こんなことってあるのだろうか? いや,実際にあったのだから,それが厳然たる現実世界のありようってものなンだろう。 え,何のことかって? それはですね,膨大な記憶を瞬時にして失ってしまった,ということなのでアリマス。
いえ,ワタクシ自身の脳内記憶のことではない。ま,それだって,そう言われれば無下に否定することはできないケレドモ,ここでの話はパーソナル・コンピュータの大量記憶装置に保存された記憶(記録)のことなのです。
話の取っ掛かりとして,まず私が現在使っているPCの概略を説明しておく。
個人用PCとして,デスクトップPCを2台,ノートPCを1台,それぞれ日常的に使用している。相互のネットワークは構築していない。そのうち,メインのPCはDELLのDimension9150というデスクトップ,これは今から約7年前に購入した機種で,現在ではさすがに性能的にはかなり見劣りしているものの,当時としてはオプション部品を含めソレナリの最高スペックで誂えたものである。OSは,導入時はWindows XPであったが,その後 Windows7にヴァージョンアップした。そして,記憶装置としては,直近では以下のハードディスクを搭載していた。
C: 500MB/システム&プログラム(内蔵HDD)
D: 2TB/データ&プログラム(内蔵HDD)
F: 1.5TB/データバックアップ(外付けHDD,アイオーデータ製)
G: 1TB/データバックアップ2(外付けHDD,バッファロー製)
このPCが,1ヶ月ほど前からだろうか,時おり動作が緩慢ないし不安定になったり,場合によってはハングアップしてしまうなど,いささか不調,というか不穏な動きを示すようになった。何しろ当方,寝ている時間以外はPCをつけっぱなし,おまけに常時マルチタスクでかなりヘビーな使い方をしているものだから,CPUやメモリがタスクに追いついていかないのかも知れなかったが,その一方で,7年間も使い倒していればそろそろキカイ自体の寿命が近づいているのかなぁ,などとも思ったりした。懐具合と相談しながらボチボチ新機種を検討した方がいいのかな,なんて辛い判断を迫られているようにも思われた。
そんなことを考えているうちに,ある日突然,死んでしまった。それも意外なことに,PC本体ではなく,何と2台ある外付けHDDのうちの1台(アイオーデータ製の1.5TB)がお亡くなりになったのだ。それは2月14日,バレンタイン・デーのことだった。本当に突然の出来事で,些かの予兆も前兆も微塵だにありはしなかった。
願わくば 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月のころ
そのかみ,西行法師はそのように静かに穏やかに歌を詠んで,そして望みどおりの満願の死を迎えられたという。享年七十三歳。見事な幕引きだったと思う。それに比べて,何なのだ,このHDDというキカイは!
何とかならないものかと あれこれ回復を試みてはみたものの,しょせん私のスキルではどうしようもない。ウンともスンとも言わなかった。それにしてもこのHDDは購入してまだ3年足らずの製品だっただけに,かなりのショックであった。別室にあるデスクトップPCには10年ものの外付けHDD(やはりアイオーデータ製で容量は250GB)が使われているが,そちらの方は未だ元気でブンブン稼動しているというのに!
そしてさらに悲劇は続く。その翌日,今度はもう1台の外付けHDD(バッファロー製の1TB)が,アイオー君の後を追うようにして同じく突然死してしまったのだ。こちらは5~6年前の製品であったが,やはり全く何の前触れもなかった。相次ぐ不祥事,もとい絶望的不幸に,私としてはただただ言葉を失うばかりであった。
これら2台のHDDは いずれもデータ・バックアップ用のHDDであった。すなわち,基本的には本体に内蔵されたDドライブのHDD(2TB)に保存されている各種データを,FドライブとGドライブの外付けHDDに二重にバックアップしていたわけである。それゆえ,データの大部分は本体のDドライブに残っている。 ただし! 仕事関係のデータに関しては,Dドライブには最近7年間分のデータのみが置かれ,それ以前のデータはFおよびGドライブの方にダブル保管されていた。すなわち,2台の外付けHHDが破壊されるとともに,2005年以前の約20年間におよぶ仕事関係データがすべて消滅してしまったということになる。数十年の長きにわたり個人自営業者として汗水たらして係わってきた「水商売」,その20余年の記録があっという間に消え去ってしまったのだ。 あ゛あ゛ぁ゛。。。
振り返りみれば,それこそ吹けば飛ぶような零細下請け業者でありながらも,多いときには年間10数件,少ないときでも年に5~6件の環境調査を,主として大手コンサルタントから請け負い,それぞれに能うる限りのキッチリした報告書を作成してきた。「チリも積もれば山となる」とはよくいったもので,しがない自営業者の身とは申しながら,長年にわたって生み出され貯蔵されたデータの総量はソレナリニ膨大であった。といってもディジタル情報として換算すれば400~500ギガバイトくらい,外付けHDDの小箱にまるまるスッポリ収まってしまっていたのだけれど。
取りあえず「紙の報告書」という形では,成果品の大部分は何とか手元に残っている。それらは仕事場の書架のかなりのスペースを占有しており,磁気データによる保存に比べてそのヴォリュームにおいて著しい差が生じてしまう。それゆえ,紙データの保存は原則として最終成果品として印刷・提出された報告書のみとしていた。しかしながら,そもそもあるひとつの業務を遂行するにあたっては,事前のプロポーザル作成からはじまって,関連文献資料の収集整理,都度都度の打ち合わせ記録,識者等へのヒアリング,現場調査の野帳や写真,生物分析の記録と標本写真,中間報告,素案作成などなど,さまざまな過程を経ながら種々雑多な膨大なデータが逐次生成され蓄積されてゆくのが常であって,そういったデータ類の大部分は磁気媒体のみが保存されていたのだ。それらすべてが一瞬にして吹っ飛んでしまった。 もう一度,あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛。。。。
要するに,みんな忘れなさい! という,これは神のアリガタイ思し召しなのであろうか。はい,御苦労さん,もう休んでいいからネ,ということなのでしょうか。そうかも知れない。いや,きっとそうに違いない。と,今は自らに言いきかせるしか術がない。 「天に星。地に憎悪。南溟 八月 私は死んだ。」という志水辰夫の名調子に倣えば,「天に新月。地に孤猿。如月辛亥 私の記憶は死んだ。」そんな感じ デショーカ。
いえ,ワタクシ自身の脳内記憶のことではない。ま,それだって,そう言われれば無下に否定することはできないケレドモ,ここでの話はパーソナル・コンピュータの大量記憶装置に保存された記憶(記録)のことなのです。
話の取っ掛かりとして,まず私が現在使っているPCの概略を説明しておく。
個人用PCとして,デスクトップPCを2台,ノートPCを1台,それぞれ日常的に使用している。相互のネットワークは構築していない。そのうち,メインのPCはDELLのDimension9150というデスクトップ,これは今から約7年前に購入した機種で,現在ではさすがに性能的にはかなり見劣りしているものの,当時としてはオプション部品を含めソレナリの最高スペックで誂えたものである。OSは,導入時はWindows XPであったが,その後 Windows7にヴァージョンアップした。そして,記憶装置としては,直近では以下のハードディスクを搭載していた。
C: 500MB/システム&プログラム(内蔵HDD)
D: 2TB/データ&プログラム(内蔵HDD)
F: 1.5TB/データバックアップ(外付けHDD,アイオーデータ製)
G: 1TB/データバックアップ2(外付けHDD,バッファロー製)
このPCが,1ヶ月ほど前からだろうか,時おり動作が緩慢ないし不安定になったり,場合によってはハングアップしてしまうなど,いささか不調,というか不穏な動きを示すようになった。何しろ当方,寝ている時間以外はPCをつけっぱなし,おまけに常時マルチタスクでかなりヘビーな使い方をしているものだから,CPUやメモリがタスクに追いついていかないのかも知れなかったが,その一方で,7年間も使い倒していればそろそろキカイ自体の寿命が近づいているのかなぁ,などとも思ったりした。懐具合と相談しながらボチボチ新機種を検討した方がいいのかな,なんて辛い判断を迫られているようにも思われた。
そんなことを考えているうちに,ある日突然,死んでしまった。それも意外なことに,PC本体ではなく,何と2台ある外付けHDDのうちの1台(アイオーデータ製の1.5TB)がお亡くなりになったのだ。それは2月14日,バレンタイン・デーのことだった。本当に突然の出来事で,些かの予兆も前兆も微塵だにありはしなかった。
願わくば 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月のころ
そのかみ,西行法師はそのように静かに穏やかに歌を詠んで,そして望みどおりの満願の死を迎えられたという。享年七十三歳。見事な幕引きだったと思う。それに比べて,何なのだ,このHDDというキカイは!
何とかならないものかと あれこれ回復を試みてはみたものの,しょせん私のスキルではどうしようもない。ウンともスンとも言わなかった。それにしてもこのHDDは購入してまだ3年足らずの製品だっただけに,かなりのショックであった。別室にあるデスクトップPCには10年ものの外付けHDD(やはりアイオーデータ製で容量は250GB)が使われているが,そちらの方は未だ元気でブンブン稼動しているというのに!
そしてさらに悲劇は続く。その翌日,今度はもう1台の外付けHDD(バッファロー製の1TB)が,アイオー君の後を追うようにして同じく突然死してしまったのだ。こちらは5~6年前の製品であったが,やはり全く何の前触れもなかった。相次ぐ不祥事,もとい絶望的不幸に,私としてはただただ言葉を失うばかりであった。
これら2台のHDDは いずれもデータ・バックアップ用のHDDであった。すなわち,基本的には本体に内蔵されたDドライブのHDD(2TB)に保存されている各種データを,FドライブとGドライブの外付けHDDに二重にバックアップしていたわけである。それゆえ,データの大部分は本体のDドライブに残っている。 ただし! 仕事関係のデータに関しては,Dドライブには最近7年間分のデータのみが置かれ,それ以前のデータはFおよびGドライブの方にダブル保管されていた。すなわち,2台の外付けHHDが破壊されるとともに,2005年以前の約20年間におよぶ仕事関係データがすべて消滅してしまったということになる。数十年の長きにわたり個人自営業者として汗水たらして係わってきた「水商売」,その20余年の記録があっという間に消え去ってしまったのだ。 あ゛あ゛ぁ゛。。。
振り返りみれば,それこそ吹けば飛ぶような零細下請け業者でありながらも,多いときには年間10数件,少ないときでも年に5~6件の環境調査を,主として大手コンサルタントから請け負い,それぞれに能うる限りのキッチリした報告書を作成してきた。「チリも積もれば山となる」とはよくいったもので,しがない自営業者の身とは申しながら,長年にわたって生み出され貯蔵されたデータの総量はソレナリニ膨大であった。といってもディジタル情報として換算すれば400~500ギガバイトくらい,外付けHDDの小箱にまるまるスッポリ収まってしまっていたのだけれど。
取りあえず「紙の報告書」という形では,成果品の大部分は何とか手元に残っている。それらは仕事場の書架のかなりのスペースを占有しており,磁気データによる保存に比べてそのヴォリュームにおいて著しい差が生じてしまう。それゆえ,紙データの保存は原則として最終成果品として印刷・提出された報告書のみとしていた。しかしながら,そもそもあるひとつの業務を遂行するにあたっては,事前のプロポーザル作成からはじまって,関連文献資料の収集整理,都度都度の打ち合わせ記録,識者等へのヒアリング,現場調査の野帳や写真,生物分析の記録と標本写真,中間報告,素案作成などなど,さまざまな過程を経ながら種々雑多な膨大なデータが逐次生成され蓄積されてゆくのが常であって,そういったデータ類の大部分は磁気媒体のみが保存されていたのだ。それらすべてが一瞬にして吹っ飛んでしまった。 もう一度,あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛。。。。
要するに,みんな忘れなさい! という,これは神のアリガタイ思し召しなのであろうか。はい,御苦労さん,もう休んでいいからネ,ということなのでしょうか。そうかも知れない。いや,きっとそうに違いない。と,今は自らに言いきかせるしか術がない。 「天に星。地に憎悪。南溟 八月 私は死んだ。」という志水辰夫の名調子に倣えば,「天に新月。地に孤猿。如月辛亥 私の記憶は死んだ。」そんな感じ デショーカ。