安全配慮義務は判例により信義則を基に出てきたものであり労働契約法成立以前から存在
会社は従業員に対して安全な形で仕事をしてもらうというのが、その義務としてあります。これは「安全配慮義務」として労働契約法第5条に記載されています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。<労働契約法5条>)
契約上の安全に対する必要な配慮とありますので、労働契約の内容に安全に関してなんらの記載がなかったとしても、契約している以上、身体だけでなく精神的なものを含んで、使用者は労働者の安全を確保しなければなりません。この義務を怠り労働者に損害を与えたときは、その損害を賠償しなければなりません。
ところで、この条文は、労働契約に伴う使用者が労働者に対するものの間の義務です。それゆえ、請負契約や業務委託契約で働く労働者には適用はないことになり、「安全配慮義務」は「関係ないよ」となってしまいます。しかし「それでいいの」となりそうです。建設業においては、下請・孫請があり、こういった請負契約等で仕事を行っている例がみられます。こういう労働者のことを一般的に「社外労働者」と呼んでいるようです。<※注1>
この安全配慮義務は、民法上の信義則(信義に従い誠実に行動せよ)からきており、使用者側が労働者に働いてもらっているという前提の下、労働者の安全を確保しながら働いてもらうのは当然だという認識によるものです。そのため、裁判例の積み重ねから、信義則を基礎にして、この安全配慮義務という原則が出てきたといえるものです。それを法律と言う形でまとめて成立させたのが、この労働契約法で平成19年に成立しました。法律制定はつい最近のことです。しかし、平成19年以前から、裁判では「安全配慮義務」は判例の積み重ねにより、厳然として存在していたことになり、労働契約法のこの規定はその「確認」をしたということなのです。
そして、その裁判で存在していた「安全配慮義務」は、必ずしも労働契約に伴う労働者にとどまらず、請負契約等においても、もっと広く解釈されています。
下請企業の労働者が元請企業の造船所で労務の提供するにあたっては、いわゆる社外工(社外労働者)として、元請企業の管理する設備、工具等を用い、事実上元請け企業の指揮、監督を受けて、<※注2>その作業内容も元請企業の従業員である本工(本労働者)とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係の下においては、元請企業は、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、その労働者に安全配慮義務を負うものである。(最二小平成3.4.11三菱重工業神戸造船所事件)
実は、昭和50年代頃から裁判所では、安全配慮義務の対象を広く、この「特別の社会的関係」に入った者の間で義務として捉えていたようなのです。「特別の社会的接触の関係」ということで、まったく事業所での接触のない下請けについては適用になりませんが、ここでいっている元請の設備・工具の使用や事実上の指揮監督関係が認められ、また作業内容が同じような場合、端的に言えば、同じ工場内での下請のような作業については、安全配慮義務が成りたつ場合があるということなのです。
したがって、下請で働く従業員で直接の雇用関係にはないといえる場合は、労働基準法は少なくとも適用はありませんが、社外労働者であっても、会社に雇用されている従業員と同じ仕事内容とか同じ労働環境にある場合は、この労働契約法の安全配慮義務は認められる可能性はありますので、本社と同様に下請の従業員の安全マネジメントも十分行う必要がありそうです。<注3>
※注1 労災においては、建設業において、数次の請負が行われる場合、下請けの労働者であっても元請けを使用者とみなすとなっている。
※注2 いかに形式的に指揮命令が別であっても、事実上の指揮監督は元請けという意味。
※注3 地方自治体においても、協会・協力会等を置き、同じ仕事内容・同じ職場環境というような場合は、注意すべきでしょう。
(以前、偽装請負が問題となった時に整理はしたと思われますが、この場合はちょっと違った観点からです。事実上の指揮命令となっている点に注意です。)
会社は従業員に対して安全な形で仕事をしてもらうというのが、その義務としてあります。これは「安全配慮義務」として労働契約法第5条に記載されています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。<労働契約法5条>)
契約上の安全に対する必要な配慮とありますので、労働契約の内容に安全に関してなんらの記載がなかったとしても、契約している以上、身体だけでなく精神的なものを含んで、使用者は労働者の安全を確保しなければなりません。この義務を怠り労働者に損害を与えたときは、その損害を賠償しなければなりません。
ところで、この条文は、労働契約に伴う使用者が労働者に対するものの間の義務です。それゆえ、請負契約や業務委託契約で働く労働者には適用はないことになり、「安全配慮義務」は「関係ないよ」となってしまいます。しかし「それでいいの」となりそうです。建設業においては、下請・孫請があり、こういった請負契約等で仕事を行っている例がみられます。こういう労働者のことを一般的に「社外労働者」と呼んでいるようです。<※注1>
この安全配慮義務は、民法上の信義則(信義に従い誠実に行動せよ)からきており、使用者側が労働者に働いてもらっているという前提の下、労働者の安全を確保しながら働いてもらうのは当然だという認識によるものです。そのため、裁判例の積み重ねから、信義則を基礎にして、この安全配慮義務という原則が出てきたといえるものです。それを法律と言う形でまとめて成立させたのが、この労働契約法で平成19年に成立しました。法律制定はつい最近のことです。しかし、平成19年以前から、裁判では「安全配慮義務」は判例の積み重ねにより、厳然として存在していたことになり、労働契約法のこの規定はその「確認」をしたということなのです。
そして、その裁判で存在していた「安全配慮義務」は、必ずしも労働契約に伴う労働者にとどまらず、請負契約等においても、もっと広く解釈されています。
下請企業の労働者が元請企業の造船所で労務の提供するにあたっては、いわゆる社外工(社外労働者)として、元請企業の管理する設備、工具等を用い、事実上元請け企業の指揮、監督を受けて、<※注2>その作業内容も元請企業の従業員である本工(本労働者)とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係の下においては、元請企業は、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、その労働者に安全配慮義務を負うものである。(最二小平成3.4.11三菱重工業神戸造船所事件)
実は、昭和50年代頃から裁判所では、安全配慮義務の対象を広く、この「特別の社会的関係」に入った者の間で義務として捉えていたようなのです。「特別の社会的接触の関係」ということで、まったく事業所での接触のない下請けについては適用になりませんが、ここでいっている元請の設備・工具の使用や事実上の指揮監督関係が認められ、また作業内容が同じような場合、端的に言えば、同じ工場内での下請のような作業については、安全配慮義務が成りたつ場合があるということなのです。
したがって、下請で働く従業員で直接の雇用関係にはないといえる場合は、労働基準法は少なくとも適用はありませんが、社外労働者であっても、会社に雇用されている従業員と同じ仕事内容とか同じ労働環境にある場合は、この労働契約法の安全配慮義務は認められる可能性はありますので、本社と同様に下請の従業員の安全マネジメントも十分行う必要がありそうです。<注3>
※注1 労災においては、建設業において、数次の請負が行われる場合、下請けの労働者であっても元請けを使用者とみなすとなっている。
※注2 いかに形式的に指揮命令が別であっても、事実上の指揮監督は元請けという意味。
※注3 地方自治体においても、協会・協力会等を置き、同じ仕事内容・同じ職場環境というような場合は、注意すべきでしょう。
(以前、偽装請負が問題となった時に整理はしたと思われますが、この場合はちょっと違った観点からです。事実上の指揮命令となっている点に注意です。)
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