■「さびしい……」という言葉が突き刺さる
飼い犬を失った寂しさは新しい犬を迎えることでしか癒されない。どうやら、歳をとればとるほど、愛犬を失った飼い主の立ち直りは大変らしい。何人かのそんな人たちを見てきた。新しい犬を迎えて元気になっていった姿も何度か見ている。
だが、新しい子を迎えることができるひとは幸せである。
近所のアパートの住人である彼は、たぶんぼくよりもだいぶ年上だろうと思う。それでも80は越えていないはずだ。毎朝、靴を履かせたかわいい小型犬を連れて散歩していた。
飼い主に似て穏やかな性格の犬で、会えばいつもルイと鼻をつきあわせて挨拶を交わしていた。彼らと会わなくなってしばらくたったころ、自転車に乗っているこの老人に会った。
自転車を止め、「あの子、死んじゃったんです」という彼の顔にはいつもどおりの笑みがあった。足に飛びつこうとするルイを見つめながら、「さびしい……」と絞り出すようにつぶやくときも穏やかな表情は崩れなかった。
あれからもう1年あまりになる。
シェラやむぎを送って日の浅いぼくには、彼の喪失感の深さ、寂しさが痛いほわかる。「また、新しい子を飼えばいいじゃないですか」などとは口が裂けてもいえなかった。いま、自分がルイに癒されているとはいえ、それは残酷きわまりない言葉だった。
弱々しいほほえみの陰にある彼のつらさはつい昨日の自分の苦痛でもある。「さびしい……」という彼の声が胸に突き刺さって痛んだ。
■ルイを先に送ってやれるだろうか?
今朝、いつもより少しはやめの時刻に駅へ向かう途中、分別ゴミの袋をさげて集積場へきた彼とばったり会った。思わず、背後から「おはようございます」と明るく声をかけたのは、左腕のなかに子犬がちらりと見えたからである。「よかった」と心から思った。
「新しい子がきたんですか?」といってのぞきこんだぼくは言葉を失った。彼が抱いていたのは茶色い小犬のぬいぐるみだった。
あの笑顔で、彼はモゴモゴと何かをいったが、ぼくには聞き取れなかった。
「いいですね。かわいがってあげてください」
それだけいうと、ぼくも笑顔で彼と別れた。赤いリボンを首にまいたぬいぐるみを抱いた老人の姿がぼくには異様には見えない。彼の想いの深さをあらためて感じただけだった。
彼はもう新しい子を迎えることのできない年齢である。自分が先立ったときの愛犬のその後を思えば、ぬいぐるみを抱いて寂しさに耐えるしかないのだ。
ぼくも家人もルイを迎えるにあたって躊躇したのはそのことだった。コーギーの平均寿命は13歳。ぼくたちは80歳まで生きながらえなくてはならない。自信はないが、なんとしてもルイより先に逝くことはできない。せめてどちらか片方だけでも……。
もし、ぼくが生き残り、ルイを無事に送ってやることができたら、ぼくもコーギーのぬいぐるみを抱きしめて余生を送るのだろうか。
それはともかく、ルイを先に送ってやることができたら、むろん、さびしいだろうが、充足感は残るはずだ。そうあってほしいと切に思う。
きょうはルイの誕生日なので、朝の通勤時にiPad miniに打ち込んだ記事を上げました。
明日から小旅行に出ます。山の中のキャンプ場なので現地からのレポートはできませんが、戻ってからレポートするつもりです。
いま、帰りの電車の中なのでそっけなくて申し訳ありません。
歳をとればとるほど、愛犬との別れは辛くなるのですか?
私は☆ポチとの別れを経験した時、情けないないほどに苦しんでしまいました。そして今チビコロと暮らしている以上は、再び別れを必ず経験するのです。でも、☆ポチとのあの別れを経験してしまったお陰で、この先に待つチビコロとの別れはきっときっと毅然として受け入れられるのではないかと、☆ポチが教え遺してくれた悲しみに、感謝している私なのです。
その縫いぐるみを抱くご老人のお話は、この先にある私と愛犬との別れを考えさせられる、とても忘れられないお話になりました。
その方の胸の内は、本当にお察しする事が出来ます。お一人暮らしである以上、愛犬がいなくなった毎日は想像しただけでも辛すぎると思います。
その方の赤いリボンの縫いぐるみのお話、決して忘れる事なく、これからのチビコロとの暮らしの中で、私の覚悟と毅然さを育て成長させていきたいと思います。
良いお話をありがとうございます。
必ずそのご老人が、愛犬の思い出の中で、幸せな毎日を送れる事をお祈りしたいです。
Hiro さん!ダメですよ!80才まで大丈夫か?なんて事言っていては!男性の平均寿命はどうであれ、先ずは100才目指して、その後は男性日本一の長寿を目指さないと(^^)v
実際それだけ長生き出来たら、回りの人の手助けや介護は必要ですが、そんな現実は横においておいて、目指す心意気が大切なのだと思います。
私の父は今年93才になります。若い頃から『俺は100まで生きるんだ!』が口癖です。念ずる事ってけっこう実現可能な手段かもしれないです。だから、ルイ君を見送るのは当たり前の上に、その後は見送った愛犬達に虹の橋のたもとで会える時のための手土産かわりのHiro さんの老後の楽しい経験を、たくさん積んで頂きたいと思います(^^)v
私もしわくちゃ婆さん目指すつもりで~す(*^▽^)/★*☆♪