アウトドア老人たちの「個人装備」について

2008年03月07日 | 日々のアブク
 一昨日,用事があって県央の海老名市まで出掛けた。電車を利用して外出するときは,自宅から最寄りの小田急線秦野駅までの約5kmは自転車で走り,駅前の駐輪場に止めるというのが私の通常のパターンである。駐輪料金は1日100円だ。これが家から駅までバスで往復するとなると190円×2=380円かかる。この差額280円は,例えば昼食に家で即席ヤキソバを食べるとして約3回分に相当する。少し前までは約5回分だったのだが,昨今の小麦価格高騰に伴いインスタント麺類が急に値上がりして回数が減少した。市場経済原理の反映とはいえ,これは現在家庭内緊縮財政のなかにあって日々節約・節制を強いられているワタクシとしては誠に憂うべき問題である。それでも尚,自転車にちょっと乗るだけで食費を稼ぐことができるのだから,そのこと自体は有り難いと思わねばならぬ。

 いや,別にここで即席ヤキソバの話をしたかった訳ではない。交通手段選択の是非について一寸述べたまでです。さて,その秦野駅から海老名駅までは小田急線の急行に乗って6駅ほどである。こちらの料金はいくらなのか,最近では私も世間並みにSuica利用者になっているので,電車賃というものをイマイチ把握できていない。確かにスイカは大変便利なカードであるが,それがため,ついつい気軽に電車の乗り換えをしてアッチコッチに出掛けてしまい,いつのまにやら電鉄サイドの企業戦略に嵌っている自分に気付くという次第だ。ただ,少なくとも一般的に電車代はバス代よりも割安だろうと思われる。バスと電車を乗り継いで厚木方面の高校に通っている息子の定期を見ると,電車通学定期に比べてバス通学定期の金額がいかに割高であることかとビックリする。それだけ現行バス路線を維持すること自体がバス会社の慢性的な赤字経営に大きく寄与しているのであろう。そりゃ,平日の昼間などに路線バスに乗ってみればすぐわかる。車内にはジジババがほんの数人,パラパラと乗っている程度であって,ここは山奥の過疎集落地域か~,と見まごうばかりだ。

 それではしかし,本来の潜在的路線バス利用者の主体となるべきヒトビト,すなわち日中ヒマを存分に持て余しているであろう世の大多数のオバサンたち,もとい専業主婦たちは一体どうしているのかといえば,例えばちょっとした買い物やら所用やら,あるいはオケイコやらオアソビやらに出掛けるに際して,彼女らの移動手段はほとんどがクルマ,クルマ,クルマ,とにかく自家用車しか利用しない。徒歩で10分以上,いや5分以上かかる目的地へは必ずやクルマで行く。かような自家用車に極度に依存した生活スタイルは,若いオバサン,あまり若くないオバサン,だいぶ草臥れたオバサンのいずれを問わず,昨今のスタンダードとなっているのは明らかである。これもまたワタクシ的「95%の法則」に含めたいくらいだ(さすがにオバーサンともなると自家用車依存率はかなり低くなるが)。 平日の昼間,町を歩いていると,あるいは自転車で走っていると,若いオバサンがエルグランドやらアルファードやエリシオンやらエスティマやらレジアスやら,あるいはちょっと落ちてセレナやらステップワゴンやらの「巨大ミニバン」を運転しながらブイブイ走ってゆく光景にしばしば出くわす。大体は一人で,あの巨きな鉄の箱の中にチョコンと収まっているのだ。あるいは赤ん坊or幼児が同乗しているのかも知れないが,何分にも車高が高いので委細は確認できない。なかには平気でケータイで話しながら,あるいは咥えタバコをプカプカやりながら運転しているような品格そのものを疑われるオバサンもいたりして,シャイな私など思わず目を背けてしまう(でも轢かれないように注意せねば!) まことに気が滅入る光景であるが,これが21世紀初頭の地方都市におけるごくあたりまえの日常風景として定着しているのだ。この道は,もう引き返せないのだろうか。 軽自動車なら,いいでしょ? とか, プリウスだったらOK? とか,そういう問題ではありません。

 いやいや,ここで別にミニバンの話をしたかった訳でもない。交通手段の選択の是非について一寸述べたまでだ(同じことか)。 小田急線の方に戻ると,平日の昼間のことゆえ,しかも私は通常最前列ないし最後尾車両を好むがゆえ,乗車した急行の車内はガラガラであった。普段はほとんど席には座らずにドア脇に立って窓外の景色を眺めていることの多い私も,こういうガラガラ時はとりあえずシートに座らせていただく(一応老人の範疇に属する者ですゆえ)。

 前の席に老人が4名並んで座っていた。こちらは正真正銘の老人たちで,いずれもアウトドア・スタイルのいでたちである。ただし比較的軽装備で,少なくともこの時期に丹沢に登るような格好ではない。どこか低山ハイキングか名所旧跡巡りでもしてきたのだろう。左から順にA女(60代),B女(70代),C男(70代),D男(70代),といった排列である(年齢はいずれも推定)。皆さんなかなかに品の良い元気老人の趣で,いかにも生活にゆとりのありそうな御隠居といった風情がうかがえる。ウラヤマシイ。それぞれ楽しげに会話がはずんでいるようだが,対岸に鎮座する私はイヤホンで音楽を聴いているので,話の内容までは分からない。そこで,ヒマにまかせて彼らの身なりに注目してみた。

 まず上着のジャケットであるが,A女がモンベルのドロワット・パーカー,B女がモンベルのクリマエア・ジャケット,C男がモンベルのクリマプロ200ノマド・ジャケット,D男がモンベルのレインダンサー・ジャケット,といったいでたちであった。品名については多少の間違いはあるかも知れないが,ブランド自体は明らかである。要するに全員がモンベルMont-Belle製品のジャケットを着用しているのです。この寡占状態は一体ナンナノダ? PC業界におけるMS(マイクロソフト)帝国になぞらえてアウトドア業界におけるMB(モンベル)帝国とでも言いたいくらいだ。それとも皆さん,田園都市線沿線の中央林間,つきみ野,南町田方面からいらしたのだろうか? (南町田駅前にあるあの巨大なモンベル・グランベリーモール店に入ると,あまりの物量攻勢に貧乏性の私などつい眩暈を感じてしまう)

 次にズボンに関しては,C男はタラス・ブルバTaras Boulbaのようだが,他の3名は生憎どこのブランドだか当方には判別できない。ただし,こちらも恐らくはモンベル製品が含まれているような気がする。

 それでは続いて,皆さんが所持しておられるザックを品定め,もとい拝見してみますと,こちらの方は見事に全員バラバラである。いずれも,容量15~25リットル程度の小型ザックないしデイパックなのであるが,端からブランド名だけを記すと,A女はジャック・ウルフスキンJack Wolfskin,B女はグレゴリーGregory,C男はノース・フェイスThe North Face,D男はタトンカTatonkaと,こうである。モンベルのザックがないではないか! アパレル部門における寡占ぶりに比べて,アウトドア・ギアに関してはイマイチ魅力に欠けるということだろう。モンベル関係者はかかる現状を十分認識したうえで今後の商品開発に取り組むように。 ちなみに,全4名のうち3名はいずれもザックを膝の上で抱えていたのだが,A女のみは自らの脇の座席にザックを置き,大きく脚を組んでいた(若さの表れでしょうか?) 車内がガラガラだったからいいようなものだが,厚木あたりで混んできたらザックはちゃんと膝に乗っけて下さいね。

 次に,シューズなどをチェックしてみると。。。  あ,もう結構ですか。

 かくいう私自身のイデタチと申せば,ジャケットはミズノMizunoのブレスサーモ・キルトライナー・パーカー,ズボンはジャスコJuscoのトップヴァリュー・オリジナル,ザックはドイターDeuterのフーチュラ22,そしてシューズはシマノShimanoのマルチパーパス・スポーツシューズSH-MT31,といったものでございました。我ながら世間一般の「老人スタンダード」からは少々ズレていると思うけれども,さて,対岸の4名の側からはいかばかりの品定めをされていたのかナ?
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