僕がいた頃の上石神井の芸大寮は、音楽を自作スピーカーで聴く学生が多かったですね。工芸科の学生はカリキュラムを利用してスピーカーを作れるのですが、音楽の生徒も自作ファンが多かったのです。実際、楽器を手にするオーディオマニアは、自分でスピーカーも作る猛者が多いのです。これは、スピーカーが楽器と同じ性質を有しているからです。
日本のオーディオがブームにあった頃、ハイファイという幻想は、スピーカーの周波数特性をフラットにする一本道を歩みました。日立やソニーや松下の平面振動板が登場し、4ウェイや5ウェイなどのマルチユニット化が進み、マルチユニットを制御する、コイルやコンデンサーを使ったネットワークが複雑になります。これらの試行錯誤は、平坦な周波数特性の犠牲として、重い振動板による電気信号を無駄にする低能率化、連動する生気のない音、などを招き、そのためにハイパワーアンプを必要とする悪循環に陥ったのです。今は、どこの家庭でも40ワット以上のアンプばかりです。
しかし、音楽を聴く実際面で必要な出力は、僅(わず)かに0.2ワット程度に過ぎません。3ワットもあれば、隣から苦情が来る音量が出せるのです。パソコン用スピーカーなどに付属するアンプは、小さなオペアンプ一個の0.2ワット程度なのです。今のアンプは、家庭で使うには無駄なハイパワーなのです。
さて、大型平面テレビが普及してきましたが、これらに組み込まれている、7㎝口径のスピーカーユニットの値段を御存知でしょうか?実は、秋葉原で型落ちの放出品を売っているところがあります。その値段はステレオで350円。エッジが少し凹んだものなら、一個50円です。オーディオ用として売られている同口径が一個で二千円程度ですから、如何に安いか分かります。しかし、このようなユニットでも、ちゃんと設計した木のキャビネットに入れてやれば、驚くほど良い音を出すのです。これがスピーカー工作の醍醐味です。
同じように、パソコンの付属品として付いてくる安物のスピーカーですが、プラスチックの小さな箱から取り外し、キチンと設計した木製の箱に入れただけで、それは素晴らしい音を奏でるのです。例えば、僕が作ったバックロードホーンとかです(説明と画像はこちら)。これは、廃物の床建材を側板に用い、コストを徹底的に下げたもので、東急ハンズの木材加工を利用しても、板材とカット+ボンドの合計三千円で作れます。また、オーディオ専用のユニットを使い、キットとして販売しているキムラ無線などの業者も多いです。値段は少し張りますが、メーカー製の安物スピーカとは比べものにならないくらい良い音です。もちろん、オークションに趣味で出品しているマニアもいますから、こちらも狙い目です。僕も二度落札されたことがあるのですが、二度とも入金がなかったので、これは売ってはいけないものだと悟り、今はパソコン用に収まっています。
このように、パソコン用のスピーカーは改造したり手軽にアップグレードできるのですが、問題はアンプです。自作できる人なら、小型の真空管方式がよいと思うのですが、完成品でも3万円程度します。僕は、オークションなどで中古の中級アンプを手に入れるのが手軽と思います。市販のパソコン用スピーカーの欠点は、無駄に小さいことです。スピーカーはセッティングの専有面積で考えるものであり、幅と奥行きが決まれば、高さは50㎝あっても構わないのです。ユニットの位置が耳の高さになるのが理想なのですから。
という訳で三回に渡りオーディオについて語りました。市販の高級品にも存在価値はあるのですが、自作の視点から見ると無駄の塊です。趣味性としては、その無駄こそ魅力なのですが。しかし、聖書に「家造りらの捨てた石が角の頭石になった」という一節を踏まえれば、捨てられていたスピーカーユニットや、投げ売りされているパーツを使って自作するのは神の目にかなうことが理解されると思います。ユニットを取り付けるバッフルだけ木製で、他の部分は段ボールのバックロードホーンでも結構鳴ってくれるのです。「考える前に跳べ」という、自作の神様と尊敬された故長岡鉄男氏の名言は、時を経て生き続ける真理だと思います。
エフライム工房 平御幸
日本のオーディオがブームにあった頃、ハイファイという幻想は、スピーカーの周波数特性をフラットにする一本道を歩みました。日立やソニーや松下の平面振動板が登場し、4ウェイや5ウェイなどのマルチユニット化が進み、マルチユニットを制御する、コイルやコンデンサーを使ったネットワークが複雑になります。これらの試行錯誤は、平坦な周波数特性の犠牲として、重い振動板による電気信号を無駄にする低能率化、連動する生気のない音、などを招き、そのためにハイパワーアンプを必要とする悪循環に陥ったのです。今は、どこの家庭でも40ワット以上のアンプばかりです。
しかし、音楽を聴く実際面で必要な出力は、僅(わず)かに0.2ワット程度に過ぎません。3ワットもあれば、隣から苦情が来る音量が出せるのです。パソコン用スピーカーなどに付属するアンプは、小さなオペアンプ一個の0.2ワット程度なのです。今のアンプは、家庭で使うには無駄なハイパワーなのです。
さて、大型平面テレビが普及してきましたが、これらに組み込まれている、7㎝口径のスピーカーユニットの値段を御存知でしょうか?実は、秋葉原で型落ちの放出品を売っているところがあります。その値段はステレオで350円。エッジが少し凹んだものなら、一個50円です。オーディオ用として売られている同口径が一個で二千円程度ですから、如何に安いか分かります。しかし、このようなユニットでも、ちゃんと設計した木のキャビネットに入れてやれば、驚くほど良い音を出すのです。これがスピーカー工作の醍醐味です。
同じように、パソコンの付属品として付いてくる安物のスピーカーですが、プラスチックの小さな箱から取り外し、キチンと設計した木製の箱に入れただけで、それは素晴らしい音を奏でるのです。例えば、僕が作ったバックロードホーンとかです(説明と画像はこちら)。これは、廃物の床建材を側板に用い、コストを徹底的に下げたもので、東急ハンズの木材加工を利用しても、板材とカット+ボンドの合計三千円で作れます。また、オーディオ専用のユニットを使い、キットとして販売しているキムラ無線などの業者も多いです。値段は少し張りますが、メーカー製の安物スピーカとは比べものにならないくらい良い音です。もちろん、オークションに趣味で出品しているマニアもいますから、こちらも狙い目です。僕も二度落札されたことがあるのですが、二度とも入金がなかったので、これは売ってはいけないものだと悟り、今はパソコン用に収まっています。
このように、パソコン用のスピーカーは改造したり手軽にアップグレードできるのですが、問題はアンプです。自作できる人なら、小型の真空管方式がよいと思うのですが、完成品でも3万円程度します。僕は、オークションなどで中古の中級アンプを手に入れるのが手軽と思います。市販のパソコン用スピーカーの欠点は、無駄に小さいことです。スピーカーはセッティングの専有面積で考えるものであり、幅と奥行きが決まれば、高さは50㎝あっても構わないのです。ユニットの位置が耳の高さになるのが理想なのですから。
という訳で三回に渡りオーディオについて語りました。市販の高級品にも存在価値はあるのですが、自作の視点から見ると無駄の塊です。趣味性としては、その無駄こそ魅力なのですが。しかし、聖書に「家造りらの捨てた石が角の頭石になった」という一節を踏まえれば、捨てられていたスピーカーユニットや、投げ売りされているパーツを使って自作するのは神の目にかなうことが理解されると思います。ユニットを取り付けるバッフルだけ木製で、他の部分は段ボールのバックロードホーンでも結構鳴ってくれるのです。「考える前に跳べ」という、自作の神様と尊敬された故長岡鉄男氏の名言は、時を経て生き続ける真理だと思います。
エフライム工房 平御幸