縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

内部統制構築の前提

2006-10-24 01:17:35 | お金の話
 今朝の新聞に「内部統制とIT」という特集があった。そう、今、話題の『日本版SOX法』関連の話である。

 僕は“内部統制”にはちょっとうるさい(なんて、実は、内部統制は試験で一番苦労した項目なのだが、勝てば官軍、少し偉そうに言わせていただく)。

 内部統制は、別に昨日今日、突然降ってわいた話ではない。監査では昔からある考えだ。そもそも会計士が企業の監査を行う際、企業活動のすべてをチェックできるわけはない。いくつかの取引や事象を取り上げ、それが正しく処理されているかを確かめ、そこから全体の確からしさを推論する。内部統制とは、このとき、どれだけの取引をチェックするか、テストするかを決める、判断基準なのである。
 即ち、内部統制の優れている会社、社内のチェック体制のしっかりしている会社であれば、テストの量を多少減らすことができるし、逆にその体制の心もとない会社であれば通常以上のテストを行わなければならない。そうして財務報告の正確性を考えて行くのである。

 米国で内部統制がクローズアップされるきっかけとなったのは、2001年のエンロンやその翌年に起きたワールドコムの不正会計事件である。そこからSOX法(サーベンス・オクスレー法)が制定された。米国は結構極端に振れる国で、不正が起きた、それ厳しく規制しろ、ということになり、短時間で、極めて厳しい法律が制定された。その結果、コスト高が企業の競争力を削ぐ、IPOが減少する、更にはロンドンなど海外市場に企業が逃げ出す、等の問題点が指摘され、ついには基準見直しの動きが出て来ている。

 さて、翻ってわが国のSOX法はどうだろう。今年の6月に金融商品取引法(いわゆる日本版SOX法)が制定された。ただ実施基準がまだ公表されていないため、どこまで厳密な対応が要求されるのかはまだわからない。(蛇足だが、テレビや雑誌で「日本版SOX法対応」、「日本版SOX法準拠」を謳う宣伝を最近よく見るが、守るべき基準が示されていないのに何故そんなことが言えるのか、まったく不思議である。)ただわが国の場合、米国ほど極端な内容にはならず、費用負担もややマイルドになるのではないかと思う。当局も内容については、行き過ぎた米国の規制やその揺り戻しを見、そこまでは厳しくしないと言っている。

 又、米国で問題になった監査費用も米国ほどの負担増にはならないと思う。一つには監査報酬そのものの決め方の違い。米国は企業と独立した監査委員会が監査法人の報酬を決めるが、わが国では監査を受ける企業自らが監査法人を決め、報酬を決める。つまり、監査法人にとって企業はお客様なのである。仕事を失うよりも安い価格で仕事を請ける方を選ぶケースもあるだろう。加えて、米国は監査法人が直接企業の内部統制を評価する方法を採ったが、わが国は経営者が評価した内部統制について監査法人が評価する間接的な方法を採っており、監査法人の負担は少なく済む。

 内部統制というのは性悪説に立って、ちょい悪おやじどころか、ひどく悪いおやじがいても、彼の悪事をチェックできる仕組みがあるか、それを防ぐ機能が働くか、を問うものである。勿論、たとえ内部統制が完璧であっても、何人かが共謀したり、横暴な経営者が組織ぐるみの犯行を強いる等の可能性は否定できない。
 要は、仏作って魂入れず、じゃまずいから、まずは経営者自ら襟を正し、社員に法を示すことが大事といえよう。