冬の夜の お散歩

2001年02月12日 | アキラ
 ここ最近,父は年度末関係の仕事が目一杯山積しており,終日のほとんどを仕事部屋にこもりっきりで机の前に座ったまま過ごすことが多い。せいぜいが肩こり解消のために,時おり鉄棒にぶら下がったり畳の部屋で横になって伸びをしたりする程度。ベルトに付けた万歩計は夕方になっても1,000歩を越えない日すらある。うーん,イカンイカン。というわけで,夕食後,家の近所をぐるりと散歩に出掛けることもある。しかしながらこのような晩餐後の団欒状況(?)において父が一人で外出するのを母はしばしば快く思わぬゆえ,出掛ける前に一応子供らに声をかけることを強いられる。

 ねえ,タカシ,ちょっとお散歩にいかない? するとタカシは,コンビニに行くならいいよ,と幾分気乗り薄な様子でそっけなく答える。「遊戯王パック」あるいは「お菓子100円相当」あたりが目当てなのだ。ああ,ダメダこりゃ。

 続いてアキラの方に声をかける。アキラ,お散歩いかない? するとアキラは,本屋に行くならいいよ,と答える。「攻略本」あるいは「ニャンたん」あたりがお目当てなのだ。うーん,さてさて。本屋と言われては父も無下には断れない。買わないよ。立ち読みだけだよ。と一応念を押しておくが,それでもアキラは,いくいく! と,十分に乗り気である。

 冬の夜の外出ゆえ,防寒装備は万全に身支度を整えたのち二人してイソイソと家を出る。夜風は頬にあくまで冷たく,父子共々ついつい足早になる。オトウは大股早歩き,アキラはほとんど駆けっこ状態である。しかしここで決してアキラの手を離してはならない。ちょっと気を許して自由に走らそうものなら,たちまちスッテンコロリンするのは目に見えている。そういったことは過去に何度も経験している。

 本屋の店内でアキラは十分に幸せであった(何となればガミガミ・オババ店長がいなかったから)。通路にかがみこむようにして真剣な面持ちで「ニャンたん」のクイズを解読している。無論,父もつかのま幸せであった(何となれば健康雑誌なんぞをボンヤリと立ち読み出来るわけだから)。ああ,ここで一息ついて,さて家に戻ったら「夜の部」に入りましょうかね。それは言ってみれば漕役刑囚のルーチン・ワークのごとき作業に過ぎないのだけれど。

 というわけで,アキラと父は時に結構気が合うことだってあるのであります。
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