一応[韓国の漫画]「在日同胞 リ・ジョンエのソウル滞留記」を読む ①同胞・僑胞・僑民の違いの続きです。
リ・ジョンエさんは父方と母方の祖父が日本の統治期に済州島から渡ってきた在日朝鮮人3世です。彼女の最初の訪韓は2004年ですが、この漫画は2006年K大学校国際語学院に半年間語学留学した時のことを中心に描かれたものです。月刊誌「民族21」に2007年1月~08年12月連載されたもので、2010年単行本として刊行されました。(彼女は「主人公」で、文や絵を書いているわけではありません。)
全然予備知識もなくページを開いた私ヌルボ。最初から「アレレ!」という場面が描かれていました。
日本の人たち、発音してごらんなさい! | さあ、今度は中国の方たち、発音して ごらんなさい |
先生! 私は日本人でも中国人でもありません。 先生と同じ民族で・・・・ | 私の祖国は朝鮮民主主義人民共和国です。 私はどちらで発音すればいいですか? |
あら、それじゃしょうがないわね。 ともかく、ジョンエさんは‘北韓’の抑揚から直さなくっちゃね。 発音が強過ぎるじゃない。 |
そうして今私がこの席に泣きそうな 表情で立っていることになったのだ。 | ジョンエさんは‘北韓’の抑揚から直さなくっちゃね。 発音が強過ぎるじゃない。 直せって?名前リ・ジョンエ。年齢・・・は30ちょっと過ぎで、国籍朝鮮。 (私の国籍については詳しく話す機会があるだろう。) 皆さんは私が今なぜソウルのある教室でこんなばかげた話を聞いて涙を堪えているのか知りたいだろう。 |
・・・・うーむ。先生とジョンエさんそれぞれの「正しさ」「思い込み」といったものがぶつかりあってますね。
私ヌルボが先生の立場だったら、たぶん次のようなことを言うかも。
「語学学習には国籍は関係ありません。日本人・中国人といってしまったのは日本から来た人、中国から来た人という意味でした。より正確には日本語を母語としている人、中国語を母語としている人ということです。」
「あなたの話す韓国語には北韓の抑揚があります。ここで教えるのはほぼソウル方言に基づいた韓国の標準語ですが、それは北韓も含めて各地で話されている韓国語の特色を否定するものではありません。日本語でも標準語と大阪弁や東北弁等とのバイリンガルはふつうにいるでしょ?」
それはそれとして、この冒頭の場面からだけでもいろんなことが読み取れます。
・朝鮮籍でも韓国に行けて、自由に語学留学もできること。
※「朝鮮」籍とは、日本国籍とされていた朝鮮人のうち、戦後も引きつづき日本に居住している朝鮮人について、登録されることになった便宜上の籍。北朝鮮国籍の意味ではありません。
・公然と「私の祖国は朝鮮民主主義人民共和国です」と名乗る人がいても、周りの人は驚かないこと。
・韓国ではこのような人を主人公にした本も刊行することができる。
・・・これらのことについては、実はいろいろ問題もあり、「悶着」も起こっているのですが・・・。
そしてジョンエさん自身については、
・朝鮮民主主義人民共和国を「祖国」とすることに強い誇りを抱いている。
・韓国という国、韓国人の状況をあれこれ考えることなく、自分の感情や主張をストレートに表現する。
※ジョンエさんのように、曾祖父や祖父が済州島出身でも親・北朝鮮の人はつうにいて、1959年以降「帰国船」に乗って北朝鮮に「帰国」した済州島出身者はたくさんいます。
・・・ということで、自分の意見等をあまり強く主張しない(?)私ヌルボとしてはちょっと苦手なタイプかも。
また、この本自体についてもちょっと書きづらいなー、といった感じ。どんな読み方をするかでその人の政治的立場・思想傾向がわかるリトマス試験紙のような本なので。
たとえば<嫌韓>の人からはボロクソに言われそう。韓国内でも、反北朝鮮の保守派の側からは<従北>だ!との声が上がりそう、いや実際に上がっています。
今回はそこらへんの問題はあえて避けました。続きもヌルボ個人の感情はなるべく抑えて、考えるに足ることを中心に書くことにします。
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