ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画の興行成績 [4月30日(金)~5月2日(日)]と人気順位 ►「狼をさがして」の関連で半世紀前の学生運動のこと書いちゃった ►すごい楽しい!キートンの喜劇映画

2021-05-06 23:47:02 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶この1週間で観た映画は次の3本です。
 ・「狼をさがして」★★★☆ (70年代前半一連の企業爆破事件を起こした武闘派左翼組織<東アジア反日武装戦線>を追ったドキュメンタリー。事件の中で8名の死者と380名の負傷者を出すという惨事となったのが1974年の三菱重工本社ビル爆破事件で、その実行部隊が大道寺将司をリーダーとする<狼>だった。①ドキュメンタリー映画としての本作 ②<東アジア反日武装戦線> ③大道寺将司(1948~2017) の3点それぞれに対して考えることはあるが、とりあえず①に限定する・・・と、すでに愛読する→コチラのブログ記事に(②③についても書かれているが)いろいろ記されていて、ほとんど付け足すことはないが、パンフによるとキム・ミレ監督が「ノガダ(土方)」の日本での自主上映中の2006年に1観客から初めて<東アジア反日武装戦線>の話を聞き、またその支援者たちと集まりを持ったとのこと。具体的な取り組みは2014年本作の企画を担当した歴史学者の藤井たけし(現)東京外大講師が資料を集め、関係者を探し、支援者の平野良子さん等と会って取材しますが、肝心の大道寺将司をはじめ服役中の人物とは面会できず・・・。ということで上記onsenmaru blogの指摘のような取材の甘さはやむを得ない事情が多分にあったと思われる。ただ、なんでこのようなドキュメンタリーを作ったのが日本人でないことと共に、なぜ韓国人なのかとの疑問は当然あるだろう。私ヌルボとしては特に目新しい情報は得られなかったが、しかし、このような事件と組織が半世紀近く前にあったことを知らなかった日韓の人たちのためにはなるということで☆1つプラス。)
      
【右は韓国版のポスター。原題は「동아시아반일무장전선(東アジア反日武装戦線」)。】

 ・「文化生活一週間」[キートンのマイホーム] ★★★★☆、「キートンの探偵学入門」[]忍術キートン★★★★★(シネマ・ジャック&ベティで<柳下美恵のピアノ & シネマ>ということでバスター・キートンの2作品をセットで鑑賞。これは実に楽しかった! いろんなギャグが盛り沢山だが、現在までのTVや映画のギャグのオリジナルがすでにこの頃(1920年代)からあったことがわかる。(マルクス兄弟の「我輩はカモである」(1933)を観た時もそう思った。) とくに「キートンの探偵学入門」はわずか44分という短尺の中にコメディとかファンタジーとかアクションとかロマンスとかいろんな要素が詰まっている。カーチェイスの原型のようなシーンもあり、あのウッディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」とか、近年では「今夜、ロマンス劇場で」のようなスクリーンの中から登場人物が飛び出して・・・といったシーンまでも・・・。このようなシーンを撮るためにキートンは当時の技術に通じ、さまざまな工夫を凝らすと共に、今ならスタントマンが担当するような危険な撮影も自分で演じ、首の骨を折ったこともある(?)とか。社会的・政治的メッセージ性の強いチャップリンの作品に比べるとはるかに上映機会の少ないキートンだが、映画の楽しさに没頭する彼の情熱が直接伝わってくる。なお、柳下美恵さんのピアノは初めて聴いたが、「映画を楽譜として」演奏しているとか。しかし転ぶ場面でも時差を感じさせない自然な演奏。こんな感じ→YouTube。そして、この作品についても上記onsenmaru blogのブログ主さんがいい記事を書いていらっしゃいます。→コチラ。)

▶先週の記事で「シカゴ7裁判」と韓国で公開中の「ユダ&ブラック・メシア」が共にアカデミー賞ノミネート作品で、また60年代末のベトナム反戦運動や黒人差別反対運動の実話に基づいた作品だと書きました。もしかして日本関係でも今その時代の若者の<闘争>に関心が向けられているのかな?と思ったのは、上記の「狼をさがして」と、4月17日からユーロスペースで公開されている「きみが死んだあとで」とが相次いで公開されているから。昨年公開の「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」も含めていいかも。その時代の真っ只中、大道寺将司とジツは同い年の大学生だった私ヌルボとしては、当時の学生全体、とくに全共闘とそのシンパ(両者の境界は不明瞭)の時代的フンイキ、とくに<熱量>の推移といったことに留意してほしいと思います。「きみが死んだあとで」が扱っているのは1967年10月8日の第一次羽田闘争。タイトル中の<君>とはこの時犠牲となった京大生・山崎博昭君のこと。この事件がその後の全共闘運動の導火線になりました。その巨大な闘争の熱気が一番高まったのは翌年68年10月21日の新宿騒乱事件から69年1月18・19日の東大安田講堂事件頃まででしょうか。全共闘の要請に応えて三島由紀夫が69年5月13日東京大学駒場キャンパスにやってきた時には春の盛りでもあって数ヵ月前までの緊張感もかなり弛んでいて、集まった学生たちも物見遊山的な連中が多かったのでは、と推測します。その後の72年2月のあさま山荘事件を引き起こした連合赤軍や、上記の東アジア反日武装戦線といった過激な武闘派組織に対しては数年前の全共闘運動を担った多くの学生大衆の支持どころか関心を寄せる者もほとんどいなかったのではないでしょうか? むしろ環境運動とかウーマンリブ運動等に流れて行った人が圧倒的に多かったと思います。ただ、映画の素材としては過激な内容の方が「絵になる」から、ということで取り上げられることが多いように思われます。また、全共闘運動の最盛期でも例えば東京の大学の学生の2割(1割?)いたかどうか疑問だし、大学進学率にしてからが1968年で約20%ですからねー。むしろそんな少数でよくあれだけのムーブメントを作ったものです。
 個人的に一番観たいのは「きみが死んだあとで」なのですが、まだ未見。近所の横浜シネマリンで5月15日公開ということなので、続きはそれを観てから。

         ★★★ NAVERの人気順位(5月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) スプリング・ソング(韓国)  9.67(27)
②(2) 復活(韓国)  9.49(127)
③(3) 詩を読む時間(韓国)  9.43(14)
④(-) 復活: その証拠(韓国)  9.31(408)
⑤(新) オクトノーツと火のリング  9.31(16)
⑥(4) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.30(11,530)
⑦(6) 玆山魚譜(韓国)  9.30(2,071)
⑧(5) ソウルフル・ワールド  9.30(9,715)
⑨(-) 少年の君  9.26(1,661)
⑩(8) ラーヤと龍の王国  9.15(1,653)

 ⑤「オクトノーツと火のリング」が新登場ですが、この作品については後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(3) ノマドランド  8.00(8)
④(4) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑤(6) ミナリ  7.58(12)
⑥(7) ユダ&ブラック・メシア  7.20(5)
⑦(8) TENET テネット  7.18(11)
⑧(9) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑨(10) ファーザー  7.13(8)
⑩(-) 玆山魚譜(韓国)  7.00(9)

 新登場の作品はありません。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月30日(金)~5月2日(日) ★★★
       韓国の青春メロドラマ「雨とあなたの物語」1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(57)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・4/28 ・・・122,261 ・・・・・・・174,742 ・・・・・・1,569 ・・・・・・956
2(11)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・88,507 ・・・・・・・130,864・・・・・・・1,171 ・・・・・・710
3(1)・・明日の記憶(韓国)・・・・・・・・・・・・4/21 ・・・・55,010 ・・・・・・・247,776・・・・・・・2,191 ・・・・・・625
4(5)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・52,748 ・・・・・1,026,668・・・・・・・9,265 ・・・・・・701
5(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・43,931 ・・・・・1,893,327 ・・・・・18,223 ・・・・・・500
       無限列車編(日本)
6(4)・・名探偵コナン 緋色の弾丸(日本)・・4/16・・28,266 ・・・・・・・175,504 ・・・・・・1,659 ・・・・・・457
7(3)・・徐福(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・24,497 ・・・・・・・385,296 ・・・・・・3,626 ・・・・・・510
8(9)・・ノマドランド ・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・11,900・・・・・・・・・50,342 ・・・・・・・・472 ・・・・・・173
9(44)・・オクトノーツと火のリング ・・4/28 ・・・・10,090・・・・・・・・・11,685 ・・・・・・・・・95 ・・・・・・183
10(51)・・ザ・マークスマン・・・・・・・・・・4/28・・・・・・8,557・・・・・・・・・15,328 ・・・・・・・・119 ・・・・・・210
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1・2・9・10位の4作品が新登場です。
 1位「雨とあなたの物語」は韓国の青春メロドラマ。「これは、待つことについての物語です」。はっきりとした夢も目標もなく退屈な三浪生活を続けてきたヨンホ(カン・ハヌル)は、長い間大切にしてきた記憶の中の友人を思い出し、やみくもに手紙を送ります。その宛先はソヨン(イ・ソル)でしたが、手紙を最初に手にしたのは妹のソヒ(チョン・ウヒ)でした。ソヒは自分の夢は探せないまま母親と共に古い本屋を運営しています。彼女はヨンホからの手紙を受け取ります。そして具合の悪い姉に代わって返事を書き、ヨンホに送ります。偶然始まった手紙のやりとりは無彩色だった2人の日常はときめきと期待に染まり始め、ヨンホは「12月31日、雨が降ったら会おう」という可能性の低い提案をするのですが・・・。原題は「비와 당신의 이야기」です。
 2位「ザ・クーリエ」はアメリカのスパイスリラー。キューバ危機に際して重要な役割を果たしたとされる実在のイギリスのスパイで電気技師のグレヴィル・ワインの半生を描いていた作品です。冷戦時代の1960年、ソ連の軍事情報局オレグ大佐(メラーブ・ニニッゼ)は政府の目を避けて、核戦争の危機をくい止める重大機密をCIAに伝えようとします。CIAはイギリスの情報機関MI6と協力して、ソ連の機密文書を入手するためにイギリスの実業家グレヴィル・ワイン(ベネディクト・カンバーバッチ)を情報の運び屋として雇い入れ、潜入に成功します。正体を隠したまま、ロンドンとモスクワを行き来するグレヴィルとオレグ大佐の隠密で危険な関係が続くにつれKGBの疑いは大きくなっていきますが・・・。韓国題は「더 스파이(ザ・スパイ)」です。本作は日本では昨年7月ヒューマントラストシネマ渋谷の<未体験ゾーンの映画たち2020 延長戦>で上映されましたが、他の一般劇場公開はなさそうです。
 9位「オクトノーツと火のリング」はイギリスのアニメ。韓国でも「海探検隊 オクトノーツ(바다 탐험대 옥토넛)」というタイトルでTV放映されておなじみのイギリスBBCの子供向け人気アニメシリーズの新作劇場版。日本でもスカパー等でやっているようです。いろんな動物によるエージェント集団オクトノーツがタコ状の乗り物に乗って出動します。今回は、えっ、海底火山!? 平和な日常を送っていたオクトナッツは太平洋をめぐる<火のリング>で火山の噴火が起きていることを知ります。生態系救助のために熱い炎の中に先を争って飛び込むオクトナッツ。大爆発が続いて起きると、オクトナッツの万能エンジニア、トゥイックはついに最後の手段を取り出しますが・・・。それはまさにオクトナッツ全員が搭乗して操縦することができるように<メガ合体>されている、シャコの形のメガ探索船Zです! 韓国題は「극장판 바다 탐험대 옥토넛 : 불의 고리 대폭발(劇場版 海の探検隊 オクトノーツ:炎の輪 大爆発)」です。
 10位「ザ・マークスマン」はアメリカのアクション。ジム・ハンソン(リーアム・ニーソン)は海兵隊の狙撃手でしたが今は引退し、立ち退きの通知を無視してアリゾナの国境地域で静かな晩年を送っています。ある日偶然に11歳の少年ミゲル(ジェイコブ・ペレス)とその母親ローザ(テレサ・ルイス)がメキシコの麻薬カルテルの殺し屋たちに追われているのを救ってあげますが、無慈悲な彼らの攻撃によってローザは息を引き取ります。ミゲルをシカゴの親戚の所に連れて行ってくれというローザの最後の頼みを無視することができなかったジムは、ミゲルと共にシカゴに向かいます。2人は徐々に解け始めますが、彼らを追う殺し屋たちはじわじわと近づいてきます・・・。韓国題は「마크맨」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・・52,748 ・・・・・・1,026,668・・・・・・・9,265 ・・・・・・701
2(再)・・あの頃、君を追いかけた ・・2012/8/22 ・・・・・・3,286・・・・・・・・・・54,930・・・・・・・・・389 ・・・・・・109
3(2)・・大人たちは知らない(韓国)・・・・・・4/15・・・・・・・2,239・・・・・・・・・・32,294・・・・・・・・・314・・・・・・・・86
4(4)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07・・・・・・・2,078・・・・・・・・・・38,102 ・・・・・・・・326・・・・・・・・73
5(再)・・風と共に去りぬ・・・・・・・・1972/12/23・・・・・・・1,768・・・・・・・・・・26,829・・・・・・・・・・87・・・・・・・・52

 新登場の作品はありません。
 5位「風と共に去りぬ」は(たぶん)1995年以来久々の再上映。韓国題の「바람과 함께 사라지다」は日本題をそのまま韓国語にしたのでは? 1939年制作で日本上映は1952年9月有楽座(東京)と大阪松竹座。有楽座は1984年11月11日の閉館の時もこの作品を上映しています。※その跡地に建てられたビルにTOHOシネマズシャンテ等が入っている。大阪松竹座も1994年5月8日映画館閉館に際し最後の上映作品は「風と共に去りぬ」だったとか。タイトルも合ってるしねー。韓国での初公開は首都劇場で1957年3月25日。(上の表の「1972年」は2度目。)

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