ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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やっとチョン・ユジョンの新作「28」に取りかかるゾ! 伝染病でパニック状態に陥った町が舞台

2013-07-19 20:04:13 | 韓国の小説・詩・エッセイ
 先月の韓国旅行の往路、6月17日のアシアナの機内で日頃読む機会の少ない「毎日経済」を読んでいたら、次のような記事が目にはいりました。

     

 “링위에 서는게 난 두렵지 않다(私はリングの上に立つのは恐くない)”という見出しはそれだけでは意味不明ですが、その上に<올 한국문학의 기대작 ‘28’출간한 정유정(今年韓国文学の期待作「28」を出刊したチョン・ユジョン)>とあるではないですか!
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 チョン・ユジョンといえば、何ヵ月もかかって読んだ前作の「7년의 밤(7年の夜)」はすご~くおもしろかった! 私ヌルボ、この本については<2012年に読んだ「圧倒的!」な本5冊>と題した過去記事(→コチラ)で紹介しました。

         
  【「7年の夜」の表紙。約500ページ。読み通した自分をほめてやりたい、ウルウル・・・というより、内容に読み通させるだけの力があったということか。】

 ・・・というわけで「毎日経済」の記事を読んでみると、要するに彼女の「28」という新刊が出たとのこと。
 「夜遅くこの本を読み始めると、否応なく夜明けを迎えることになるだろう」というその内容はおよそ次のようなものとのことです。

 小説の主舞台はソウルと隣接する人口29万のファヤン市(華陽市)[←架空の町]。そこで正体不明の人畜共通伝染病が蔓延する。犬と人間の間で相互に伝染し、発症すると真っ赤な目になり全身から血を流して死んでしまう。都市は手に負えない混乱に陥る。政府と軍は感染した人間と犬を殺す。理性を失った都市は、マイナス18度の寒さにも「ファヤン(火陽)」という名前のように地獄になる。略奪・銃撃・強姦・殺人・放火・・・。互いに殺し合い、絶望して恐怖に震えて共倒れしていく。
 作者チョン・ユジョンは、5人の人物と1匹の犬の視点(!)を通してこの地獄図を描写する。その6つの声が出会って作り出す、生存に向けた渇望と熱い救いの物語だ。


 ・・・つまり、怖ろしい伝染病蔓延パニックの話なんですね。このジャンルではカミュの「ペスト」とかポーの「赤死病の仮面」、小松左京「復活の日」等いろいろありましたね。クライトン「アンドロメダ病原体」は未読ですが・・・。で、このチョン・ユジョンの新作はたぶんどれとも違う感じ、って当たり前か。

 この小説「28」について帰ってから調べてみたら、「東亜日報」(日本語版)にも紹介記事がありました。(→コチラ。)
 またなぜかリンクできませんが、「毎日経済」のサイト内検索をすると、この新聞記事を読むことができます。

さて、はからずもこの記事を読んだからにはぜひこの本を買って帰ろうと心に決め、帰途ロッテモール金浦空港店内の永豊文庫に行って小説のコーナーに行ってみたら無い! あきらめて別の本を買って行くとするかと思ってレジ方面に向かうと、なんとドカッと平積みにされているのが目に入りました。やれやれ。(あ、写真撮ってなかった・・・。)

 ところが、買っては来たものの、まだ読み終えていなかったハングル本(前書いたハン・ビヤの本)の方を優先したため1ヵ月近くそのままの状態だったのが、ようやくケリがついたので昨日から読み始めました。

          
  【帯には「“28日、生き残るため極限のドラマが繰り広げられる!” 読者と言論が選んだ今年韓国文学最高の期待作」とあります。】

 アラ、冒頭はいきなりアラスカだぞ。世界最長の犬ぞりレース<アイディタロッド>だって!? これがどう韓国での話につながっていくのかな?

 なんせこの本も「7年の夜」とほぼ同じ約500ページのボリュームなので、がんばっても2~3ヵ月はかかりそうです。
 「毎日経済」の記事によると、チョン・ユジョンは毎日1~2時間ボクシングで身体を鍛え(「リングの上云々はそういう意味)、また高麗人参等を食べて体力をつけたりしてあのパワーに満ちた文章を書いているそうです。
 前作同様、読む側にも体力が必要のようです。ふー、シンドイな。でも楽しみ!


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『28日後...』 (ソウル一市民)
2013-07-19 22:25:18
 以前この小説のタイトルを目にしたとき、ダニー・ボイルの映画『28日後...』をすぐに連想したのですが、なんだか大まかな設定も似通っていますね。
 内容がどれだけ似ているかは分りませんが、この題名はちょっとないよなあと思いました。注意する編集者とかはいないんですかね。
 もちろん映画へのオマージュということもありえますし、作品そのものがユニークで優れたものであれば許されるのかも知れませんので、感想をお待ちしております。
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なるほど、たしかに・・・ (ヌルボ)
2013-07-21 18:39:59
『28日後...』は観ていなかったこともあって思いつきませんでした。
たしかに、共通点も少なからずあるようですね。ソモソモ、28という数字が偶然に一致するようものなのかどうか??

韓国サイトでもこの映画について言及したものが相当数あるようですが、私が読んだいくつかの中では非難した内容のものはありませんでした。
しかし、著者もさることながら、やはりご指摘のように編集者の責任は大きいでしょうね。

ベストセラーになった例の「セカチュー」が出た時、SFファンならこれはハーラン・エリスンの「世界の中心で愛を叫んだけもの」のパクリだ!と思ったはずですが、あれもやっぱりまずかったのでは、と今も思っています。ウィキペディアのよると、なんと「編集者の助言によるもの」だとか! 「ヱヴァンゲリオン」の最終章も同じような文言だったようですが。
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28 (ソウル一市民)
2013-07-21 19:45:34
 たまたまこの週末インチョン国際空港に行く機会があり、空き時間に書店を覗いてみましたが、「28」はベストセラー上位の著作として紹介されていました。特設の展示棚まで出来て大々的に宣伝されていたのは村上春樹の「多崎つくる」でしたが、こちらのブログでも何度も書かれているように、村上春樹だけでなく日本人作家の作品の翻訳はやはり非常に多いですね(空港ということもあるかも知れませんが)。
 ただでさえ翻訳文学が余り売れない昨今、現代韓国人作家の著作が大量に日本語に翻訳されることは余り期待できないものの、韓国ドラマ・映画やポップスの何(十)分の一かでも紹介されればいいのですが。
 「28」をはじめ、今後も韓国人作家の作品などのご紹介、期待しております。
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村上春樹等 (ヌルボ)
2013-07-21 22:03:33
「多崎つくる」は、現在韓国のベストセラー1位ですね。「28」は6位くらい。

韓国の小説は、どうも日本の流行の10~20年ほど後追いしている感じなので、日本の読者からみるとどれも新鮮味にかけるのでは、と思います。
(2009年の李箱文学賞受賞作のキム・ヨンス「散歩る者の5つの楽しみ」も村上春樹に似ているなとの印象を受けました。)

韓国ドラマについては小説とは対照的にあまりにも大量に輸入されているので、「韓流ぴあ」等で大雑把に情報を仕入れるだけで手一杯です。
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