今朝、むぎの夢を見た。
ようやくむぎに逢えた。
たとえ夢でもうれしい。
短い夢ではあったけど……。
シェラと散歩をしているとむぎが遅れた。よくあることだ。
戻ってみると道端の草の上でお尻を上げて排泄の最中だと思ったら、どうも様子がおかしい。よく見ると、ナメクジのような大きな蛇……ちょうどツチノコのような異形の生き物に捕まって身動きがとれなくなっているではないか。
リードを引っ張って引き離すと、ツチノコは、向こう側の土手をコロコロと転がりながら逃げっていった。むぎもようやくその場を離れ、先行するシェラのほうに走り寄っていく。
たったそれだけの他愛のない夢だった。とりとめのない夢の断片のひとつだが、目が覚めたとき、そのシーンだけを鮮明に記憶していた。
半睡の朦朧とした意識の中で、「ああ、夢だったんだ」と思い、しばらくしてこれがむぎが旅立ってからはじめてみた夢だと気づいた。
むぎに逢えた。
無性にうれしかった。たちまち眠りから覚醒していく。
サイドテーブルの時計を見ると時刻はまだ午前5時を少し過ぎたばかりだった。ぼくは目を閉じ、いましがた見た夢の中のむぎの姿を何度も反芻した。
ツチノコにつかまって身体をすくませ動けなくっているむぎ、恐怖からシェラのそばへと走り寄るむぎ……どちらもリアリティーのあるむぎらしい姿だった。
とりわけ、むぎの首のうしろの白い毛並みが瞼にあざやかに焼きついている。
コーギーのふるさとであるウェールズの言い伝えによると、コーギーが人間と出逢う前、彼らは妖精たちと暮らしていた。そして、妖精たちを背中に乗せて野山を走りまわっていたという。
首の白い毛は、「妖精のサドル(鞍)」と呼ばれ、妖精を乗せていたときの名残だそうである。
実はいまも背中に妖精が乗ることがあり、コーギーが振り向くときは背中の妖精を見ているのだと……。
むぎの背中にある妖精のサドルも、なるほど、いつ妖精が舞い降りてきても不思議でないほど愛らしかった。
あの白い毛の感触が指先によみがえる。ここを撫でたり、揉んでやるとむぎは気持ちよさそうに目を細めていた。
胸の毛の白いふくらみのホワホワ感も忘れられない。シャンプーするときは、首の白い毛と、胸の白い毛を入念に洗ってやった。どちらもコーギーのチャームポイントだからだ。
朝食のとき、「今朝、むぎの夢を見たよ」と家人にいうと、彼女は顔を曇らせてひどく羨んだ。
「夢でもいいからむぎちゃんに逢いたい」
そういって声を詰まらせ、涙ぐんでしまった。
むぎ、今度はお母さんの夢の中にもいってやるんだよ。
ようやくむぎに逢えた。
たとえ夢でもうれしい。
短い夢ではあったけど……。
シェラと散歩をしているとむぎが遅れた。よくあることだ。
戻ってみると道端の草の上でお尻を上げて排泄の最中だと思ったら、どうも様子がおかしい。よく見ると、ナメクジのような大きな蛇……ちょうどツチノコのような異形の生き物に捕まって身動きがとれなくなっているではないか。
リードを引っ張って引き離すと、ツチノコは、向こう側の土手をコロコロと転がりながら逃げっていった。むぎもようやくその場を離れ、先行するシェラのほうに走り寄っていく。
たったそれだけの他愛のない夢だった。とりとめのない夢の断片のひとつだが、目が覚めたとき、そのシーンだけを鮮明に記憶していた。
半睡の朦朧とした意識の中で、「ああ、夢だったんだ」と思い、しばらくしてこれがむぎが旅立ってからはじめてみた夢だと気づいた。
むぎに逢えた。
無性にうれしかった。たちまち眠りから覚醒していく。
サイドテーブルの時計を見ると時刻はまだ午前5時を少し過ぎたばかりだった。ぼくは目を閉じ、いましがた見た夢の中のむぎの姿を何度も反芻した。
ツチノコにつかまって身体をすくませ動けなくっているむぎ、恐怖からシェラのそばへと走り寄るむぎ……どちらもリアリティーのあるむぎらしい姿だった。
とりわけ、むぎの首のうしろの白い毛並みが瞼にあざやかに焼きついている。
コーギーのふるさとであるウェールズの言い伝えによると、コーギーが人間と出逢う前、彼らは妖精たちと暮らしていた。そして、妖精たちを背中に乗せて野山を走りまわっていたという。
首の白い毛は、「妖精のサドル(鞍)」と呼ばれ、妖精を乗せていたときの名残だそうである。
実はいまも背中に妖精が乗ることがあり、コーギーが振り向くときは背中の妖精を見ているのだと……。
むぎの背中にある妖精のサドルも、なるほど、いつ妖精が舞い降りてきても不思議でないほど愛らしかった。
あの白い毛の感触が指先によみがえる。ここを撫でたり、揉んでやるとむぎは気持ちよさそうに目を細めていた。
胸の毛の白いふくらみのホワホワ感も忘れられない。シャンプーするときは、首の白い毛と、胸の白い毛を入念に洗ってやった。どちらもコーギーのチャームポイントだからだ。
朝食のとき、「今朝、むぎの夢を見たよ」と家人にいうと、彼女は顔を曇らせてひどく羨んだ。
「夢でもいいからむぎちゃんに逢いたい」
そういって声を詰まらせ、涙ぐんでしまった。
むぎ、今度はお母さんの夢の中にもいってやるんだよ。
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