★前回の記事まで<韓国内の映画の興行成績>と<人気順位>をセットにしてきましたが、字数が増える一方て更新も遅れるし読者の皆さんもかったるくて全部読む気にはならないと思われるので今後は2つに分けることにしました。また観た映画の寸評等も別の記事で1~2週間に1つは継続していきたいと思います。
▶今回の記事で注目の韓国映画その1は《独立・芸術映画》のランキング3位「小説家仇甫[クボ]氏の一日」です。
仇甫氏とは作家・朴泰遠[パク・テウォン](1909~87)の筆名です。また「小説家仇甫氏の一日」は彼が1934年に発表した短編小説のタイトルで、彼のモダニズム小説の代表作とされ、日本でも2006年刊行された「朝鮮近代文学選集」(下左画像)に収録されています。
この朴泰遠という作家は朝鮮戦争が始まると妻子を残して北朝鮮に行った越北作家です。そしていまや世界に知られるポン・ジュノ監督は、韓国に残された朴泰遠の次女の末男。つまり朴泰遠は母方の祖父になるわけです。朴泰遠は北朝鮮で別に家庭を持って粛清等にも遭わず76歳で人生を終えます。
※→関連記事「韓国映画の“怪物”ポン・ジュノ監督の才能は、なぜ生まれたのか?」
▶注目の韓国映画その2は、同じランキング5位の「私はチョソンサラム[朝鮮人]です」です。正確には韓国・日本合作のドキュメンタリーで、キム・チョルミン監督が在日朝鮮人の人たちに取材し、彼らの生活や歴史を辿った作品です。
ただキム監督は在日ではない韓国人で、2002年金剛山観光で初めて出会った在日朝鮮人たちに強い関心を持ち、以後18年間韓日を行き来して在日朝鮮人たちに取材し、彼らの人生と歴史を眺め、掘り下げて編集した作品とのことです。
在日朝鮮人関係のドキュメンタリーはこれまでいくつもありましたが、朝鮮総聯系と民団系に大別すると本作は前者です。
※私ヌルボの立ち位置を一応明らかにしておくと、朝鮮総聯系と民団系に対しては是々非々ですが、北朝鮮内の人権問題に全然触れない前者に対してはより厳しい見方をしています。ただ総聯系のドキュメンタリー「ウリハッキョ」「60万回のトライ」等は良かった!と思いました。
本作の説明文を読むと次のような記述がありました。
在日朝鮮人たちは日本の支配と戦後の南北分断の歴史の中で差別を受け、韓国からは無視されてきました。しかし絶えることなく自らのアイデンティテイを探し、初めて<2つの祖国>を胸に抱きました。
※この<2つの祖国>とは、近年の文在寅政権をはじめとする韓国の進歩系の<親北>気運、民族主義の高まり等から、朝鮮総聯系も必ずしも韓国を敵視しなくなっているということなのでしょうか? 韓国の<独島>パフォーマンスも、それが南北協調・統一の象徴だから、・・・と私ヌルボは思います。<反日>は目的というよりダシのようなもの。本作ポスター(下右画像)の民族学校の運動会で掲げられた統一旗の巨大な<独島>を見てください。
▶外国映画では、まず興行成績ランキング4位の「ドント・ルック・アップ」に注目。韓国では記者・評論家5人の平均評点も7.60と高く、日本の映画サイトでも評判よさそう。しかし上映館が少なく私ヌルボも未見です。年内には観なくては・・・。
もう1つは《独立・芸術映画》のランキング2位の「Listen」。<第77回ヴェネツィア国際映画祭>のオリゾンティ部門で5冠に輝いた作品とのことで、ストーリーは下の方の記事を参照してください。観た人のレビューで「ケン・ローチと似てる」といった感想を書いているのはなるほどねの感あり。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績12月10日(金)~12月12日(日) ★★★
韓国映画「幽体離脱者」が2週連続1位
【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(3)・・恋愛の抜けたロマンス(韓国)・・11/24・・・・75,636・・・・・・・・529,469・・・・・・5,392・・・・・・・834
2(1)・・幽体離脱者(韓国) ・・・・・・・・・・11/24 ・・・・・74,399・・・・・・・・765,621 ・・・・・7,472・・・・・・・931
3(2)・・ミラベルと魔法だらけの家・・11/24・・・・・・64,448・・・・・・・・537,776・・・・・・5,140・・・・・・・931
4(新)・・ドント・ルック・アップ ・・・・・12/08・・・・・・34,170 ・・・・・・・・54,374・・・・・・・・536・・・・・・・656
5(5)・・DUNE/デューン 砂の惑星・・・10/20・・・・・・27,767・・・・・・1,540,283 ・・・・16,799・・・・・・・370
6(4)・・ゴーストバスターズ ・・・・・・・・12/01・・・・・・14,717・・・・・・・・110,418 ・・・・・1,035・・・・・・・476
/アフターライフ
7(新)・・MONSTA X・・・・・・・・・・・・・・・・12/08・・・・・・11,738 ・・・・・・・・23,278・・・・・・・・371・・・・・・・・98
: THE DREAMING(韓国)
8(新)・・劇場版 ソードアート・オンライン・・12/09・・10,289 ・・・・・・・16,038・・・・・・・・174 ・・・・・・108
-プログレッシブ- 星なき夜のアリア(日本)
9(6)・・エターナルズ ・・・・・・・・・・・・・・・11/03 ・・・・・・・9,792 ・・・・・3,045,651 ・・・・31,687 ・・・・・・374
10(8)・・テイル[泰壱](韓国)・・・・・・・・・12/01 ・・・・・・・5,002 ・・・・・・・100,092・・・・・・・・841 ・・・・・・189
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は4・7・8位の3作品です。
4位「ドント・ルック・アップ」はアメリカのコメディ。日本でも12月10日から公開されているので説明は省略します。韓国題は「돈 룩 업」です。
7位「MONSTA X : THE DREAMING」は韓国のドキュメンター。2015年5月に韓国でデビューしたMONSTA Xの公演記録です。日本でも韓国と同日の8日から公開されているので説明は省略します。原題は「몬스타엑스 : 더 드리밍」です。
8位「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」は、例によって長い日本アニメのタイトル中でも長~い部類。これも日本で10月30日公開されて今も全都道府県で上映されているんですね。仮想空間内のRPG云々という話か。(知らなんだ。) そういえば「竜とそばかすの姫」も仮想空間の話だったか。今どきの若いもんは現実よりも仮想空間の方がリアルってか? なんちゅーこっちゃ、わからんぞよジーサンは。けほけほ。川原礫による原作のラノベは全世界での発行部数が2千6百万部突破というのももちろん知らなんだなー、けほけほけほ・・・。韓国題は「극장판 소드 아트 온라인 -프로그레시브- 별 없는 밤의 아리아」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(20)・・スパイ・キャット ・・・・・・・・・・12/09 ・・・・・・・・2,373・・・・・・・・3,973・・・・・・・・・・・33 ・・・・・・137
2(35)・・Listen・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/09 ・・・・・・・・2,054・・・・・・・・5,139・・・・・・・・・・・45 ・・・・・・205
3(7)・・小説家仇甫氏の一日(韓国) ・・・12/09 ・・・・・・・・1,019・・・・・・・・2,441・・・・・・・・・・・18 ・・・・・・・29
4(2)・・カン・ホジュン[看護中](韓国)・・12/02 ・・・・・・・・・761・・・・・・・・3,789・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・10
5(17)・・私は[朝鮮人]です(韓国・日本)・・12/09 ・・・・・・・・461・・・・・・・・2,287・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・23
4位以外の4作品がすべて新登場です。
1位「スパイ・キャット」(仮)はドイツのアニメ。緊急情報! 平和だったドラヴィル村に連続盗難事件が発生した⁉ 今こそわれわれの出番だ! 地上最高のスパイを夢見る飼い猫マニーは事件解決のため仲間たちと共に秘密作戦を始めます。ところが決定的な手がかりを発見した瞬間、逆に犯人として追われる身となり、人生最大の危機を迎えることに・・・。はたして彼らは事件を解決し、スパイアベンジャーズになるのでしょうか? 韓国題は「스파이 캣」です。
2位「Listen」(仮)はイギリス・ポルトガル合作のドラマ。<第77回ヴェネツィア国際映画祭>のオリゾンティ部門で審査員特別賞等5冠に輝いた作品です。ロンドン郊外に住むポルトガル人女性ベラは貧しい移民者出身で、3人の子供を育てて暮らしています。父親ジョタ同様病気がちな息子は父に反発するように父が苦手な英語を使います。娘は聴覚障碍を持っていてベラは手話でコミュニケーションをとつています。ところが娘の体に出たあざが政府当局の誤解を招き、子供たちは強制的にやがて福祉局の局員に連れて行かれます。ベラは訴訟を起こそうとし、ようやく娘と対面できますが局員は「英語以外使うな!」と言い放ち、手話でのコミュニケーションも封じます。それでも法律に則っているとは・・・。自分の貧困と夫の失職、そして娘の障碍にも沈黙していたイギリスの社会体制はある瞬間に現れ、このようにベラと家族の人生を苦しめます・・・。韓国題は「리슨」。これは日本公開がありそうな感じの作品ですが、未定のようです。
3位「小説家仇甫氏の一日」は韓国のドラマ。記事冒頭に書いたように仇甫氏とは作家・朴泰遠の筆名で、本作のタイトルも彼の短編小説の表題そのままです。
本作の時代背景も1930年代で、それに見合ったモノクロ映画です。イム・ヒョンムク監督は「仇甫氏の1日の日常を現代的な姿で込めてみてはどうだろうか?と考えて」制作したとのこと。
あらすじは以下の通りです。自分の作品の世界にこだわって文章を書いてきた若い小説家(無職のインテリ)の仇甫氏(パク・ジョンファン)は、先輩のギヨン(キム・ギョンイク)が編集長をしている小さな出版社に自分の小説の出版を決めてもらおうと、ある朝膨らむ期待を抱きつつ家を出ます。ところが期待できないとの知らせを聞いた仇甫氏が心寂しくソウルの街をぶらついていると、いろんな知人と偶然あるいは必然的に会うことになります・・・。原題は「소설가 구보의 하루」です。
時代や彼のおかれた境遇を考えると (以前読んだ原作の印象からも)陰鬱なフンイキの映画かな?と思いましたが、観た人たちのレビューに目を通すと「希望と慰めが感じられる」「穏やかで現実的な癒しの映画」「なんだか気分が良くなった」といった感想が目につきました。監督が英題を「Sisyphus's vacation(シジフォスの休暇)」としたのもそんな内容と関係ありそうです。
5位「私はチョソンサラム[朝鮮人]です」は韓国・日本合作のドキュメンタリー。昨年韓国で開催された<第12回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭>で審査員特別賞を受賞した作品です。
本作では在日朝鮮人の戦後76年の記録として1世から4世までの多様な在日朝鮮人たちの人生を通じて韓国近現代史の内部の<傷>も共に検証・省察しています。<傷>とは、たとえば朴正熙政権時代の1975年の<留学生スパイ団事件>。130人余りが有罪となったでっち上げ事件で、在日朝鮮人2世のカン・ジョンホン[康宗憲]さん等は祖国だと思った韓国によって死刑宣告という一生の傷を負わされます。しかし彼は23年の収監後仮釈放で出所、その後無罪を勝ち取ります。そして彼は2つの人生の原則を立てます。1つは誰よりも幸せに生きなければならないということで、もう1つは「憤りながらも憎まない」ということ。
現在の日本社会では在日朝鮮人をめぐる問題が次々に噴出しています。民族学校に対する補助金打ち切り問題、ヘイトスピーチ問題等々。本作ではそんな問題にも触れられているようです。
一方では実は在日の人たちもさまざま。3世から4世となると家族の間でも日本語をふつうに話し、韓国語がわかる人はそんなに多くはありません。民族意識も誰もが強いわけでもありません。(→コチラの過去記事参照。)
在日に対して、組織や政治的立場を離れた、総合的な観点からのドキュメンタリーなんて作られないですかねー・・・。韓国第は「나는 조선사람입니다」です。
※康宗憲さんについては、以前「康宗憲(カン・ジョンホン)氏の数奇で幸福な人生[1]」と題した記事を書きました。(→コチラ。) しかし[1]だけで[2]を書いてないのは、その記事の末尾に書いた通りです。それに、「死刑台から教壇へ 私が体験した韓国現代史」と題した自叙伝を読んでも「で、北朝鮮には行ったの?行かなかったの?」という肝心の疑問点については書かれてないし等々で書き方がむずかしかったから。ただ<数奇で幸福な人生>という見出しの文言は自分では気に入ってます。この映画での康さんの言葉「誰よりも幸せに生きなければならない」とみごとに呼応していて笑ってしまいました。原題は「나는 조선사람입니다」です。この作品は昨年日本の各地で上映されていたのですね。気づかず見逃してしまい残念。機会があれば観てみたいものです。
▶今回の記事で注目の韓国映画その1は《独立・芸術映画》のランキング3位「小説家仇甫[クボ]氏の一日」です。
仇甫氏とは作家・朴泰遠[パク・テウォン](1909~87)の筆名です。また「小説家仇甫氏の一日」は彼が1934年に発表した短編小説のタイトルで、彼のモダニズム小説の代表作とされ、日本でも2006年刊行された「朝鮮近代文学選集」(下左画像)に収録されています。
この朴泰遠という作家は朝鮮戦争が始まると妻子を残して北朝鮮に行った越北作家です。そしていまや世界に知られるポン・ジュノ監督は、韓国に残された朴泰遠の次女の末男。つまり朴泰遠は母方の祖父になるわけです。朴泰遠は北朝鮮で別に家庭を持って粛清等にも遭わず76歳で人生を終えます。
※→関連記事「韓国映画の“怪物”ポン・ジュノ監督の才能は、なぜ生まれたのか?」
▶注目の韓国映画その2は、同じランキング5位の「私はチョソンサラム[朝鮮人]です」です。正確には韓国・日本合作のドキュメンタリーで、キム・チョルミン監督が在日朝鮮人の人たちに取材し、彼らの生活や歴史を辿った作品です。
ただキム監督は在日ではない韓国人で、2002年金剛山観光で初めて出会った在日朝鮮人たちに強い関心を持ち、以後18年間韓日を行き来して在日朝鮮人たちに取材し、彼らの人生と歴史を眺め、掘り下げて編集した作品とのことです。
在日朝鮮人関係のドキュメンタリーはこれまでいくつもありましたが、朝鮮総聯系と民団系に大別すると本作は前者です。
※私ヌルボの立ち位置を一応明らかにしておくと、朝鮮総聯系と民団系に対しては是々非々ですが、北朝鮮内の人権問題に全然触れない前者に対してはより厳しい見方をしています。ただ総聯系のドキュメンタリー「ウリハッキョ」「60万回のトライ」等は良かった!と思いました。
本作の説明文を読むと次のような記述がありました。
在日朝鮮人たちは日本の支配と戦後の南北分断の歴史の中で差別を受け、韓国からは無視されてきました。しかし絶えることなく自らのアイデンティテイを探し、初めて<2つの祖国>を胸に抱きました。
※この<2つの祖国>とは、近年の文在寅政権をはじめとする韓国の進歩系の<親北>気運、民族主義の高まり等から、朝鮮総聯系も必ずしも韓国を敵視しなくなっているということなのでしょうか? 韓国の<独島>パフォーマンスも、それが南北協調・統一の象徴だから、・・・と私ヌルボは思います。<反日>は目的というよりダシのようなもの。本作ポスター(下右画像)の民族学校の運動会で掲げられた統一旗の巨大な<独島>を見てください。
▶外国映画では、まず興行成績ランキング4位の「ドント・ルック・アップ」に注目。韓国では記者・評論家5人の平均評点も7.60と高く、日本の映画サイトでも評判よさそう。しかし上映館が少なく私ヌルボも未見です。年内には観なくては・・・。
もう1つは《独立・芸術映画》のランキング2位の「Listen」。<第77回ヴェネツィア国際映画祭>のオリゾンティ部門で5冠に輝いた作品とのことで、ストーリーは下の方の記事を参照してください。観た人のレビューで「ケン・ローチと似てる」といった感想を書いているのはなるほどねの感あり。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績12月10日(金)~12月12日(日) ★★★
韓国映画「幽体離脱者」が2週連続1位
【全体】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(3)・・恋愛の抜けたロマンス(韓国)・・11/24・・・・75,636・・・・・・・・529,469・・・・・・5,392・・・・・・・834
2(1)・・幽体離脱者(韓国) ・・・・・・・・・・11/24 ・・・・・74,399・・・・・・・・765,621 ・・・・・7,472・・・・・・・931
3(2)・・ミラベルと魔法だらけの家・・11/24・・・・・・64,448・・・・・・・・537,776・・・・・・5,140・・・・・・・931
4(新)・・ドント・ルック・アップ ・・・・・12/08・・・・・・34,170 ・・・・・・・・54,374・・・・・・・・536・・・・・・・656
5(5)・・DUNE/デューン 砂の惑星・・・10/20・・・・・・27,767・・・・・・1,540,283 ・・・・16,799・・・・・・・370
6(4)・・ゴーストバスターズ ・・・・・・・・12/01・・・・・・14,717・・・・・・・・110,418 ・・・・・1,035・・・・・・・476
/アフターライフ
7(新)・・MONSTA X・・・・・・・・・・・・・・・・12/08・・・・・・11,738 ・・・・・・・・23,278・・・・・・・・371・・・・・・・・98
: THE DREAMING(韓国)
8(新)・・劇場版 ソードアート・オンライン・・12/09・・10,289 ・・・・・・・16,038・・・・・・・・174 ・・・・・・108
-プログレッシブ- 星なき夜のアリア(日本)
9(6)・・エターナルズ ・・・・・・・・・・・・・・・11/03 ・・・・・・・9,792 ・・・・・3,045,651 ・・・・31,687 ・・・・・・374
10(8)・・テイル[泰壱](韓国)・・・・・・・・・12/01 ・・・・・・・5,002 ・・・・・・・100,092・・・・・・・・841 ・・・・・・189
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は4・7・8位の3作品です。
4位「ドント・ルック・アップ」はアメリカのコメディ。日本でも12月10日から公開されているので説明は省略します。韓国題は「돈 룩 업」です。
7位「MONSTA X : THE DREAMING」は韓国のドキュメンター。2015年5月に韓国でデビューしたMONSTA Xの公演記録です。日本でも韓国と同日の8日から公開されているので説明は省略します。原題は「몬스타엑스 : 더 드리밍」です。
8位「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」は、例によって長い日本アニメのタイトル中でも長~い部類。これも日本で10月30日公開されて今も全都道府県で上映されているんですね。仮想空間内のRPG云々という話か。(知らなんだ。) そういえば「竜とそばかすの姫」も仮想空間の話だったか。今どきの若いもんは現実よりも仮想空間の方がリアルってか? なんちゅーこっちゃ、わからんぞよジーサンは。けほけほ。川原礫による原作のラノベは全世界での発行部数が2千6百万部突破というのももちろん知らなんだなー、けほけほけほ・・・。韓国題は「극장판 소드 아트 온라인 -프로그레시브- 별 없는 밤의 아리아」です。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(20)・・スパイ・キャット ・・・・・・・・・・12/09 ・・・・・・・・2,373・・・・・・・・3,973・・・・・・・・・・・33 ・・・・・・137
2(35)・・Listen・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12/09 ・・・・・・・・2,054・・・・・・・・5,139・・・・・・・・・・・45 ・・・・・・205
3(7)・・小説家仇甫氏の一日(韓国) ・・・12/09 ・・・・・・・・1,019・・・・・・・・2,441・・・・・・・・・・・18 ・・・・・・・29
4(2)・・カン・ホジュン[看護中](韓国)・・12/02 ・・・・・・・・・761・・・・・・・・3,789・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・10
5(17)・・私は[朝鮮人]です(韓国・日本)・・12/09 ・・・・・・・・461・・・・・・・・2,287・・・・・・・・・・・20 ・・・・・・・23
4位以外の4作品がすべて新登場です。
1位「スパイ・キャット」(仮)はドイツのアニメ。緊急情報! 平和だったドラヴィル村に連続盗難事件が発生した⁉ 今こそわれわれの出番だ! 地上最高のスパイを夢見る飼い猫マニーは事件解決のため仲間たちと共に秘密作戦を始めます。ところが決定的な手がかりを発見した瞬間、逆に犯人として追われる身となり、人生最大の危機を迎えることに・・・。はたして彼らは事件を解決し、スパイアベンジャーズになるのでしょうか? 韓国題は「스파이 캣」です。
2位「Listen」(仮)はイギリス・ポルトガル合作のドラマ。<第77回ヴェネツィア国際映画祭>のオリゾンティ部門で審査員特別賞等5冠に輝いた作品です。ロンドン郊外に住むポルトガル人女性ベラは貧しい移民者出身で、3人の子供を育てて暮らしています。父親ジョタ同様病気がちな息子は父に反発するように父が苦手な英語を使います。娘は聴覚障碍を持っていてベラは手話でコミュニケーションをとつています。ところが娘の体に出たあざが政府当局の誤解を招き、子供たちは強制的にやがて福祉局の局員に連れて行かれます。ベラは訴訟を起こそうとし、ようやく娘と対面できますが局員は「英語以外使うな!」と言い放ち、手話でのコミュニケーションも封じます。それでも法律に則っているとは・・・。自分の貧困と夫の失職、そして娘の障碍にも沈黙していたイギリスの社会体制はある瞬間に現れ、このようにベラと家族の人生を苦しめます・・・。韓国題は「리슨」。これは日本公開がありそうな感じの作品ですが、未定のようです。
3位「小説家仇甫氏の一日」は韓国のドラマ。記事冒頭に書いたように仇甫氏とは作家・朴泰遠の筆名で、本作のタイトルも彼の短編小説の表題そのままです。
本作の時代背景も1930年代で、それに見合ったモノクロ映画です。イム・ヒョンムク監督は「仇甫氏の1日の日常を現代的な姿で込めてみてはどうだろうか?と考えて」制作したとのこと。
あらすじは以下の通りです。自分の作品の世界にこだわって文章を書いてきた若い小説家(無職のインテリ)の仇甫氏(パク・ジョンファン)は、先輩のギヨン(キム・ギョンイク)が編集長をしている小さな出版社に自分の小説の出版を決めてもらおうと、ある朝膨らむ期待を抱きつつ家を出ます。ところが期待できないとの知らせを聞いた仇甫氏が心寂しくソウルの街をぶらついていると、いろんな知人と偶然あるいは必然的に会うことになります・・・。原題は「소설가 구보의 하루」です。
時代や彼のおかれた境遇を考えると (以前読んだ原作の印象からも)陰鬱なフンイキの映画かな?と思いましたが、観た人たちのレビューに目を通すと「希望と慰めが感じられる」「穏やかで現実的な癒しの映画」「なんだか気分が良くなった」といった感想が目につきました。監督が英題を「Sisyphus's vacation(シジフォスの休暇)」としたのもそんな内容と関係ありそうです。
5位「私はチョソンサラム[朝鮮人]です」は韓国・日本合作のドキュメンタリー。昨年韓国で開催された<第12回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭>で審査員特別賞を受賞した作品です。
本作では在日朝鮮人の戦後76年の記録として1世から4世までの多様な在日朝鮮人たちの人生を通じて韓国近現代史の内部の<傷>も共に検証・省察しています。<傷>とは、たとえば朴正熙政権時代の1975年の<留学生スパイ団事件>。130人余りが有罪となったでっち上げ事件で、在日朝鮮人2世のカン・ジョンホン[康宗憲]さん等は祖国だと思った韓国によって死刑宣告という一生の傷を負わされます。しかし彼は23年の収監後仮釈放で出所、その後無罪を勝ち取ります。そして彼は2つの人生の原則を立てます。1つは誰よりも幸せに生きなければならないということで、もう1つは「憤りながらも憎まない」ということ。
現在の日本社会では在日朝鮮人をめぐる問題が次々に噴出しています。民族学校に対する補助金打ち切り問題、ヘイトスピーチ問題等々。本作ではそんな問題にも触れられているようです。
一方では実は在日の人たちもさまざま。3世から4世となると家族の間でも日本語をふつうに話し、韓国語がわかる人はそんなに多くはありません。民族意識も誰もが強いわけでもありません。(→コチラの過去記事参照。)
在日に対して、組織や政治的立場を離れた、総合的な観点からのドキュメンタリーなんて作られないですかねー・・・。韓国第は「나는 조선사람입니다」です。
※康宗憲さんについては、以前「康宗憲(カン・ジョンホン)氏の数奇で幸福な人生[1]」と題した記事を書きました。(→コチラ。) しかし[1]だけで[2]を書いてないのは、その記事の末尾に書いた通りです。それに、「死刑台から教壇へ 私が体験した韓国現代史」と題した自叙伝を読んでも「で、北朝鮮には行ったの?行かなかったの?」という肝心の疑問点については書かれてないし等々で書き方がむずかしかったから。ただ<数奇で幸福な人生>という見出しの文言は自分では気に入ってます。この映画での康さんの言葉「誰よりも幸せに生きなければならない」とみごとに呼応していて笑ってしまいました。原題は「나는 조선사람입니다」です。この作品は昨年日本の各地で上映されていたのですね。気づかず見逃してしまい残念。機会があれば観てみたいものです。