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ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国史能力検定試験・初級の問題に挑戦!① 日本の歴検とは「歴史認識」の違いが・・・

2014-07-07 16:01:35 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 2012年5月7日から3回にわたり韓国の漢字検定試験の紹介をしました。(第1回は→コチラ。)
韓国では、この漢検は1990代初めから数団体により行われています。(※日本では1975年開始。)

 そして先日たまたま日本の歴史能力検定(歴検)と似た<韓国史能力検定試験>が行われていることを知りました。
 日本の歴検は1997年に始まったのに対し、韓国の方は2006年11月に第1回実施。当初は年2回行われていましたが、2010年から年3回、2012年からは年4回行われています。
 また、日本では歴史能力検定協会という任意団体により運営されていますが、韓国の検定は日本の文科省に相当する文教部所属機関の国史編纂委員会が主催しています。
 その目的を比較してみると違いは明白です。
 日本の歴検の公式サイト(→コチラ)を見ると、次のようなことが記されています。

 社会、経済、文化の地球規模での交流が進み、国際的な協調、共生さらには競争の関係が増大する時代において、異なる歴史的・文化的背景や価値観を持つ人々と共生していくためには、我が国の歴史や伝統、文化を深く理解し、異なる歴史的・文化的背景を持つ人々に対し、これを適切に説明し理解を求めたり、主張したりすることのできる能力が必要です。
 また、異なる歴史的・文化的背景や価値観の存在を視野に入れつつ、地球的規模で物事を考える基礎を培うには、世界の多様な国や地域の歴史や伝統、文化に対する理解を深めることも重要です。
 「歴史能力検定」では、こうした時代の要請を踏まえ、先人が歩んできた道を振り返り、歴史に対する理解を深め、私たちがこれから歩んでいく道を考える判断力や洞察力を養うことができるよう出題を工夫し、世界に通用する人づくりに資することを目指しています。


 なんと穏当な・・・。ナショナリズムの含有率は10%程度でしょうか。(←全然非難しているわけではない。)
 一方、韓国史能力検定試験のサイトの趣旨説明(→コチラ)は次の通りです。

 学校教育で韓国史の位相は日ごとに下がっていますが、周辺の国々は歴史教科書を歪曲し、甚だしく歴史戦争を挑発しています。韓国史の位相を正しく確立することが何よりも急務となっています。
 このような現実から私たちの歴史に関するパラダイムの革新と韓国史教育の地位を強化するために、国史編纂委員会では、韓国史能力検定試験を設けました。
 国史編纂委員会は、私たちの歴史への関心を高め、韓国史全般に渡って、歴史的思考力を評価する様々な種類の質問を開発しています。これにより、韓国史教育の正しい方向を提示し、自発的な歴史学習を通して、高次元的思考力と問題解決能力を育成しようとします。


 ・・・おー、なんというこの違い! コチラはナショナリズム含有率9割以上ですね。韓国では今だに歴史学・歴史教育が国に従属しているというか、あるいは国のあり方を(主観的には)むしろ先導しているというか・・・。

 あと、内容的な違いといえば日本の方には世界史部門もあるという点ですね。

 この韓国史能力検定試験の等級は次の6段階に分けられています。(日本は1~5級ですが準3級があるので同じく6段階です。)
  高級:1級=準専門家レベル。
     2級=深化教養レベル。
  中級:3級=高等学校レベル。
     4級=中学校レベル。
  初級:5級=初等学校レベル。
     6級=初等学校レベル。  
 ※各級内は同一問題で、70点以上だと上位の級、60点以上だと下位の級合格となる。

 そして、これらの過去問を公式サイトの→コチラのページからダウンロードできるのです。

 そこで私ヌルボ、とりあえず直近の2014年5月24日に実施された第23回の検定試験の初級に挑戦してみました。

 結論的に言うと、初等学校レベルということでちょっと甘く考えていましたね。
 日本史でいえば「空海が開いたのは何宗か?」とか「本能寺の変で織田信長を倒したのは誰か?」といったレベルだったらヌルボだってそれなりにできるゾ!と思っていたのに、全然そんなもんじゃない!
 まぐれ当たりを入れて6級合格に届くかどうかビミョーってとこですかねー。
 ・・・と悔しさをかみしめながら、それでもムキになって全40問をやってみましたがな・・・。

 そんなわけで以下その一部を紹介します、・・・というのが正しい展開なんでしょうが、ムキになりついでに全問紹介しちゃいます! 分量が多いので3回に分けます。
 問題はほぼ時代順になっています。今回はまず第10問まで。

 1.次の祭で展示される遺物として正しいものは?

招待状
 
岩寺洞(アムサドン)新石器祭に招待します。

 ・期間:2014年○○月○○日~○○日
 ・場所:岩寺洞先史遺跡地
 ・内容:新石器時代遺物展示
     新石器時代生活体験


 ①青銅鏡(청동 거울)   ②すりこぎ石(갈판)と石皿(갈돌)  
 ③細形銅剣(세형동검)  ④無文土器(민무늬 토기)

 正解=(  ) ←(  )の部分を範囲指定すると読めます。

 ※岩寺洞遺跡はソウル特別市江東区にある約6000年前の石器時代の遺跡。

 2.次の台本に登場する王が実施した制度として正しいものは?
飢えた百姓を救え!
 ・時:194年
 ・所:高句麗都邑一帯
 ・登場人物:故国川王(고국천왕)、乙巴素(ウルパソ)、臣下、農民
 ・解説:王が馬に乗り、臣下たちとともに狩りに出かけた。この時農民1人が凶作になって働く所がなく飢え死にしたと悲しげに泣いている。

 ①義倉(의창)    ②換穀(환곡)
 ③常平倉(상평창)  ④賑貸法(진대법)

 正解=(  )

 故国川(コグクチョン)王は高句麗第9代の王(?〜197)。乙巴素(ウルパソ)を宰相に登用し、貧民救済にこの施策を実施した。

 3.次の文を通してわかる古朝鮮の社会の姿に対する発表内容で正しくないものは?

<八条法>
 ・人を殺した者は死刑に処する。
 ・人を傷つけた者は穀物で償う。
 ・盗みを働いた者は奴隷とする。許しを得るには50万銭を出さなければならない。



 ①農業をしていました。
 ②身分の差がありました。
 ③個人の財産が認められていませんでした。
 ④社会秩序を維持しようと努力していました。

 正解=(  )

 4.(가)に入る文化遺産として正しいものは?

百済の都邑地と文化遺産

 (左から)漢城(ソウル)の風納土城(풍납토성)
 熊津[웅진.ウンジン](公州)の(가)
 泗沘[사비](扶余)の扶余陵山里(능산리)古墳群


 ①武寧王陵
 ②瞻星台(チョムソンデ)
 ③平壌郊外石巌里古墳出土の金製具(?)
 ④将軍塚古墳(伝長寿王陵)

 正解=(  )

 ①武寧王陵・・・公州市=かつての熊津 
 ②瞻星台(チョムソンデ)・・・慶州にある7世紀新羅時代の天文台(といわれる)。観光ポイントとして有名。
 ③画像が不鮮明でよくわからず。
 ④将軍塚古墳(伝長寿王陵)・・・中国吉林省・集安にある。高句麗の積石塚の代表的遺物。太王陵とも。

 5.(가)の国家を収めた王の業績として正しいものは?



[地図]




百済の全盛期(4世紀)


 ①五小京(5소경)を設置した。
 ②于山国(우산국)を征伐した。
 ③都邑を平壌に遷した。
 ④黄海道の一部地域を占拠した。

 正解=(  )

 ※①は新羅。

 6.次のクイズの正答として正しいものは?


「新羅の真興王(진흥왕)の時、国家的に整備された少年組織の規律は何ですか?」





 ①世俗五戒(세속오계)
 ②三綱五倫(삼강오륜)
 ③訓要十条(훈요십조)
 ④三従之道(삼종지도)

 正解=(  )

 ①は中国帰り僧・円光(ウォングァン)が貴山と箒項(チュハン)の2人の花郎(ファラン)に伝えたという言葉。事君以忠(王への忠誠)・事親以孝(親への孝行)・朋友以信(友への信義)・臨戦無退(戦いでの勇気)の5つ。
 ②は儒教の徳目。三綱=忠・孝・烈、五倫=父子の親、君臣の義、長幼の序、夫婦の別、朋友の信
 ③は高麗を創建した王建(太祖)が子孫のため遺した訓戒。
 ④は女性が守るべきとされた徳目で、日本でもよく知られていますね、って今はどうかな?

 7.(가)に入る内容として正しいものは?

渤海滅亡 → 古昌(コチャン)戦闘 → (가) → 後三国統一

[後三国統一過程]



 ①高麗建国           ②新羅降伏
 ③安市城(アンシソン)の戦い ④東北9城築造

 正解=(  )

 ※古昌(고창)戦闘とは、929年王建の率いる高麗が後百済を破った戦い。
 後三国時代(892~936年)とは、新羅が弱体化し分裂してから高麗が再統一するまでの時代。三国とは新羅・後百済・後高句麗。
 ③安市城の戦いは高句麗が唐軍(の第1次侵攻)を食い止めた戦い。
 ④は、高麗の武将尹瓘(윤관.ユングァン)が女真征伐の際占領地に造営した9つの城。

 8.次の仮想の手紙を書いた人物として最も適切なのは?
 父上!
 その後お元気でいらっしゃいますか?
 唐の科挙試験に合格するまでは新羅に帰るなとの父上のお言葉を繰り返し念じつつ、熱心に勉強しました。その結果科挙の試験に合格して唐の地方官吏である溧水縣尉になりました。・・・・いずれ私が新羅に帰ったなら、6頭品という身分の限界を超えられないか期待しています。


 ①元暁(ウォンヒョ)     ②張保皐(チャンボゴ) 
 ③崔致遠(チェ・チウォン) ④金富軾(キム・プシク)

 正解=(  )

 9.次を受け入れた王の業績として正しいものは?

時務28条
 ・地方官を派遣して百姓の面倒をみなければいけない。
 ・仏教を信じることは自身を磨く根本であり、儒教を行うことは国を治める根源である。



 ①成均館を設立した。
 ②「経国大典」を編纂した。
 ③地方に12牧を設置した。
 ④奴婢按検法を初めて実施した。

 正解=(  )

 ※時務28条は、982年崔承老が成宗に上書した太祖以来の高麗国王の治績を論評したもので、中央集権的統治体制の確立と儒教的政治理念の実現を主張。
 ④奴婢按検法は956年実施。もともと官民でありながらになった者を解放させた。

 10.下線を引いた「この国」に対する説明として正しくないものは?

 写真の金海大成洞古墳はこの国の支配層が埋められた所です。ここからは土器をはじめとした多様な遺物が出土しました。


 ①倭と交流していた。
 ②新羅に滅ぼされた。
 ③鉄が主要輸出品だった。
 ④漢江流域で建国された。

 正解=(  )

 ここまできっちりやってみたという人なんていますか? ざっと見てみただけでもご苦労様なことです。
 しかしこれでやっと10問。あと15問×2=30問やるってか!? うげ。

 → 韓国史能力検定試験・初級の問題に挑戦!② なんだ、この「重箱の隅」的問題のオンパレードは!?
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朝鮮日報・鮮于鉦(ソヌ・ジョン)記者がこれまで書いた注目記事4本

2014-07-03 23:55:10 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 最近(今春?)国際部長となった朝鮮日報・鮮于鉦(ソヌ・ジョン)記者の名前が私ヌルボの印象に強く残ったのは、彼が東京特派員生活(2005~10年)を終えるに先立って書いた「日本列島10万キロ」(2010年8月17日)という記事でした。(※彼の名は鮮・于鉦ではなく、鮮于・鉦。つまり漢字2字の姓です。)
 今、その記事(日本語)は→コチラのブログ記事で全文読むことができます。

 見出しの「10万キロ」とは、彼が2006年以降車で日本の全都道府県を踏破したその走行キロ数です。
 彼が全国旅行を決心した契機は2006年2月「竹島(独島)の日」1周年の取材で島根県を訪れたことでした。松江市で彼が習慣としている早朝ジョギング中に迷い込んだ住宅街で彼が見て考えたことが次のように綴られています。(太字はヌルボ。)

 歩道ブロックがずれていたり、でこぼこしたりしている個所は一つもなかった。ごみ一つ落ちていなかった。粗末な木造住宅は今にも倒れそうだったが、きれいに整えられていた。80歳を超えているであろうおばあさんが花壇に水をやり、おじいさんが路地の掃除をしていた。
 日本の田舎の住宅街はこぎれいだった。町内をぐるぐる回った。日本で何を見て、韓国に何を伝えるべきか、と考えていると、『竹島の日』を記念する少数よりも、心底まで誠実な多数の人々が目に迫った。しかし、そんな姿を伝えることはできなかった。整頓された路地、勤勉な高齢者など、「竹島」に興奮した韓国には何の意味があろうか。日本は不届きな存在でしかなかった。
 島根県の路地で、「日本を知らなかった」という思いがした。そして、旅行を始めた。どこに行っても「素晴らしい日本」と「悪い日本」が交錯した。京都市東山区の壮麗な文化遺産の裏には韓国人の「耳塚」があり、長崎の巨大な産業遺産の裏には韓国人徴用者の遺骨が埋もれていた。日本が誇る有田焼で有名な佐賀県の寺は、連れてこられた韓国人の陶工の無念を慰めていた。日本は国全体が、感動と怒りの入り交じる島根と同様だった。
 しかし、常に「日本は大国だ」とも感じていた。他国に頼らなくても生きていける国だった。地域間対立もなかった。国民は誠実だった。明治維新のように国家システムを変えさえすれば、いつでも大国になり得る体力を備えている。そんな日本をどうしたら克服できるか。100年前に傷つけられた国の魂をどうしたら回復できるか。
 日本列島をめぐりながら、過去ではなく未来を見詰め、短所より長所を取り入れることが、韓国にとってよいのではないかと感じた。過去に対する怒りの矛を収めれば、数多くの長所がある国が日本だ。日本の長所を学べば学ぶだけ、われわれ韓国が強くなれば、それでいいのだ。島国日本はゆがんだ歴史観を持っていても成り立つが、文明と勢力が交錯する半島韓国は、過去に執着し、隣国と反目するほど、国家の基盤が崩れてしまう。100年前もそうだったし、100年後もそうであるはずだ。


 記者として大切なことは、
 ①思い込みを排して目の前の事実を細部まできちんと見ること。
 ②自分と考えが合わない人の話も聞く耳をもって、その思うところや感情を理解(肯定ではない)しようとする姿勢。
 ③そのような個別具体的なことを歴史や世界といった大きな状況の中でとらえ直すこと。つまり「木を見て森を見ず」やその逆ではなく、「木も森も」同時に視野におくこと。
 ④自分自身の価値観に照らして、納得できる(内的必然性のある)記事を書くこと。
 およそこういったことだと思います。

 この鮮于鉦記者の記事は、そんな点で共感が持てるものでした。
 日本での滞在経験のある韓国人をみると、それまで韓国で思い描いていた日本像にどこまでも固執する田麗玉(チョン・ヨオク)氏から、その対極の呉善花氏までさまざまです。
 鮮于鉦記者の場合は、韓国人としての見方を日本での見聞・取材を通じて見つめ直し、修正すべき点は修正し、(日本・韓国双方に対して)批判すべき点は批判するという柔軟な姿勢がうかがわれます。

 その後2011年3月12~18日、彼は大地震直後の東北地方被災地各地を取材しました。その4ヵ月後のコラムが「事故起こした原発と共に暮らす福島の人々」です。→コチラ(「朝鮮日報(日本版)」.会員制)または→コチラのブログ記事で読めます。
 3月の取材中福島原発が連鎖爆発を起こしたため、彼は避難のため帰国したとのことですが「その時東京方面に向かう国道がすいていて驚いた記憶がある」と記しています。続けて「当時は「日本人は正確な情報を知らないから避難しないのだ。政府にだまされていることを知ったら、この道はすぐに避難する車で渋滞するだろう」と思った」とも・・・。「ところが予測に反して日本ではそんな大騒ぎは起こらなかった」。ソウルで起きた狂牛病騒動とは対照的に。
 7月のコラムの後、福島での取材と考察について書かれた後半部分を紹介します。

 福島の会社員・公務員・記者・住民ら16人と語り合った。彼らの中に、日本政府の管理能力を信用している人はいなかった。だが全員、政府が提示した緊急時の放射線量許容基準を自分の生活の基準にしていた。平常時許容基準の10倍と考えている人も、20倍と考えている人もいた。もちろん、不安がないわけではない。このうち2人は家族を首都圏にある親類の家に避難させたという。そして、全員が子どもたちの将来を心配していたが、それでも現実を受け入れようと努力していた。
 問題を解決する方法は国によって違う。福島の対処方法も同じだ。「被災者が大声を上げないから解決が遅れている」という見方もあるし、逆に「被災者が静かに対応しているから国はより大きな危機に追い込まることがなかった」という見方もある。では、次のように仮定してみよう。福島の被災者200万人が原発問題に対し、一部の韓国人が狂牛病問題で見せたようなやり方で対応していたら、今の日本はどうなっていただろうか、と。
 福島は「国を支えるのは誰か」という原則的な問題を提起している。日本人のやり方が正しいのか間違っているのか、日本という国の持続性・可能性は、最終的には国民自身が鍵を握っていると思う。これは「原発とリーダーシップの危機という状況で、誰が日本という国家ブランドを維持しているのか」という質問と似ている。個人的な経験からすると、その答えは「国民」だろう。


 彼の大地震直後の取材については「대지진 취재를 마치고(大地震取材を終えて)」と題した記者ブログ内の記事がありました。(→コチラ。韓国語)
 これは紙面には載らなかった記事のようです。
 彼は地震直後に出張命令を受け、翌12日羽田へ。借りた車を運転して被災地に向かったのです。
 彼が見た被災地の印象は、日本人たちがとても落ち着いていること。苦痛を耐え、声を出さず、従順で団結して・・・。この点は上のコラムでも書かれていますね。
 以下は、この記事の抄訳です。

 おそらくどの国でも同じことが起きたら、暴動が起きただろうし、強い軍隊、強い公権力と、莫大な救援物資が投入され、それなりに速やかな方策がとられたでしょう。韓国でこのようなことが起きたら被害者たちは絶叫してこぶしをふりかざしたでしょう。日本の被災地の解決策はただ一つ、忍耐でした。
 国ごとに文化が違うので、解決法が異なることは認めます。このような大災害には忍耐がより効果的な解決策という意見も妥当性があると思います。しかし、不必要な忍耐まで効果的だということはありません。  
 痛みを蓄積する日本人。私はそんな日本人が本当にいいのか、今のように世界の人々の賞賛を受けるべきことなのかわかりません。

 最も良いのは我慢することなく痛みを軽減してくれることでしょう。日本は災害直後にもそれができたし、今では十分に行うことができます。
 日本は大地震を経験した他のどの国よりも豊かであり、物流網がしっかりしています。 世界が助けてくれています。 太平洋戦争当時のように隔離された日本でもありません。今の日本は、自分たちがお互い助けあっています。
 ある新聞が「日本沈没」という表現を1面に書いていましたが、現場で見ると都市の外形的被害は思ったより大きくありません。 東京-福島-仙台-盛岡につながる東北線の都市機能は、インフラ整備が進めば本来の機能を回復するでしょう。


 その後の注目記事の1つは2012年1月の「韓国がまだ統一を望んでいるなら」です。→コチラ「朝鮮日報(日本語版)」(会員制)または→コチラのブログ記事で全文読めます。
 ここで彼は、南北統一問題を自身の父親(「朝鮮日報」編集局長で作家の鮮于煇(ソヌ・フィ))のこと等自身の家族や心情とも絡めて書いています。

 私たちは統一を語るとき、まず費用の問題を口にする。北朝鮮政権が崩壊すればサムスンの株価が半減すると騒ぎ、北朝鮮にいる2300万人の同胞を養うには、韓国経済がさらに成長する必要があると指摘する。20代の青年が突然指導者になったとしても、100万人の同胞がさらに餓死したとしても、共存のためには北朝鮮の現実を認めなければならないと主張する。内容は違っていても言いたいことはただ一つ、「統一はまだ無理」ということだ。本当にそうだろうか。あるいは、私の気持ちと同じ利己心と卑怯さが韓国社会の底辺にはびこっているのだろうか。(中略) 時がたつにつれ、そうした利己心はますます大きくなるだろう。実際には、北朝鮮が変わらないのではなく、韓国が変わらないために統一が成し遂げられないのかもしれない。他人をあれこれ言うのではなく、まずは自分から変わろうという姿勢を見せることが大切だと思う。

 ・・・自分自身の利己心をも認めつつ、韓国(や自分たち)が変わるべきことを誠実に説いていると思います。

 冒頭で記したように、今年になって鮮于鉦記者は国際部長の地位に就きました。
 4月のセウォル号沈没事故についてのコラム「韓国社会にごまんといる「セウォル号の船長」」も説得力のある記事でした。
 ここで彼はニューヨークや東京のバスがマニュアルにしたがって客の安全によく配慮されていることを最初にあげています。ところが韓国社会は見出しの文言通り。
 結論として彼は次のように述べています。

 乗客のために命をささげる英雄のような船長を望んでいるのではない。王も大統領も、国民を見捨てて逃亡した過去があることを知っているだけに、「船長よ、あなただけは乗客と運命を共にせよ」と強要するのも恥知らずなことだ。命を捨てろとまでは言わない。ただ、自ら与えられた地位に責任を持ち、規則を守ってほしいということだ。船が沈みそうになったら、マニュアル通りに行動し、中にいる子どもたちを避難させてほしいということだ。

 彼は、読者から「親日記者」とか「イルパ(일빠)」と非難されたりするそうです。(一例→コチラ。)
 ※일빠일본 빠돌이(빠순이)日本のオッカケのこと。
 なるほど、先の<大地震取材を終えて>の記事には次のような記述があります。

 5年6ヶ月の間、日本の特派員生活をしながら日本のシステムを学ぼうと努力しました。 そのような努力を本にも書いて読者に知らせたこともありますよね。 こんな言葉が似合うかどうかわかりませんが、<親日記者><イルパ記者>という言葉をたくさん聞きました。私は日本に尊敬の念を持っています。

 しかし、同記事のコメント(댓글)21件をみるとほとんどが好評。(一部、イルボンノム(日本奴)について長々と書いているものもありますが。)

 上述の記事以外でも、ネット内でいろいろ読むことができます。
 彼の東京特派員時代の記事では、雪の朝の道路の雪かきについての記事(→コチラ.韓国語)なんかも興味深く読みました。

 今、彼はなにせ国際部長ですから、最近の日本の集団的防衛権等についても書いていて、中には私ヌルボとしては反論したい内容のものも当然あります。
 しかし、最初の「日本列島10万キロ」で感じた記者としての彼に対する信頼は失われてはいません。これまでの記事をいろいろ読んでみると、就職した時に父親のコネが働いたかどうかわかりませんが、国際部長の地位は親の七光りとは関係ない彼自身の実績によるものだと思います。

 韓国の各紙は政治的立場がはっきりしていますが、保守系(「朝鮮日報」等)・進歩系(「ハンギョレ」等)を問わず良い記事を書く記者もいればその逆もいるということです。私ヌルボ、鮮于鉦記者を持ち上げたからといって、別に「朝鮮日報」の基本姿勢を支持しているということではありません。念のため。

 なお、鮮于鉦記者の父の作家・鮮于煇(ソヌ・フィ)の翻訳小説集(「火花」)は最近読了しました。そのうちに記事にするかも・・・ということで。

[2015年11月14日の追記] この記事へのアクセスが急に増えているのでその理由を探索したところ、14日付の「朝鮮日報 日本語版」の<【萬物相】 「ジャップ」が東京裁判を検証!? 米国の胸中やいかに>という記事(→コチラ)によるものと思われます。「ジャップ」とはなんとも「刺激的」な、いや「刺激的すぎる」言葉です。しかし元の韓国語版の記事(→コチラ)で確かめたところ、見出しはたんに「도쿄재판 '검증'(東京裁判 '検証')」となっています。本文では末尾の「・・・・米国の胸中が気になる。「ジャップは最悪」と、また怒っているのだろうか。」等、米国側が使うかもしれない言葉として出てきますが、日本語版の見出しだと鮮于鉦記者(論説委員)も日本のことを「ジャップ」と罵っているように受け止められかねません。日本語版担当のデスクがつけた見出しなのでしょうか? 鮮于鉦記者自身このことを承知しているかどうかは疑問です。この記事内容ではなく、日本語版の見出しのみで「鮮于鉦はケシカラン」と考えるのは誤解のおそれがあります。

[2016年4月18日の追記] 今日4月18日付の「朝鮮日報 日本語版」の<【萬物相】 地震と日本人>というコラム(→コチラ)の筆者は、やはり鮮于鉦記者でした。肩書きは論説委員になっています。「知日派」らしい内容で、多くの日本人が素直に受け入れられる(韓国紙の記事しては例外的な?)記事ではないでしょうか? もしかして、「号泣し、絶叫し、デモをし、断食闘争をする」という韓国人によくある反応を否定的に見ているのでは、とも思われます。
 ついでに、今年に入り彼が書いた私ヌルボの注目記事を2つ紹介します。
 1つ目は<高橋亨の主張を今なお葬れない韓国人の党派性>と題したコラム(→コチラ)。よくこういう人物を知っているものです。もう1つは「朝鮮日報」と提携している「毎日新聞」に掲載された慰安婦問題についての記事(→コチラ)。韓国の読者からは「親日」、日本の読者からは「反日」と指弾されそうなビミョーな隘路で記事を書き続けているといった感じです。(日本から韓国に戻ると少し韓国寄りになるのはまあ「自然」なところか。)
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韓国内の映画 Daumの人気順位 と 週末の興行成績 [6月27日(金)~6月29日(日)]

2014-07-01 23:15:54 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
 あっというまに1年の半分が過ぎてしもた。(←たまに出る徳島弁。) 正確には明後日3日がちょうど折り返し点ですけど・・・。来し方をゆっくり省み、行く末をつらつら熟考する余裕さえありません。ちょっと待ってほしいものです。・・・と「時」に言ってもなー(笑)。

 昨日「観相師」を観てきました。19日ぶりの映画! ってフツーの人は「!」はつけないか。
 これは期待通り! 時代劇娯楽大作としてオススメですよ。「王になった男」もおもしろかったですが、コチラはさらにスケール感あり。(韓国人なら)誰でも知ってる癸酉靖難とか、首陽大君(スヤンテグン.のちの世祖)をはじめ歴史上の有名人が大勢登場します。「王女の男」等のドラマでも描かれているので、韓国時代劇ファンなら「これはあの・・・」と思い起こす人物や場面もあるかと思います。私ヌルボとしては、韓明澮(ハン・ミョンフェ)があのような形で使われた点がとくに印象に残りました。また、細かな点では、主人公ネギョンが「安平大君は殺生ができない方で・・・」等々主だった人々の人相を語る中で、通信使の一員として日本にも来た申淑舟(シン・スクチュ)のことを「権力よりも女人に関心があって・・・」と言ってましたが、何か根拠があるのかな? いずれにしろ、史実を下敷きにしながらもこんな物語を作り上げるというか、でっち上げちゃうとは、脚本の高評価がわかります。また、朝鮮の歴史を全然知らなくてもOKです。
 ただ、こんなおもしろいのに平日午後とはいえ観客は30人くらいだったかな?(シネマート新宿) 韓国で900万人以上動員しただけのことはある作品にしては日本の映画ファンの認知度はそんなに高いとも思われないんだけどなー・・・。
\t
 さて、今年前半の私ヌルボの劇場鑑賞映画は計37作品。その中で、年間ベスト10候補は次の10作品です。日本映画では「ある精肉店のはなし」「独立少年合唱団」(これは旧作ですが)、韓国映画では「新しき世界」「スノーピアサー」「南部軍」「観相師」、その他外国映画では「あなたを抱きしめる日まで」「Mud マッド」「チョコレートドーナツ」「グランド・ブダペスト・ホテル」。

     「朝鮮日報」6月27日掲載の「封切映画 ぴったり10字評」です。(ハングル文も訳文も10字です。)
 「トランスフォーマー/ロストエイジ」
   ロボット好きの人限定。 ★★

 「Locke」

   車1台での映画制作法。 ★★★☆

 「これが私たちの終わりだ」

   どう止めるか、耐えねば。 ★★★

 「アビーと秘密の部屋」

   欲望を優雅に解くには。 ★★★☆

 「イヴ・サンローラン」

   人物は非凡、映画は平凡。 ★★★

 「桐島、部活やめるってよ」

   オレ帰るよ、高校時代に。 ★★★

※韓国映画「これが私たちの終わりだ」は→コチラ、米英合作映画「Locke」は→コチラ参照。アメリカ映画「アビーと秘密の部屋」は今月12日からの→第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映。

           ★★★ Daumの人気順位(7月1日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】

①賢い解法(韓国)  9.6(33)
②お父さんのEメール(韓国)  9.2(23)
③バックコーラスの歌姫〈ディーバ〉たち  9.1(21)
④Refuge(避難所)  8.9(30)
⑤ハン・ゴンジュ(韓国)  8.9(270)
⑥最後まで行く(韓国)  8.6(992)
⑦ゴースト・メッセンジャー(韓国)  8.6(28)
⑧鑑定士と顔のない依頼人  8.6(130)
⑨ベルベット・ゴールドマイン  8.5(48)
⑩her/世界でひとつの彼女  8.5(267)

 今回も顔ぶれはかなり変わりましたが、新登場はありません。

     【専門家による順位】

①ハン・ゴンジュ(韓国)  7.3(6)
②慶州(韓国) 7.2(7)
③X-MEN:フューチャー&パスト  7.1(7)
④少女は自転車に乗って  7.1(6)
⑤グレート・ビューティ  7.0(7)
⑥her/世界でひとつの彼女  7.0(6)
⑦最後まで行く(韓国)  6.8(6)
⑦窓から逃げた100歳老人  6.8(6)
⑨バックコーラスの歌姫〈ディーバ〉たち  6.8(5)
⑩色情狂vol.1  6.7(7)

 順位・評点とも前週と全く同じです。

         ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績[6月27日(金)~6月29日(日)] ★★★

         シリーズ最新作「トランスフォーマー/ロストエイジ」が他を圧倒!

【全体】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・・週末観客動員数・・・累計観客動員数・・・累積収入・・・上映館数
1(新)・・トランスフォーマー・・・・・・・・・・・6/25・・・・・・・・・・・1,853,025・・・・・・・2,639,804 ・・・・・・・22,297・・・・・・1,602
            /ロストエイジ
2(1)・・オール・ユー・ニード・イズ・キル・・6/04・・・・・・・・・・・207,356・・・・・・・4,347,204 ・・・・・・・36,025・・・・・・・・391
3(2)・・最後まで行く(韓国)・・・・・・・・・・・5/29・・・・・・・・・・・・199,195・・・・・・・3,083,583 ・・・・・・・24,196・・・・・・・・392
4(3)・・美女と野獣・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/18・・・・・・・・・・・・・32,546・・・・・・・・・285,704 ・・・・・・・・2,171・・・・・・・・244
5(5)・・窓から逃げた100歳老人・・・・・・6/18・・・・・・・・・・・・・26,409・・・・・・・・・182,216 ・・・・・・・・1,390・・・・・・・・185
6(33)・・グレース・オブ・モナコ・・・・・・・・6/18・・・・・・・・・・・・・21,593・・・・・・・・・179,178 ・・・・・・・・1,340・・・・・・・・188
              公妃の切り札
7(4)・・皇帝のために(韓国)・・・・・・・・・・6/11 ・・・・・・・・・・・・・14,796 ・・・・・・・・580,536 ・・・・・・・・4,665・・・・・・・・184
8(10)・・her/世界でひとつの彼女・・・5/22 ・・・・・・・・・・・・・・9,420・・・・・・・・・294,043 ・・・・・・・・2,395 ・・・・・・・・・39
9(47)・・ロック王国2 聖龍の願い・・・・・6/26 ・・・・・・・・・・・・・・9,220・・・・・・・・・・10,590・・・・・・・・・・・・75・・・・・・・・178
10(9)・・色情狂vol.1・・・・・・・・・・・・・・・・6/18 ・・・・・・・・・・・・・・6,290・・・・・・・・・・43,330・・・・・・・・・・・342・・・・・・・・・56
       ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 なんのかの言ってもハリウッドの大作パワーはすごい。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」に続いて、「トランスフォーマー」シリーズの最新作「トランスフォーマー/ロストエイジ」が2位の9倍近い数字でダントツのトップ。韓国映画では「最後まで行く」が300万人の大台に到達。
 今回の新登場は1位と9位の2作品だけです。上記の人気ランキング同様停滞気味。
 1位「トランスフォーマー/ロストエイジ」は、8月8日に日本公開ということで、情報も出回っています。マーク・ウォールバーグ以下メインキャストを一新、壮大なバトルを繰り広げるトランスフォーマーたちもこれまで以上の威力と戦闘能力を発揮する・・・ということです。韓国題は「트랜스포머:사라진 시대(トランスフォーマー:消えた時代)」。
 9位「ロック王国2 聖龍の願い」は中国アニメ。主人公、ロック王国の英雄の名前がドラゴンスター(龍星)というのがいかにも中国っぽいです。物語は、彼のペットのアベルが危険に瀕している!ということで、アベルを助けることができるエルフ王のもとへドラゴンスターたち5人ののドラゴンナイトたちが旅に出るのですが、石頭黒師団(?)なる悪の軍団がその行く手を阻もうと・・・。うーむ、よくわからん。この「洛克王国(原題)」についての中国サイトの記事(→コチラ)を見てもチンプンカンプン。絵柄が日本アニメに似ていることはわかります。しかし、→コチラや→コチラや→コチラをみると、中国のアニメ文化の隆盛は大変なもののようです。今や中国は「世界最大のアニメ市場」なんだそうです。こういった分野でも韓国の中国接近が読み取れる、かな? 韓国題は「로코왕국의 전설: 엘프킹을 찾아서(ロコ王国の伝説:エルフキングを探して)」です。

【多様性映画】

順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・・・・・週末観客動員数・・・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(11)・・窓から逃げた100歳老人・・・・・・・・・・6/18・・・・・・・・・・・・・26,409・・・・・・・・・・・・182,216 ・・・・・・1,390・・・・・・・・185
2(3)・・her/世界でひとつの彼女 ・・・・・・・・・5/22・・・・・・・・・・・・・・9,420・・・・・・・・・・・・294,043・・・・・・・2,395・・・・・・・・・39
3(2)・・色情狂vol.1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6/18・・・・・・・・・・・・・・6,290 ・・・・・・・・・・・・・43,330・・・・・・・・342・・・・・・・・・56
4(15)・・イヴ・サンローラン・・・・・・・・・・・・・・・・6/26・・・・・・・・・・・・・・6,025・・・・・・・・・・・・・・・8,815 ・・・・・・・・・69・・・・・・・・・49
5(5)・・グレート・ビューティー・・・・・・・・・・・・・・6/12・・・・・・・・・・・・・・2,964 ・・・・・・・・・・・・・29,116 ・・・・・・・・226・・・・・・・・・31
             /追憶のローマ

 4位「イヴ・サンローラン」は、あの有名なファッション・デザイナーの生涯をたどったドキュメンタリー。日本では9月6日で、公式サイトも用意されています。(→コチラ。) 韓国題は「이브 생 로랑」です。
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