歴程日誌 ー創造的無と統合的経験ー

Process Diary
Creative Nothingness & Integrative Experience

詩編118に聴くー家造りの捨てた石が隅の親石となった

2020-11-12 | 「聖書と典礼」の研究 Bible and Liturgy

詩編118は、新約聖書のなかで繰り返し引用され、最初にイエスをキリスト(救世主)と宣言した信徒の心を如実に伝えてくれる詩である。
 まず、マタイ21-9では、エルサレム入城のイエスを頌える歌として「ほむべきかな主の名によって来るもの(詩118-26)」が引照され、おなじくマタイ21-49では「家造りの捨てた石が隅の親石となった(詩118-22)」が、イエス自身の言葉として語られている。この言葉は、使徒行伝4-11ではエルサレムで祭司長や長老達の尋問に答えたペトロのキリスト証言として繰り返される。その言葉の意味は、ペテロ書前書2-7の「人々からは見捨てられたキリストが、神にとっては選ばれた尊い生きた石なのだから、あなたがたも生きた石として用いられ、霊的な家に造りあげられるようにしなさい」というペテロ自身の言葉に示されている。

 この詩にはまた「苦難のはざまから主を呼び求めると、主は答えてわたしを解き放たれた。主はわたしの味方、人間がわたしに何をなしえよう」「人間にたよらず、主をさけどころとしよう。君侯にたよらず、主をさけどころとしよう」のように、主にたいして一人称で語る「わたし」が、一切の地上の権威を恐れずに主に拠り頼む心意気も示されている。

「全てのものの上に立つ自由な主人であって、いかなる人間的権威にも従属しない」と同時に「すべてのものに奉仕するしもべである」ところに、キリスト者の「自由なる奉仕活動」を見いだしたマルチン・ルターが、この詩編を愛唱したことはよく知られているが、プロテスタントではないわたしもまた、この詩編の言葉に鼓舞される。それは、もっとも個人的にしてもっとも普遍的なキリスト信仰のありかたを旧約聖書の中で預言した詩編のひとつだと思うからである。

詩編118はカトリックの典礼聖歌87番で(抜粋して)うたわれている。歌詞は次の通り。

答唱:きょうこそ神が造られた日 よろこび歌えこの日を共に

1 恵み深い主に感謝せよ そのあわれみは永遠   イスラエルよ叫べ 神のいつくしみはたえることがない。

2 神の右の手は高くあがり どの右の手は力を示す わたしは死なずわたしは生きる かみのわざを告げるために

3 家造りの捨てた石が 隅の親石となった これは神のわざ 人の目にはふしぎなこと

  この歌詞の答唱(繰り返し歌われる箇所)の「きょうこそ神が造られた日」とは、復活の主日、あるいは復活祭の第二主日(白衣の主日)を指している。

復活祭の時に受洗したひとが白衣を着けた故事にならって「白衣の主日」と呼ぶのであるが、女性の場合は白いベールを付けるという習慣もここに由来するのであろう。

そのこころは、洗礼を受けた人は「新しい人として、キリストを着るものとなった」こと、「神の国の完成を待ち望みながらキリストに倣って歩む人」を力づけ祝福するためである。

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高田三郎作曲のこの典礼聖歌はYoutubeで聴けます。

きょうこそ神が造られた日

作曲/高田 三郎 演奏:中央大学混声合唱こだま会 指揮:森永 淳一 2015年12月22日 府中の森芸術劇場ウィーンホール 第48回定期...

youtube#video

 

旧約聖書の時代にこの詩編がどのように歌われたかはよく分かりませんが、ヘブライ語で朗唱された詩編がどんなものであったかをある程度窺わせる朗詠がYoutubeにあります。とくに、「ほむべきかな主の名によりて来る者」とか「家造りの捨てた石が 隅の親石となった これは神のわざ 人の目にはふしぎなこと」という詩をヘブライ語の原語で聴くことができました。

 現代的な伴奏が付けられているにもかかわらず、受難と亡国の危機に抗して信仰を守り抜いたユダヤ教徒の心の歌が、現代に至るまで脈々と受け継がれていると感じました。

 

Psalm 118 sung in Hebrew - א֭וֹדְךָ - תְּהִלִּים קיח [NEW HALLEL TUNE]

Enjoy this new Hallel tune for Odekha (א֭וֹדְךָ כִּ֣י עֲנִיתָ֑נִי), Ps...

youtube#video

 

 


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