縁側でちょっと一杯 in 別府

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秋の夜長に「色づく街」

2017-10-04 22:31:28 | 芸術をひとかけら
 あっ、南沙織の「色づく街」だ。
 アップデートしたついでに YouTube を開いたところ、その動画が出て来た。1991年の紅白歌合戦の映像。はじめは僕がよく昔の曲を聴いているので出て来たのかと思った。が、考えてみれば僕が聴くのは古い洋楽ばかり。やはりこの季節の歌、秋に因んだヒット曲ということなのだろう。

 南沙織といっても知らない方が多いと思う。彼女は1970年代を代表するアイドルの1人。天地真理、小柳ルミ子とともに新三人娘と呼ばれていた。もう引退して随分経つので、あの篠山紀信の奥さんで、俳優篠山輝信の母親と言った方が良いのかもしれない。

 さて、南沙織は1971年に「17才」でデビューし、78年に引退している。この91年の紅白は、引退後一時芸能活動を再開したときのものである。動画の彼女は、芸能界引退から10年以上経ち、おまけに40歳近いというのに、とても可憐で美しい。
 そして何より歌が上手い。勿論口パクではない。長いブランクをまったく感じさせない伸びのある歌声。ちょっと舌足らずなところも変わらない。

 南沙織に限らず、昔の歌手は歌が上手かった。思うに昔の歌、いわゆる昭和歌謡は歌がメイン。歌がバーンと前面に出ている。演奏は伴奏に過ぎず、あくまで歌を引き立てるための存在だった。このため たとえアイドルであっても歌を聴かせる力、歌唱力が必要だったのである(ときに浅田美代子のような例外もいたが・・・)。
 一方、最近の曲は、歌だけでなく、歌と演奏を合わせた全体を聴かせる、あるいはそれにダンスを加えたパフォーマンス全体を見せるようになっている。またシンセサイザーにより音もとても複雑になった。極論すれば、歌、つまり人の声も、全体のパーツの一つであり、楽器と変わらない。なので歌が多少下手でもまったく問題ない。他でいくらでもカバーが効くのだから。
 久々に聴いた昭和歌謡は懐かしくあり、また逆にどこか新鮮でもあった。

 などと偉そうに書いたが、実は僕は南沙織をテレビで見た記憶がほとんどない。南沙織が活躍していたのは僕が小学生から中学生にかけて。彼女の歌は青春時代の恋や別れの話が多く、子供の僕にはよくわからないし、興味もなかったのだろう。彼女の歌の世界は、僕にはまだまだ早かった。
 当時の小学生のアイドルといえば天地真理、そしてピンク・レディー。彼女らの歌は子供にも極めてわかりやすい。シンプルで明るく元気な歌。南沙織の歌にある物悲しさや情感といったものは全然なかった(もっとも「17才」など南沙織の初期の曲はシンプルで明るい曲だったが)。

 そんな僕が彼女の歌を聴くようになったのは大学に入ってから、彼女の引退後である。南沙織が大のお気に入りの友人がいて、試しに僕も聴いてみたのであった。大学生になり僕も漸く彼女の歌う世界を理解できるようになったのか、はたまたそんな世界に憧れていただけなのか、僕も南沙織が好きになった。
 しかし、この友人、僕と年はさほど変わらないのに小学生の頃から南沙織を聴いていたのだろうか。“真理ちゃん自転車”に夢中になったであろう世代なのに。とびきりませた女の子だった? 今となっては知る由もないが、いつまで経っても恋愛にかけては彼女に敵わない気がする。

 秋の夜長、久しぶりに「色づく街」を聴いて、物思い耽るのも悪くない(“物思い”と言うには、ちょっと程度が低いかな?)。