バレーボールの魅力と奥深さを探るとき、もっとも大切なものはチームワークだと、だんだんと見えるようになります。個人技術や戦術・戦法も大切ですが、それだけでは軍隊と変わりません。バレーボールは軍隊ではなくチーム。ここを間違えるとチーム崩壊に至ります。
軍隊というものは、各個の持ち場が決まっていて、上からの命令系統に従って従順にミッションを遂行しなくてはならない。違反すれば軍法会議で投獄や銃殺刑が待っています。個人の判断や、道徳観や、思想や宗教観が入り込む余地がありません。原爆を投下しろと命令されれば、良心の呵責があろうとも従うのが軍人。
対して、バレーボールのようなチームは、上からの指示を無視しようと思えばできる。チームの方針とは違うスタンドプレーで目立つことも出来る。全日本優先で、所属チームでは重役出勤する選手もいる。しかし、このような選手のいるチームは強くはなれません。チーム首脳は、表向きは海外移籍という裏技を使って、問題選手を放出するしかなくなります。
トヨタ車体が日立リヴァーレに負けた試合を、僕はチームワークの差で説明しました。では、チームワークの本質とは何でしょう?この問こそが大切なのです。
チームに所属する選手は、必ず欠点を持っています。完全無欠の選手など存在しない。誰とは言いませんが、美貌を持っていても運動神経がないと使えない。アタックは良いが守備はダメだと相手に狙われる。また、性格的にワンマンでチームから浮く選手もいる。
有能で勝ちたいという意識の強い選手ほど、他の選手に対して厳しくなるし、他の選手の欠点を数えるようになる。こうなると、他の選手は自分の駒のようにしか見えなくなる。プロ野球で失敗する監督も同じ。選手を駒としてしか見ないから、やがて離反や造反されて失脚する。軍隊で言えばクーデターが起こる。ではどうすればよいか?
選手一人一人は欠点を持っている。これは、手の指を開いて水を掬(すく)うのに似ています。指の間から恵みの水が溢(こぼ)れる。
でも、もう一人、指を開いた選手がいれば、二人が手を向かい合わせに差し出すことで、二人の指の隙間は埋まって水が漏れなくなる。これがチームワークなのです。
欠点を持つ者同士が助け合うことで、欠点が目立たなくなるどころか、チームの役に立つようになる。もちろん、欠点を完全に補完する関係はなかなか見つからない。けれど、バレーボールはビーチバレーと違って6人も仲間がいる。二人では難しい相互補完が、6人ならもっと補完し合えるようになる。実際には、控えの選手も含めた登録メンバー14人と、登録を外れたメンバーが下支えしている。皆の手を重ねた銀の器は、水漏れが少なくなって、飽くほどに美酒が飲めるようになる。もうザルとは言わせない。
守備の下手な選手がいて、それを役立たずと思ううちは軍隊と一緒。守備の下手な選手をカバーしているうちに、その選手が好プレーでチームに貢献する時が来るかもしれない。その時に、共に喜ぶのがチームワークなのです。それが、チームワークの良いチームの選手が若さを保って成長する理由です。
ダメだと見捨てるのは簡単。しかし、一緒に努力して練習して、少しでも高め合えば、共に喜ぶ日が来る。自分の成功を喜ぶより、何倍も嬉しい瞬間が来る。それを知っている選手は、チームワークをとても大切にする。例えば日立リヴァーレのように。
トヨタ車体との第3セット、トヨタ車体8-7日立の場面、佐々木選手のサービスエースが出た時、アナウンサーが「決めた佐々木よりもキャプテンの佐藤あり紗のほうが喜んでいました」と表現しました。佐藤あり紗キャプテンをキャプテンたらしめているのは、この、自分のことのように他の選手の成功を喜ぶ純粋さです。もちろん、チームとしてもサービスエースは大きいですが、チームが一つにまとまっているからこそ、あれだけ喜べるのだと思います。
他の選手を叱咤激励することも時には必要かもしれない。強い口調で命令することも時には必要かもしれない。引っ張って範を垂れることも必要な時がある。でも、そればかりで本当の信頼関係が育まれるのだろうか?
トヨタ車体の竹田キャプテンの勝利インタビューは、常に義務感が満載に聞こえます。親会社との上下関係が厳しく見える。日立リヴァーレからは会社との上下関係は感じない。普通の礼節があるだけ。だから「面白い応援」という名言が出てファンも喜ぶことができる。
試合後のインタビューで、副キャプテンの佐藤美弥さんが言ってました。「みんなで目を合わせて一丸となって頑張りました」と。眼差しに勝る愛はないし、眼差しに勝る信頼関係はない。古代日本語で、マナは愛とも書くのだから。厳しい言葉のトヨタ車体が、眼差しの日立リヴァーレに負けた瞬間でした。僕も含めて、日立リヴァーレから大切なことを教わりましたね。
エフライム工房 平御幸
軍隊というものは、各個の持ち場が決まっていて、上からの命令系統に従って従順にミッションを遂行しなくてはならない。違反すれば軍法会議で投獄や銃殺刑が待っています。個人の判断や、道徳観や、思想や宗教観が入り込む余地がありません。原爆を投下しろと命令されれば、良心の呵責があろうとも従うのが軍人。
対して、バレーボールのようなチームは、上からの指示を無視しようと思えばできる。チームの方針とは違うスタンドプレーで目立つことも出来る。全日本優先で、所属チームでは重役出勤する選手もいる。しかし、このような選手のいるチームは強くはなれません。チーム首脳は、表向きは海外移籍という裏技を使って、問題選手を放出するしかなくなります。
トヨタ車体が日立リヴァーレに負けた試合を、僕はチームワークの差で説明しました。では、チームワークの本質とは何でしょう?この問こそが大切なのです。
チームに所属する選手は、必ず欠点を持っています。完全無欠の選手など存在しない。誰とは言いませんが、美貌を持っていても運動神経がないと使えない。アタックは良いが守備はダメだと相手に狙われる。また、性格的にワンマンでチームから浮く選手もいる。
有能で勝ちたいという意識の強い選手ほど、他の選手に対して厳しくなるし、他の選手の欠点を数えるようになる。こうなると、他の選手は自分の駒のようにしか見えなくなる。プロ野球で失敗する監督も同じ。選手を駒としてしか見ないから、やがて離反や造反されて失脚する。軍隊で言えばクーデターが起こる。ではどうすればよいか?
選手一人一人は欠点を持っている。これは、手の指を開いて水を掬(すく)うのに似ています。指の間から恵みの水が溢(こぼ)れる。
でも、もう一人、指を開いた選手がいれば、二人が手を向かい合わせに差し出すことで、二人の指の隙間は埋まって水が漏れなくなる。これがチームワークなのです。
欠点を持つ者同士が助け合うことで、欠点が目立たなくなるどころか、チームの役に立つようになる。もちろん、欠点を完全に補完する関係はなかなか見つからない。けれど、バレーボールはビーチバレーと違って6人も仲間がいる。二人では難しい相互補完が、6人ならもっと補完し合えるようになる。実際には、控えの選手も含めた登録メンバー14人と、登録を外れたメンバーが下支えしている。皆の手を重ねた銀の器は、水漏れが少なくなって、飽くほどに美酒が飲めるようになる。もうザルとは言わせない。
守備の下手な選手がいて、それを役立たずと思ううちは軍隊と一緒。守備の下手な選手をカバーしているうちに、その選手が好プレーでチームに貢献する時が来るかもしれない。その時に、共に喜ぶのがチームワークなのです。それが、チームワークの良いチームの選手が若さを保って成長する理由です。
ダメだと見捨てるのは簡単。しかし、一緒に努力して練習して、少しでも高め合えば、共に喜ぶ日が来る。自分の成功を喜ぶより、何倍も嬉しい瞬間が来る。それを知っている選手は、チームワークをとても大切にする。例えば日立リヴァーレのように。
トヨタ車体との第3セット、トヨタ車体8-7日立の場面、佐々木選手のサービスエースが出た時、アナウンサーが「決めた佐々木よりもキャプテンの佐藤あり紗のほうが喜んでいました」と表現しました。佐藤あり紗キャプテンをキャプテンたらしめているのは、この、自分のことのように他の選手の成功を喜ぶ純粋さです。もちろん、チームとしてもサービスエースは大きいですが、チームが一つにまとまっているからこそ、あれだけ喜べるのだと思います。
他の選手を叱咤激励することも時には必要かもしれない。強い口調で命令することも時には必要かもしれない。引っ張って範を垂れることも必要な時がある。でも、そればかりで本当の信頼関係が育まれるのだろうか?
トヨタ車体の竹田キャプテンの勝利インタビューは、常に義務感が満載に聞こえます。親会社との上下関係が厳しく見える。日立リヴァーレからは会社との上下関係は感じない。普通の礼節があるだけ。だから「面白い応援」という名言が出てファンも喜ぶことができる。
試合後のインタビューで、副キャプテンの佐藤美弥さんが言ってました。「みんなで目を合わせて一丸となって頑張りました」と。眼差しに勝る愛はないし、眼差しに勝る信頼関係はない。古代日本語で、マナは愛とも書くのだから。厳しい言葉のトヨタ車体が、眼差しの日立リヴァーレに負けた瞬間でした。僕も含めて、日立リヴァーレから大切なことを教わりましたね。
エフライム工房 平御幸