修理して送ったばかりのB-2が、届いてみれば右から音が出ないとか。右は男なので、女神の祟りですね。スワローズが開幕戦で、祟りがあった誕生日と同じ3対9で負けるわけです。
重いのを送り返されても困るので、前に修理した基板を送って交換をしてもらうことにしました。少しはアンプの調整にも慣れるだろうし、この程度の知識と技術は必須ですから。
最初に、基板に付いている2つの半固定抵抗器(トリマー)の取り扱いから。半固定抵抗は、終段のV-FETに流すバイアス電流と、スピーカー出力の直流を±0にする機能があります。最初に調整するのはバイアス電流で、基板左上の水色のトリマーを回します。とは言っても、電流値を直接読むのではなく、ソース抵抗にかかる電圧を測定し、「電圧=抵抗値×電流」という公式から、「電流=電圧÷抵抗値」と計算して電流値を出します。
バイアス電流のチェック 基板左上の水色の半固定抵抗で調整
B-2の場合、ソース抵抗値は0.22Ω。計測する場所ですが、基板上部の3本のピンを使います。真ん中がアースで、ここにテスターのマイナス側を繋ぎます。バイアスの場合はアイドル電流とも言うので、IDLEと書かれたピン右端にテスターの赤いプラス側をに繋ぎます。画像では36.2mVと表示されていますから、0.0362V÷0.22Ω=164.5mAと計算されます。B-2のマニュアルでは44mV前後となっていますが、これだと200mAです。
DC漏れのチェック 基板右上の青い半固定抵抗で調整
次にDC漏れのチェックですが、テスターのアース側はそのままに、プラス側の赤い方をピンの左端に繋ぎます。スピーカー出力に直流が出ると、電源オンかオフの時にボンという音が出ます。スピーカーに電池を繋いだのと同じだからです。アンプは電源オンから刻々と状態が変化します。この直流は小さいほうが良いので、アンプが温まった30分後くらいに測定し直します。画像では7.3mVとなっていますが、これは電源オン直後の10mVから十数秒で下がった値で、すぐにゼロからマイナスに動き、またプラス側に動きます。
直流漏れはゼロが理想ですが、半固定抵抗の大半は一回転型で微調整が利きません。画像のDC BALと書かれている所の青いトリマーは多回転型で、13回転するので微調整が楽です。小さなマイナスドライバーを差し込む頭が横向きで小さいのが難点ですが…。特にバイアス電流の調整の時に注意が必要ですが、一回転型を無闇矢鱈に思い切り回すと、あっという間にヒートシンクが熱くなるほど電流値が変化します。画像では基板左上の水色のトリマーがそうです。こちらはプラスドライバーで少しずつ回します。
さて、実際の基板の交換ですが、最初にアンプの底板を外して、ヒートシンクの前後を連結しているI字型のパーツを外します。きついので少しずつ引っ張ります。次にアンプを裏返して、基板左上の電源コードをハンダを溶かして外します。基板の表側からハンダ面にハンダゴテを当てて、溶けたらコードを引っ張るだけです。外したコードはショートしないようにテープで覆います。次に、基板右上の入力ケーブルも外します。それから、ヒートシンクに基板を固定している太いネジを2本外して基板を上に引き抜きます。ヒートシンクを固定している長いボルトは抜かないように注意。
基板左上の電源供給のケーブルと右上の入力信号ケーブルを外す
外した基板と、ショート事故を防ぐ処理をしたドライバーと端子
組み立てる場合は、逆の手順で行います。注意することは、左右を半分ずつ組み立てて、Lチャンネルだけ、あるいはRチャンネルだけの調整をしたくなりますが、絶対に厳禁です。終段のV-FETはドライバー段が無信号の時に最大出力となるので、一瞬でV-FETが昇天してしまいます。基板のドライバー段とV-FETは同時に電源電圧をかけなくてはならないのです。基板を外したまま電源を入れると、V-FETにバイアスがかからないので、一瞬で最大電流となるからです。
Nチャンネル(+側)のV-FET(2SK176など)は、MOS-FET(2SK134など)なら+1Vのゲート電圧で400mAのバイアス電流が流れるところ、実に-13.5Vの逆電圧をかける特殊な石なのです。-13.5Vよりも-12Vの方が大量にバイアス電流が流れます。この逆電圧でしかもバイアスが深いから、V-FETは使い難くて嫌われたのです。V-FETだけが、回路図ではゲートへの配線がプライマイナスを交差させて書き込まれます。
ということで、完全に組み立ててから電源を入れ、最初に両チャンネルのバイアスを調整し、次に直流漏れのチェックをします。漏れる直流は50mA以内なら良いとされますが、僕は一桁でないと納得出来ません。なお、季節でも変化するので、電源オフの時にボンという音が出るようなら再調整が必要です。
なお、トリマー調整用の小さなドライバーも先端以外は絶縁処理してあります。基板の調整用ポストもショートの原因となるので、テスターの先端が同じ高さにならないように、絶縁物を巻き付けて段差にしてあります。これくらい神経を入れても、時々はバチッとショートさせてしまうのです。念には念を入れる作業が必要です。
エフライム工房 平御幸
重いのを送り返されても困るので、前に修理した基板を送って交換をしてもらうことにしました。少しはアンプの調整にも慣れるだろうし、この程度の知識と技術は必須ですから。
最初に、基板に付いている2つの半固定抵抗器(トリマー)の取り扱いから。半固定抵抗は、終段のV-FETに流すバイアス電流と、スピーカー出力の直流を±0にする機能があります。最初に調整するのはバイアス電流で、基板左上の水色のトリマーを回します。とは言っても、電流値を直接読むのではなく、ソース抵抗にかかる電圧を測定し、「電圧=抵抗値×電流」という公式から、「電流=電圧÷抵抗値」と計算して電流値を出します。
バイアス電流のチェック 基板左上の水色の半固定抵抗で調整
B-2の場合、ソース抵抗値は0.22Ω。計測する場所ですが、基板上部の3本のピンを使います。真ん中がアースで、ここにテスターのマイナス側を繋ぎます。バイアスの場合はアイドル電流とも言うので、IDLEと書かれたピン右端にテスターの赤いプラス側をに繋ぎます。画像では36.2mVと表示されていますから、0.0362V÷0.22Ω=164.5mAと計算されます。B-2のマニュアルでは44mV前後となっていますが、これだと200mAです。
DC漏れのチェック 基板右上の青い半固定抵抗で調整
次にDC漏れのチェックですが、テスターのアース側はそのままに、プラス側の赤い方をピンの左端に繋ぎます。スピーカー出力に直流が出ると、電源オンかオフの時にボンという音が出ます。スピーカーに電池を繋いだのと同じだからです。アンプは電源オンから刻々と状態が変化します。この直流は小さいほうが良いので、アンプが温まった30分後くらいに測定し直します。画像では7.3mVとなっていますが、これは電源オン直後の10mVから十数秒で下がった値で、すぐにゼロからマイナスに動き、またプラス側に動きます。
直流漏れはゼロが理想ですが、半固定抵抗の大半は一回転型で微調整が利きません。画像のDC BALと書かれている所の青いトリマーは多回転型で、13回転するので微調整が楽です。小さなマイナスドライバーを差し込む頭が横向きで小さいのが難点ですが…。特にバイアス電流の調整の時に注意が必要ですが、一回転型を無闇矢鱈に思い切り回すと、あっという間にヒートシンクが熱くなるほど電流値が変化します。画像では基板左上の水色のトリマーがそうです。こちらはプラスドライバーで少しずつ回します。
さて、実際の基板の交換ですが、最初にアンプの底板を外して、ヒートシンクの前後を連結しているI字型のパーツを外します。きついので少しずつ引っ張ります。次にアンプを裏返して、基板左上の電源コードをハンダを溶かして外します。基板の表側からハンダ面にハンダゴテを当てて、溶けたらコードを引っ張るだけです。外したコードはショートしないようにテープで覆います。次に、基板右上の入力ケーブルも外します。それから、ヒートシンクに基板を固定している太いネジを2本外して基板を上に引き抜きます。ヒートシンクを固定している長いボルトは抜かないように注意。
基板左上の電源供給のケーブルと右上の入力信号ケーブルを外す
外した基板と、ショート事故を防ぐ処理をしたドライバーと端子
組み立てる場合は、逆の手順で行います。注意することは、左右を半分ずつ組み立てて、Lチャンネルだけ、あるいはRチャンネルだけの調整をしたくなりますが、絶対に厳禁です。終段のV-FETはドライバー段が無信号の時に最大出力となるので、一瞬でV-FETが昇天してしまいます。基板のドライバー段とV-FETは同時に電源電圧をかけなくてはならないのです。基板を外したまま電源を入れると、V-FETにバイアスがかからないので、一瞬で最大電流となるからです。
Nチャンネル(+側)のV-FET(2SK176など)は、MOS-FET(2SK134など)なら+1Vのゲート電圧で400mAのバイアス電流が流れるところ、実に-13.5Vの逆電圧をかける特殊な石なのです。-13.5Vよりも-12Vの方が大量にバイアス電流が流れます。この逆電圧でしかもバイアスが深いから、V-FETは使い難くて嫌われたのです。V-FETだけが、回路図ではゲートへの配線がプライマイナスを交差させて書き込まれます。
ということで、完全に組み立ててから電源を入れ、最初に両チャンネルのバイアスを調整し、次に直流漏れのチェックをします。漏れる直流は50mA以内なら良いとされますが、僕は一桁でないと納得出来ません。なお、季節でも変化するので、電源オフの時にボンという音が出るようなら再調整が必要です。
なお、トリマー調整用の小さなドライバーも先端以外は絶縁処理してあります。基板の調整用ポストもショートの原因となるので、テスターの先端が同じ高さにならないように、絶縁物を巻き付けて段差にしてあります。これくらい神経を入れても、時々はバチッとショートさせてしまうのです。念には念を入れる作業が必要です。
エフライム工房 平御幸