ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [11月18日(金)~11月20日(日)] ► LGBTIQ映画ってどう? ロシア人俳優原作の「ファイアバード」、ロシア政府が上映禁止に ►月並みな「時空移動」は食傷気味

2022-11-23 19:42:44 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事中で注目の韓国映画はとくにありません。韓国以外の外国映画では記事再末尾の「ファイアバード」(右画像)です。
 エストニア・イギリス合作のドラマですが、このポスターを見てわかるようにゲイの男性同士のロマンスを扱った作品で、1970年代エストニアのソ連空軍基地が舞台です。物語は純然たるフィクションではなく、ソ連で長く俳優を務めてきたセルゲイ・フェティソフ(1952~2017)の回想録に拠るものとのことです。
 男性同士の恋愛を扱った映画で画期的だったのはやはりアン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」(2005)でしょう。1960年代の保守的なアメリカ南部が舞台。21世紀になっても偏見・差別は先進諸国でもフツーにありましたが、この作品が多くの観客の感動を呼び、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞受賞等高く評価されたことも現在までのLGBTQに対する見方の変化に繋がっているのではないでしょうか? 日本でも現在は同性愛に対して肯定的な(否定しない)見方をするが多数になっていますが、アンケート結果の推移を見ると2~30年ほど前は否定的見方が多数でした。
 しかし世界全体を見ると白眼視されるどころではなく、→コチラの地図を見ると死刑12ヵ国をはじめ犯罪としている国の方が多いのが現状です。とくにイスラム圏では厳しく、その論拠はコーランに記されている<神の言葉>だから、という個人にとっても国にとってもアイデンティティに関わることなのでとても容易には折り合いがつく案件とは思われません。イスラム圏以外では中国も「事実上違法」に分類されてますね。「ブロークバック・マウンテン」も上映されていません。
 「ファイアバード」の話に戻ります。この作品は2021年<モスクワ国際映画祭>に公式招待されましたが、ロシア政府により上映は禁止されました。また同性愛反対者たちは劇場前でデモを行いました。ピーター・リベイン監督は結局すべてのチケット販売を中止し、空の観客席で映画を上映しなければならなかったそうです。監督は「映画の中で法的に禁止されたセルゲイとロマンの愛のように、今日のロシアでも同性愛者たちが迫害を受けている」と語っています。またロシアのマスメディアも「「ファイアバード」がモスクワ国際映画祭を恥ずかしめる」と批判的な見出しをつけて報道しているそうです。
 ところで、この記事を読んでいる皆さんは右のポスターを見てどう思いましたか? 私ヌルボは率直に言って抵抗感があります。近年同性愛関係が多いので「またか」と内心ウンザリしています。しかし全然観ないわけでもなく「キャロル」や「チョコレート」は紛れもない感動作でした。要は作品の<ねらい>にどれだけ共感できるか?ということ、なのかなー?

▶今上映中の韓国映画をチェックしていたらシネマート新宿で「少女」が上映されているではないですか。<第22回釜山国際映画祭(2017)>で「罪深き少女」(죄 많은 소녀)」のタイトルで上映された作品がなんで単に「少女」だけになっちゃったのかはわかりませんが・・・。その映画祭で<今日の俳優賞>を受賞した主演のチョン・ヨビンはその後<大鐘賞>の新人女優賞等々多くの映画賞の新人女優賞を総なめにしています。この作品を韓国でご覧になったソウル在住20年を超える方が→コチラのブログ記事で「10年に1度の名作であると思います」と感想を記し、さらに「「息もできない」(2009)が思い出されます」とまで激賞しているのを読んでこれは何をおいても観なくては、と思いました。

▶先日「四畳半タイムマシンブルース」を観てきました。世評通り楽しめましたが、新登場の韓国映画の「同感」といい「深夜カフェ:ミッシング・ハニー」といい、「時空を超えて・・・」云々という映画がずいぶん目に付くような、って前からか? かぐや姫とか浦島太郎とかも同じカテゴリーみたいだしねー。要は(あまりにも月並みな発想は避けるとして)その設定でどんな内容を盛り込むか?ということがキモなんだろうな。

★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績11月18日(金)~11月20日(日) ★★★

             「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」が2週連続1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ブラックパンサー ・・・・11/09・・・・・・374,650 ・・・・・1,731,100 ・・・・18,438 ・・・1,456
       /ワカンダ・フォーエバー(米)
2(10)・・デシベル(韓国)・・・・・・11/16・・・・・・336,315・・・・・・・484,907 ・・・・・・4,841 ・・・1,152
3(11)・・同感(韓国)・・・・・・・・・・11/16・・・・・・177,459・・・・・・・301,600 ・・・・・・2,966 ・・・1,013
4(40)・・フォール ・・・・・・・・・・・11/16 ・・・・・・・38,202・・・・・・・・57,014 ・・・・・・・・588 ・・・・・463
       :600メートル(英・米)
5(3)・・エブリシング・エブリウエア・・10/12・・22,526 ・・・・・・328,107 ・・・・・・3,513 ・・・・・210
       ・オール・アット・ワンス(米)
6(4)・・映画クレヨンしんちゃん・・9/28・・・・・・19,535・・・・・・・815,744 ・・・・・・8,177 ・・・・・343
       謎メキ! 花の天カス学園(日本)
7(2)・・自白(韓国)・・・・・・・・・・・・10/26・・・・・・・16,622・・・・・・・727,588 ・・・・・・7,257 ・・・・・419
8(25)・・閑山 Redux(韓国)・・・・11/16 ・・・・・・・・6,978・・・・・・・・10,883 ・・・・・・・・105 ・・・・・202
9(6)・・人生は美しい(韓国)・・・・・9/28 ・・・・・・・・4,029・・・・・1,158,892 ・・・・・10,794 ・・・・・・98
10(41)・・深夜カフェ・・・・・・・・・11/16・・・・・・・・・2,935・・・・・・・・・5,960・・・・・・・・・・54 ・・・・・157
       :ミッシング・ハニー(韓国)
  ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン

 3・4・10位の3作品が新登場です。8位「閑山 Redux」については→コチラの記事で紹介しました。なお、これまで本ブログでは「エブリシング・エブリホエア・オール・アット・ワンス」と仮題のまま書いてきましたが、結局日本公開は来年3月3日となりました。そして長ったらしいタイトルは「エブリシング・エブリエア・オール・アット・ワンス」と一見してわからないレベルで変えましたね。なんだかなー、です。やれやれ。公式サイトは→コチラ
 3位「同感」は韓国のラブロマンス。
 1999年、ヨン(ヨ・ジング)は一目惚れの彼女ハンソル(キム・ヘユン)をつかまえるために友人に無線機を借ります。2022年、ムニ(チョ・イヒョン)はインタビューの課題のために古いHAMの無線機を作動させます。「CQ、CQ、私の声を聞こえますか?」 それは皆既月食が起きた日。時空を超えて奇跡のようにつながったヨンとムニは互いの愛と友情を語り合いながら相手の心を受信します・・・。原題は「동감」です。
 日本のサイトでタイトルが「時の香り~リメンバー・ミー~(原題:同感)」となっている記事があるので、どういうわけか探ってみると、以下のような経緯があるのですね。
 <1> 2000年5月公開の韓国映画「同感」が2001年10月「リメンバー・ミー」の邦題で日本で公開された。
   主演:キム・ハヌル、ユ・ジテ  ※1979年に彼を待つソウンと2000年に彼女を待つインが無線で話す。
 <2> 2001年11月日本でリメイク版「時の香り リメンバー・ミー」(山川直人監督)が公開された。
   主演:吹石一恵・斎藤工(デビュー作)
 4位「フォール:600メートル」はイギリス・アメリカ合作のスリラー&アクション。
 目の前で夫が転落死してトラウマを抱えている女性クライマーのベッキー(グレース・フルトン)はトラウマを克服すべく親友のハンター(バージニア・ガードナー)と共に再び高所に挑みます。ただその高所とは山ではなく砂漠地帯に屹立する高さ約600mの電波塔でした。しかし携帯電話は使えず食糧もありません。そんな中、たった1つの降り口である階段が腐食して外れてしまいます。心身が消耗しても寝ると墜落します。それでも目もくらむような高度で2人は必死に生き抜くため奮闘します・・・。韓国題は「폴: 600미터」です。
 10位「深夜カフェ:ミッシング・ハニー」は韓国のラブロマンス&ファンタジー。
 釜山の山腹地区隊のクールな美女警察官ユン(チェ・ソジン)と、パスタ店オーナーシェフの優しい恋人テヨン(イ・イギョン)は誰を見ても幸せなカップル。2人は結婚を控えています。ところが誰よりも幸せになるべき結婚式の日、テヨンが何の連絡もなく現れないという大惨事が起こります。突然消えた恋人の行方が杳としてわからない中、ユンはテヨンが消えた最後の場所で怪しい地図を見つけます。そして地図に従って行きますが、まもなく普段見たことのなかったカフェを発見します。そこはマスターから客まで皆が怪しい深夜カフェでした。ユンはそこでやっとテヨンに会います。ところがテヨンはユンを見ても彼女とわからず、どこか幼く見えたりもするのです。「あの・・・もしかして今は何年ですか?」。夜12時から日の出まで・・・そこは時空を超越した場所です。原題は「심야카페: 미씽 허니」です。

【独立・芸術映画】
順位 ・・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(2)・・プロメア(日本)・・・・・・・・・・・・・・・10/20 ・・・・・1,347・・・・・・・・11,573・・・・・・・・・127 ・・・・・・・15
2(13)・・キングダム2・・・・・・・・・・・・・・・・11/16 ・・・・・1,199 ・・・・・・・・・2,633 ・・・・・・・・・25・・・・・・・106
       遥かなる大地へ(日本)
3(1)・・同じ下着を着るふたりの女(韓国)・・11/10 ・・・・827 ・・・・・・・・・6,041・・・・・・・・・・54 ・・・・・・・29
4(新)・・ファイアバード(エストニア・英)・・・・11/17 ・・・・・・・729 ・・・・・・・・・1,237・・・・・・・・・・12 ・・・・・・・33
5(4)・・第1子(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・11/10・・・・・・・712・・・・・・・・・・3,781・・・・・・・・・・34 ・・・・・・・22

 2・4位の2作品が新登場です。
 2位「キングダム2: 遥かなる大地へ」は、私ヌルボ、観てなくて語る資格がないのでスルーします。韓国題は「킹덤2: 아득한 대지로」です。
 4位「ファイアバード」はエストニア・イギリス合作のドラマ。そして若い兵士セルゲイと戦闘機パイロットであるロマンの危険な愛を描いたクイアロマンス。演劇、映画、TV等で活躍した俳優セルゲイ・フェティソフの回顧録「ロマンの物語」に基づいた作品で、ロンドンLGBTIQ+映画祭で初公開され、韓国では<第11回ソウル国際プライド映画祭(2021)>で「불새(火の鳥)」というタイトルで初公開されました。
 物語の舞台は1977年、冷戦時代のエストニア。ソ連のオルム生まれのセルゲイ(トム・フライヤー)はその地のソ連空軍基地で2年間の義務服務中。そこで彼は当時戦闘機パイロットだったロマンと恋に落ちます。すべてが禁止された時代に危険な愛を育む2人・・・。
 いや、現在のロシアでも性少数者を弾圧している独裁政権を告発する本作はロシア内部で大きな反発を買いました。ロシア政府は2021年<モスクワ国際映画祭>に公式招待された本作の上映を禁止させ、強硬な同性愛反対者たちは劇場前で反対デモを行ったとか・・・。
 しかし、この両者の対立を打開するのが容易でないことは冒頭に記した通りです。
 韓国題は「파이어버드」。日本公開は未定のようです。なお、タイトルの「火の鳥」は初デートで見たストラヴィンスキー作曲のバレエに由来します。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿