歴程日誌 ー創造的無と統合的経験ー

Process Diary
Creative Nothingness & Integrative Experience

福音歳時記 12月29日

2024-12-29 | 福音歳時記
福音歳時記 12月29日 聖家族の主日
  
眠れども心目覚めし幼な子を閑かに護る聖家族かな
 
キリシタン時代の東西文化交流のなかで特筆すべきものは、日本のセミナリオの画舎で制作された聖画の質の高さである。若桑みどりは『聖母像の到来』のなかで、キリシタン時代の日本のセミナリオにあった画学舎が、インド以東にイエズス会が布教した地域の中でもっともレベルが高かった理由を二つあげている。(1)安土桃山時代は豪華絢爛たる障壁画の全盛期であり、花鳥の装飾美、都市景観、人物往来の写実性も兼ね備えた美的水準の高いものであったこと。(2)ヴァリニャーノが、西洋の彫刻的、立体的素描法を画学生に押しつけずに、宗教的な図像の象徴的意味を教えるにとどめ、手法、様式、技法材料は日本人画学生の自由に任せたこと。その結果「西洋の図像+日本の手法」という東西文化の融合した芸術が生まれたのである。
  そのようなキリスト教と日本文化の邂逅によって生まれた美術品の実例として、「花鳥蒔絵螺鈿聖龕」が今に伝えられている。これは、「漆に螺鈿」という日本の精妙な工芸手法を用いて、眠るイエスをヨセフとマリアが見守る「聖家族」とヨハネが静かにしているように指で合図をしている図像を表現したものである。
 ヨハネの手にする十字架の幡には「ECCE AGNUS DEI(神の子羊を見よ)」と書かれ、画面の下には、EGO DORMIO ET COR MEUM VIGILAT (我は眠れど心は目覚めて)と書かれている。
 
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