☆ねえ、起きてよ!
明け方になるとシェラが起こしにくるようになってひと月余りになる。
ぼくが起きる6時を待ち切れずに、はじめのころは5時ごろから、それが4時台になり、ひどいときには2時、3時台でも起こしにくることがある。息を荒くして寝ているぼくや家人のベッドの脇にきて、「起きて!」とひと声訴える。
横に呼んで、頭を撫で、「大丈夫だよ。もう少し寝ようね」と語りかけてやるとようやくおとなしくなってくれる。たいてい二度、三度と同じことが繰り返される。キャンプに出かけても同じだった。
このところ、それが連日になっていた。
「とうとうシェラも痴呆がはじまったか……」
暗澹たる思いをいかんともしがたかった。
先週末、フィラリアの薬を取りに動物病院へ行ったときに先生に相談した。
痴呆の可能性はあるものの、年をとるとそのような行動をとる犬は珍しくない。衰えを自覚し、不安からの行動と思われる――そんな説明を受けた。
そして、痴呆かどうかを判断する一助にと「犬の痴呆症の診断基準という10項目からなる設問シートを渡された。
ほかに犬の飼い主への「問題行動」を解析するための設問シートももらってきたが、こちらはまったく必要なかった。つまり、攻撃や破壊に類する問題行動は何もないからである。
☆どんなに眠くても幸せだと思う
肝心の痴呆症だが、該当するのはただひとつ、「真夜中から明け方の定まった時間に突然鳴き出すが、ある程度制止が可能」という項目だけである。
まだ結果をもって病院へ行ってはいないけど、どうやら痴呆症とは断定できないようである。安心はしたけれど、明日の明け方もまた起こされて、頭を撫でて気持ちを鎮めてやることになるのだろう。
顔を近づけ、眠い目を開けてシェラを見つめるとき、こんなことだってできるいまが幸せだと思える。シェラがいなくなってしまったら、きっと毎朝のそんなひとときでさえ懐かしくてならないだろう。
毎朝、薄明の中でぼくの顔にかかるシェラの吐息が愛しくてならない。
明け方になるとシェラが起こしにくるようになってひと月余りになる。
ぼくが起きる6時を待ち切れずに、はじめのころは5時ごろから、それが4時台になり、ひどいときには2時、3時台でも起こしにくることがある。息を荒くして寝ているぼくや家人のベッドの脇にきて、「起きて!」とひと声訴える。
横に呼んで、頭を撫で、「大丈夫だよ。もう少し寝ようね」と語りかけてやるとようやくおとなしくなってくれる。たいてい二度、三度と同じことが繰り返される。キャンプに出かけても同じだった。
このところ、それが連日になっていた。
「とうとうシェラも痴呆がはじまったか……」
暗澹たる思いをいかんともしがたかった。
先週末、フィラリアの薬を取りに動物病院へ行ったときに先生に相談した。
痴呆の可能性はあるものの、年をとるとそのような行動をとる犬は珍しくない。衰えを自覚し、不安からの行動と思われる――そんな説明を受けた。
そして、痴呆かどうかを判断する一助にと「犬の痴呆症の診断基準という10項目からなる設問シートを渡された。
ほかに犬の飼い主への「問題行動」を解析するための設問シートももらってきたが、こちらはまったく必要なかった。つまり、攻撃や破壊に類する問題行動は何もないからである。
☆どんなに眠くても幸せだと思う
肝心の痴呆症だが、該当するのはただひとつ、「真夜中から明け方の定まった時間に突然鳴き出すが、ある程度制止が可能」という項目だけである。
まだ結果をもって病院へ行ってはいないけど、どうやら痴呆症とは断定できないようである。安心はしたけれど、明日の明け方もまた起こされて、頭を撫でて気持ちを鎮めてやることになるのだろう。
顔を近づけ、眠い目を開けてシェラを見つめるとき、こんなことだってできるいまが幸せだと思える。シェラがいなくなってしまったら、きっと毎朝のそんなひとときでさえ懐かしくてならないだろう。
毎朝、薄明の中でぼくの顔にかかるシェラの吐息が愛しくてならない。