▶自国以外の映画の公開本数は韓国の方が日本よりも多く、また日本でも公開される作品でも大多数は日本よりも何ヵ月も早く公開されます。そのためこのブログ記事を書きながらもおもしろそうな外国映画が日本での公開が未定の場合、「あ、これ観てみたい!」と思い、「日本での公開希望!」などと書いたりもしてきました。その希望が時おり実現した時にはうれしいものです。
→昨年8月19日の記事で「台湾映画「返校:ディテンション」に注目!」と見出しにも書き、→ゲーム版も紹介したその作品が「返校 言葉が消えた日」という邦題で今年21年7月に公開されることが決定しました。(→コチラ等参照。) <第56回金馬奨>の主要12部門にノミネートし、5部門で受賞しという同作は40年に及ぶ台湾の負の歴史を描いたことで、台湾総統選挙にも影響を及ぼしたとのこと。とくにその「歴史への向き合い方」については→コチラの栖来ひかりさんの記事を参照されたし。なお、同作はすでに12月5日からNetflixで配信されているということです。
もうひとつ、日本公開が決まった期待作が香港映画「少年の君」です。この作品についても、→昨年7月15日の記事で「日本で一般劇場公開の予定はないのかなー?」と書きました。韓国公開は昨年の7月2日。韓国ではその後今年初めまでずっと公開され、ネチズンの評価も9.40を超える高評価を維持してきました。それが→コチラの記事によると7月16日に日本での公開決定とのこと。韓国から1年以上遅いとはいえ、観られればいいです。先の記事でも書いたように昨年の<第15回大阪アジアン映画祭>での上映作(観客賞を受賞)なので日本初公開ではないのですが・・・。また、この作品はアカデミー賞の国際長編映画賞候補にもなっているのですね。関連の記事をいくつか見てみると、「東野圭吾の盗作」騒動も起こっているそうですね。(→コチラ。) それはそれとして、とりあえずは早く観てみたいものです。
▶この1週間で観た映画は以下の2本。
・「ミナリ」★★★★☆ (公開初日の17:50~の回で観たが客席数127で観客は10人くらい。予測をかなり下回ったなー。韓国では観覧客の平均評点が8.33で評論家等12人の方は7.58。「パラサイト」の数字はそれぞれ9.07と9.06なので、それ以下。わかるような気がする、というのはあえて(多くの観客が期待するような)カタルシスを避けているから。よく言えば淡々と描いているということ。その中でユン・ヨジョン先生の扮したおばあさんの存在感は貴重。役柄も、ヨジョン先生ご自身の持ち味も・・・。)
・「花束みたいな恋をした」★★★★☆ (コチラは日曜午後。公開初日から7週間以上経つし、ボチボチ空いてきてるかなと思ったら座席数94で満席とは! 客を見るとアベックより女性同士が多い。アベックの場合、この映画がキッカケで別れることになっちゃった人たちもけっこういるんじゃないかなー、と思ったりして・・・。この映画自体よりも興味深かったのは、後で読んだ観た人たちのいろんな感想。各々の仕事観・結婚観・家族観・趣味等々、いろいろ考え方が分かれるからねー。また菅田クンと有村サンのドチラの味方になるかも・・・。恋人同士でも真っ向勝負したらタイヘンだよ、たぶん。人生ちょっと先輩のレビュー読むと「長続きするためには・・・(中略)・・・7,、8割は互いに干渉しないのが良いかな・・・?」などと書いてたりしてるね。)
話題になってる「花束みたいな恋をした」中の本の数々については、→コチラ1、→コチラ2、→コチラ3のどれにも具体的に書名が記されているし、記事もそれぞれ読み応えがあります。ただ、私ヌルボが知らない作家も多く、知っていても読んだことのない作家も何人もいます。本については、本ブログで以前<高校生にすすめる本360冊>という記事(リスト)を20回に分けて載せましたが、2人の本棚中にドンピシャであったのは奥田英朗「イン・ザ・プール」(→コチラ)だけ(奇跡的だ!)で、あとはカート・ヴォネガット・ジュニアと村上春樹の小説があるくらい。まあ私ヌルボ自身自覚していたことですが、あのリストは歴史資料のつもりでウェブ上に残しておこうというものでした。が、今回痛感したことは、あのリストが歴史遺物であることよりもヌルボ自身がとっくに歴史遺物になってしまっているんだなーということ。それはこの20年ほどの書店の品揃えを見て見当はついてました。古典や古今東西の<名作>とされていた本がほとんど消え、外国の本は少なくなりました。今時ドストエフスキーを読んで感動したという若者がいるんでしょうか? 一方増えたのは日本の最近の小説。それも身近な人間関係を描いたものが多く、社会的な問題等もそんな日常の延長で書かれる傾向があること。最近注目されている韓国の現代小説もほぼ同じ傾向があるようです。私ヌルボの若かりし頃、・・・って約半世紀前かそれ以前は<教養主義>の最後の時期でした。その時代の読書と今の読書の決定的な違いは、ソモソモ「何を求めて本を読むのか?」ということだと思います。ドチラが良いか否かの問題ではなく、時代の違い? いや、それだけじゃなくて・・・と、機会があれば若い人たちと話してみたいものです。
★★★ NAVERの人気順位(3月23日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ 9.82(17)
②(1) ライブ・ハード(韓国) 9.64(11)
③(2) そしてパン・ヘンジャ(韓国) 9.59(27)
④(4) きみの瞳が問いかけている(日本) 9.55(44)
⑤(3) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本) 9.49(1,007)
⑥(6) ドリーム・ファクトリー 9.35(34)
⑦(5) 復活: その証拠(韓国) 9.34(399)
⑧(新) ランド 9.32(19)
⑨(8) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本) 9.31(9,694)
⑩(7) ソウルフル・ワールド 9.30(9,326)
①と⑧の2作品が新登場です。
①「モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ」については後述します。
⑧「ランド」はアメリカのドラマ。女優ロビン・ライトの初監督作品です。弁護士として第一線で活躍していた女性エディ・マティス(ロビン・ライト)は不慮の事故で家族を失います。悲しみに暮れる彼女は、これまでの生活を捨てる決心をし、広漠としたワイオミングの山奥、ショーション国立森林公園の山小屋に移り住み、自給自足の生活をすることに・・・。そこで出会ったのが地元の猟師ミゲル(デミアン・ビチル)でした。彼から狩猟や釣り、食物の栽培等を教わったりするうちにエディは再び生きる力を見出していきます・・・。韓国題は「랜드」。日本公開は未定のようです。
【記者・評論家による順位】
①(1) ソウルフル・ワールド 8.44(9)
②(3) ミナリ 7.58(12)
③(4) 冬の夜に(韓国) 7.33(6)
④(新) 本当に遠いところ(韓国) 7.14(7)
⑤(5) 私は私を解雇しない(韓国) 6.88(8)
⑥(6) 光と鉄(韓国) 6.83(6)
⑦(7) 三姉妹 (韓国) 6.80(5)
⑧(8) フェアウェル 6.71(7)
⑨(10) きみと、波にのれたら(日本) 6.67(3)
⑩(新) モーリタニアン 6.60(5)
④と⑩の2作品が新登場です。
④「本当に遠いところ」は韓国のドラマ。江原道華川郡の羊牧場に住んでいるジヌ(カン・ギル)は娘のソル(キム・シハ)と一緒に静かな生活を送っています。牧場の所有のチュンマン(キ・ジュボン)と娘のムンギョン(キ・ドヨン)は、彼らを家族のように接しています。すぐにジヌの友人という男性ヒョンミン(ホン・ギョン)がここにやって来てから、2人の男性が長い間恋人同士だというがわかります。彼らは平和で穏やかな美しさを秘めているこの地でソルと幸せに生きることを夢見ます。ところがある日、ジヌの双子の妹ウニョン(イ・サンヒ)が訪ねて来て葛藤が始まります。事実ソルはウニョンの娘なのですが、ウニョンがいなくなり、これまでジヌが育ててきたのです。<本当に遠いところ>は、映画冒頭部分の羊毛のクローズアップのように、遠くから見た時には気づかなかったものが近くで見ると現れるというものに関する話です。ただ親しげで優しく見えた田舎の人は2人の男が恋人同士だという事実がわかると排他的・差別的な感情を表し、互いによく知っていたはずの家族の本音も文字通り<本当に遠い所>のように感じられるのです。江原道の美しい秋の風景は厳しい冬に変わりますが、本作は一抹の希望さえも逃しません・・・。原題は「정말 먼 곳」です。
⑩「モーリタニアン」については後述します。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績3月19日(金)~3月21日(日) ★★★
「ミナリ」が3週連続1位 「「鬼滅の刃」無限列車編」の動員数も増える
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・131,774 ・・・・・・・702,945 ・・・・・・6,384 ・・・・1,012
2(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・94,083 ・・・・・1,349,309 ・・・・・13,018 ・・・・・・758
無限列車編(日本)
3(3)・・ラーヤと龍の王国・・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・44,334 ・・・・・・・276,768・・・・・・・2,569 ・・・・・・761
4(新)・・モーリタニアン・・・・・・・・・・・・・3/17 ・・・・21,525・・・・・・・・・31,807・・・・・・・・・287 ・・・・・・586
5(5)・・ソウルフル・ワールド・・・・・・・・・1/20 ・・・・15,561・・・・・・2,023,904 ・・・・・18,802 ・・・・・・326
6(再)・・ロード・オブ・ザ・リング・・2002/12/19・・14,047・・・・・・・・・21,659 ・・・・・・・・254 ・・・・・・176
/二つの塔
7(再)・・ロード・オブ・ザ・リング・・2002/12/19・・13,305・・・・・・・・719,411 ・・・・・・4,588 ・・・・・・166
/王の帰還
8(55)・・モンテ・クリスト・・・・・・・・・・・・3/19 ・・・・・7,303・・・・・・・・・・・7,383・・・・・・・・145・・・・・・・・90
:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国)
9(新)・・ブレイブ・オン・ザ・ファイア ・・3/17 ・・・・・5,673 ・・・・・・・・・・9,202 ・・・・・・・・・74・・・・・・・203
10(8)・・恋する惑星・・・・・・・・・・・1995/9/02 ・・・・・4,674 ・・・・・・・・・61,158 ・・・・・・・・571 ・・・・・・134
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は4・8・9位の3作品です。
4位「モーリタニアン」はイギリス・アメリカ合作による法廷スリラー。実話に基づく作品です。弁護士のナンシー(ジョディ・フォスター)は、誰もが嫌がる男の弁護を引き受けることになります。その男スラヒ(タハール・ラヒム)は9.11テロの重要な容疑者とされてアメリカ政府に捕らえられ、起訴はもちろん、裁判もせずにキューバのグアンタナモ湾収容キャンプに6年間収監されています。冷静かつ頑固なことで知られる軍検察官カウチ(ベネディクト・カンバーバッチ)は強力な証拠を差し出してスラヒの有罪を確信します。それに対しスラヒの無罪を主張するナンシーと同僚のテリー(シェイリーン・ウッドリー)は国家機密という理由で隠蔽された真実の前で何度も挫折します。これまで裁判を願ってきた男スラヒ。彼はテロリストか、それとも罪のない犠牲者なのか・・・? 韓国題は「모리타니안」。日本公開は今年10月の予定です。なお本作でジョディ・フォスターが第78回ゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞しました。
8位「モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ」は、韓国の公演記録。ミュージカル「ジキル&ハイド」等の作曲家フランク・ワイルドホーンによるミュージカル「モンテクリスト伯」(2009)の初演の場所はスイスでしたが、それ以外の国では2010年の韓国が初めてとか。(日本は2013年。) 以来韓国では50万人の観客に愛されてきました。オリジナルはもちろんアレクサンドル・デュマの小説「モンテ・クリスト伯」なのですが、このミュージカルは小説よりも映画「モンテ・クリスト伯」(2002) の影響が多く見られるとのことです。韓国では5回目となる今回の公演は<韓国初演10周年記念公演>と銘打って2020年11月17日~21年3月28日LGアートセンターで開かる予定だったのがコロナ禍で12~1月のまる2ヵ月は中止となってしまいました。その代替措置としてオンラインで中継したり。3月にはCGV系列でこの記録映画が上映されるに至ったようです。主演級はそれぞれトリプル・キャストで、本作ではエドモン・ダンテス[モンテ・クリスト伯]はカイ、メルセデスはリナが演じています。140分の間に繰り広げられる愛と復讐の物語を、8Kシネマティックカメラ14台のオン・ステージ密着撮影によるダイナミックな映像と、映画館最適化サウンド編集により、劇場観覧よりも繊細に、よりいきいきと再現します。原題は「몬테크리스토: 더 뮤지컬 라이브」です。この公演の1階VIP席でのチケットを日本で公式販売するとの記事(→コチラ)がありましたが、例外的に観ることができた方はいたのでしょうか?(ちなみにお値段は2万円を超える程度)
9位「ブレイブ・オン・ザ・ファイア」(仮)はロシアのアクション。原題「Ogon」を直訳した英題は単に「FIRE」だけなので、韓国題は「브레이브 언더 파이어」にならって仮題とました。アンドレイは過去の火災現場で同僚の隊員を失くした消防のチーム長です。しかし、その傷も癒えないうちに、史上最悪の火災が発生します。すべてのものが燃えているシベリアの火災現場の中、アンドレイを筆頭とするチーム6人の消防隊員が炎に向かって出動します。彼らははたして最悪の山火事を鎮圧して火魔から生き残ることができるのでしょうか? 生死の岐路に置かれた人々、そして炎に飛び込んだ主人公の死闘が始まります…。
なお先週公開の「ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間」に続いて、6位「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」=韓国題「반지의 제왕 : 두개의 탑」、7位「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」=韓国題「반지의 제왕 : 왕의 귀환」も公開されました。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・131,774・・・・・・・・・702,945 ・・・・・6,384・・・・・1,012
2(新)・・本当に遠いところ(韓国) ・・・・・・・3/18・・・・・・・3,137 ・・・・・・・・・・・6,181 ・・・・・・・・50・・・・・・・186
3(新)・・アイ・メット・ア・ガール ・・・・・・・・3/17・・・・・・・2,731 ・・・・・・・・・・・5,138 ・・・・・・・・44・・・・・・・143
4(2)・・フロッグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/11・・・・・・・2,307 ・・・・・・・・・・11,828 ・・・・・・・108・・・・・・・・92
5(再)・・ゴッホ~最期の手紙~・・2017/11/09・・・・・・・1,892・・・・・・・・・・419,411 ・・・・・3,345・・・・・・・109
2・3位の2作品が新登場です。
2位「本当に遠いところ」については上述しました。
3位「アイ・メット・ア・ガール」(仮)はオーストラリアのラブロマンス。幻影と幻聴を経験しているデボンは夢に描いていた理想の女性ルーシーと出会い、甘いデートで魔法のような時間を送っていました。ところが、夢のようにルーシーは消えてしまいます。デボンの周りの人は皆彼女はデボンの幻想に過ぎないと言います。しかし、恋に落ちた瞬間を憶えているデボンは彼女を探し出します。が・・・。韓国題は「그녀가 사라졌다(彼女が消えた)」ですが、原題「Met a Girl」をそのまま仮題としました。
なお、5位「ゴッホ~最期の手紙~」日本でも2017年に公開されたイギリス・ポーランド合作映画の再上映。韓国題は「러빙 빈센트(ラヴィング・ヴィンセント)」です。
→昨年8月19日の記事で「台湾映画「返校:ディテンション」に注目!」と見出しにも書き、→ゲーム版も紹介したその作品が「返校 言葉が消えた日」という邦題で今年21年7月に公開されることが決定しました。(→コチラ等参照。) <第56回金馬奨>の主要12部門にノミネートし、5部門で受賞しという同作は40年に及ぶ台湾の負の歴史を描いたことで、台湾総統選挙にも影響を及ぼしたとのこと。とくにその「歴史への向き合い方」については→コチラの栖来ひかりさんの記事を参照されたし。なお、同作はすでに12月5日からNetflixで配信されているということです。
もうひとつ、日本公開が決まった期待作が香港映画「少年の君」です。この作品についても、→昨年7月15日の記事で「日本で一般劇場公開の予定はないのかなー?」と書きました。韓国公開は昨年の7月2日。韓国ではその後今年初めまでずっと公開され、ネチズンの評価も9.40を超える高評価を維持してきました。それが→コチラの記事によると7月16日に日本での公開決定とのこと。韓国から1年以上遅いとはいえ、観られればいいです。先の記事でも書いたように昨年の<第15回大阪アジアン映画祭>での上映作(観客賞を受賞)なので日本初公開ではないのですが・・・。また、この作品はアカデミー賞の国際長編映画賞候補にもなっているのですね。関連の記事をいくつか見てみると、「東野圭吾の盗作」騒動も起こっているそうですね。(→コチラ。) それはそれとして、とりあえずは早く観てみたいものです。
▶この1週間で観た映画は以下の2本。
・「ミナリ」★★★★☆ (公開初日の17:50~の回で観たが客席数127で観客は10人くらい。予測をかなり下回ったなー。韓国では観覧客の平均評点が8.33で評論家等12人の方は7.58。「パラサイト」の数字はそれぞれ9.07と9.06なので、それ以下。わかるような気がする、というのはあえて(多くの観客が期待するような)カタルシスを避けているから。よく言えば淡々と描いているということ。その中でユン・ヨジョン先生の扮したおばあさんの存在感は貴重。役柄も、ヨジョン先生ご自身の持ち味も・・・。)
・「花束みたいな恋をした」★★★★☆ (コチラは日曜午後。公開初日から7週間以上経つし、ボチボチ空いてきてるかなと思ったら座席数94で満席とは! 客を見るとアベックより女性同士が多い。アベックの場合、この映画がキッカケで別れることになっちゃった人たちもけっこういるんじゃないかなー、と思ったりして・・・。この映画自体よりも興味深かったのは、後で読んだ観た人たちのいろんな感想。各々の仕事観・結婚観・家族観・趣味等々、いろいろ考え方が分かれるからねー。また菅田クンと有村サンのドチラの味方になるかも・・・。恋人同士でも真っ向勝負したらタイヘンだよ、たぶん。人生ちょっと先輩のレビュー読むと「長続きするためには・・・(中略)・・・7,、8割は互いに干渉しないのが良いかな・・・?」などと書いてたりしてるね。)
話題になってる「花束みたいな恋をした」中の本の数々については、→コチラ1、→コチラ2、→コチラ3のどれにも具体的に書名が記されているし、記事もそれぞれ読み応えがあります。ただ、私ヌルボが知らない作家も多く、知っていても読んだことのない作家も何人もいます。本については、本ブログで以前<高校生にすすめる本360冊>という記事(リスト)を20回に分けて載せましたが、2人の本棚中にドンピシャであったのは奥田英朗「イン・ザ・プール」(→コチラ)だけ(奇跡的だ!)で、あとはカート・ヴォネガット・ジュニアと村上春樹の小説があるくらい。まあ私ヌルボ自身自覚していたことですが、あのリストは歴史資料のつもりでウェブ上に残しておこうというものでした。が、今回痛感したことは、あのリストが歴史遺物であることよりもヌルボ自身がとっくに歴史遺物になってしまっているんだなーということ。それはこの20年ほどの書店の品揃えを見て見当はついてました。古典や古今東西の<名作>とされていた本がほとんど消え、外国の本は少なくなりました。今時ドストエフスキーを読んで感動したという若者がいるんでしょうか? 一方増えたのは日本の最近の小説。それも身近な人間関係を描いたものが多く、社会的な問題等もそんな日常の延長で書かれる傾向があること。最近注目されている韓国の現代小説もほぼ同じ傾向があるようです。私ヌルボの若かりし頃、・・・って約半世紀前かそれ以前は<教養主義>の最後の時期でした。その時代の読書と今の読書の決定的な違いは、ソモソモ「何を求めて本を読むのか?」ということだと思います。ドチラが良いか否かの問題ではなく、時代の違い? いや、それだけじゃなくて・・・と、機会があれば若い人たちと話してみたいものです。
★★★ NAVERの人気順位(3月23日現在上映中映画) ★★★
【ネチズンによる順位】
※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。
①(新) モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ 9.82(17)
②(1) ライブ・ハード(韓国) 9.64(11)
③(2) そしてパン・ヘンジャ(韓国) 9.59(27)
④(4) きみの瞳が問いかけている(日本) 9.55(44)
⑤(3) 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(日本) 9.49(1,007)
⑥(6) ドリーム・ファクトリー 9.35(34)
⑦(5) 復活: その証拠(韓国) 9.34(399)
⑧(新) ランド 9.32(19)
⑨(8) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本) 9.31(9,694)
⑩(7) ソウルフル・ワールド 9.30(9,326)
①と⑧の2作品が新登場です。
①「モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ」については後述します。
⑧「ランド」はアメリカのドラマ。女優ロビン・ライトの初監督作品です。弁護士として第一線で活躍していた女性エディ・マティス(ロビン・ライト)は不慮の事故で家族を失います。悲しみに暮れる彼女は、これまでの生活を捨てる決心をし、広漠としたワイオミングの山奥、ショーション国立森林公園の山小屋に移り住み、自給自足の生活をすることに・・・。そこで出会ったのが地元の猟師ミゲル(デミアン・ビチル)でした。彼から狩猟や釣り、食物の栽培等を教わったりするうちにエディは再び生きる力を見出していきます・・・。韓国題は「랜드」。日本公開は未定のようです。
【記者・評論家による順位】
①(1) ソウルフル・ワールド 8.44(9)
②(3) ミナリ 7.58(12)
③(4) 冬の夜に(韓国) 7.33(6)
④(新) 本当に遠いところ(韓国) 7.14(7)
⑤(5) 私は私を解雇しない(韓国) 6.88(8)
⑥(6) 光と鉄(韓国) 6.83(6)
⑦(7) 三姉妹 (韓国) 6.80(5)
⑧(8) フェアウェル 6.71(7)
⑨(10) きみと、波にのれたら(日本) 6.67(3)
⑩(新) モーリタニアン 6.60(5)
④と⑩の2作品が新登場です。
④「本当に遠いところ」は韓国のドラマ。江原道華川郡の羊牧場に住んでいるジヌ(カン・ギル)は娘のソル(キム・シハ)と一緒に静かな生活を送っています。牧場の所有のチュンマン(キ・ジュボン)と娘のムンギョン(キ・ドヨン)は、彼らを家族のように接しています。すぐにジヌの友人という男性ヒョンミン(ホン・ギョン)がここにやって来てから、2人の男性が長い間恋人同士だというがわかります。彼らは平和で穏やかな美しさを秘めているこの地でソルと幸せに生きることを夢見ます。ところがある日、ジヌの双子の妹ウニョン(イ・サンヒ)が訪ねて来て葛藤が始まります。事実ソルはウニョンの娘なのですが、ウニョンがいなくなり、これまでジヌが育ててきたのです。<本当に遠いところ>は、映画冒頭部分の羊毛のクローズアップのように、遠くから見た時には気づかなかったものが近くで見ると現れるというものに関する話です。ただ親しげで優しく見えた田舎の人は2人の男が恋人同士だという事実がわかると排他的・差別的な感情を表し、互いによく知っていたはずの家族の本音も文字通り<本当に遠い所>のように感じられるのです。江原道の美しい秋の風景は厳しい冬に変わりますが、本作は一抹の希望さえも逃しません・・・。原題は「정말 먼 곳」です。
⑩「モーリタニアン」については後述します。
★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績3月19日(金)~3月21日(日) ★★★
「ミナリ」が3週連続1位 「「鬼滅の刃」無限列車編」の動員数も増える
【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・131,774 ・・・・・・・702,945 ・・・・・・6,384 ・・・・1,012
2(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・94,083 ・・・・・1,349,309 ・・・・・13,018 ・・・・・・758
無限列車編(日本)
3(3)・・ラーヤと龍の王国・・・・・・・・・・・・3/04 ・・・・44,334 ・・・・・・・276,768・・・・・・・2,569 ・・・・・・761
4(新)・・モーリタニアン・・・・・・・・・・・・・3/17 ・・・・21,525・・・・・・・・・31,807・・・・・・・・・287 ・・・・・・586
5(5)・・ソウルフル・ワールド・・・・・・・・・1/20 ・・・・15,561・・・・・・2,023,904 ・・・・・18,802 ・・・・・・326
6(再)・・ロード・オブ・ザ・リング・・2002/12/19・・14,047・・・・・・・・・21,659 ・・・・・・・・254 ・・・・・・176
/二つの塔
7(再)・・ロード・オブ・ザ・リング・・2002/12/19・・13,305・・・・・・・・719,411 ・・・・・・4,588 ・・・・・・166
/王の帰還
8(55)・・モンテ・クリスト・・・・・・・・・・・・3/19 ・・・・・7,303・・・・・・・・・・・7,383・・・・・・・・145・・・・・・・・90
:ザ・ミュージカル・ライブ(韓国)
9(新)・・ブレイブ・オン・ザ・ファイア ・・3/17 ・・・・・5,673 ・・・・・・・・・・9,202 ・・・・・・・・・74・・・・・・・203
10(8)・・恋する惑星・・・・・・・・・・・1995/9/02 ・・・・・4,674 ・・・・・・・・・61,158 ・・・・・・・・571 ・・・・・・134
※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。
新登場は4・8・9位の3作品です。
4位「モーリタニアン」はイギリス・アメリカ合作による法廷スリラー。実話に基づく作品です。弁護士のナンシー(ジョディ・フォスター)は、誰もが嫌がる男の弁護を引き受けることになります。その男スラヒ(タハール・ラヒム)は9.11テロの重要な容疑者とされてアメリカ政府に捕らえられ、起訴はもちろん、裁判もせずにキューバのグアンタナモ湾収容キャンプに6年間収監されています。冷静かつ頑固なことで知られる軍検察官カウチ(ベネディクト・カンバーバッチ)は強力な証拠を差し出してスラヒの有罪を確信します。それに対しスラヒの無罪を主張するナンシーと同僚のテリー(シェイリーン・ウッドリー)は国家機密という理由で隠蔽された真実の前で何度も挫折します。これまで裁判を願ってきた男スラヒ。彼はテロリストか、それとも罪のない犠牲者なのか・・・? 韓国題は「모리타니안」。日本公開は今年10月の予定です。なお本作でジョディ・フォスターが第78回ゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞しました。
8位「モンテ・クリスト:ザ・ミュージカル・ライブ」は、韓国の公演記録。ミュージカル「ジキル&ハイド」等の作曲家フランク・ワイルドホーンによるミュージカル「モンテクリスト伯」(2009)の初演の場所はスイスでしたが、それ以外の国では2010年の韓国が初めてとか。(日本は2013年。) 以来韓国では50万人の観客に愛されてきました。オリジナルはもちろんアレクサンドル・デュマの小説「モンテ・クリスト伯」なのですが、このミュージカルは小説よりも映画「モンテ・クリスト伯」(2002) の影響が多く見られるとのことです。韓国では5回目となる今回の公演は<韓国初演10周年記念公演>と銘打って2020年11月17日~21年3月28日LGアートセンターで開かる予定だったのがコロナ禍で12~1月のまる2ヵ月は中止となってしまいました。その代替措置としてオンラインで中継したり。3月にはCGV系列でこの記録映画が上映されるに至ったようです。主演級はそれぞれトリプル・キャストで、本作ではエドモン・ダンテス[モンテ・クリスト伯]はカイ、メルセデスはリナが演じています。140分の間に繰り広げられる愛と復讐の物語を、8Kシネマティックカメラ14台のオン・ステージ密着撮影によるダイナミックな映像と、映画館最適化サウンド編集により、劇場観覧よりも繊細に、よりいきいきと再現します。原題は「몬테크리스토: 더 뮤지컬 라이브」です。この公演の1階VIP席でのチケットを日本で公式販売するとの記事(→コチラ)がありましたが、例外的に観ることができた方はいたのでしょうか?(ちなみにお値段は2万円を超える程度)
9位「ブレイブ・オン・ザ・ファイア」(仮)はロシアのアクション。原題「Ogon」を直訳した英題は単に「FIRE」だけなので、韓国題は「브레이브 언더 파이어」にならって仮題とました。アンドレイは過去の火災現場で同僚の隊員を失くした消防のチーム長です。しかし、その傷も癒えないうちに、史上最悪の火災が発生します。すべてのものが燃えているシベリアの火災現場の中、アンドレイを筆頭とするチーム6人の消防隊員が炎に向かって出動します。彼らははたして最悪の山火事を鎮圧して火魔から生き残ることができるのでしょうか? 生死の岐路に置かれた人々、そして炎に飛び込んだ主人公の死闘が始まります…。
なお先週公開の「ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間」に続いて、6位「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」=韓国題「반지의 제왕 : 두개의 탑」、7位「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」=韓国題「반지의 제왕 : 왕의 귀환」も公開されました。
【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・131,774・・・・・・・・・702,945 ・・・・・6,384・・・・・1,012
2(新)・・本当に遠いところ(韓国) ・・・・・・・3/18・・・・・・・3,137 ・・・・・・・・・・・6,181 ・・・・・・・・50・・・・・・・186
3(新)・・アイ・メット・ア・ガール ・・・・・・・・3/17・・・・・・・2,731 ・・・・・・・・・・・5,138 ・・・・・・・・44・・・・・・・143
4(2)・・フロッグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/11・・・・・・・2,307 ・・・・・・・・・・11,828 ・・・・・・・108・・・・・・・・92
5(再)・・ゴッホ~最期の手紙~・・2017/11/09・・・・・・・1,892・・・・・・・・・・419,411 ・・・・・3,345・・・・・・・109
2・3位の2作品が新登場です。
2位「本当に遠いところ」については上述しました。
3位「アイ・メット・ア・ガール」(仮)はオーストラリアのラブロマンス。幻影と幻聴を経験しているデボンは夢に描いていた理想の女性ルーシーと出会い、甘いデートで魔法のような時間を送っていました。ところが、夢のようにルーシーは消えてしまいます。デボンの周りの人は皆彼女はデボンの幻想に過ぎないと言います。しかし、恋に落ちた瞬間を憶えているデボンは彼女を探し出します。が・・・。韓国題は「그녀가 사라졌다(彼女が消えた)」ですが、原題「Met a Girl」をそのまま仮題としました。
なお、5位「ゴッホ~最期の手紙~」日本でも2017年に公開されたイギリス・ポーランド合作映画の再上映。韓国題は「러빙 빈센트(ラヴィング・ヴィンセント)」です。
歴史遺物化、実感しますね。それも思ってたより高速です。光速というべきかも。
本棚の整理をしていて遠藤周作の「沈黙」「死海のほとり」とか北杜夫の「白きたおやかな峰」とか久しぶりに埃をはらいました。
箱入りハードカバーの文学作品がごく普通にベストセラーだったころが嘘みたいです。
もちろん、世代が違えば私にない感性もあるし、また私が共感する感性の持ち主に出会うこともあります。
しかし・・・。
これほどあらゆるものが消えていくとは、正直予想を超えてました。まあ、そういう自分自身がそのうち消えるんですけどね。
昨日のブログ記事でも本の話の続きを書いてしまいました。
遠藤周作も、北杜夫もホントに懐かしいですね。本の内容だけでなく、当時の世相・社会、そして自分自身のことがいろいろ思い出されます。半世紀前の1970年頃からさらに半世紀時代を遡ると大正時代。その頃10代だった明治生まれの私の両親も、年老いて語ろうにも語れなかったいろんなことがたくさんあったんだろうな、と今思います。
箱入りハードカバーの文学作品、わが家の文学書の本棚にもけっこう残っています。いつ頃から見かけなくなったんでしょうね。