな彼にサビーナは自分がどのようにしてクリスチャンになり、ナチスの追従者たちの銃に家族みんなを失っても夫リチャードと共にドイツ軍兵士を脱出させることを始めるようになったのかを話し聞かせます・・・。原題は「사비나: 그리스도를 위한 고난, 나치 시대」です。
本作の日本公開はないと思われます。というのは韓国に多いキリスト教関係の作品なので・・・。主人公サビーナ・ウォームブランドは社会主義政権下のルーマニアで14年間の苛酷な刑務所生活を送ったルーテル教会の牧師リチャード・ウォームブランド師の夫人です。(北欧諸国では人々の大半はプロテスタントのルーテル教会に属しているそうです。) 1913年にルーマニアのあるユダヤ人家庭で生まれた彼女はフランスのソルボンヌ大学に通った才媛で、リチャードと結婚した後キリスト教に入信し、ナチスそして戦後のルーマニアで福音を伝えていましたが、彼女も3年間投獄されて多くの苦難にあったとか・・・。その後夫と共にアメリカに移住し、国際宣教団体の<殉教者の声>の共同設立者となって、2000年に死亡するまで世界15ヵ国の地下教会を支援してきたそうです。
およそ今まで宗教とは無縁の生活を続けている私ヌルボですが、こうした歴史の荒波の中で靭く生きてきた人の記録は先入観を排して観てみたい気もします。
【記者・評論家による順位】
①(1) ファースト・カウ 8.40(10)
②(3) 水を抱く女 8.00(6)
③(5) あの日のように抱きしめて 7.80(5)
④(新) パワー・オブ・ザ・ドッグ 7.75(4)
⑤(6) アイダよ、何処へ? 7.67(3)
⑥(7) プチ・ママン 7.63(8)
⑦(8) DUNE/デューン 砂の惑星 7.56(9)
⑧(9) アネット 7.44(9)
⑨(-) 終着駅 (韓国) 7.20(5)
⑨(-) 君に行く道(韓国) 7.20(5)
④「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が新登場です。イギリス・ニュージーランド・オーストラリア・アメリカ・カナダ合作のドラマ。トーマス・サヴェージの同名小説(角川文庫)を、あの「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督が映画化した作品で、<第78回ヴェネツィア国際映画祭>のコンペティション部門で銀獅子賞を受賞しました。日本でも11月19日から公開されているので内容の説明は省略します。(って、ジツは数日前に観てきました。深みのある作品です。) 韓国題は「파워 오브 도그」です。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月26日(金)~11月28日(日) ★★★
韓国のアクション「幽体離脱者」が1位
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(39)・・幽体離脱者(韓国)・・・・・・・・・・11/24 ・・・248,721・・・・・・・・362,418・・・・・・3,531・・・・・1,213
2(30)・・ミラベルと魔法だらけの家・・11/24 ・・・202,903・・・・・・・・268,531・・・・・・2,564・・・・・1,100
3(新)・・恋愛の抜けたロマンス(韓国)・・11/10 ・・141,197 ・・・・・・・209,064・・・・・・2,112・・・・・・・965
4(2)・・エターナルズ・・・・・・・・・・・・・・・11/03 ・・・・・63,836 ・・・・・2,979,906・・・・・31,047 ・・・・・・693
5(1)・・ジャンルだけロマンス(韓国)・・11/17 ・・・・45,473・・・・・・・・468,592・・・・・・4,737・・・・・・・697
6(3)・・DUNE/デューン 砂の惑星 ・・・10/20 ・・・・・39,469・・・・・・1,422,021・・・・・15,312 ・・・・・・444
7(6)・・フレンチ・ディスパッチ ・・・・・11/17・・・・・・11,095・・・・・・・・・62,526・・・・・・・・679・・・・・・・155
ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
8(7)・・ディア・エヴァン・ハンセン・・・11/17・・・・・・・7,793・・・・・・・・・96,880・・・・・・・・984・・・・・・・250
9(53)・・メイド・イン・イタリー・・・・・・11/24・・・・・・・4,700・・・・・・・・・・8,179 ・・・・・・・・・71・・・・・・・118
10(4)・・江陵[カンヌン](韓国) ・・・・・・11/10・・・・・・・4,709 ・・・・・・・302,068・・・・・・3,131・・・・・・・163
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は1・2・3・9位の4作品です。
1位「幽体離脱者」は韓国のアクション。「誰が本当の私なのか分からない」。交通事故現場で目を覚ました男。鏡に映る見慣れない顔と名前。自分が誰なのか記憶がありません。「また変わった。昼にも変わって夜にもまた」。しばらくしてまた別の人間の体で目覚めた男。彼は12時間ごとに体が変わるという事実に気付き、自分を取り巻く人たちの間の繋がりを探し始めます。過去12時間ごとに体が変わったという人たちや行く場所ごとに現れる謎の女性まで。彼らが追っている国家情報要員カン・イアン(ユン・ゲサン)も・・・。そして、「もう分かった。私が何をしなければならないのか」と彼。皆が血眼になって追うカン・イアンがまさしく自分だということを直感した男。自分を探すため死闘が始まるのですが・・・。※えっ、ユン・ゲサンが1人7役だって!? 原題は「유체이탈자」です。
2位「ミラベルと魔法だらけの家」はアメリカのアニメ。日本でも11月26日から公開されているので説明は省略します。原題の「ENCANTO」は<魅惑>を意味するスペイン語。韓国題は「엔칸토: 마법의 세계(ENCANTO: 魔法の世界)」です。
3位「恋愛の抜けたロマンス」は韓国のラブロマンス&コメディ。29歳の女性ジャヨン(チョン・ジョンソ)は仕事も恋愛も思い通りにいきません。元カレとの別れの後恋愛引退を決意したものの寂しさに勝てず、最後の砦のデートアプリで相手を検索します。一方33歳のウリ(ソン・ソック)は仕事でも恋愛でもカモにされるばかり男性。後頭部をまともに殴られたような恋愛の痛みが癒える間もなく、編集長の命令で19禁コラムを引き受けることになり、半強制的にデートアプリに加入させられます。そして旧正月連休の朝。ジャヨンとウリは本名等々すべてを隠して会うことに。ところが1%も期待していなかった2人は1日目から互いに惹かれ、恋愛のようなそうでないような微妙な関係の中でどちらも本心を簡単に打ち明けることができません。「これが恋愛じゃなくて何なの?」。手を引くどころかすっかりハマってしまった2人ですが・・・。原題は「연애 빠진 로맨스」です。
9位「メイド・イン・イタリー」はイギリスのドラマ&ラブロマンス。自由奔放なイギリス人アーティストのロバート(リアム・ニーソン)は、交通事故で亡くなったイタリア人の妻から相続した家を売却するため疎遠になっていた息子ジャック(マイケル・リチャードソン←リーアムの息子!)と共にイタリアのトスカーナを訪れます。2人は長い間放置されていたその空き家を修理して売るために思いがけなくも1ヵ月共に生活することになります。トスカーナ州といえばフィレンツェ、ピサ、シエーナなど多くの古都を擁し、また美しい景観にも恵まれた所。そこで一緒に食事をしたり修理作業をする中で、それまで意思疎通が欠けていた親子は互いの誤解を解き、相手の気持ちに初めて触れたりして忘れていた2人の幸せを取り戻していきます。そればかりか、イタリアでのロマンチックな日常の中で、ジャックは運命のように出会ったナタリア(バレリア・ビレロ)と新しい愛を育み始めます・・・。韓国題は「메이드 인 이태리」です。日本公開は未定のようです。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(19)・・メイド・イン・イタリー・ ・・・11/24・・・・・・・・・4,700・・・・・・・・8,179・・・・・・・・・・・71・・・・・・・118
2(6)・・1984 チェ・ドンウォン(韓国)・・11/12 ・・・・・・1,353・・・・・・・10,202・・・・・・・・・・・89・・・・・・・・14
3(3)・・ファースト・カウ ・・・・・・・・・・・11/04・・・・・・・・・1,171 ・・・・・・・・・744・・・・・・・・・・110 ・・・・・・・22
4(5)・・幸福の速度(韓国)・・・・・・・・・・・11/18 ・・・・・・・・・・556・・・・・・・・4,808・・・・・・・・・・・34 ・・・・・・・13
5(4)・・ソン・ヘ 1297(韓国) ・・・・・・・・11/18 ・・・・・・・・・・456・・・・・・・・3,978・・・・・・・・・・・30 ・・・・・・・22
1位「メイド・イン・イタリー」が新登場ですが、この作品については上述しました。