結婚行進曲と六条の御息所(PART 1)
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Henry Purcell
(1659-1695)
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Fairyは、未だかつて日本には存在しなかった。しかしながら、我々のfairiesに対するimageと西洋人のそれとには大差がないであろう。ただ、私には、田園劇そのものとなると、あの有名なW.Shakespeare の“A Midsummer Dream”でさえ、何処が良いのか皆目わからないのである。これは、かつて、F.Mendelssohn-Bartholdyの朗読つきの“A Midsummer Dream”全曲を聴いたときもそうであったが、Purcellの作品のGardinerによるすばらしい演奏に耳を傾けながらも、これは感覚の違いによるものか、需要の差、つまり都市生活者の、どのみち浅はかな田園への憧れのあり方の違いなのか、などと考えてしまうのである。
(中略)
だが、私には田園劇という分野が理解できない。フランスの貴族の倒錯したsnobismeとしたならば分かることは解る。けれど、あのShakespeareの田園劇は楽しんだことがなかった。もしかしたら、多分、未だ私の知らない歴史風俗的なわけがあるのかもしれない。私はPurcellが第一級の音楽をつけただけに、それが気になるのであろ。(中略)
英国でオペラが振るわななかったのは、Shakespeareが偉大すぎて、演劇が自足、自立していたからではなかったであろうか。Purcellの音楽にしても、私には、どちらかというと、器楽の作品のほうが違和感なしに楽しめる。
出典:7-8ページ 『間奏曲集ー主題なき変奏』(作品2)
著者:太田将宏 初版:1994年1月 改定:2006年6月
Les Interludes - Variations sans Sujet - Opus 2
by Masahiro Ota
デンマン注:写真はデンマンが貼り付けました。強調のための赤字もデンマンが施(ほどこ)しました。
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デンマンさん。。。あんさんは、ずいぶん昔の作曲家の名前を知ってはるのやね?
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ヘンリー・パーセル(Henry Purcell)のことかいな。
そうですう。わたしはこれまでに一度も聞いたことがあらへん。
わてかて太田さんの本を読むまで知りへんかったわ。
それなのに、どうしてパーセルのことを取り上げる気になったん?
太田さんは次のように書きよった。
あの有名なW.Shakespeare の
“A Midsummer Dream”でさえ、
何処が良いのか皆目わからないのである。
あんさんは、この箇所が気になってパーセルのことを取り上げる気になったん?
そうなのや。わては去年(2009年)も、ふるさと(行田市)へ帰省したのや。その時にテレビで朗読つきの“A Midsummer Dream”を観た。。。で、感銘を受けたので記事を書いたのや。めれちゃんも、ちょっと読んでみて欲しいねん。
結婚行進曲
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日本帰省中の2009年10月18日の日曜日に、僕はNHKの教育テレビで午後9時の「N響アワー」を観たのですよう。
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クラシックでござ~♪~ますか?
そうなのですよう。。。僕はクラシックの曲など自分から進んで聴くこともコンサートに行ったことも無い。
それなのに、どうして「N響アワー」を観たのでござ~♪~ますか?
音楽と語りが織りなす“夏の夜の夢”
メンデルスゾーン生誕200年
メルクル指揮 語り:中井貴恵
テレビ番組表を見たら、このような文面が目に飛び込んできた。
10月なのに“夏の夜の夢”でござ~♪~ますか?
いいではありませんか!?僕だって小百合さんからの夏のメールを取り上げたのだから。。。「音楽と語りが織りなす。。。」というのがいいではありませんか!。。。音楽だけではつまらない。。。考えてみたら、クラシックの演奏中に「語り」があるなんて、僕はこれまでに聞いたことも見たことも無い。これは、絶対に見なければ一生の損だ!と思って僕は何が何でも見ようと決めたのですよう。
デンマンさんはメンデルスゾーンのファンなのでござ~♪~ますか?
いや。。。ファンになるほどハマリ込むようなクラシックの作曲家なんて僕には居ませんよう。
でも、メンデルスゾーンは好きなのですか?
いや。。。別に好きだと言う訳でもない。でも、有名な作曲家の一人だというぐらいの知識はありますよう。しかし、メンデルスゾーンが作った曲を言いなさいと言われても、すぐには曲が思い浮かばない。
つまり、音楽の勉強はあまりしなかったのでござ~♪~ますね?
いや。。。結構勉強しましたよう。音楽の成績はいつでも「5」でしたからね。それに、行田中学の時の町田先生という地理と社会科の先生が、どう言う訳か音楽教育に熱心だった。僕が合唱部に入ったのも、この先生が「入りなさい」と言ったので、しぶしぶ入ったのですよう。
じゃあ、メンデルスゾーンの曲も何度か聴いたのですわね?
町田先生は音楽も担当していたから、音楽の授業で聴かされた覚えがありますよう。でもねぇ~、メンデルスゾーンの曲は僕の記憶に残らなかった。
(中略)
。。。んで、音楽と「語り」が織りなす“夏の夜の夢”は、いかがだったのでござ~♪~ますか?
興味深かったですよう。音楽の合間に「語り」担当の中井貴恵さんが次のような物語を語って聞かせるのですよう。
夏の夜の夢
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『夏の夜の夢』(原題:A Midsummer Night's Dream)は、ウィリアム・シェイクスピアによって1590年代中頃に書かれた喜劇形式の戯曲。
全5幕からなり、アテネ近郊の森に脚を踏み入れた貴族や職人、森に住む妖精たちが登場する。
幾度か映画化もされている。
他にも後世に作られた同名の作品が複数ある。
坪内逍遥訳をはじめ古い翻訳では『真夏の夜の夢』(まなつのよのゆめ)と訳されることが多かった。
アセンズ(アテネ)の街と近郊の森が舞台となる。
2組の貴族の男女:ハーミア、ライサンダー、ヘレナ、ディミートリアス、織工のボトム、妖精の王オーベロン、女王タイターニア、パックが主な登場人物である。
人間の男女は結婚に関する問題を抱えており、妖精の王と女王は養子を巡りけんかをしている。
しかし、オーベロンの画策やパックの活躍によって最終的には円満な結末を迎える。
あらすじ (ネタバレ注意)
アセンズ公シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒッポリタとの結婚式が間近に迫っており、その御前から舞台は始まる。
貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲であるが、ハーミアの父イージアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとする。
ハーミアは聞き入れないため、イージアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。
シーシアスは悩むものの、自らの結婚式までの4日を猶予としてハーミアへ与え、ディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。
ライサンダーとハーミアは夜に抜け出して森で会うことにする。
ハーミアはこのことを友人ヘレナに打ち明ける。
ディミートリアスを愛しているヘレナは二人の後を追う。
ハーミアを思うディミートリアスもまた森に行くと考えたからだ。
シーシアスとヒッポリタの結婚式で芝居をするために、6人の職人が一人の家に集まっている。
役割を決め、練習のために次の夜、森で集まることにする。
かくして、10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出かけていくことになる。
森では妖精王オーベロンと女王タイターニアが「とりかえ子」を巡って喧嘩をし、仲違いしていた。
機嫌を損ねたオーベロンはパックを使って、タイターニアのまぶたに花の汁から作った媚薬をぬらせることにする。
この媚薬はオーベロンの魔力によって作られた強力なもので、目を覚まして最初に見たものに恋してしまう作用がある。
パックが森で眠っていたライサンダーたちにもこの媚薬を塗ってしまうことで、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになり、4人の関係があべこべになってしまう。
また、パックは森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変えてしまう。
目を覚ましたタイターニアはこの奇妙な者に惚れてしまう。
とりかえ子の問題が解決するとオーベロンはタイターニアが気の毒になり、ボトムの頭からロバの頭をとりさり、タイターニアにかかった魔法を解いて二人は和解する。
また、ライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとの関係も元通りになる。
一方、ディミートリアスはヘレナに求愛し、ハーミアの父イージアスに頼んで娘の死刑を取りやめるよう説得することにする。
これで2組の男女、妖精の王と女王は円満な関係に落ち着き、6人の職人たちもシーシアスとヒッポリタの結婚式で無事に劇を行うことになった。
物語の背景
ヨーロッパでは夏至の日、妖精の力が強まり、祝祭が催されるという言い伝えがある。
劇中でも小妖精のパックや妖精王オーベロンなどが登場する。
特にトリックスター的な働きをするパックは人々に強い印象を与え、いたずら好きな小妖精のイメージとして根付いている。
Puck はもとはプーカ Puka などとして知られていた妖精のことである。
『夏の夜の夢』の執筆時期と最初の上演がいつだったのか正確な日付は不明であるが、1594年から1596年の間であったと考えられている。
1596年2月のトーマス・バークレイ卿とエリザベス・キャレイの結婚式で上演するために書かれたとする説もある。
『真夏の夜の夢』の構想の元となった作品は不明であるが、個々の登場人物や出来事は、ギリシャ神話や古代ローマの詩人オウィディウスによる『変身物語』、アウグスティヌスの『黄金のロバ』といった古典的な文学から流用されている。
日本語訳タイトル
古くから、『真夏の夜の夢』という題が用いられてきた(坪内逍遥、三神勲など)。
これは原題の midsummer nightを直訳し「真夏の夜」としたものであるが、正しくは6月下旬の夏至 midsummer day の夜のことであり、日本でいう「真夏」つまり夏のさかりの夜ではない。
そのため、『夏の夜の夢』という題が現在では一般的になっている(福田恆存、小田島雄志、松岡和子ら)。
もっとも、1949年刊行の岩波文庫版(土居光知訳)などでもすでに『夏の夜の夢』が用いられている。
しかし『真夏の夜の夢』という題も古くから親しまれてきたため、1999年公開のアメリカ映画の邦題に用いられた他、今日でもメンデルスゾーン作曲の序曲・劇音楽などでしばしばこの表記が用いられる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シェイクスピアの喜劇でござ~♪~ますか?
もともとはギリシャ神話の中にあるエピソードですよう。
それがデンマンさんには面白かったのでござ~♪~ますか?
いや。。。僕はギリシャ神話のエピソードが出てくるとは夢にも思っていなかったのですよう。
それで思いがけなく楽しかったのでござ~♪~ますか?
いや。。。楽しかったと言うよりも懐かしかったのです。
なぜ。。。?
実は、僕は“Erotica Odyssey”という英語の小説を書いたことがあるのですよう。
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■『英語の本 (Erotica Odyssey)』
■『Erotica Odyssey (日本語解説)』
ヤ~らしい本でござ~♪~ますか?
いや。。。決して卑弥子さんが考えるようなヤ~らしい本ではありません。つまり、ポルノではありません。この上の説明にも出てくるアセンズ公シーシアス(テセウス)も登場する冒険・エロチカ物語ですよう。
どきどきワクワクするお話なのでござ~♪~ますか?
ここで書くと長くなるから書かないけれど、興味もある人は上の「日本語解説」を読んでみてください。
分かりましたわ。後で読ませていただきますわ。。。んで、結婚行進曲はどうなったのでござ~♪~ますか?
中井貴恵さんが語る結婚式のところで、あの有名な結婚行進曲が演奏されたのですよう。
洋装の結婚式で、よく聞く、あの「結婚行進曲」でござ~♪~ますか?
そうなのですよう。まさか、上のような話の中で、あの有名な結婚行進曲を聞くとは思いませんでしたよう。あの曲をメンデルスゾーンが作曲したとは、うかつにも僕は知りませんでした。。。目からウロコでしたよう。
『結婚行進曲(2009年11月23日)』より
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つまり、“結婚行進曲”が聞こえてきたさかいに、うれしくなって上の記事を書きはったん?
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そうなのやァ。うしししし。。。
笑っている場合ではありまへんがなァ。要するに“A Midsummer Dream”に「結婚行進曲」が使われてるよってに、その田園劇が素晴らしいとあんさんは言わはるの?
そうや。めれちゃんもそう思わんか?
それは可笑しいと思うわ。
どうしてや?
そやかて、あの結婚行進曲が有名になったのは最近のことやでぇ。今でこそ日本の結婚式には、あの有名な結婚行進曲が必ずと言っていいほど式場に流れるけど、18世紀には日本ではもちろん、ヨーロッパでも結婚式に行進曲が流れることはあらへんかったと思うわ。
それもそうや。レコードプレーヤーもなかったし、CDプレーヤーもあらへんかった。
そやから田園劇の良さと結婚行進曲は全く関係あらへん。
そうなるなァ~。。。
あんさん!。。。いい加減にしいやあああァ~。。。素人のわたしにでも分かるような事を言わんといて欲しいわ。
あのなァ~。。。たまたま“A Midsummer Dream”と結婚行進曲が思い浮かんださかいに言ったまでやァ。実は、それ以外にも田園劇について思い当たることがあるねん。
そんなら、もったいぶらんと言ったらええやん。
太田さんが次のように言うていた。
もしかしたら、多分、未だ私の知らない
歴史風俗的なわけが
あるのかもしれない。
つまり、歴史風俗的な理由を知ると田園劇の良さが分かりはるの?
そうなのやァ。実は、かつて、わてとジューンさんで、歴史的な事について対談したことがあるねん。その時のことを記事に書いたのや。めれちゃんにも関連部分を読んで欲しいねん。
(すぐ下のページへ続く)