ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [6月14日(金)~6月16日(日)]

2019-06-19 14:56:26 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸シネマ・ジャック&ベティで13日(木)「天国でまた会おう」鑑賞。韓国では昨年4月公開で、日本はその10ヵ月遅れ。韓国での観客のレビュー等を参考に「これは観なくちゃ」と思っていた作品で、実際(ほぼ)期待通り。原作は「その女アレックス」等で知られるピエール・ルメートルのゴンクール賞受賞作。映画の後で読んでみると、ラストが違うとか、わりと重要な脇役の少女が原作にはない(?)とかの違いを発見。それはそれとして、観た人の(たぶん)ほとんどを満足させる娯楽作品だと思います。

▸15日(土)、「あつい壁」(1970)と「新・あつい壁」(2007)の上映会(at茅ヶ崎市役所分庁舎)があることを当日になって知り、観に行きました。制作年は離れていますが、どちらも中山節夫監督作品です。共通するテーマはハンセン病差別です。私ヌルボ、「新・あつい壁」は観たことがあります。1951年の菊池事件[藤本事件]を扱った作品です。その時はハンセン病よりも冤罪に対する関心から観に行きました。死刑反対の理由として「後で誤審が明らかになったら取り返しがつかない」ということも挙げられますが、この菊池事件(→ウィキペディア。→関連記事)はまさに殺人事件の真犯人であることが非常に疑わしいのに死刑にされてしまった代表例でしょう。被告の支援活動が高まっていた中での執行でした。冤罪の可能性が強い名張毒ぶどう酒事件(→ウィキペディア)については、再審請求が認められないまま奥西被告は2015年医療刑務所内で死亡しました。(関連のドキュメンタリー映画に今年公開された「眠る村」等があります。) あと、無実かもしれないのに死刑が執行されてしまった事例としては飯塚事件(→ウィキペディア)があります。まだ他にあるかも。日本人の過半数を占める死刑制度に賛成している皆さんは、自分がそんな不幸な当事者になる可能性があることも念頭において、「覚悟を持って」賛意を表明してほしいものです。
 その菊池事件で被告を早計とも言うべき死刑執行に追い込んだのが地域住民や裁判に関わった判事をはじめとする関係者のハンセン病者とその家族に対する強い差別意識でした。療養所内の特設法廷で行われた審理では裁判官・検察官・弁護人らは白い予防服とゴム長靴を着用し、ゴム手袋をはめた手で火箸を使って証拠物を扱ったそうです。(映画でその場面がある。) 政府がらい予防法を廃止してそれまでの隔離政策を廃したのが1996年。その何十年も前のこととはいえ、ひどいものです。
 「あつい壁」の方は今回初めて観ました。1953~55年の龍田寮事件(→ウィキペディア。劇中では吉田寮事件)を扱った作品で、これも舞台は同じく熊本です。私ヌルボ、この事件については知りませんでした。龍田寮とは、ハンセン病者の療養施設である菊池恵楓園で生活している親の子供(いわゆる未感染児童)のための施設です。その子供たちの小学校通学に対し、PTAや地域住民たちが強い反対運動を展開したという事件です。→コチラのブログ記事によると、ハンセン病者差別だけでなく、在日朝鮮人差別もあったとか・・・。
 映画ではあの「ベン・ハー」にも<レプラ>(←必ずしもハンセン病とは言えない?)という言葉が出てきますが、そんな遠い昔から近現代までの<黒歴史>の延長線上にある根の深い差別意識は、らい予防法の廃止や裁判所の隔離政策違憲判決、政府による謝罪・賠償を経ても完全になくなったとは言えません。2003年これもまた熊本県で起こった<ハンセン病元患者宿泊拒否事件>(→ウィキペディア)はそのことを物語っています。※この事件についての詳しく深い論考は→コチラ
 「あつい壁」「新・あつい壁」を観ると、患者だけでなく家族も就職等で多くの差別を受けたことがわかります。現在その国家賠償と謝罪を求める<ハンセン病家族訴訟>が進められ、6月28日に熊本地裁で判決が言い渡されるということで注目しています。

         ★★★ NAVERの人気順位(6月18日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 痛いほど愛する(韓国)  9.71(139)
②(3) アラジン  9.49(13,439)
③(2) 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE
       ~2人の英雄~(日本)  9.48(159)
④(4) アベンジャーズ/エンドゲーム  9.39(66,845)
⑤(5) 教会のお兄さん(韓国)  9.36(1,239)
⑥(7) ソウニの膝(韓国)  9.32(22)
⑦(6) ポロロ劇場版 宝島大冒険  9.29(2,339)
⑧(-) 昼顔(日本)  9.23(13)
⑨(8) ホテル・ムンバイ  9.17(857)
⑩(-) ボヒとノギャン(韓国)  9.14(69)

 ⑧「昼顔」が新登場です。2014年放送の話題のTVドラマの映画化作品で17年日本公開ですが、私ヌルボ、タイトル以外にほとんど知らなかったなー。不倫モノとうのも苦手ジャンルだしなー(笑)。韓国題は「평일 오후 3시의 연인(平日午後3時)」と、TVドラマの時のタイトルを援用。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 寄生虫[パラサイト](韓国)  9.06(16)
②(3) アニエスによるヴァルダ  8.00(6)
③(5) アベンジャーズ/エンドゲーム  7.62(13)
④(6) キム君(韓国)  7.57(7)
⑤(7) サスペリア  7.40(5)
⑥(-) チェ 28歳の革命  7.25(4)
⑦(8) ノン・フィクション  7.17(6)
⑧(9) 日日是好日(日本)  7.00(4)
⑨(-) ポロロ劇場版 宝島大冒険  7.00(3)
⑨(-) グッバイ・マイ・ラブNK:紅い青春(韓国)  7.00(3)
⑨(-) 怪怪怪怪物!  7.00(3)

 ⑥と⑨「グッバイ・マイ・ラブNK:紅い青春」、⑨「怪怪怪怪物!」が新登場です。
 ⑥「チェ 28歳の革命」は、チェ・ゲバラの半生を描いたスペイン・米・仏合作の伝奇映画「チェ」(2008)の第1部。日本では2009年に公開されています。韓国題は「체 게바라: 1부 아르헨티나(チェ・ゲバラ : 第1部アルゼンチン)」です。
 ⑨「グッバイ・マイ・ラブNK:紅い青春」は、釜山国際映画祭、ソウル独立映画祭、モントリオール世界映画祭等々で上映された韓国のドキュメンタリー。(<NK>が北朝鮮を指すことはふつうに知られているのかな?) 「目(雪?)の心:悲しみが私たちを連れて行く所」(2014)、「高麗アリラン:天山のディーバ」(2016)に続くキム・ソヨン監督の<亡命3部作>の最後の作品です。3部作の共通項は旧ソ連領内の朝鮮人です。前2作では、スターリンにより沿海州から中央アジア(現ウズベキスタン方面)に強制移住させられた朝鮮人つまり<高麗人>と呼ばれる人々の物語でした。第1作は韓国内で一番の高麗人集住地域の安山市のテッコル(땟골)マウルで<タシュケント>というレストランを営む高麗人夫婦の話から始まりました。今作は、朝鮮戦争の最中の1952年、モスクワの国立映画学校に留学した北朝鮮の国費留学生たちの物語。10人の留学生中の8人はスターリンの個人崇拝を批判する第20回ソ連共産党大会でのフルシチョフ演説に感銘を受け、北朝鮮の金日成独裁を批判する目を持つようになります。そして彼らがとった選択は北朝鮮国籍の放棄。つまり無国籍になることでした。共産主義の理想は持ち続けましたが、彼らの大半は祖国に帰らず生涯を終えたそうです。そんな彼らの数奇な人生をたどります・・・。原題は「굿바이 마이 러브NK: 붉은 청춘」です。個人的にはとても興味深い内容です。※日本語の関連記事は→コチラ
 ⑨「怪怪怪怪物!」は、台湾の青春学園ホラー。大ヒット作「あの頃、君を追いかけた」(2011)の原作者・監督ギデンズ・コー(九把刀)監督作品で、2017年の第30回東京国際映画祭(ワールド・フォーカス部門)で上映されました。リン・シューウェイはいつも級友たちにいじめられています。ある日、彼は学校で問題を起こしていじめっ子3人とともに奉仕活動を命じられます。彼らは独居老人の手伝いをするはずだったのですが、夜中に老人の家で2匹のモンスターに遭遇します。シューウェイたちは小さなモンスターを捕まえて独自の<調査>や<実験>を始めますが、やがてモンスターは彼らの手に負えなくなっていきます・・・。韓国題は「몬몬몬 몬스터(モンモンモン モンスター)」です。日本での一般劇場公開はありませんがネット配信(有料)があるようです。→予告編を見ると、オゾマシイ場面だけでなく、笑える要素もけっこうあるみたい。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績6月14日(金)~6月16日(日) ★★★
           「アラジン」が「寄生虫[パラサイト]」を抜き返して1位返り咲き

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(2)・・アラジン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5/23 ・・・・・・・1,006,363・・・・・・5,325,810・・・・・・・・45,417 ・・・・・・1,409
2(1)・・寄生虫[パラサイト](韓国) ・・・・・5/30・・・・・・・・・688,692・・・・・・8,344,813・・・・・・・・71,571 ・・・・・・1,205
3(新)・・メン・イン・ブラック ・・・・・・・・・6/12 ・・・・・・・・441,800 ・・・・・・・638,047・・・・・・・・・5,690 ・・・・・・1,055
       :インターナショナル
4(新)・・天路歴程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/13 ・・・・・・・・・56,710 ・・・・・・・・77,886 ・・・・・・・・・・603・・・・・・・・381
5(3)・・X-MEN:ダーク・フェニックス・・・6/05 ・・・・・・367,962 ・・・・・・・845,012・・・・・・・・・7,506・・・・・・・・443
6(4)・・となりのトトロ(日本)・・・・・2001/7/28 ・・・・・・・・・25,548 ・・・・・・・142,372・・・・・・・・・1,167・・・・・・・・295
7(新)・・人生の動かし方・・・・・・・・・・・・・・6/13 ・・・・・・・・・19,538 ・・・・・・・・30,244 ・・・・・・・・・・262・・・・・・・・188
8(新)・・ビリーブ 未来への大逆転・・・・6/13 ・・・・・・・・・11,149 ・・・・・・・・17,105 ・・・・・・・・・・139・・・・・・・・185
9(9)・・アベンジャーズ/エンドゲーム・・4/24 ・・・・・・・・・6,589・・・・・13,887,823・・・・・・・121,721・・・・・・・・・55
10(5)・・ロケットマン・・・・・・・・・・・・・・・・6/05 ・・・・・・・・・・6,137 ・・・・・・・・98,703 ・・・・・・・・・・851・・・・・・・・150
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は3・4・7・8位の4作品です。
 3位「メン・イン・ブラック:インターナショナル」は、日本でも2日遅れの6月14日公開。観客の評価は日韓ともイマイチ、かな?韓国題は「맨 인 블랙: 인터내셔널」です。
 4位「天路歴程」(仮)は、アメリカの冒険アニメ、というより宗教アニメ? 原作は17世紀後期のイギリスのジョン・バニヤンによる寓意物語。<破滅の町>に住んでいたクリスチャンという男がさまざまな困難を通り抜けて<天の都>にたどり着くまでの旅の記録で、それが理想的なキリスト者の姿へと近づいていく過程を表しているというもの。とくにアメリカへ移住したピューリタンへ与えた影響は非常に大きかったそうです。韓国題は「천로역정: 천국을 찾아서(天路歴程:天国を訪ねて)」です。こういう性格の作品は日本では公開はなさそう?
 7位「人生の動かし方」は、高評価を得たフランス映画「最強のふたり」(2011)』をリメイクしたアメリカ映画。韓国題は「업사이드(アップサイド)」です。日本では一般劇場公開はなく、4月19日からAmazonビデオで独占配信されています。
 8位「ビリーブ 未来への大逆転」は、日本ではすでに3月22日公開されています。韓国題は「세상을 바꾼 변호인(世界を変えた弁護人)」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(7)・・天路歴程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/13・・・・・・・・・56,710 ・・・・・・・・77,886・・・・・・・・・・603・・・・・・・・・・381
2(1)・・となりのトトロ(日本) ・・・・・2001/7/28・・・・・・・・・63,094 ・・・・・・・142,372 ・・・・・・・・1,167・・・・・・・・・・295
3(新)・・人生の動かし方 ・・・・・・・・・・・・・・6/13・・・・・・・・・19,538 ・・・・・・・・30,244・・・・・・・・・・262・・・・・・・・・・188
4(新)・・ビリーブ 未来への大逆転 ・・・・6/13 ・・・・・・・・・11,149・・・・・・・・17,105・・・・・・・・・・139・・・・・・・・・・185
5(2)・・教会のお兄さん(韓国)・・・・・・・・・・5/16 ・・・・・・・・・・3,905 ・・・・・・・・83,424 ・・・・・・・・・680・・・・・・・・・・・39

 1位「天路歴程」、3位「人生の動かし方」、4位「ビリーブ 未来への大逆転」が新登場ですが、いずれについても上述しました。


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