韓国の文学館 ①ソウル編の続きです。
当初は江原道の文学館13館をまとめて載せるつもりでしたが、この地域は韓国文学史上よく知られた作家・詩人の文学館がとくに多くて説明内容が長くなったため、2回(3回?)に分けてアップすることにしました。
他の地域でもそうだと思いますが、これらの文学館の大半は90年代以降、とくに今世紀に入ってから建てられたものが多いようです。文学と政治との関係性の変化も背景としてあるようだし、とくに近年は地域文化の振興といった観点から設立されるというケースが多いように思われます。
☆最初の金東鳴の記事中の「こころ」の歌はとても美しい歌です。ご存知なかった方はぜひ聴いてみてください。
※基本的なデータは韓国文学館協会の公式サイト(http://www.munhakwan.com/)です。
※各欄の背景の色がピンクのものは韓国文学館協会所属の施設、緑色のものは所属していない施設です。
※紹介した作品は日本で刊行されているものです。(絶版書を含む。)
«江原道(上)»
当初は江原道の文学館13館をまとめて載せるつもりでしたが、この地域は韓国文学史上よく知られた作家・詩人の文学館がとくに多くて説明内容が長くなったため、2回(3回?)に分けてアップすることにしました。
他の地域でもそうだと思いますが、これらの文学館の大半は90年代以降、とくに今世紀に入ってから建てられたものが多いようです。文学と政治との関係性の変化も背景としてあるようだし、とくに近年は地域文化の振興といった観点から設立されるというケースが多いように思われます。
☆最初の金東鳴の記事中の「こころ」の歌はとても美しい歌です。ご存知なかった方はぜひ聴いてみてください。
※基本的なデータは韓国文学館協会の公式サイト(http://www.munhakwan.com/)です。
※各欄の背景の色がピンクのものは韓国文学館協会所属の施設、緑色のものは所属していない施設です。
※紹介した作品は日本で刊行されているものです。(絶版書を含む。)
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10 | 金東鳴(キム・ドンミョン)文学館 김동명문학관 | ○住 所 :1210-851 江原道江陵市沙川面 セットル1キル 30-2 (210-851 강원도 강릉시 사천면 샛돌1길 30-2) ○電 話 :033-640-4270 ○公式サイト:http://kimsuyoung.dobong.go.kr/ ○開館年 :2013年 ○観覧時間:10:00~18:00 ○休館日 :月曜、新・旧正月連休、秋夕 ○作 家 :金東鳴(キム・ドンミョン)=1900~1968年。江原道溟州郡沙川面(現・江陵市)に生まれる。咸鏡南道の永生中学校を卒業した後小学校の教員となり、教員生活を送る中で文学に関心を持つようになる。1923年「開闢」に掲載された「あなたがもし門をあけてくだされば(당신이 만약 내게 문을 열어주시면)」で文壇にデビュー。その後1925~28年青山学院神学科で学ぶ。元山に戻って教員を務めながら詩作を続ける。しかし日帝の圧力が強まる中、1942年から筆を絶つ。戦後は1945年興南市自治委員会の委員長に選ばれ、46年には朝鮮民主党の咸鏡南道党部委員長になるが、金日成派の圧迫に身の危険を感じて47年越南。55年詩集「真珠湾」で第2回自由文学賞を受賞。1947~60年梨花女子大学の教授を務める。1968年病死。文人葬が行われ忘憂里墓地に埋葬される。文学館から少し離れた江陵市沙川面美盧里に金東鳴詩碑がある。(「芭蕉(파초)」と「私の心(내 마음)」の詩碑) ○作 品 :金素雲:訳「朝鮮詩集 前期」(興風館.1943)に「芭蕉」ほか3編所収。・金時鐘:訳「再訳 朝鮮詩集」(岩波書店.2007)に「芭蕉」「海」「月」の3編所収。・大村益夫[編訳]「対訳 詩で学ぶ朝鮮の心」(青丘文化社.1998)に「ウリマル」と「妻をいたむ」を所収。 ○ウィキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E6%9D%B1%E9%B3%B4 ○沢知恵(作曲)の歌「こころ」:このの歌詞は金東鳴の詩(訳:金素雲)による。夏川りみ、クミコ、持田香織、佐々木秀実、アン・サリー等にカヴァーされている。沢知恵の歌の動画はコチラ→https://www.youtube.com/watch?v=NwiTmp1IC9k ○参考ブログ記事(韓国語) http://blog.naver.com/daichung/220247171124 http://blog.daum.net/pdi134/16122140 http://blog.daum.net/sangkieng/116 |
11 | 金笠(キム・サッカ)文学館 김삿갓문학관 | ○住 所 :江原道寧越郡金笠面金笠路216-22 (1230-822 강원도 영월군 김삿갓면 김삿갓로 216-22) ○電 話 :033-375-7900 ○mail :sis3247@hanmail.net ○公式サイト:http://www.ywmuseum.com/(休止中?) ○開館年 :2003年 ○観覧時間:9:00~18:00 ○休館日 :1月1日 ○施設概要:全羅南道・智異山一帯を放浪した金笠が 世を去った3年後、次男が彼の遺骸をこの地に移葬した。文学館はその墓域の約500m南に設立された。 ・所蔵・展示資料=遺物と遺品(紙、筆、硯等200点)・文学関連資料や書籍500余点・金笠研究資料・生涯映像 ・イベント=金笠文化大祭り(制限大会、書初め大会、国楽公演、民話シンポジウム等)・全国詩人大会(詩人大会、作文大会等) ※復元された生家は墓域から2㎞ほど奥にある。→動画https://www.youtube.com/watch?v=getIHEvEzBw ○作 家 :金笠(キム・サッカ)=1807~1863年。本名は金炳淵(キム•ビョンヨン)。朝鮮後期の放浪詩人としてよく知られている。 ○作 品 :「金笠(キムサッカ)詩選」(平凡社.東洋文庫.2003) ○ウィキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB ※<namuwiki>(韓国語)に、さまざまなエピソードが記されている。→https://namu.wiki/w/김삿갓 ○参考書:崔碩義「放浪の天才詩人金笠(キムサッカ)」(集英社新書.2001) 現代文学賞を受賞した李文烈「詩人(시인)」(未訳)は彼の伝記小説。 ○余談:1996年~「김삿갓」というラベルの高級焼酎が宝海醸造(木浦市)から発売されていた。 ○参考ブログ記事(韓国語):http://travelwriter.tistory.com/84 |
12 | 金裕貞(キム・ユジョン)文学村 김유정문학촌 | ○住 所 :200-812 江原道春川市 新東面シルレキル25 (200-812 강원도 춘천시 신동면 실레길25) ○電 話 :033-261-4650 ○mail :rlehkks@daum.net ○公式サイト:http://www.kimyoujeong.org ○開館年 :2002年 ○観覧時間:4~10月9:00~18:00、11~3月9:30~17:00 ○休館日 :月曜、1月1日、旧正月、秋夕 ○施設概要:復元された金裕貞の生家があり、当時の暮らしぶり、作品が生まれた環境等を知ることができる。展示館には彼の作品等が展示されている。建物の外には「春・春」の登場人物をかたどった造形物が配置されている。 ○施設紹介の動画:https://www.youtube.com/watch?v=yGBnMipe648 ○作 家 :金裕貞(キム・ユジョン)=1908~1937。「韓国近現代文学事典」(明石書店)には「出生地は春川かソウルか定かではないが、ソウルと見られている」とある。1935年「夕立」が朝鮮日報新春文芸に、「大当たり」が中外日報新春文芸に当選し文壇にデビュー。わずか4年の間に30余編の小説と10余編の随筆を発表するが、肺結核に苦しみながら29歳で早逝。 ○作 品 :「朝鮮短篇小説選 下」(岩波文庫.1984)に「椿の花」「春・春」所収。「そばの花の咲く頃 日帝時代民族文学対訳選」(新幹社.1995)に「春や春」所収。「愛の韓国童話集」(素人社.2001)に「春春」所収。「小説家仇甫氏の一日 ほか十三編」(平凡社2006)に「山里」所収。 ○ウィキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%A3%95%E8%B2%9E ○京春線の金裕貞駅から徒歩7分。この駅名は2004年新南駅から改称されたもので、韓国初の人名に因む駅名である。 ○ソウルナビ:http://www.seoulnavi.com/miru/2546/ ○参考ブログ記事(韓国語):http://travelbookmark.tistory.com/166 http://blog.samsung.com/3516/ ○参考:「李箱作品集成」(作品社.2006)中に「金裕貞-小説体で書いた金裕貞論」がある。 ○「春・春」は1969年金洙容監督により同タイトルで映画化された。また2014年「そばの花・運の良い日・春、春」というアニメ作品が作られている。※「そばの花」の原作は李孝石、「運のよい日」は玄鎮健の短編小説。 |
13 | 東国大学校 萬海(マネ)マウル 동국대학교 만해마을 | ○住 所 :252-820 江原道蹄郡北面萬海路91 (252-820 강원도 인제군 북면 만해로91) ○電 話 :033-462-2303~4 ○mail :gwo901@hanmail.net ○公式サイト:http://www.manhae.net/ ○開館年 :2003年 ○観覧時間:夏季 9:30~18:00、 冬季 9:30~17:00 ○休館日 :年中無休 ○施設概要:僧侶だった韓龍雲が修行を積み、「ニムの沈黙」を書いた百潭寺(ペクタムサ)から百潭溪谷を経て約10㎞下った所にある。韓龍雲の著書、遺品、文学資料等の展示の他、文芸誌の発刊や学術研究支援事業等を行っている。学校・団体・企業等の研修施設及び宿泊施設がある。※百潭寺にも萬海記念館がある。参考ブログ記事→http://hangamja.tistory.com/562 ○作 家 :韓龍雲(ハン・ヨンウン)=1879~1944年。号は萬海。詩人、僧侶、独立運動家。忠清南道洪城に生まれる。1918年に来日して東京や京都等全国各地を巡回し、東京YMCAの朝鮮独立運動に参加した。三一独立運動の際、民族代表33人の1人として独立宣言書に署名した。1926年発表された唯一の詩集「ニム[あなた]の沈黙(님의 침묵)」は戦前の朝鮮文学を代表する詩集の1つとされている。1927年民族協同戦線の新幹会の結成を主導。その後朝鮮総督府による神社参拝の強要に抵抗して投獄されたり、出獄後も創氏改名反対運動や朝鮮人学徒兵制反対運動を展開した。1944年6月京城府東大門区城北洞(現・城北区)の自宅尋牛荘(심우장.シムジャン)で中風と栄養失調によって死去。忘憂里共同墓地に埋葬された。 ○作 品 :安宇植(訳)「ニムの沈黙」(講談社.1999)・金素雲「朝鮮詩集 前期」(興風館.1943)に「桐の葉」他4編所収・金時鐘「再訳 朝鮮詩集」(岩波書店.2007)に「知りようがないのです」他2編所収・大村益夫[編訳]「対訳 詩で学ぶ朝鮮の心」(青丘文化社.1998)に「ニムの沈黙」他3編所収。 ○ウィキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%93%E9%BE%8D%E9%9B%B2 ○尋牛荘は現在公開され、遺品等が展示されている。 →関連記事:http://www.kampoo.com/travel/seoul/seongbuk/simujang.htm http://travel2.innolife.net/list.php?ac_id=53&ai_id=5073 ○忠清南道洪城郡に生家が復元され、萬海祠・銅像・韓龍雲文学体験館が建てられている。関連記事:http://japanese.hongseong.go.kr/jpa/sub01_05_03.do ○京畿道広州市の萬海紀念館も参照のこと。 |
14 | 朴景利(パク・キョンニ)文学公園 박경리문학공원 | ○住 所 :220-090 江原道原州市土地キル1 (220-090 강원도 원주시 토지길1) ○電 話 :033-762-6843 ○公式サイト:http://www.tojipark.com/(閉鎖中?) ○開館年 :1999年 ○観覧時間:10:00~17:00 ○休館日 :1月1日、旧正月、秋夕当日、毎月第4月曜 〇施設概要:1980年ソウルから移り住んだ朴景利が「土地」第4・5部を執筆した家が土地再開発の対象とされたのを機に公園に転換され、1999年開園された。展示室では彼女の著作や、「土地」全巻(第1~5部)の背景・人物を中心に展示している。1万㎡を超える敷地内には、その旧宅と庭園を原型のまま保存するとともに、「土地」に関連した3つのテーマ公園が造られていて、物語の舞台となった韓屋14棟やわらぶきの家、遺物等による「土地」セット場も造成されている。 毎年秋には全国の文人たちの文学祭りである「土地」文学祭が開催されている。 ○施設紹介の動画:https://www.youtube.com/watch?v=xbupOOjs7zg ○作 家 :朴景利(パク・キョンニ)=1926~2008年。本名は朴今伊(박금이.パク・クミ)。1926年慶尚南道忠武(現・統営市)で生まれた。1945年晋州女子高等学校卒業した後結婚したが、夫は左翼として追及され朝鮮戦争中に西大門刑務所で獄死した。1955年金東里の推薦で短編が文芸誌「現代文学」に発表され、本格的な作家生活を始める。1969~94年の25年間執筆した大河小説「土地」は1897年中秋から1945年の日本の降伏までを慶尚南道河東郡平沙里の地主だった崔参判家を中心に300人に及ぶ人物が登場し、彼らの間の出来事とともに伝染病や自然災害、東学農民運動や日韓併合、三一独立運動等といった歴史的背景まで書き込まれており、また舞台も平沙里から間島(「満洲」)の龍井、晋州、ソウル等へ移ったりもしている。この地の旧宅を出た後も同じ原州市内の「土地」文化館で執筆生活を続けていたが、2008年4月4日脳卒中のため死去した。1人娘のキム・ヨンジュは1973年詩人の金芝河と結婚し、現在「土地」文化館の館長を務めている。 ○作 品 :金容権(訳)「土地(全6巻)」(講談社.2011~12)・・・完全版の約4分の1の青少年向きダイジェスト版の翻訳・安宇植・鎌田光登(訳)「土地(全8巻)」(福武書店.1983~86)・・・第1部のみの翻訳・「現代韓国文学選集 第2巻」(冬樹社.1976)に「金薬局の娘たち」所収。 ○(韓国)ウィキペディア:https://ko.wikipedia.org/wiki/박경리 ○参考ブログ記事(韓国語):http://noproblemyourlife.tistory.com/744 http://www.poemlane.com/bbs/zboard.php?id=moeum&page=1&sn1=&divpage=1&sn=off&ss=on&sc=on&select_arrange=headnum&desc=asc&no=693 ○「土地」は1974年金洙容監督・金芝美の主演で映画化された。また1987~89年KBS、2004~05年SBSと2度同名のタイトルでドラマ化された。後者は日本でも「名家の娘ソヒ」のタイトルで放映されDVDも出ている。 ○「土地」文化館 (原州市)、朴景利記念館(慶尚南道統営市)も参照のこと。 |
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