Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

伊万里 色絵 家・舟・葦原文輪花形小鉢

2020年10月20日 17時26分06秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 色絵 家・舟・葦原文輪花形小鉢」の紹介です。

 この小鉢については、今では止めてしまっている拙ホームページの「古伊万里への誘い」で既に紹介していますので、次に、それをここで再度紹介することで、この小鉢の紹介に代えさせていただきます。

 なお、この小鉢の名称については、拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中では、「伊万里 色絵 家葦原文輪花小鉢」としていましたが、今、良く観察してみましたら、「家」の下の方に「舟」も描かれていることを発見しました。それで、この小鉢の名称を「伊万里 色絵 家・舟・葦原文輪花形小鉢」と変更いたします。

 

 

製作年代: 江戸時代中期

サ イ  ズ: 口径;10.0cm  高さ;6.4cm

 

 

 



 

<古伊万里への誘い>

 


 

*古伊万里ギャラリー79 古伊万里様式 色絵 家・舟・葦原文輪花形小鉢(古伊万里様式 色絵 家葦原文輪花小鉢(平成16年10月1日登載)

 

立面(家と舟の面)

 

 

上の写真からではよく分かりませんが、よく見ると、家の下の方に舟が描いてあります。

 

 

立面(家と舟の面から左に90度回転させた面)

 

 

立面(家と舟の面の反対面)

 

 

立面(家と舟の面から右に90度回転させた面)

 

 

見込み面

 

 

見込み面の拡大

 

 

底面

 

 

 この小鉢の雲の描き方には特長がある(上の写真の「家と舟の面から左に90度回転させた面」及び「家と舟の面から右に90度回転させた面」に描かれた「雲」を参照)。

 この雲の描き方に似ているものを「柴田コレクション」から捜してみた。

 その結果、「柴田コレクションⅠ 362」染付館唐人文輪花大皿(1690~1710年代)と「柴田コレクションⅧ 196」染付琴高仙人文小皿(1730~60年代)に似たものがあることがわかった。

 

 

「柴田コレクションⅠ 362」から転載

染付館唐人文輪花大皿(1690~1710年代)

 

 

「柴田コレクションⅧ 196」から転載

染付琴高仙人文小皿(1730~60年代)

 

 

 このような雲の描き方は、あまり見られないところであり、たぶん、その頃に流行った描き方なのだと思う。

 文様とかには、その時代の流行とかが見られて面白い。歌でも、流行歌と言われるくらい、流行(ハヤリ)、廃れ(スタレ)がある。

 器物の時代鑑定には、そういうところを活用することも出来ると思う。

 この小鉢の雲の描き方は、「柴田コレクションⅠ 362」よりは「柴田コレクションⅧ 196」に近いかもしれない。したがって、この小鉢は、1730~60年代に作られたのではないかと思っている。

 この時期は、伊万里の場合、既に盛りを過ぎ、凋落傾向を示し始めた時期に相当する。それにしては、この小鉢、なかなかの力量を発揮している。盛期伊万里の矜持をかろうじて保っているというところであろうか。

 

 なお、この小鉢には鎹(カスガイ)直しがしてあるが、次に、その部分を写真で紹介する。

鎹直しの状況 

 片側に2ヶ所づつ、合計4ヶ所で繋いでいる。鎹直しの孔は表面で止まっていて、貫通していない。

 

 

製作年代: 江戸時代中期

サ イ  ズ: 口径;10.0cm  高さ;6.4cm

 

 

 


 

*古伊万里バカ日誌21 古伊万里との対話(鎹直しの小鉢)(平成16年9月筆)

 

登場人物
 主  人 (田舎の平凡なサラリーマン)
 万里男 (古伊万里様式 色絵 家・舟・葦原文輪花形小鉢)(古伊万里様式色絵家葦原文輪花小鉢

   
(鎹直しの状況は、ここでは見ずらいので、「古伊万里ギャラリー79」でご覧いただきたい。)
 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 最近、ネット上で鎹(カスガイ)直しの器物の話がちらほら出ているようである。しかも、主人は、グーグルで「ばこうはん」と入力して検索すると、最初にこの「古伊万里バカ日誌」の目次のページが出てくるらしいことをどこぞの掲示板で見聞きした。そこで、そのとおりにやってみたら、なるほど最初に出てくる。それには大変に気を良くし、主人は、鎹直しの古伊万里がもう一つあることを思い出し、押入から引っ張り出してきた。

 

主人:今日は万里男に出てもらった。
 というのも、最近、ネット上に器物の鎹(カスガイ)直しの話が出ているんで、ちょうど良いチャンスだと思ったからだ。
 だいたい、鎹直しといったって、しょせん傷物にちがいない。やたら傷物ばかりアップしていては、このホームページのコケンにもかかわるからな!(傷物ばっかりアップしているのによく言うよ!との陰の声高し。) それで、私は、お前を永久にアップしないつもりでいたわけだが、お前にとってはチャンスが巡ってきたというものだ。(アップする材料が枯渇してきて困ってきたところに棚からボタ餅なのに、よく言うよ!との陰の声益々高し。)
 「人間万事塞翁が馬」という故事があるが、「古伊万里万事塞翁が馬」ということも言えるようだな。この「古伊万里バカ日誌」の「 1 コレクションの整理を終えて 」の中で「・・・・・カスガイ修理といえば、砧青磁の馬蝗絆(ばこうはん)茶碗というのが有名だが、馬蝗絆(ばこうはん)大皿というのは聞いたことがないぞ。・・・・・」と私が言ったんだ。およそ3年前のことだがな。
 ところが、最近、そう話したことがグーグルのウェブ・ロボットに拾われていて、グーグルで「ばこうはん」と入力して検索すると、一番最初に、この「古伊万里バカ日誌」の目次のページが現われるんだよ。この前のオリンピックで金メダルを取った選手が「チョウ気持イイ!」と言ったが、正に「チョウ気持イイ!」って感じだね!!
 それには私も気を良くし、永久にアップしないつもりでいたお前を急きょアップする気になったわけだ。

万里男:それはそれはありがとうございます。私もチョウ嬉しく存じます。
 そうはいいましても、私を傷物だ! 傷物だ! と言いますが、それを度外視すれば、私は、立派なものじゃないですか。
 薄作りですし、外側の染付の描き込みだって細密にされていますし、見込みには絵まで描かれていますよ。

主人:それはそうだ。しかし、やっぱり傷は傷だ! 磁器の場合は、傷物は駄目だと昔から言われてるんだ!

万里男:お言葉ですが、それは理不尽じゃないですか。そんなの理由になりませんよ! 「磁器の場合は、傷物は駄目だと昔から言われてるんだ!」とおっしゃいますが、そんなこと、何時、誰が言い出したんですか?

主人:オット。これはまいった。キビシイことを言うね。

万里男:それに、修理の方法だって、こんな薄い器物を鎹で留めるのに、鎹が器面を貫通しないようにして行ってるんですよ。こんな技術は素晴らしいじゃないですか。修理痕だってそんなに見苦しくはありませんよ。

主人:それはそうなんだ。最近では、鎹直しの器物の例が少なくなったこともあって、むしろ、鎹直しの部分を一つの見所と見る者も出てきているようだね。

万里男:そうでしょう。私を見直してくださいよ。

主人:そうはいってもなー。修理は修理だしなーー。簡単にはなーーー。
 ところで、修理といえば、江戸後期に、磁器の焼継(やきつぎ)という商売が流行ったらしいんだ。当時、白玉粉という無色ガラス(鉛ガラス)の粉末を継ぎ目に塗って低温度で焼いて接合したらしい。この焼継を商売にする人を「焼継師」といったとのことだが、その商売がとても流行ったため、磁器が売れなくなって瀬戸物屋さんが大変に困ったらしいね。修理代は安かったんだろうね。高かったら新しい磁器を買うだろうからね。
 私には、どうも、磁器の修理には、そんなイメージを抱いているから、修理された器物は、「やっぱり傷物だ!」と思ってしまうんだよね。もっとも、それは、焼継の話で、鎹直しとは話がちがうがね。鎹直しのことは調べてないのでわからないけど。

万里男:焼継は、粉を塗って低温度で焼き継ぐだけですから簡単だと思いますが、鎹継ぎは簡単ではないと思いますよ。技術的にも高度ですし、直し痕なんか芸術的ですらありますよ。

主人:わかった、わかった。認めるよ、認めるよ。認めりゃ~いいんだろう、認めりゃ~。
 東京国立博物館所蔵の砧青磁馬蝗絆(ばこうはん)茶碗にあやかって、認めることにするよ。

万里男:そういう言い方はないでしょう! 
 私は、修理を度外視しすれば、中身そのものとしては、東京国立博物館所蔵の砧青磁馬蝗絆茶碗に勝るとも劣らない名品なんですから!!

主人:それはあんまりだ~~~。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
酒田の人さんへ (Dr.K)
2020-10-22 08:57:59
これ、上手ですよね(^_^)
外側の緻密な染付と、見込みの達筆な付立て風の色絵がアンバランスですが、1個で2個を鑑賞することが出来ますので、得した気分になります(^_^)

焼継よりも鎹直しの方が直し賃が高かったのか、鎹直しのものは、残存数も少ないようですね。
安物の磁器には、鎹直しは施さなかったのかもしれませんね。
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Dr.kさんへ (酒田の人)
2020-10-22 00:02:59
外が染付で内側の見込み中央部分だけが色絵というのは珍しいですよね!
しかも外側の高台の上の部分にも色絵がほどこしてありますし・・・。
この鳳凰の描き方は間違いなく中期に見られるものですし、成形もしっかりしていますから上手の品なんだと思います。
なによりも、カスガイで直して伝世している点からも、大切にされた品であることが伺えます。
さすがにドクターさんのコレクションですね!。
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tkgmzt2902さんへ (Dr.K)
2020-10-21 10:14:57
この染付の絵付も、細かなところまで丁寧に繊細に書き込んでありながら、それほどシツコクなく、ほどほどにしてありますよね。
なかなか上手だなと思います。

当時は、染付製品を作る本焼の窯(登り窯)を営む窯元と本焼したものに色絵を付ける業者は別になっていました。
ですから、染付の絵付師と色絵の絵付師は別人になります。
この色絵も、軽快な筆致ながら格調がありますから、なかなか上手な絵師が施したものだと思います。

この雲の描き方には特徴がありますし、他の時代には見られませんので、時代判定に役立つと思います(^_^)
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Unknown (tkgmzt2902)
2020-10-20 20:32:22
平面でなく曲面に沢山の主題を書いて、丁寧でとても心惹かれました。
余り大きくないのですね。
見込みの色絵は軽快で筆致がまた違うみたいですね。
渦巻きかまぼこ(*^^*)を見たら、18世紀中頃と覚えておきます。
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遅生さんへ (Dr.K)
2020-10-20 19:58:34
ホント、見た瞬間、「なんだ、鎹直しの向こうづけか」と思いますよね(笑)。
染付だけを見ると、つまらない器ですよね。
でも、手に取ってみてみると、高台付近に緑の帯があり、見込みには色絵の鳳凰が描いてあり、「ん?」となりますね(笑)。
それで、大傷の鎹直しがあっても、買うことにしたわけです。
この向付の見所は、高台脇の緑の帯と見込みの鳳凰文ですよね。
大傷の鎹直しがあっても、それを上回る魅力を感じて買いました。
遅生さんからもご賛同をいただき、嬉しい限りです(^-^*)
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Dr.kさんへ (遅生)
2020-10-20 19:16:29
実のところ、なんだ、鎹直しの向こうづけか、と思った私が甘かった(^^;
さすがにDr の品です。不思議な染め付け風景が、下部の青釉の帯とこれまた不思議に調和しています。
見込みの鳳凰も格調高い。
万里男との会話にも熱が入るはずですね(^.^)
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