2017年9月現在、韓国と姉妹提携をしている自治体(都道府県・市区・町村)は合計163あります。おそらく、おおかたの日本人はその多さに驚くのでは?
国別の多い順に10位までみると、1位=アメリカ(449) 2位=中国(364) 3位=韓国(163) 4位=オーストラリア(108) 5位=カナダ(70) 6位=ブラジル(57) 7位=ドイツ(53) 8位=フランス(52) 9位=ロシア(45) 10位=ニュージーランド(43) ※台湾は13位で22。
こうした数をみると、たしかに韓国は多いですね。姉妹都市が1つもない県は岩手・福島・群馬・栃木・長野・三重・徳島・沖縄の8県だけです。
ちなみに、北朝鮮との姉妹都市はありません。が、以前はありました。水木しげるの出身地として知られる鳥取県境港市で、元山市と1992~2006年姉妹都市でした。1978年8月北朝鮮から初の貨物船(例の)万景峰号が入港したり、以後も多くの朝鮮船舶が往来して、2003年には延べ408隻が北朝鮮のカニなどを届け、中古の自転車やタイヤ、冷蔵庫などを朝鮮に持ち帰っていたとのことです。その姉妹都市提携に終止符が打たれたのはもちろん日朝関係の悪化。この件は深入りすると長くなりそうなので、参考として→コチラとコチラの記事を紹介するに止めます。
韓国との姉妹提携がなぜこんなに多いのか? ・・・は問うまでもありません。昔からさまざまな交流があり、現在もすぐ行き来できるという利点を生かして、たがいに共通点を持つ自治体間で知識・技術その他有益な諸情報のやりとりをしているということです。
163の事例の中で、日韓の両都市の名前を見ただけでその提携理由がわかるものもあります。たとえば・・・
・東京都と、ソウル特別市 ・・・ 首都
・下関市(山口県)と、釜山広域市 ・・・ 関釜連絡船
・奈良市と、慶州市 ・・・ 古都。(慶州は新羅の都)
・・・といったところ。
・下関市(山口県)と、釜山広域市 ・・・ 関釜連絡船
・奈良市と、慶州市 ・・・ 古都。(慶州は新羅の都)
・・・といったところ。
それらを読むと、たまたまその市に住んでいた相手国の人の出身地だったことが機縁で、とか、議員が訪韓した時に会った人の縁で等々のわりといいかげんな(?)縁で姉妹都市になった例も多数ありますが、第三者にとっては意外な共通点を有する町同士の結びつきもあり、なかなか興味深いものがあります。
たとえば、東京では5つの区がソウル市の区と姉妹提携していますが、荒川区だけは済州市と姉妹提携をしています。その理由は?と問うと、私ヌルボの友人の1人はノーヒントで即答したのでちょっと驚きました。「区内に済州島出身者が多く在住しているから」なのだそうです。
今回は163の事例中から地理や歴史の勉強にもなりそうな20の事例をピックアップして、その共通点は何か?をテスト問題風にしてみました。難易度は・・・よくわかりません。日本の自治体名だけを見て見当がつきそうなものが8つほどはあるので、半分できれば上出来だと思います。韓国側で日本人に知られているのは、浦項(ポハン)、平昌(ピョンチャン)、あとはちょっと離れて蔚山(ウルサン)、利川(イチョン)といったとこですかねー?
※正解は( )の部分を範囲指定すれば現れます。
日本の自治体 | 韓国の自治体 | 正解 | [選択肢]姉妹都市成立の主な理由 | |
① | 瀬戸市(愛知県) | 利川市(京畿道) | (コ) | ア=2002FIFAワールドカップの時の開催地としては最小の都市 イ=[日]旧帝国海軍で現在は海上自衛隊の拠点。[韓]海軍の軍港都市。<海軍桜>の名所。(2010年合併鎮海市から改称)。 ウ=[日]加藤清正のお膝元。[韓]清正が築いた倭城がある。 エ=[日]氷ノ山スキー場と、[韓]竜平スキー場がある。 オ=[日]史跡「伝王仁墓」の所在地。[韓]王仁博士の生誕地といわれる。 カ=大製鉄所を中心とした臨海工業都市。 キ=伝統行事として闘牛が行われている。 ク=[日]江田船山古墳の所在地。[韓]武寧王陵の所在地。出土品(履・耳飾など)が類似。 ケ=カニの特産地。 コ=伝統的な陶磁器の生産地。 サ=炭鉱都市。 シ=[日]英彦山の開闢の伝説の地。[韓]その伝説と共通性のある韓民族の壇君神話に関係がある魔尼山の所在地。 ス=[日]朝鮮通信使の寄港地。(2004年牛窓町が合併により市に。) [韓]江戸初期朝鮮通信使の礎を築いた松雲大師の生誕地。 セ=茶の特産地。 ソ=国の無形文化財の大綱引きが行われている。 タ=梨の特産地。 チ=[日]孤児たち3千人を育てた田内千鶴子さんの出身地。[韓]孤児院の所在地。 ツ=[日]白村江の戦(663年)百済に多数の援軍を送った地。[韓]当時の百済の本拠地。 テ=[日]日本の統治期に朝鮮の植林に携わりながら朝鮮の陶磁器を研究紹介した浅川巧の生地。[韓]浅川巧が訪れていた林業試験場の出張所があった所。 ト=干潟で知られ、[日]ガタリンピック、[韓]マッドリンピックというイベントを開催。 |
② | 倉吉市(鳥取県) | 羅州市(全羅南道) | (タ) | |
③ | 越前町(福井県) | 盈徳郡(慶尚北道) | (ケ) | |
④ | 静岡県 | 忠清南道 | (ツ) | |
⑤ | 瀬戸内市(岡山県) | 密陽市(慶尚南道) | (ス) | |
⑥ | 赤平市(北海道) | 三陟市(江原道) | (サ) | |
⑦ | 枚方市(大阪府) | 霊岩郡(全羅南道) | (オ) | |
⑧ | 添田町(福岡県) | 仁川広域市江華郡 | (シ) | |
⑨ | 狭山市(埼玉県) | 統営市(慶尚南道) | (セ) | |
⑩ | 福山市(広島県) | 浦項市(慶尚北道) | (カ) | |
⑪ | 熊本市(熊本県) | 蔚山広域市 | (ウ) | |
⑫ | 大仙市(秋田県) | 唐津市(全羅南道) | (ソ) | |
⑬ | 呉市(広島県) | 昌原市(慶尚南道) | (イ) | |
⑭ | 高知県 | 全羅南道 | (チ) | |
⑮ | 若桜町(鳥取県) | 平昌郡(江原道) | (エ) | |
⑯ | 北杜市(山梨県) | 抱川市(京畿道) | (テ) | |
⑰ | 鹿島市(佐賀県) | 高興郡(全羅南道) | (ト) | |
⑱ | 和水町(熊本県) | 公州市(忠清南道) | (ク) | |
⑲ | 鹿嶋市(茨城県) | 西帰浦市(済州南道) | (ア) | |
⑳ | 徳之島3町(鹿児島県) | 清道郡(慶尚北道) | (キ) |
【付記】
①利川市は、瀬戸市の他に、信楽焼で知られる甲賀市(滋賀県)とも姉妹提携している。また波佐見焼の波佐見町(長崎)は高麗青磁発祥の地の康津郡(全羅南道)と姉妹提携している。
④この件については、先日(2017年9月23日)の毎日新聞(東京)の<日韓つなぐ自治体交流 川勝平太・静岡県知事と李俊揆・駐日韓国大使>という記事(→コチラ)で知りました。同県には朝鮮通信使ゆかりの清見寺もあり、日韓の交流・親善の場とされている。
⑤牛窓に伝わる唐子踊りは朝鮮通信使伝来とされている。
⑦私ヌルボ、2015年11月枚方市でちょうど交流行事が開かれた日に行きました。→関係記事。
⑩[日]JFEスチール西日本製鉄所と、[韓]POSCO。
⑪明・朝鮮連合軍(5万5千)が日本の籠城軍(1万)を取り囲んだ絵はよく知られる(?)。(→コチラ参照。)
⑫薩摩川内市(鹿児島県)と、昌寧郡(慶尚南道)も綱引きの縁で姉妹提携をしている。
⑭「木浦の母」とよばれた田内千鶴子(1912~68)の伝記映画に、日韓合作の「愛の黙示録」(1997.石田ゆり主演)がある。
⑮[韓]もちろん2018冬季五輪の開催地。
全体的に、特産物関係が多いですね。上記以外では、ニンニクの特産地という田子町(青森県)と瑞山市(忠清南道)というのもありました。
歴史や伝説の結びつきも、他にいくつかありました。7世紀白村江の戦の後百済から亡命した鬼室集斯を祠る鬼室神社がある日野町(滋賀県)と、鬼室集斯の父の鬼室福信を祠る恩山別神堂がある扶余郡恩山面(忠清南道)との姉妹提携等々。
また、産業等の現代的な共通項もあります。玄海町(佐賀県)と釜山広域市機張郡、そして御前崎市(静岡県)と蔚珍郡(慶尚北道)。これらはいずれも<原発の町>です。
【蛇足ながら・・・】
以下は私ヌルボの体験的日韓姉妹都市の話です。
・10数年前だったか、川崎市と富川市の間の高校生交流の催しにちょっと関わったことがありました。その少し前に川崎市と富川市が姉妹都市ということを知ってなるほどと思いました。富川は、首都の大都市と、大きな港町の間のベッドタウンです。すると横浜市と仁川市も姉妹都市なのかなと思ったら少し格下(?)の友好都市。仁川市の姉妹都市は神戸市でした。(空港がらみで仁川市と成田市も姉妹都市です。成田市はお寺(新勝寺)がらみで内蔵寺のある井邑市とも姉妹都市になっています。)
・2008年全州に行った時、日本語の堪能な市の職員のBさんという方と話す機会があり、全州が金沢と姉妹都市だと聞きました。ともに歴史・文化の伝統がある地方の中心都市で、川崎-富川以上にナットクしました。
・今年(2017年)7月、友人から声をかけられ、山梨県北杜市の浅川伯教・巧兄弟資料館に行ってきました。こじんまりとしていますが、展示内容はとても密度の濃い資料館で、館長さんからもいろんなお話を聞くことができて幸運でした。その時に、北杜市の姉妹都市とその経緯等についても知りました。それが私ヌルボが今回の記事を書いた直接的な契機です。 ※今月初めのソウル旅行で浅川巧の墓のある忘憂里共同墓地を訪ねたのもそれがきっかけです。(→関係記事。)
・数十年前の学生時代に行った石塔寺(いしどうじ)にある石造三重塔(阿育王塔)の縁で、所在地の東近江市(滋賀県)が、よく似た長蝦里三層石塔のある扶余郡場岩面(忠清南道)と姉妹提携していることは今知りました。
実は読み方もなんとなく「たごちょう」と思っていましたが、正しくは「たっこまち」なのですね(恥)。
さっそく訂正致します。